生より死を!?
呪い?は解けるんでしょぉか?
レックさんの真摯な態度がキシちゃんの心を打ったのか、キシちゃんは笑みを浮かべ、レックさんを真っ直ぐに見据え、
「うむ、可能…だと思うぞ。この千年、正に生き地獄ぢゃったよな?妾も同じ時を生きたから解らぬワケでは無いが、生活基盤が違うから何とも言えぬがな…」
「そぉか…鬼の娘も同じか…自分の呪いだけ解こぉとは思わなんだか?」
「思ったぞ。ぢゃが、妾はコッチで柵…子供が沢山居るからな…なかなかどぉして、死ぬワケにはいかなくての…しかし、人の王が、妾の意志を引き継ぐと約束してくれての。ソレでこの母の想いを断ち切る決心が付いたのぢゃ。」
キシちゃんの返答にレックさんは考え、
「鬼の娘は強いな…我など足元にも及ばん程に…」
話の流れから、レックさんは慈愛に満ちた良い笑顔になってると思うんだけど、いかんせん。ティラノな見た目のせいで、獲物を前にした肉食獣みたいな印象を受けてしまう…レックさん、御免なさい!!
「何が強いモノか。子供達が居らなんだらとぉに自我の崩壊が起きておるぢゃろぉな。妾から見たら、お主の方が遥かに強いぞ。」
「いや、我にしても、この者が居なかったら同じだ。」
レックさんはそぉ言ってわんこを撫で撫でしていた。うん。ワタシも撫で撫でしたいぞ!!
「ふむ…二人の話を聞くに、長生き過ぎるのも考え物と云う事か?」
おぢさまが二人の会話に割って入った。
「そぉぢゃの。何かする事、気になるモノ、話し相手、そんなのが居ないで生きるだけとなるとツラいモノが有るのは事実ぢゃな。妾も生きていて、何の為に生きておるのか解ら無くなって来ておる。ソロソロ死にたいとも思うのぢゃが、アイサ達の事も気がかりで、中々のぉ…」
アイサちゃん…ロリ教団のヤツ等にオモチャにされてた娘だ。もぉ十二だったっけ?
「ふむ、魔神とはそれほどまでに慈愛に満ちた者達だったか…」
おぢさまは烏を見てないからそんな風に感じるのかな?
「…それは違うんぢゃ無いかな?個人個人の素質の問題だと思うよ。ワタシの先祖の仁科大助なんかは、多分だけど、悪魔達の事嫌いでムカついたから追い込んだ感じだし、あのカラスは完全にワタシ達と敵対してたし…」
「うむ、アレは強かったのぉ…ワシでも一人では相手にすると手に余る相手ぢゃったのぉ…」
確かに、カラスを相手にした時、殺されたフリをして、ワタシ達を使って注意を逸らしてやっとだったもんね。
「まぁ、アレの事は置いておいてぢゃな。先ずはコッチの話しぢゃ。お主は、母の術を解除して後悔はせぬか?良く考えてくれよ?この先歳をとり、じぃさんになって、身体の自由が利かぬ様になって死んで行くのぢゃぞ?」
ん?あぁ…そっか…身体が老いていく感覚はワタシも解らない…解らないからこその恐怖ってヤツかぁ…ワタシは考えた事も無かったなぁ…ワタシも後四十年くらい経ったらおばぁちゃんかぁ…今まで生きた時間の更に倍ぢゃん!!そりゃ今のワタシぢゃ考えらんないよ!!
「まぁ、歳を取るのは悪くは無いが、お前さんのその気配は流石に応えるな…おいそれと人里には出られんぢゃろな…」
おじぃちゃんが現実的な事をし出した。確かに仮面を付けたままってのも悪いし、取ったら取ったでみんなを怖がらせるんだもん…難しいよね…
「それでも…人としての死を望むよ…」
生では無く死を望むかぁ…長生きの弊害なのかもね…
「そぉか?死を望むか…うむ。母の残したモノを消すのは少々心残りぢゃが、無理矢理やらされた事ぢゃからの。妾が何とかしてやるとしよぉか。ほれ、手を出してくれ。妾も初めてする事ぢゃから、失敗しても恨むで無いぞ?」
「脅さ無いで欲しいな…ソコは自信満々に言って欲しいのだがな…」
「贅沢を言うでない。」
ソコからブツブツキシちゃんが言葉を紡いだら、キシちゃんとレックさんの身体が薄ぼんやりと光り出した…
「なるほどなるほど…母が残した本に書いてあった通りの術なんぢゃな…コレなら、妾にかかっている術もいつでも解けると云うモノよ。」
キシちゃんは喜色満面になり、何やら祝詞の様な言葉を紡ぎ、二人を包んでいた光が、ばきん!!と音を立てて割れてしまった…
目の前で見ていてすら不思議な光景だったよ…
「ふぅ…終わったぞ。これでお主も妾も歳を取るし、寿命が尽きるまでしか生きられぬが平気かの?」
「あぁ…しかし、何も実感が無いんだな…」
「そりゃそぉぢゃ。ただ単に術を解除しただけぢゃし、その術も身体の老いを止め、怪我も治り難くなっただけぢゃからの。」
「…そぉか…ならば、あと百年もしない内に死ねるんだな…」
「もっと早く死ぬ事も出来るぞ?」
「どぉするんだ?」
「簡単ぢゃ。何者かに殺されれば良い。幸いこの大陸には大型の肉食獣がわんさか居るみたいぢゃしの。」
キシちゃんはウインクしながらイタズラっぽく笑ってみせた。
いや、そんな死に方は流石に望まないでしょ?
「なるほどな…その手が有ったか!!」
「有ったか…ぢゃなぁ〜い!!ダメだよ!!生きてる限り力一杯生きなきゃ!!死んだ後に何かに食べられるのは仕方無いにしても、それまではちゃんと全力で生きて!!ワタシはおじぃちゃんが死んだ怒気、ホントに悲しかったし、生き返って欲しいって願ってた!!そのおじぃちゃんとこぉして一緒に居られるのがホントに嬉しいんだよ!?そぉだ!!レックさんみたいな種族の人達とこの大陸で出会ってるから、そっちと合流してみたら!?言葉がちょっと違うけど、何とかなると思うから!!うん!!一緒に行ってみない?この大陸の南の方だよ!!」
ワタシは知り合った良い人には簡単に死んで欲しくない…その思いをふつけてしまった…
「ふむ…それも良いかも知れぬな…どぉせする事も無い身だ。自力で行ってみるさ。心配してくれてありがとぉな。」
レックさんは、咬みつかんばかりの表情に似つかわしくない程の穏やかな口調でお礼を言って来た…
う〜みゅ…なんだかなぁ…
「…で、ワシはなんで呼ばれたんぢゃ?」
「ん?あぁ、術が解けなかった場合、おじぃちゃんにレックさんを死なせてもらう為?」
「…だな。」
レックさんもうんうん頷いていた。
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