DAY__2
「う"お"ぇえ"っ、お"え"っ……」
「ちょ、な、なに!? どうしたの……!?」
以前はハツラツとしていた彼女、オフィーリアが道で嘔吐した。
日が落ちかけて辺りは暗い。
それを目撃したのは唯の一人だけ、周りには誰も居ない。
他人と言葉も交わさなくなったオフィーリア、髪も身体も手入れしていないオフィーリア、嘔吐の匂いが己の吐き気も促す。
無視しても良かったのではないか。
けれど、それを目撃した今年46歳になる女性は無視できなかった。
己の死んだ娘が生きていればオフィーリアと同い年だったからだ。
病に抵抗できずに人間を失っていくオフィーリアを、いつからか己の娘と重ねてしまっていた。
必死に自身の息を止め、道の端でよつん這いになり嘔吐するオフィーリアに近寄った。
嘔吐物には大量のケルアの実。
ケルアの実は水分を多く含む実で、乾燥させると元の水分を取り戻そうと空気中の水分を取り込んでくれる、食料保存には便利な実だ。
「あ、アナタなんでこんなもの……、あぁいけない、とにかく神殿へ連れて行かなきゃ」
「う"お"ぇ、お"え"っ」
一体何故大量のケルアの実を食べたのかは分からない。
未だ嘔吐するオフィーリアを必死に支え、小さな田舎町で唯一治癒魔法が使える神殿へ向かった。
小さな田舎町に似合う小さな神殿だ。
オフィーリアのでっぷり出ていた腹はケルアの実によるものだったのか、嘔吐によって見るからにへこんでいた。