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妖精姫は深夜に眠る  作者: 波久音子
1.クラブハウスの侵入者
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7

「演劇部二年のパトリシアさんです。エリック先輩の翌日の見回り当番でした」


 ソニアに連れられ入って来たのは、鮮やかな金髪をぐるんぐるんの縦ロールにした女子生徒だった。


 彼女はスカートの裾を持ち上げ礼をすると、私たちのすすめた椅子へと腰を下ろした。

 所作から見るに、上流階級の出身のようだ。


「ではさっそく……衣裳部屋について聞きたいのだけれど」


 机を挟んで向かいに座ったユーリが切り出す。

 パトリシアは真剣な顔で口を開いた。


「……やっぱり、会長には王道のプリンセスドレスかしら」


 ん?


「ううん、このスタイルの良さ……活かさないことは神、いえ妖精王への冒涜っ……! マーメイドもアリねっ……!」


 んんん?


「うーん、私はプリンセス派かしら。あ、でもたまにはタイトなのもいいかも。色は? ダーク系とかどう?」


「こらそこ、乗らない!」


 こちらが話を広げたら収集がつかなくなるでしょうが!

 どうやらパトリシアも一癖ある人物らしい。何でこんな人ばっかり……!


「はぁーい」


 ユーリは唇を尖らせて言うと、


「じゃ、本題に入りましょうか」


 パトリシアの方に向き直った。


「衣裳部屋のことだけど……窓には鍵がかかっていたそうね?」

「ええ、間違いないですわ。他の部員にも確認してもらいましたから」

「扉の方は?」

「普段から施錠していますわ。鍵は演劇部の部室にあるキーケースの中と、守衛室に一本ずつ」


 毎晩の見回りの際は守衛室の鍵を持ち出すという話だった。


「その日に演劇部で鍵を持ち出した形跡は?」

「……無かったはずですわ。部で付けている記録簿を確認されますか?」


 ぜひと頼むと、パトリシアはすぐに部室から記録簿を持ってきてくれた。


 当日の、いやここ一週間近くの記録は真っ白だ。


「……もう一つ」


 ユーリが切り出す。


「衣裳部屋の中から無くなった物はなかった?」

「ええ……何も。ただ荒らされていただけですわ」


 答えたものの、パトリシア自身も腑に落ちない、といった様子だ。


 たしかに。あれだけ荒らされていて、何も盗まれていないのはちょっと変かも。


 では、犯人の目的は?


 いたずら? それともやっぱり……超常現象?


 頭をひねる私の横で、ユーリもまた何やら腕を組んで考え込んでいた。


「ところで……」


 パトリシアの声にそろって視線を向ける。


「な、何か思い出したことでも……!?」


 期待を込めて問い返してみれば、彼女はうっとしとした表情で言った。


「先ほどのドレスの件ですが、か、会長がよろしければ採寸に伺いますわよ……!」


 ……あー、その話はまた別口でお願いします。

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