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北方環東記  作者: 守屋三
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ボス対面

【天魔の屋敷前】


 天狗たちの目を掻い潜り、透香一行は反乱の首謀者かいる天魔の屋敷近くまでやってきた。

 その屋敷を見渡して透香がポツリと言った。


「ここが、天魔の屋敷…今にも崩れそうだけど、突入するの?」


 屋敷はあらゆるところが破壊され、無残な姿となっていた。

 むしろ、崩れずにカタチが残っているのが不思議な程である。

 透香の言葉に文は首を振って答えた。


「いや、その必要はない、よ!」


 文が話し始めた瞬間、屋敷の中から突風が起こり、屋敷の破片を伴いながら、文たちへと襲いかかった。

 しかし、まるで来ることがわかっていたかのように文が扇を振りかざし、返しの突風を起こした。

 屋敷と文たちの中間でぶつかり合った風は、物凄い音を立てながら、相殺し、消え去った。

 透香は細かい破片から手で顔を庇いつつ、煙を立てながら完全に崩れた天魔の屋敷を見据えた。

 間もなく、崩れた屋敷の中から木片を吹き飛ばしながら一体の天狗が出てきた。


「はっ、流石。奇襲なんぞは効かないねえ、りく…

「やめろ、私は射命丸文だ。底辺の天狗だ。それ以外は何もない」


 天狗の中でも一際高い身長を持ち、細身ながらも強そうな肉体と正義感にあふれる顔つきであった。服は白い上着と袴を身に着け、青と白の結袈裟を掛けていた。

 上司として頼るならこの人。

 中から現れた豊前姫彦丸はそんな第一印象を抱かせる天狗であった。


「…そうやって逃げ続けるつもりか。なぜ責務を果たさない」


「果たすも何も、底辺である私には課せられたものはない。仮にあったとしても、それをやる意義はないね」


「っ!お前がそんなんだからこんな状況に…いや、いい。こうなってしまった以上は、話し合いは無用。力尽くだ」


 豊前姫が激高したのは一瞬で、すぐに落胆した表情となった。


「そう、最初からそうするしかないのさ」


「無念だよ…」


 一連の問答から悔しさを滲ませる豊前姫と苦しそうに顔を背ける文。

 近しさを感じながらも絶対に相容れないことがはっきり感じられてしまったのであった。

 話が途切れたのを見て、透香が豊前姫の前へ出てきた。


「何か一気に話が進んだみたいだけど…あなたがこの異変の首謀者ね。幻想郷のためにも、退治させてもらうわよ」


「博麗の巫女か…何も知らない部外者は黙っていてもらおうか。これは私の命をかけた抗争。邪魔はしないでもらおうか。

 それに、貴様の相手はこちらではないぞ」


「なっ!?」


 豊前姫の言葉と同時に背後から攻撃がやってくる。

 妖力の動きを察知した透香は咄嗟に体を捻り、その攻撃を…拳をかわした。


「ちっ、やっぱり強くなったわねお前」


「茉依さん!?」


 透香に攻撃をしたのは、茉依であった。

 突然の反逆に驚きの声を上げたのは椛である。


「あの状況じゃ、逃げられるわけないでしょ。だから、取引をしたのよ。

 身の安全の代わりにクソ上司と巫女をここに連れてくるというね」


 茉依が手を上げると、背後の木々からあちこちと天狗、黒天狗が出てきた。


「だから今、私はあちら側の天狗ってこと。

 ここで一網打尽にさせてもらうわよ、巫女」


「そんな、裏切っていたんですか、茉依!?」


「椛、悪いけど、文句ならそこのクソ上司に言うことね!」


 椛の叫びに、茉依が一瞬辛そうな顔をしたように見えた。

 しかし、それを気にする間もなく黒天狗たちが襲いかかってきた。


「多勢に無勢ね。でも、ここでやられるわけにはいかない!」


「茉依……信じられません。確認するためにもここは切り抜けます!」


 透香と椛は襲いかかってくる黒天狗たちへと立ち向かっていった。



「……これで一対一というわけか」


「おあつらえ向きだろ?私とお前の決着を付けるには」


「もとより、私たちの戦いについていけるやつなんてこの場にはいないがな。

 場を整えられた以上は、やってあげるよ」


「貴様はまだそうやって部外者面を……いや、戦えるだけで重畳か。

 ならば、心ゆくまでぶつけさせてもらう。そして、勝つのは私だ」


「それはやってみなければわからんさ」


 その場に突風が起き、少し近くにいた天狗たちが余波で飛ばされた。

 その戦いを追えるものはこの場にはいないのであった。


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