表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精姫は深夜に眠る  作者: 波久音子
2.眠り続ける少女
22/45

7

 夕食はトロトロに煮込まれたビーフシチューだった。


 しっかりと食べ、万全の態勢を整えてベッドに入る。


 椅子に座っていてもいいんだけど、眠りについて起きられなくなった時のことを考えると、ベッドの方が都合がいい。

 そう考えての判断だったのだが……。


「狭い!」


 壁に体がぎゅうぎゅうと押し付けられている。首都の満員電車に乗っているかのような心地だ。


 断じてベッドが小さいわけではない。至って普通のシングルサイズ。


 原因は――


「仕方ないでしょ。近くにいた方が安全だし」


 ユーリだ。

 私のベッドにどういうわけかユーリが入り込んでいる。


 私も細い方ではあるのだが、さすがに無理があるでしょ……! (ユーリは言わずもがな、だ)


「寝ちゃえば一緒よ」


 私の文句はあっさりと返されてしまった。なんて雑な。


「ほら、手貸して」


 未だに良い位置が見つからず、もぞもぞ動いている私にユーリがそう声をかける。


「……? はい」


 よく分からないまま、彼女の方に手を伸ばすと、力を込めてきゅっと握られた。

 こんな時なのに、「手すべすべだな……」とか思ってしまった。


「勘は鋭いとはいえ、ノエルは妖精使いじゃないでしょう。……絶対に手を離さないで。私は妖精王に愛された『妖精姫』。妖精があなたを害為すというのなら、この力をもってしてあなたを守るから」


 ……。

 …………えっと。


「…………それ、私のセリフでは……?」


 付き人ですし。護衛も兼ねてますし。


「いいの! たまには私にもカッコつけさせてよね!」

「あ、うん……?」


 いまいちわからないけど、ユーリが私を心配してくれていることは伝わってきた。


「ありがと」


 一度ベッドから抜け出た背中にそうつぶやく。返事はなかった。


「……火、入れるわよ」


 共用のテーブルに置かれたキャンドルに光が灯る。


 私の隣に戻ってきたユーリが身を落ち着けた頃。


 甘い、花の香りがこちらまで漂ってきた。


「いい香り……」


 うっとりとユーリがつぶやく。


 そうだね。

 と返そうとした唇が重たい。


 体から力が抜けていく。自分の意志とは関係なく。


「妖精、いつ出てくるのかしら……」


 ユーリがまたつぶやいた。

 その声も何枚も幕を重ねた向こうから聞こえてくるようで……。


 視界がぼやけて、霞んで。黒くなって。


 …………………………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ