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アスター学園の学生寮は原則二人一部屋の割り当てになっている。
同じ学年の子と同室になるように部屋割りは配慮されていて、エトルカのルームメイト――カレンも、彼女と同じ一年生だった。
内気で大人しいエトルカとは対照的に、カレンは明るく社交的な性格。
正反対の二人だったが、すぐに打ち解け、今ではすっかり友達となったらしい。
「カレンは二日前――この前の休息日、友達と出かけると言ってお昼ごろに部屋を出ていきました。帰ってきたのは夕方ごろでした」
「その時は変わった様子はなかったのよね?」
「はい。私にもお土産話を聞かせてくれて……夕食の時間には一緒に食堂に行きました」
そのあとは別行動。エトルカは談話室でカードゲームを。カレンは疲れたから、と部屋に戻っていたらしい。
「私が部屋に戻ると、カレンはもう眠っていました。それで翌朝になったんですが……何度声をかけても起きなくて……でも、彼女、朝が弱いみたいで時々そういうことがあったから、あまり心配はしていませんでした」
遅刻しないように、と声をかけてエトルカは一人で登校した。
しかし午後になっても、カレンは姿を現さなかった。
「サボっちゃったのかな、って思ったんです。遅刻して教室に行きづらくなっちゃったのかなって。……でも、放課後に部屋に戻ったらカレンはまだ眠っていた」
何度声をかけても、体をゆすってもカレンが目を覚ます気配はない。
さすがにただ事ではない、とエトルカも思った。
「寮長先生に伝えて、お医者様を呼んでもらいました」
「……結果は?」
「どこも悪いことはない、って。……熱もない、顔色もいい。疲れて眠っているだけだ、って」
「それが一晩経った後の話だよね? ……そのあとは? 診てもらわなかったの?」
今日はカレンが眠り始めて二日目に入る。
二日も目を覚まさない、と伝えればさすがの先生たちも異常だと思うはずだ。
疑問に思って尋ねてみると、エトルカの表情が曇った。
「それは……」
ふい、と視線がそれる。
その様子を見ていたユーリは、
「……外出許可」
短くつぶやく。エトルカの肩がびくりと跳ねた。
ふぅ、とユーリが息を吐く。
「先生とお医者さんに事情を話したら、当然二日前の行動を尋ねられる。……やましいところがなければ、正直に答えればいいわ」
でも、それができないということは……。
「休息日に学校の外に出るには外出許可証が必要。察するに、カレンはそれを取得し損ねた……にもかかわらず、外に出てしまった」
視線を逸らしたまま、エトルカが小さくうなずいた。
無断外出は懲罰の対象だ。……きっとエトルカは友人が懲罰を受けることを恐れて、隠してしまったのだろう。
でも……。
「エトルカ。気持ちはわかるけど、これは命に係わるかもしれないんだよ?」
私が言うと、エトルカは元々悪かった顔色をさらに蒼くしてうなずいた。
「……はい……。本当は、もっと早く……」
「……分かってるならいいわ。私は生徒会長だし、ルール違反を見過ごすわけにはいかないけど……あなたを助けることはできるわ」
優しくユーリが語りかける。
エトルカは目に涙をためて、頭を下げた。
こういう懐の深さは見習いたいところ。
だが。
「現実問題、早く先生に言った方がいいと思うけど……」
明らかに学生の手に負える範疇を越えている。
そう思って私は言った。
「人間、三日くらい眠り続けたところで死なないわ」
……なんという暴論を。
「つまり、手を引く意志はないと?」
「ええ」
当然でしょ、と言わんばかりの態度のユーリになんだか頭痛がしてきた……。
「生徒会長として、困っている生徒を見過ごせないわ」
こう言い始めたら聞かないことは悲しいことに今までの経験上よく知っている。
「……一日だけね。それ以上は絶対ダメだから」
釘を刺してやると、ユーリは笑顔でうなずいた。
そのままくるり、とエトルカに向き直る。
「じゃあさっそく……部屋を見せてもらってもいいかしら?




