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迷わないで ~1

 それは一言。

 でもきっと、彼に言われるとは思ってなかった一言。


 いつもの待ち合わせ場所。

 そこは繁華街でもあり、大型モニターが設置されている待ち合わせ場所としてはとても有名な場所でもある。

 昨日メッセージアプリで連絡した時「いつもの場所で午前10時に」なんて定番の文章が送られてきた。

 今日は休日。

 どう考えても待ち合わせ場所としてはあまり喜ばしくない場所に、私はいつものように約束の時間の15分前に到着していた。


「やっぱりいつ来ても人が多いよね、ここ」


 待ち合わせ場所として定番であればある程、当たり前のようにそこには人が溢れかえっている。

 それをわかっていながらいつも彼、誠吾はここで待ち合わせをしたがる。

 一度、何か特別な理由でもあるのかと聞いてみた。

 けれど明確な答えは返ってこず、結局はうやむやなまま今に至っている。


「ここ、あんまり好きじゃないんだけどな…」


 小さく呟く。

 そう、私はここで待ち合わせをするのが好きじゃない。

 人が多いのも理由のひとつではあるけれど、でもそれが一番じゃない。

 ここは繁華街。この時間はそれほどでもないが、夜になるにつれ誠吾をよく知る人達がわんさかと集まってくる場所。

 それは友達だったり、飲み仲間だったり。そして、夜の蝶であるお姉さん達だったり。

 みんな誠吾のことをよく知っているのか、私がいてもそんなことには構わずに彼へと近寄る。

 親しい間柄だったり、そうでもなかったり、色んな関係があるようだけれど、そんな人達が私へと向ける好奇心の目は私的にあまり気持ちのいいものではなかった。

 特に誠吾へと気持ちが向いている女の人達の視線は、それはそれは気持ち悪いほど私を吟味していた。

 だけど、そんな時はいつも誠吾が私をかばってくれる。

 視線で射殺すという言葉通りに、ニヤリと笑いながら相手を牽制した。


「ダメっしょ、お姉さん達? このコは俺の大事なコなんだよ、手ぇ出したらただじゃ済まさねぇぜ?」


 よくよく考えてみれば、大事なんだったらなんでわざわざ遭遇させるんだとか思わないでもないんだけど、まぁそこはきっと誠吾なりに何か考えがあってのことなのかもしれない。

 そして誠吾にそう言われた人達は、降参とばかりに笑顔を振り撒きながら夜の街へと紛れて行った。

 それはよくあること。でも慣れることのない時間。


 ぼんやりとそんなことを思い出しながら誠吾を待っていると、頭上のモニターから声が聞こえた。


『それでは参りましょう! クイズ! こんな時、あなたならどうする!?』


 大型モニターに映っているのはどうやらバラエティー番組らしい。

 いったいどんなクイズなんだろうと視線を向けてみると、ゲストらしき女性タレントに司会者が問題を出していた。


『あなたが待ち合わせ場所にいると、イケメン10人が「待った?」と言いながら同時に駆け寄ってきました。さて、あなたならどうする!?』


 ありえない。

 そんな質問、聞いてどうするんだろう?

 だけど頭の中でそんな気持ちが一番に浮かんだ私と違って、モニターの中の女性タレントはあまり困った風でもなく笑っていた。


『えー!? どうしよう!?』

『イケメン10人ですよ!? どうします!?』

『うーん、うーん、…じゃあ、10人全員とそのままデート!!』


 なるほど、そんな答えもあるか。

 思わずその回答に感心していたら、ポンと肩を叩かれた。


「お待たせ♪ なに見てんの?」

「ん? あれ」

「ああ、TVね」


 私が小さく指差した先の大型モニターを見て、どこか安心したように誠吾が笑う。

 チラリと時計を見たら、約束の時間の2分前だった。


「さ、じゃあ、ま、とりあえずどっか入りますかね」

「うん、そだね。喉渇いちゃったかも」

「なに、ずいぶん待たせちまった?」

「ううん、珍しく誠吾が時間前に来たから、そんなには待ってないよ?」

「そりゃどうも。でも、珍しくってのは余計なんでない?」

「あれ? 私、何か間違ったこと言ってる?」

「スイマセンデシタ。俺が間違ってました」

「わかればよろしい」


 たわいない会話が嬉しい。

 こんな風に笑い合いながら何でもない会話をして、ただ街をぶらつくのは好き。

 他の恋人同士のように手を繋いでいなくても、近くに誠吾を感じられているだけで幸せだと思う。


「んで、さっきのヤツ、なんか面白いコトでもやってたのか?」

「ああ、あれね。面白いかって言われるとそうでもないんだけど」

「ナニ?」

「待ち合わせ場所にいたら、イケメン10人が同時に「待った?」って言いながら駆け寄ってきた場合、あなたならどうしますか? って質問だったの」

「へぇ、イケメン10人が同時に、ね」

「そんなことある訳ないよなーって思ってたら、ゲストのタレントがね「じゃあ10人全員とデートする」って答えてて、あぁそんな答えもあるんだなーって思って」


 くすりと笑いながらその時思ったことを正直に教えたら、誠吾の足がピタリと止まった。

続きます。

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