船探し
「昨日の夜に西の大陸に向かう船は出たよ」
そんな、昨日は楽しくて観光と海の幸を食べ歩いていたんだ。直ぐに港に来ていれば船に乗れたかもしれないのに。
「それで、次はいつ西の大陸に向かう船だ出るんですか?」
「分からないんだ、昨日の船が行ったり来たりしてるだけでそれ以外だと小型船が西の大陸に行ってる様だが、俺はそれを知らないんだ。噂みたいな感じで小型船が行っていると聞いただけだから」
作戦それは。
「西の大陸に行きたいな。どんな船でもいいんだよね」
声に出してアピール、西の大陸に行く船の関係者が気が付いてくれる様に。
「どんな所かな西の大陸は、見て見たいな」
港を独り言で歩くのは今日で2日目だ。今のところ誰からも声をかけられていない。
「早く行きたいな、西の大陸」
街に着いてから5日目、港での作戦は朝だけにした。
朝以外は人が少ないので効果が期待できないと判断した。
港から出る船はあるけど直ぐに帰って来る、漁師さん達は近場で魔物を警戒して投網漁をしている。
昼には船の掃除が終わっていて漁師さんと港の作業員は居なくなっている。
「サザエは美味しいのか、この街の者は買わないし食べないんだ。どんどん食べてくれるとありがたい」
売れないのによく仕入れてお店に並べてるよな。
僕にはとても美味しく頂いている。
このお店は生の魚介類を販売している。露店の焼き台があるけど使われてないので貸してもらい、焼いてサザエを食べていくる。
鍋にサザエの尖がっている方を上にして、少し火をとおすと中のサザエの身が出し易くなる。フタも取り易くなる。
「美味しいよ、でもあげないよ。全部僕のだからね」
「買ってくれるのはありがたいが、そんなに食えないだろ」
「食えるよ、頑張るから」
どんどん下ごしらえして、つぼ焼きにする。20個一遍に焼ける。一遍いい言葉だ。
「美味しいつぼ焼き~どうですか~、美味しく焼けています、なんと小銅貨1枚ですよ、サービスタイムです」
「おい、何商売を始めているんだ。おかしいだろ」
「そのつぼ焼きを1個下さい」
僕の呼び込みで買ってくれる人が来ましたよ。
「はい、熱いので甲羅は持たないで食べて下さい。少し冷めたらお汁を飲むと美味しいですよ」
「食べるの頑張って貰わないとお客さんに。こんな経験出来るなんて、イヤ~おじさんありがとう」
最初のお客さんが美味しそうに食べている。
お皿も洗わないで済むので、調理するだけなので1人で出来る。
「つぼ焼き、聞いた事無いけどどんな感じなの?」
「食感は柔らかいけどコリコリ、味は海の香りが口の中に広がる感じですね」
「食べたくなるな、2個貰おうか」
「熱いので気をつけて下さい、小銅貨2枚です」
この後も売れました、3時頃には完売したので他の店のサザエも買って来て、夕方の販売の為に仕込みをして夜まで売り続けた。
「おいサザエはやめたのか、俺は仕入れてないからいいけど、そこで何してるんだ」
僕は昨日のおじさんの所に来ている。今日も船探しをしたけど効果はなかった。
今日は違う食べ物を作る為の準備をしている。
「美味しい食べ物を食べる準備、おじさんも僕に構わずどんどん売りなよ」
「どんどんは売れないんだよ、俺の店は昼も開けているが、夕方の方が売れるんだ。この時間は少ないけどお得意様が来てくれる。今は夕方の忙しくなる前にのんびり出来る時間だ」
東京の商店街もお客がまばらだったな、夕方は歩くのも買うのも大変だった。
「エビフライは美味しいな、ソラちゃん達にも食べさせてあげたかったな、ここからの輸送だと届く頃には悪くなっているよな」
自作のタルタルソースはこんなもん位の出来だったが、エビフライに付けて食べると美味しい。
「おじさん、エビを下さい」
「買ってくれるのか、何匹だ」
お店に並んでいるエビを見ると、100匹位は売っている。
「エビを20匹残した全部下さい」
「おい、それは冗談か、エビは高いんだぞ。そんなにお金持ってるのか?」
僕はギルドカードを出して「ここにお金が入ってます」
「エビは小銅貨3枚だぞ、単純計算で大銅貨3枚だぞ」
「お支払い手続きをお願いします」
支払いが終わって「おじさん、エビどこかで買ってきてよ。頑張って売るから」
「なんで俺が、暇だけど・・・・何匹買って来るんだ?」
「買い占めて来てよ、全然足りないんだ」
「おお分かった、そんなに美味しいのか・・・・俺はサザエを食べさせて貰ってないぞ」
「エビは後でお礼にあげるから急いでね」
仕込みを終えて、揚げていく。
「揚げたてのエビフライ美味しいですよ、サービスタイムで小銅貨5枚です。この街で初めての料理です」
揚げたてが美味しいので、呼び込みをしながら揚げる。
「おじさん、エビフライ食べてみて、はいどうぞ」
「いいのか、どれ・・・・・うめえなんだこれ『エビフライ』いや、名前じゃなくてこんなに美味しいのか、売れるエビは売れる」
「残念だけど、買い占めたからこの街で売ってるのは、おじさんのお店にあるエビ20匹だけだよ」
「そうか、俺のところだけか・・・・なんで20匹残したんだ」
「変わってますね、中はエビですね。2匹ください」
「ありがとうございまいます。女性に人気なんですよ、最初のお客さんなんで1匹おまけです。銅貨1枚です」
「ありがとう、食べてもいいかな?」
「どうぞ、温かいうちに食べてみて下さい」
「サクサクでエビの甘みが分かります、このソース美味しいですね」
「このソースはこの料理に合わせたソースなのでエビがより美味しくなるんです」
「おじさんのところにエビを残したのは、常連さんがいるって言ってたから、完売しているとおじさんの顔がつぶれるでしょ」
「なるほど、こんな子供に心配されたのか」
そこなのか、そこは感謝してほしいな。
エビフライは完売した。列が出来ていたが足りなかった。
「西の大陸はどんな所かな、パキューン。船で行きたいな、バキューン。見つからないな、バキューン」
ついに、魔法の練習も組み込まれた、船探し。
「誰かいないのかな、バキューン。ベテランさん海は穏やかだよ、バキューン。明日も来ます、バキューン」
10時頃まで船探しをしたが今日も見つからない。
港で船を探して5日目、本日も露店に向かう。今日は何を食べようかな、海の幸シーリーズはサザエ、エビフライ、お魚のつくね串焼き・・・・・その場で食べれる料理がなくなってきた。
「ここのパン全部下さい」
驚く店員が「困ります、少しだけ残して下さい、焼けるまでの店を閉めるわけにはいきません」
それはそうだろうと、「焼けたら売って下さい」とお願いして荷車でおじさんの所に戻る。
「今日は何を買ってくれるんだ」
おじさんのお店のお魚を見る。種類が沢山有るけれど数が少ない。
「お魚が少ないので、あちらの露店に引っ越していいですか?」
「おいおい、それは無いだろう、直ぐに仕入れてくるからどれだ、どれが欲しいんだ」
「それでは、この2種類のお魚さんを・・・・・出来るだけ多く仕入れてきて下さい。ここのは使いますので、それも考えて仕入れて来て下さい。少ないと引っ越しを考えます」
「分かったよ、取り敢えず、そこで作って下さい。行ってきます」
おじさんは、暇な時間に僕の買い物をしてくる日課を気に入ったのだろう。
準備しないと、解体が上手くなって良かったと思うぐらいに沢山捌いている。
おじさんの協力で大量の魚が購入できた。捌いては漬け込んで、漬け込み時間が30分したら、料理していく。
「おじさん、味見してみて」
この世界の味覚で判断する為におじさんに食べてもらおう。
「美味しいな、パンに挟んだ魚が美味しい、ソースも美味しい」
ツナサンドを魚が挟まれたサンドイッチと認識したおじさん。
ツナサンドが食べれるなんて最高だ。
高校の友達とスキーバスで3泊5日のツアーに行った。帰りのバスが停まったお土産屋さんはツアー用のお店で駐車場も広い。そこにコンビニがあってツナサンドが売っていた、ツナサンドは人気があまりないので2個セットのサンドイッチは片方が別の具の物とセットで売っている。
2個ともツナサンドを発見して取ろうとするも他の人が手に取った。
僕の手を見たその人は僕の顔を見て「泣くなよ、ほら」と譲ってくれた。泣いてないけど泣きそうだった。
そのツナサンドが異世界で食べれる、最高だ。
この美味しさを広めないといけない、そうすれば自分で作らなくても誰かが作るようになる筈だ。
「手に取って気軽に食べれるサンドイッチどうですか?」
呼び込みをしたが、する必要がなかった。毎日違う料理を提供していたので、味見だけはするぞ・・・みたいな常連さんが並んでいた。
「今日のも面白いな」「パンに挟んであるのか」「また食べたくなるに味だ」「美味しいな、これ」
夕方には完売した、自分用にツナサンドを6個取っておいて、片付けをしていると「船の準備が出来た乗りたければ、港にある小さい倉庫に来い。銀貨5枚だ」と小声で伝えて人混みに紛れていなくなった。
「ついに来た~、急がないと。おじさん、屋台の下にお金があるから今までありがとう」
「どこに行くんだ、明日は来るのか?」
「もう来ないよ、バイバイ」
急いで戻らないと荷物を取りに。
「おい、凄い金額が有るぞ」




