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妖精姫は深夜に眠る  作者: 波久音子
1.クラブハウスの侵入者
9/45

8

 三人目にやってきたのは、昨晩見回りをしたという男子生徒だった。


「び、美術部のロビン・ブレアム……二年生です」


 礼儀正しく椅子に座っている彼が、ものすごく普通に見える。

 間違いなく先の二人が濃すぎたせいだろう。


 と、思わず彼を見つめているとぱちりと視線が合って、すぐにあちらから逸らされる。


 おっと、見すぎた……?


 悪いことをしただろうか、と心配になっている私を他所に、ユーリはてきぱきと話を進めていた。


「昨晩の様子を聞かせてもらえる?」

「あ、はい。ええと……いつも通り、東側から見回りを始めて、何事もなく二階に」


 一人目――エリックから聞いた話の通りだ。


「ドアも窓も鍵がかかっていました」


 これも話の通り。

 変わったところは無いか……半ばあきらめかけたその時。


「衣裳部屋にある姿見に人影が映っていたんです」


 新しい手がかり……!


「人影? どんな感じ?」


 同じく食いついたユーリがやや前のめり気味に尋ねる。


「え、ええと……」


 ロビンは気圧されたように身を引くと、眉間にしわを寄せた。


「ううん……一瞬だったのでしっかりと覚えては……小さな子供、みたいでした」


 そこまで口にして、今度は不安げに息を吐く。


「他のみんなは口をそろえて『見てない』って言うし……僕、おかしくなっちゃったんですかね……」


 まあ、そうなるよね。……見えたらマズい奴かな、って私も思ったもん。

 同情していると、ユーリが動いた。


 その綺麗な顔に聖母のような笑みを浮かべ彼の名を呼ぶ。


「ロビン」

「…………は、はいっ?」


 不意打ちの攻撃にロビンは一瞬フリーズしていたが、すぐに調子を取り戻したようだ。

 これに耐えるとはなかなかやるな、彼。


 ユーリの形の良い唇が紡いだ言葉は――


「安心して。私も見えるわ、大丈夫」


 ……………………うん。


「……なんにも安心できないでしょうがっ!」


 見えちゃまずいモノが見える人間が増えただけだよ!


 ロビンも乾いた笑いを浮かべている。ほらぁ!


「どうすんのよ、この空気!」


「お化けとか心霊現象の類じゃないから! ……ほら、あるでしょ? 世の中の大半の人は見えないけど、私には見えるモノ」


「なにそれ、謎かけみたい」


「別に捻ってないわよ」


 あとは自分で考えろ、とユーリはそっぽを向いてしまった。


 うーん……。


 …………。


 ……………………まさか。


「あの、ロビン。一つ聞きたいんだけど」

「はい、なんですか?」


「あなたって……見える人なの? 妖精?」


「……妖精使いの人ほどではないですが、ぼんやりと、たまに」


 ユーリの方を見る。


「ね、言ったでしょ。心霊現象じゃない、って」


 彼女はパチン、とウィンクを決めてみせた。

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