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初めての街

「姉さん、大丈夫かしら」


「大丈夫よ、あの子は運がいいから」


「そうだよ、ユーリは強いから騙されなければ元気に帰って来るよ」


「エルザさん、私は心配です。『干し肉をあげるよ』て言われたら付いて来そうです。ユーリは」


「いくら何でも、大好きな干し肉でも・・・・・騙されない・・・・よね」


「私、ユーリの事はあまり知らないので、何しに行くんですか?」


「ドラゴンに会いに?」


「美味しい食材を探しに?」


「大工さんになる為に色々な建物を見に?」


「名刀を探すために?」


「道具の開発?」


「ギルマスをからかいに?」


「俺の為に新しいレシピを探しに?」




「ここを南に行くとローランドだ、そして西に行くと・・・・・・聞いてくるの忘れた。この先は何があるんだ。街道があるんだからどこかに行ける、大丈夫な筈だ」


標識を付けてくれればいいのに、エミリー嬢は付けてくれてたのに。


馬が3頭、前から来るな。ジェシーは元気かな、ポール子息が、可愛がってくれるだろう。


目の前で止まる馬に騎士団の人が乗っている。


「ユーリじゃないか、久しぶりだな」


隊長だ、他の2人は見た事ないな。


「お久しぶりです、隊長」


「ユーリは何をしているんだ?」


「旅です、西の港町に行きます」


「そうか、だいぶあるから、大変だな」


「そうですか、隊長は何をしてるんですか?」


「見回りしてローランドに帰るところだよ。それじゃ、頑張れよ」


「ありがとうございます」


振り返ると南の街道に入ってローランドに向かったみたいだ。


「ああ・・・港町までどの位か、名前も聞けばよかった」





「街道の交差点、北に行くか、西に行くか、南か。東に行かなければ大丈夫だ、このまま西か、南に行ってから西か。北はやめよう、危険な感じがする。南に行こう」


街道の左側はず~と岩山だ、東の方まであるからローランドの方まで続いているのかもしれないな。


西側は大草原だ。


「無詠唱で魔法の練習だ」


「バキューン、バキューン、バキューン、バキューン、バキューン、声に出ていた」


バキューン、バキューン、バキューン、バキューン、バキューン。


トルネード、雷撃、空からひょう、かまいたち。


「魔力があがったな、いい感じだった」


魔法の練習が終わったので、剣の練習をする。


「走りながらのシャドーボクシングならぬ、歩きながらシャドー剣術」


踏み込んで攻撃、踏み込んで防御、踏み込んで連続斬り、踏み込むと見せて横飛びからの攻撃」


いい運動になるな、今日はこの辺で寝よう。大草原の中に隠れてれば大丈夫だ。


干し肉も沢山あるから食べ放題だ。





「南の街道から西の街道に曲がってだいぶ歩いているけど、まだ大草原だ」


本日の魔法と剣術の練習は朝直ぐにしてしまった。


何か聞こえてくる。


「ガラガラガラガラ~」


「馬車だ、旅商人の馬車に見える」


馬車が通れるように避ける。


御者は女の人だ。30代位の女性、何を積んでるのかな。


護衛の人が後ろに乗ってる、男性の冒険者?


「おじさん、こんにちは。街は近いですか?」


「こんにちは、歩いて2日位のところにあるよ」


手を振って「ありがとう」


おじさんも手を振ってるぞ。




「ガーレラか大きい街だな、ギルドに行ってみるか」


街の雰囲気は何処も変わらないな。ギルドの看板が見えた。


ギルドの中は同じだ、掲示板には依頼書が沢山張られている。


討伐クエ、捕獲クエ、ネズミクエ、素材、ポーターもある。


魔物の種類は変わらないな。


「すいません、お聞きしたい事があります」


「あら、何かしら?」


受付のお姉さんは、紫の人だ。地毛なのか・・・・


「その髪は、染めてますか?」


「染める?」


この世界の人は髪を染めません。


「いえ、綺麗な紫なのでどんなお手入れをしているのかと」


「普通に石鹸で洗っているわよ」


「西の港町は近いですか?」


紫の人は僕を見て。


「歩いて行くの?」


「はい、そうです」


「大人が歩いて8日位よ、子供だと10日位かな」


港町は近いぞ。走れば1日半で着く。


「ありがとう」


お礼を言ってギルドを出る。今日はどうするかな、ここに泊る・・・・夜まで街を散歩するぞ~。





槍の武器だ。ベアとかに有効そうな武器だな。


剣と比べると用途が決まってる様な感じかな。接近戦は無理で、魔物に折られる事もありそうだ。使いこなすのが難しそうだ。弓も売っている。ここは何でも置いてある武器屋さんだな。


「これも武器?パチンコでいいのかな。片手剣でも長いのがある、盾の真ん中にとげが付いてる」


名刀は置いてない。




「温まるんですが売っているが、冷えるんですは売ってない。ライトが売ってる・・・・・銀貨5枚安すぎるような」


定員さんに聞いてみよう、あのおじさんは店員さんだよな。エリート店員さんか服装がビシと決まっている。


「すいません、お店の人ですか?」


「はい、ここの経営をしているマラードです。何か御用ですか?」


なるほどです。社長さんだ。


「ライトが銀貨5枚で売ってますが、安いような気がするんですが」


大きく頷いて「そうなんです、元は銀貨10枚の大銅貨1枚だったんです。大量に仕入れて、この街の貴族様はほとんどお買いになってくれました。買ってくれる人がいなくなったので半額で処分しています」


ここにいい話がありました。


「その買いたいんですけど、何個ありますか?」


「最後に売った時が1年前ぐらいで、あの時100個以上あったから・・・・・100個はあります」


全部買えるけど、必要なだけにしとこう。金貨10枚位は残高があるはずだ。


「全部下さい。届けて頂けますか?」


「え、え・・・・全部ですか、本当に?」


これも一遍だ。使い方は合っているのか。でも大人買いだ。してみたかったんだ。


「はい、届けるのはいくらかかりますか?」


「サービスしますよ、支店が大きい街にはあるので、ついでにお送りすれば無料です」


「それは助かります。ついででいいので、ボラジュとカルテドに送って下さい」


社長が嬉しそうだ。


「あなたは神だ」


「神はいませんので、お客にしていて下さい」


「お客様ありがとうございます。ネイトさん、ライトの在庫の数を確認してくれ。こちらのお客様が全部買ってくれる」


「凄いです、無くなるんですね。直ぐに確認してきます」


いい買い物が出来そうだな。


「社長、このお店では冷えるんですはお売りになっていないのは何故ですか?」


「社長?」


「僕から見て経営のプロを社長と呼んでいます」


「そうですか、嬉しいですね。それで冷えるんですとはどんなものですか?」


僕はリュックから冷えるんですを出して社長に説明した。


「素晴らしい、貴族様に売れますね、何処で売ってるんですか?」


「カルテドのオンデマ商会です。紹介状を書きましょうか。僕、オンデマ商会にお世話になっているのでもしかしたら便宜を図ってくれるかもしれません」


「それは助かります、初めてですと上手くいかない事もありますから、紙とペンをお持ちします」


冷えるんですが少し売れるな、母さんが喜ぶだろう。


「在庫は117個でした」


「そんなに有ったんですか、嬉しいな」


「では、失礼します」


お姉さんは戻って行った。


「紙とペン持って着ました、お願いします」




いつもお世話になっております。


エルザの宿のユーリです。


オンデマ商会さんで在庫切れで買えなかったライトを旅先で買う事が出来ました。


ライトを扱っていたお店のマラードさんが、冷えるんですの購入を考えているので、僕の紹介として便宜を図って下さい。


これからもよろしくお願いします。




「どうぞ、紹介状です。在庫は117個でした」いいなライト、117ライト。完璧だ。


「そうですか、では17個はおまけにしときます」


「ダメです、こちらにも都合があるのです、117個にして下さい。カードです、お願いします」


「はぁ~、そうですか。分かりました。お支払いの手続きをしてきます」


危ないところだった、折角ゴロがいいのに崩されるところだった。


支払いが終わり、配送の手続きと届けて欲しい場所と個数を記載してお願いしてお店をあとにした。





夜は野菜スープとパンを食べて、露店で干し肉を買って宿を探している。


「何処がいいかな、ご飯は食べたからどこでもいいんだよね」


ここでいいかな、うちの宿屋と外観が似てる。


「1泊お願いします」


受付に誰もいなかったが、僕の声が聞こえて奥から出て来たおばあちゃんが母さんにそっくりだぅった。


「お客さんか~」


もう1人出て来た、おじいさんだ。おじいさんも母さんに似ている。


「こんばんは、お2人にはエルザとテレサと言う娘さんはいませんか?」


「いませんよ、うちは息子が2人です」


間違いだった・・・・抱き付くところだった。


何処に居るか聞いて来ればよかったな、あの姉妹は言わない事が多すぎるよ。父さんと叔父さんも大変だな。


「勘違いでした、今日泊まりたいのでお願いします」


「朝の食事はどうしますか?」


「早く出るので要らないです」


「分かりました、銅貨5枚です」


エルザの宿と同じだ。支払いを済ませて直ぐに寝た。





「朝からライトを付けて見たが、夜に試せば良かった。自分用の最初が朝か」


自分用に1個だけ持って来た。自分用に持って行くと社長のマラードさんに言ったら『ああ、それで冷えるんですも持ち歩いてるんですね』と言われた。


合っているのだが、僕は学園を卒業した日には旅に出るつもりで荷物を用意した。暑い夏だから冷たい飲み物が飲みたいと冷えるんですを荷物に入れた。


母さんが赤ちゃんを産むまで待ち、テレサさんの所に母さん達と行きそこでのんびりと過ごして、今は少し寒くなってきた。暑い時期が終わって、冷えるんですを使う時期を過ぎてしまった。


「歩いて10日掛かるのか、朝の練習は終わって歩くだけ・・・・・暇です、歩きながら出来る事が少ない」


何か出来ないかと考えると、うさぎ跳びで港町まで行こう。


「いいぞこれ、でも歩くより遅いのは嫌だから・・・・急ぎうさぎ跳び、これなら体力も付くぞ」


日が暮れてきた街道で疲れて歩いている。


「急ぎうさぎ跳びは、危険だ。疲れすぎる、それに馬車の人と農家の人に変な目で見られた。明日からは1時間にしとこう」


街道の横の草原で野宿だ、街から近いし街道横なら安全度も高い・・・・おやすみ。

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