DAY__1
「かわいそうに……」
「ねぇ……なんで彼女なのかしら。残酷よねぇ……」
ある日、いつもの女性が道を歩いていた。
歳はまだ19だというのに、まるで40を過ぎたような風貌。
以前は美人でハツラツとして近所でも評判の娘だったが、ある時から段々と崩れていった。
幼い頃から共に過ごし共に笑った男。
その男と恋人同士になってからの事だった。
彼女の将来の夢は王立騎士団に入ることで、そのために毎朝ジョギングをしていたが、今では腹もでっぷり出て筋肉の無いだらしない身体。
脚が悪いのか、いつからか杖をつきだした。
髪の手入れも肌の手入れもされていない。
元気な挨拶も今は聞こえない、眩しい笑顔も。
それどころか彼女の声すら周りの人間は忘れてしまった。
けれど最後に言った言葉なら覚えていた。
『助けて』
たったひとこと。
近所の人たちは真っ先に恋人を疑ったが、すぐに疑いは晴れた。
何故なら彼は彼女を愛していたからだ。
脚の悪いであろう彼女を甲斐甲斐しく支え、だらしの無い身体になってもよく花束を抱えている姿を見ていた。
愛する彼女に贈るんだろうと、誰もが感心した。
きっと彼女は大病を患ってしまったのだ。
治癒魔法でも治らない、救いようのない病気。