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北方環東記  作者: 守屋三
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合流と変化

【妖怪の山 中腹】


 あれからどのくらい経ったのか、どのくらい進めたのか…

 透香は天狗たちに見つからないよう、時に隠れ、時に不意打ちをかけ、時に逃走しながら、敵の本陣を目指し、進んでいた。


 そして、今もまた木々の間に隠れて、天狗の集団をやり過ごしていた。


 透香は息を付き、ふと周りを見渡す。

 そこは、整然と整えられていた木々も戦闘の影響によりいくらか倒されてしまい、雑然とした見栄えとなっていた。

 周りから見えにくく、木々が戦闘の余波を防いでくれそうな感じに、透香は軽く休憩することにした。

 そして、独りごちる。


「主犯の大天狗はこっちだと思うんだけど、本当にこの方向でいいのかしら・・・」


 文から聞いた話から察するに、敵対した天狗と黒天狗を合わせると結構な数がいるはずである。

 そうなれば、敵陣に近づけば近づくほど遭遇する敵の数も増えるはずであるが…密集しているところがあれば、逆に穴が空いたようにほとんどいないところもあった。

 それに何となくちぐはぐな感じを透香は抱いていた。


「単独の身としては今の状況は隠れやすくてありがたいんだけど、

 このまま進んでいいのか迷うわね・・・」


「いや、こっちで合っているぞ」


 何となく呟いた言葉に返答があり、透香は驚きも半々に瞬時に抗敵体勢を取る。

 振り向いた先には、文が透香の方を覗き込むようにして枝の上に立っていた。


「む、反応が早くなったな。山頂で何かあったか?」


 透香の反応の速さは意外だったようで、文は少し驚いていた。


「って、文さん!

 良かった。直感は正しかったのね」


 そして、文の後ろには、


「わう!透香さんも無事で良かったです」


「椛さん!茉依さんも!」


 椛や茉依もいた。

 透香の下に椛が駆け寄り、透香と椛は両手を取り合って喜び合う。

 それを茉依がすました顔で見ながらこう話す。


「あら、生きてたのね。山頂に飛ばされた時はもう死んだものと思ってたわ」


 その言葉に椛が怒るような顔をする一方で、透香は微笑みながらこう返す。


「その辛辣さも懐かしいくらいね。

 さて、ようやく合流できたし、これでまともに動けるわ」


 茉依は虚を突かれたような顔になる。


「む…なんか強かになったわね。本当に山頂で何かあったの?」


 茉依たちにとっては短い時間であるが、あの空間内においてはそうではない。その影響は透香の思考を変化させるには十分過ぎるほどであった。


「残念だけど、あんまり覚えていないの」


 しかし、あの空間の特殊性故、そのことを透香は覚えていない。


「そうなのか。よほどのことがあったように思えるが」


「本当に朧気なのよ。山頂の霧のようにね・・・

 それよりも現況を教えてもらえるかしら?」


 思い出そうとする透香であったが、考えようとした瞬間に思考が霧がかったようになったため、首を振って中断した。

 今は異変の解決が先と、現状把握に思考を切り替えた。


「ふむ、そうだな。あまり時間的余裕もない。手短に情報共有といこうか」


 文は透香に天魔に出会ったこと、反乱の首謀者が豊前姫彦丸であること、そして豊前姫を討伐する作戦中であることを話した。


「豊前姫彦丸、ね。そいつはどういう奴なのかしら?」


「良く言えば正義感に溢れた頼れる良い奴。悪く言えば、生真面目すぎて融通が利かない奴、ってとこだな。困ったやつを放っておけないんだよ。あいつは…」


 文は彦丸を思い返し、悲しそうな悔しそうな顔をした。

 深い付き合いである大天狗同士、思うところがあるのだろうと透香は察した。


「なるほどね。頼られたけど現状を打破できない、でも何とかしなきゃいけない。その生真面目さから今回の反乱を起こしてしまったというところかしら」


「完全に悪いところが出てしまった形だな。何とも情けない話だ…」


 拳を握る文には一言で言い表せない感情が溢れていた。

 透香はそんな文の言葉を首を振って諭した。


「別にそうは思わないわ。今は幻想郷全体が異常だもの。天狗に限らず、妖怪に悪影響が出るのは仕方ないわ。

 出てしまった以上は対処して解決する。今はそれが最善よ」


 透香のその言葉に文は一瞬虚を突かれた。


「む…そう、だな。今は悔いるより解決に動くのが先か。

 巫女に諭されるとは業腹だな」


「業腹は酷くない?」


 軽く笑う文に、透香もつられて苦笑いを浮かべた。


「だが、それもまた一興だ。援護を頼むぞ、透香」


「!

 ええ、元よりそのつもりよ」


 文に戦力として認められたその言葉に透香は嬉しくなり、気合を入れ直した。


 向かうは彦丸の現在地、天魔の屋敷である。

【道中】

「そういえば一つ気になったことがあったのだけど」


「何だ?」


「なんというか…厳重な監視網にしては変に偏りがある気がするのよね。ちぐはぐってやつ?」


「ちぐはぐ、か。確かによく観察すれば分かるようなものだか…よく気づいたな?」


「まあそのおかげで隠れることも出来たわけだし、こちらとしてはありがたいけど、あちら側にとってはそうではないでしょ?」


「その通りだな。まあ、そのちぐはぐさは彦丸側について離反した天狗たちが原因だろう。黒天狗や洗脳された天狗と違って、己の意思があるからな。それか時に邪魔になることもあるだろう」


「そこを付くのが効率的だろう。統率された意思とそうでない自由な意思。軍隊においてその乱れは弱点となる」

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