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北方環東記  作者: 守屋三
12/21

天狗の山へ

【天狗の山】


 椛に背負われて透香は文と一緒に天狗の山麓にやってくる。


 透香は、飛んでいた時にもある程度見えていたものの、改めて天狗の山の騒然とした様子に息を呑む。


 山のあらゆるところから剣戟、突風、衝撃と土埃の舞い上がり、そして怒声や悲鳴等、戦闘の音が聞こえてくる。


 謎なのが山頂を包み込む霧である。この霧は包み込んだ場所を覆い隠してしまうほど濃く、中からは音なども聞こえてこない。状況が何もわからない場所となっていた。


 そして麓には、天狗の抗争から逃げてきた妖怪や動物たちが下りてきていた。戦う力がなかったり、戦うことを嫌う妖怪が焦るように逃げていく。


 それを横目で見つつ、文は溜め息を吐く。


「ちょっといない間にここまで激しくなるとはな。そこまであいつは手強いということか」


「うー、こんなに騒々しい山は初めて見ます」


「そうだな・・・天狗社会が安定してからはほぼ無いと言っていいだろう。

 となると、それ以前・・・鬼・・・か」


 文の言葉に椛が体を震わせる。


「わうう・・・鬼、ですか」


「流石の私でも鬼という言葉には恐怖を感じるな・・・だが、今回は鬼は関係ない」


「そうだあ!ここを支配するのは大天狗様よ!ヒャッハー!!」


「な!?」


 突然、山の方から黒天狗が3体、文の言葉に同意しつつ、勢いよくやってくる。


 それに驚いてしまう透香と臨戦態勢を整える椛である。


「誰ですかあなたたちは!」


「ヒャッハー!文と巫女だな!ここは通さねえぜ!」


 椛が問いかけてみたものの、黒天狗たちに話は通じなさそうだ。

 黒天狗たちはそれぞれハイテンションのままヘンテコなポーズをしてこちらの行く先を遮っている。

 それを見た文は、溜め息を付いて腕を組む。

 そして、黒天狗たちを冷ややかに見ながら呟いた。


「敵が来たと思ったが、なんとも悪趣味な恰好だな貴様ら」


「なにおぅ!このイかした恰好がわからんのか!」


 トゲの付いた肩パットを付け、頭をモヒカンにし、先っぽに鉄球の付いた団扇を持つ黒天狗・・・ヒャッハーなトリオであった。


「殺す!有無を言わさず貴様から殺す!!」


 恰好を侮辱された黒天狗たちは全身から赤黒い妖気をみなぎらせ、文に襲い掛かろうとする。


「あなたたちに文様の手は煩わせません!!」


 しかし、それを許さない椛が横から黒天狗に切りかかる。


「ああん?なんだ犬ころふぜいgふべしろぼべ!?」


 妖気をみなぎらせる黒天狗は余裕そうに椛の大太刀を受け止めようとしたが、力負けし、そのまま後方の1体の黒天狗を巻き添えにして、吹き飛んでいく。


 椛の行動はそのまま止まらない。


「な、貴様ぁ」


「問答無用です!」


 他の黒天狗が吹き飛ばされたことに一瞬驚くも、即座に椛に襲い掛かる残りの黒天狗であったが、椛はその攻撃が来る前に、大太刀を振るう。


「え、はyひでびしゃだば!?」


 後の先、黒天狗が先に鉄球を振っていたはずだが、椛の大太刀の方がそれより早く黒天狗を切り付ける。


 最後の黒天狗も先の二体の黒天狗と同じ木に叩きつけられる。


「これでとどめです!」


 そこへ椛が上段から豪快に大太刀を振るい、黒天狗たちにとどめをさす。


 振るわれた大太刀は盛大な音を立てつつ、後ろの木までなぎ倒し、土埃が舞い上がる。

 黒天狗はその攻撃に為すすべなく消滅したのであった。


 椛の様子に唖然とする透香と文。

 一筋の汗が流れる頬をかきつつ、文が透香に問いかける。


「透香・・・あの妖気は、浄化したんだよな・・・?」


「う、うん・・・あの。椛と明らかに違う妖気は、完全に浄化したはずよ・・・。一緒に確認もしたよね・・・」



「・・・そうだな」


 椛のあの力と速度、それは神社で黒天狗に暴走させられた時の椛を思い出させるものであった。

 困惑する2人の元に、椛が戻ってくる。


「文様!邪魔者が倒してきましたよ!」


 朗らかに笑う椛は、少し異常だが、神社で暴走した様子とは異なっていた。


「あ、ああ、ご苦労。なにか、体の異常とか無いか?」


「わう?いえ、逆に調子がいいくらいですけど」


「そうか・・・少しでもおかしなことがあったら報告しろよ」


「はい、かしこまりました!」


「・・・一旦様子見だな」


 元気よく答える椛に気圧されつつも、一先ず置いておくことにした文であった。


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