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北方環東記  作者: 守屋三
13/21

山中の遭遇

モブ予定だった天狗が思ったよりキャラ立ちしたので設定固めていたら時間がかかりました。

~天狗の山に入ってから幾許か~


 透香たちは天魔派と合流するため、天狗の集落を目指していた。


「やはり、大天狗派が増えているな。こうも襲撃が多いとは」


 黒天狗や大天狗派の襲撃は思った以上に多く、入ってからそれほど経っていないのに、襲撃回数は10回を超えていた。


「あまり巫女道具を消耗するのは避けたいのだけれど・・・」


 椛が率先して戦ってくれているとはいえ、すべてを任せるわけにはいかない。


「それは仕方ない。あちらも巫女を狙うのが効率がいいとわかっているからな」


「わかってはいるけど、舐められたものね」


「諦めろ」


「ひどい」


 こんな軽口を叩きながらも山の中を進んで行く。

 その途中、


「わう!あれは!?」


「ああ、まずいね」


 椛たちの視線の先には白狼天狗同士が戦っていた。


 一対一、奥側の白狼天狗は赤黒い妖気を纏っていて、明らかに大天狗側、つまり敵側であることがわかる。


 一方、手前側の白狼天狗の刀は折れ、体中は傷だらけ。さらに足を切られ移動もままならない状態であった。


 そんな状態で相手の白狼天狗の上段斬りを避けることは不可能で…


 まさに太刀が振り下ろされようとした瞬間、光のような速さで何かが白狼天狗たちの間に入り、敵側の白狼天狗を吹き飛ばした。


 椛である。どうやら、文が追い風を使って支援したようであった。


 椛は更に吹き飛ばされた白狼天狗を追いかけ、受け身を取られる前に、大太刀の腹で強く叩いた。

 反応する間もなく、敵の白狼天狗は意識を失うこととなった。


 それを確認して、椛は手前の白狼天狗に駆け寄った。


「間に合って良かったです」


「ええ、助かりました…

 ってあなたは、椛!!」


「わう?あ、茉依!」


 助けた白狼天狗の名は茉依、椛の友達であり、文の部下である。

 嬉しそうに両方の手を握り合わせる二匹。

 だが、それも長く続かず茉依はうめきをあげた。

 透香は慌てて駆け寄り、手当てを施した。

 お札は使えないため、簡易なものだ。


「あちら側に付いたと言っていたけど、やっぱり違ったのね」


「ごめんなさい…あの時は洗脳されおかしくなっていたの」


 悲しそうに椛の耳と尻尾が垂れ下がった。


 反乱が始まってから間もない頃、文が多くの反乱天狗たちから狙われたように、部下たちも狙われ、文ほどではないものの、幾多の反乱天狗から襲われていた。

 椛が攫ったのはその中でも気配遮断と速さに特化した1匹で、茉依はぎりぎりかわしたものの、その先にいた椛は抵抗も出来ず、どこかへと連れ去られてしまう。

 その後、うまく気配を隠し、敵から逃げ回っていた茉依だが、その途中で椛を発見する。

 敵と一緒に行動して様子のおかしい椛になんとか接触した茉依だが、椛に上のように言われ、這う這うの体で逃げた経緯があった。

(あと少しで捕まるところであったが、椛が文捕縛に向かうこととなったため、事なきを得た)


「いいわ。こうして元に…元に?なんか犬っぽくない?」


「今の私は文様の忠犬なのです!!」


 首を傾げる茉依に対して、椛は鼻息を強くし、握り拳をあげて話していた。


「・・・」


 茉依は困惑した表情で文たちを見た。


「洗脳の影響だ。気持ちはわかるがな」


「…はあ」


 その言葉を聞き、ドヤ顔する椛を改めて見て、茉依は疲れたようにため息をついた。


「落ち着いたようなら、状況を教えてもらえるだろうか」


「・・・」


 文が問いかけるも、茉依は椛の時とは一転、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「…いやだけど」


 そして、拒否の言葉をつぶやいた。


「…」


 文と茉依は互いに睨み合っていた。

 辺りに重い雰囲気が漂い、椛が慌て始めていた。

 しかし、


「ふふ」


 突然、文が微笑んだ。

 なんとなく嬉しそうだ。


「え!?」

「うわ」

「くーん…」


 透香、茉依、椛は三者三様に驚きを表した。


「いや、笑っただけで、何故そんなに驚かれるのかな…?それ以上に引いてないかい?」


「だって、気持ち悪い笑いだったから」

「あの雰囲気であの笑いはちょっと…」

「くぅん」


 見てはいけないものを見てしまった気になった3人であった。


「散々だな」


 しかし、文はまるで心外かというかのようにため息をつくのであった。


「…それで、誠心誠意お願いした方がいいかな、茉依」


「はあ…強情してたのかアホらしいわ。

 話すわよ。知ってる情報。

 でも、私もそこまで知ってるわけじゃないから期待しないでよね」


 文は真面目な様子に正し、再度問いかけをした。

 それに対し、茉依は諦めたように状況説明を始めるのであった。


〜茉依から一通り聞いた後〜


「ここで一旦情報をまとめるか」


 これまで聞いてきた情報をまとめると以下の通りだ。


 文がいなくなったあと、より一層、状況は大天狗派に傾いたようだ。

 勢力は天魔派を超え、まだ増えているらしい。

(ある意味当然とも言えるが

 とはいえ、天魔はまだ殺されておらず、大天狗も寝返りはないようだ。

 あとは何処から来ているかわからない黒天狗であるが、その中に首謀の大天狗が生み出しているという眉唾な話があったものの、信憑性は皆無であった。


「予想はしていたけど、思っていた以上に良くない状況のようね」


「ああ、特に連れ去り洗脳の天狗とどこからか増え続ける黒天狗が最大の障害だな」


 時間が経てば経つほど敵側に有利になっていくこの状況であった。

 減らしてもその倍以上に増えていく敵を鎮圧するためには、まずその根本を断たなければならない。


「となると、元凶の大天狗を倒さなければならないか」


 この反乱を起こした首謀者、敵側の大天狗のいずれかを倒すことが唯一の解決策であった。


「でも、その大天狗がどこにいるか見つけられるの?

 手分けして探すにも、この状況じゃ、単独どころか2人での行動も危険よ」


 椛が連れ去らわれたように、一瞬の油断さえ許さない状況である。

 敵の襲撃に対応しながら、首謀者の場所を探すのは至難に思えた。

 更には、


「私は椛以外と行動するのはお断りよ」


 茉依が反抗するのだ。


「あんたと行動するのは以ての外だし、巫女のお守りも嫌よ。

 ついでに言うと、首謀の大天狗を倒すのも解決になるか怪しいわね」


 大抗議であった。


「ふむ、何故そう思う」


「そもそも反乱の原因が解消してないじゃない。あんたのせいでもあるけど」


 そう言った後、茉依は文を睨みつけた。


「…耳が痛いな」


 文は腕を組んで、困ったように唸った。


「…?文のせいってどういうこと?」


 静観していた透香であったが、茉依のこの言葉に問いかけずにはいられなかった。


「人間の癖にそういうとこは耳聡いのね。こいつは、まあ・・・」

「酷いです!文さんのせいなんて!」


 透香の質問に言い淀んだ茉依に差し込むように椛が激怒して叫んだ。


「文さんが悪いことなんて一つもありません!」


「椛は心酔し過ぎよ・・・もう少し疑うというか、客観的視点を持てというか・・・」


 両手を上げ、効果音が見えるかのように起こる椛に対し、落ち着くように言い聞かせようとする茉依であったが、


「私は忠犬です!文さん以外は必要ありません!」


「駄目だこりゃ・・・」


 聞く耳を持たぬ椛に説得を諦めた茉依であった。


「っと、どうやら椛の叫びに反応したようね。敵よ」


 そんな時にやってくるのは大天狗派の烏天狗や白狼天狗数グループであった。

 椛の叫びが大きすぎたために、注目を集めたようだ。


「なんかはぐらかされたような気もするけど・・・とりあえず、この場を乗り切らないとね」


 敵に向かっていく椛と茉依、そしてこちらをチラ見する文を見ながら、そう呟く透香であった。そして、あの感じだとおそらくこの話の続きは聞けないだろうなとも感じていた。


文がキモ笑いしたのを先代巫女が見た場合


「(そんな気はしてたけど)今後の付き合いを考えていく必要があるわね」

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