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妖精姫は深夜に眠る  作者: 波久音子
3.白い百合の髪飾り
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3

 ロビンの提案で、私たちは食堂に移動した。


 紅茶とマフィンのセットを二人分注文して、隅の方のテーブルを囲む。

 マフィンは日替わりで味が変わる食堂の人気メニュー。今日はチョコレート味だった。


 一口かじってみると、とろりとチョコレートソースが口の中に流れ出た。……美味しい。思わず息を吐く。自分で思っていたよりもずっと、私は疲れていたらしい。


「それで、ユーリが渡したヒントってどういうものだったの?」


 紅茶で口の中をリセットすると、さっそくロビンに尋ねた。

 彼は私に見えるように、二枚のカードを机の上に広げた。


「まず、一枚目が……」


『学徒の住まう家に赴き、【土】と【風火】の交わる箇所の手紙を見よ』


「そして、こっちが二枚目です」


『妖精王が最初に現れ、まばゆい光をもって混沌を支配した。


光に導かれ、


 一番目の土が混沌に国土を創造した。

 二番目の水が渇いた大地を満たした。

 三番目の風が混沌を吹き飛ばした。

 最後に火が凍てついた空気を温めた。』


「二枚目は見覚えがある文章だね」

「『創国の物語』ですね」


 ラナン王国の起源を綴った書物、『創国の物語』。

 二枚目のカードに書かれているのはその冒頭の一節だ。


 幼年学校の授業でも習うし、王国教会の説法でもよく聞く話だから、この国の人ならほとんどが知っているだろう。


「妖精王が自らの光の力を使って、この世を支配した。その光に導かれて、土の妖精が国土を作り、水の妖精が海や川、湖を作った……つまり、この国は妖精の力で成り立っているって話よね、ざっくりいえば」

「はい。僕は妖精は見えないですけど、そんな力を持っているなんてすごいですよね、妖精王は」


 ロビンの言葉に私もうなずく。

 私はともかく、ユーリは妖精王に会ったことがあるらしい。

 でも、いつも詳細を教えてくれない。いったいどんな妖精なんだろうか。


「で、なんで創国の物語? ここに書かれているってことは、暗号に関係あるのかなぁ」


 ロビンはうーん、と小さく唸り声をあげて腕を組む。

 やがて、あ、と手を打った。


「もしかして、一枚目が会長の示した隠し場所で、二枚目がヒントなのでは?」


 ロビンはブレザーの胸ポケットからペンを取りだすと、文字に印をつけた。


「この『学徒の住まう家』というのが、場所ですよね」

「学徒……学生のこと、だよね?」

「はい。それに会長は『学園内の誰でも立ち入れる場所』って言っていました。それがルールですから、会長が違えることはないはずですよね」

「そうだね、『ゲームのルール違反なんてナンセンスだわ』とか言いそう」


 学園内の誰でも入れる、『学徒の住まう家』……思い当たるのは一か所しかない。

 ロビンも同じ考えに至ったらしい。私が視線を向けると、力強くうなずいた。


「学生寮ですね、たぶん。……でも、次の部分は」


 言葉が途切れる。

 続くのは『【土】と【風火】の交わる箇所の手紙を見よ』という一文だ。


「手紙を見よ、はまだいいとして……交わる箇所っていうのが良く分からない……」


 なんなら性質的に水と火は交じり合えそうにないのだが。

 もう少し意味の分かる内容にしなさいよ、ユーリ。

 なんて文句を内心言いつつ、


「とりあえず、学生寮……行ってみる?」


 私の出した提案にロビンもうなずいた。

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