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ボラジュへ

「産まれました、女の子です」


予定通りだ。母さんの考えた名前はなんだろう。


会えるまで暇なので予想でするか。


「ローラ、島に流された少女。カリーナ、旅は大変だったよね。ラーナ、金山が見つかったよ。ジーナ、山は素晴らしいね」


考えつかないので、可愛そう少女シーリズの主人公の名前を思い出している。


「ラン、金色の髪が綺麗だね」


「ユーリ、何を呟いてるのよ」


横にいるシシルが僕の邪魔をしてくる。


「母さんが付ける名前が何かを考えていたんだ、シシルはどんな名前だと思う?」


「私は知っているわよ」


やるなこの娘、美味しいハンバーグ以外にも我が家の秘密を知る人物になるとは。


「それでどんな名前に決めてるのかな母さんは、勿論ダブルハンバーグを用意しょう。どうだ悪い取引ではないはずだ」


「お姉ちゃん駄目よ騙されては、おじさんがいつでも作ってくれるわよ」


流石だ、メシルさんの妹は頭の回転がいいな。それなら。


「封印された料理を特別に2人に、いや真面目さんも入れて3人にご馳走しよう。どうだ」


2人は僕の方を見て「止めとくは、急がしくなりそうだから」


今は名前を聞き出すのに忙しいのに、この後の事はどうでもいいじゃないか。


「ユーリ、行こうか」


話を聞いていたのか、父さんに連れられて厨房に行く。


父さんに寒くなったら食べてと、すき焼きのレシピを教えた。




「母さんでかしたぞ、双子の姉妹か。名前は、ワン、ツーにしよう。他の名前も考えたが赤ちゃんが2人ならこれしかない」


「ユーリ、疲れてるんだから冗談はやめてよ。エリカとルイーナよ」


いい名前だ、母さんはセンスがある。


「母さんいい名前だ。おめでとう、時間はあるからゆっくり休んでよ」


「ありがとう、お願いね」





西の陸を目指して旅に出る僕は、自分の部屋を赤ちゃん用に改造している。


働く両親の近くに寝かせられる場所は厨房の隣の僕の部屋かシシル姉妹の部屋だ。


僕は赤ちゃんが居易くする為の改造を任されている。


壁にまず絵を描く事にした。姉妹が異世界転生者の場合に楽しめる様に可愛くアレンジされたドラゴン。


ドラゴンと遊ぶ姉妹が友達の家に遊びに行くのにドラゴンに乗って行く絵。


猫がゴロゴロしていて猫じゃらしで姉妹が遊んでいる絵。


言葉の学習に僕の考えた、赤ちゃんでも話せるぞを絵で分かる様に天井に描いた。


壁と天井の絵が完成したので家具を考える。


「周りが見える様に柵だな、遠くからも見えていいな。ベットの高さは、抱えるたりし易い様にして、


ベットの下が収納スペース、もしもの為に防水加工・・・・・こんなもんかな」


「ユーリ、エルザさんが2階の分も作ってと言ってたよ」


「分かった、ルチルありがとう」


「気にしないで、今夜はすき焼きが食べれるから」


ルチル、すき焼きは関係ないぞ。もしやあの姉妹は、朝からすき焼きを食べる日がくるのか。





カルテドで出来る事は全て終わった。


僕が忘れていた、冷えるんです改の利用法を父さんに伝えたら、ゲンコツが2発来た。


僕が教えたのは、食品が痛みづらく日持ちが少し増える事、冷たい料理や冷たい料理法。


珍しく『お願いだ全て教えてから旅に出てくれ』と言われた。


馬車の手配が済んでいて母さんも調子が良さそうなので『のんびり考えなよ、双子の姉妹がいたらのんびり出来る、今しかないよ』と告げて旅に出た。


ボラジュに向けてのんびり進む馬車。


「ルチル、僕にも抱かせてよ。ほらお兄ちゃんですよ」


「駄目です、ユーリは汚いし乱暴だから、エルザさんも私が抱いてる方が安心するはずです」


なるほど、ルチルから見て僕は汚いのか。今着てる服を見たが、分からない。


ルチルの来てるのは学園の女子の制服だ。とても気に入ってる様で、着ているのをよく見かける。


「ユーリ、馬車の中だから危ないわよ、テレサの所に着いてから抱けばいいでしょ」


カルテドを出てから2日目のお昼過ぎ、ボラジュにいつ着いてもいいくらいに時間は過ぎていた。


テレサさんも赤ちゃんを産んでるはずだ。母さんより1ヶ月は早く妊娠に気がついたんだから。


「どう、どう~」


馬車が止まった。着いたのかな。


馬車のドアが開き「お客さん、街道にワームが出たみたいです。冒険者が討伐にあたっていますが、今からだと戻るにしても村にも入れません、戻りますか?」


ワームか、許せん。我が妹のゆく道を遮るなんて許さん。


傍らに置いて有る、名刀お姉さんを手に取り馬車から降りる。


「我が妹よ、兄は行ってきます。止めないで下さい」


「ユーリ、行くなら早く行ってよ。みんなが危ないでしょ」


ルチルが何か言っているが、急がねば街はそこにある。


ワームは2匹いて、1匹を4人で戦っている。


新武器を持っている人がいる。


息を吐き、今まで戦って来たワームの動きを思い出す。


全力で走り、4人の所に行く。


「大丈夫ですか、僕はもう1匹の方に行きます」


「ユーリ、久しぶり。メグよ」


僕は上を見上げて「メグさんは旅ったっていませんでした」


当然、ゲンコツが落ちて来る。


「何で上を見てるのよ。みんな無事よ、あ・・・・リーダーが飛んで行ったわね」


なるほど、上を見上げて「ヴエルナさんは決婚も出来ずに飛んで行きましたか」


「聞こえてるぞ、ワームが向かって来るぞ。みんなユーリから離れろ、狙われている」


挨拶も出来ずにみんなが拡散する。なるほど、囮作戦だな。


「いい感じに狙われたな、対ワームスキル飛ばされた者勝ち発動」


目の前に迫りくるワーム、地面から出た時に飛ばされる。ヴエルナさんも恐らく出たワームに飛ばされて戻って来た。


目の前の地面から出て来てパクリと食べるか飛ばす。どちらでも出て来た瞬間は同じだ。


出て来たワームに何かされる前に軽くジャンプして名刀お姉さんで口に当てて勢いを吸収しながら回転して口の後ろに落ちる。


「同じ戦い方でごめんなさい」


口と胴体を切り離して動かなくなるのを確認する。


「いい仕事をしたな、次行こうか」


全力でワームを探す、馬車の安全の為に耳を澄ます。


「何も聞こえないぞ、グリュックの皆が戦っているな。あれで最後か、馬車に帰ろう」


「ユーリ、手伝てよ。ワームの動きが早いのよ」


レベッカさんに言われて見ると「いつも通りでの速さだと魔法は当てにくいよね。弓のメグさんもきついか」


僕は気が付いたので実行に移す。


「メグさんは行き遅れ~お肌のしわが増えて・・・痛いぞ」


「誰が行き遅れかな、まだ若いわよ私は」


叩かれた頭は気にしない、今は作戦通り進めなければ。


「2人はあそこの馬車に乗って街に向かって下さい。街道なら下から襲われないので大丈夫なはずです。戦闘はお年寄りに任せればいいです」


「いや、流石にまずいよね、レベッカ」


「そうね、まずいけど何もできないし、馬車で行こうよメグ。ユーリも一緒に行くの?」


「ユーリならあそこ、リーダーの所よ」




「これが新しい武器ですか、いい感じに出来てるな。借りてもいいですか?」


「いいけど、剣を貸してくれ。貸すと武器が無い」


新しい武器と名刀お姉さんを交換して戦う事にした。


使ってみたい。僕の指示した通りに出来ている。


「対ワーム武器トゲトゲの威力見せてやる」


全力で走り馬車の横に並ぶ。


「のんびりでいいですよ、街道なら守るのも簡単です」


「そうですか、静かに移動します」


この武器があれば地面から出た時以外の対応はそれほど難しくない。


いつでも来いと言える武器だ。


「オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、オギャ、」


「双子だと泣き声も2倍だな。我が妹よ流石だ、囮の泣き声をあげるとは、直ぐに倒すよ。にいにが~」


泣き声に釣られてワームが来る、


地中深く潜ったワームが何処に居るか分からないが、地面を盛り上げて進むワームが何処に向かうかは見ていれば分かる。泣き声につられたワームが場所に向かうが街道なので、街道の上に出て馬車に向かうワームと馬車の間に入りワームが威嚇の為にその場で起き上がったので口にトゲトゲを入れてスイッチを押す。


槍の様に長い棒の先端に付いた盾の様な物から剣が6本出てワームの口の中から外に突き刺さる。


この時に棒を放してもワームは、もうどうすることも出来ないので、暴れるか静かに死ぬかどちらかしかない。


「おりゃ、おりゃ」


棒付きの飴を振り回すように、地面にも打ち付けてやる。


「これ面白い、見た事あるな。ドランゴンの頭と尻尾に棒を付けてうねうねすると飛んでるドラゴン。誰か尻尾の方にいないかな・・・・・ワームだと重くて出来ないか」


「そこの遊んでいる少年ユーリ、武器を返しなさい」


後ろに居るのに、そこのと・・付けなくてもいいのに。ヴエルナさんに武器を返す。


武器の剣の部分は既に元に戻り、棒に盾が付いてる様になる。


マシュさんが僕の頭に手を置いて「ユーリ、強くなったな」


「そうかな、ただの慣れだよ。動きが分かりやすいからワームがどんな攻撃をしてくるか予想も出来るよね」


「慣れた動きが出来るのも日頃の特訓の成果だろう」


あまり喋らないカカルさんから褒められた。


僕はリーダーのヴエルナさんに向いて聞いた。


「ところで、ここで何してるの?」


ヴエルナさんと武器を返しあう。


「俺達は拠点のカルテドに帰るところだった。街道にワームが出てのでボラジュでクエを受けたんだ。帰るのにはワームを倒さないと安全じゃないからな、ユーリは何処に行くんだ?」


「ボラジュの親戚の家に行くんだ」


馬車は先に街道を進んでいるのが見える。城壁が見えるので間に合いそうだ。


「僕行くね、馬車に母さん達が乗ってるから」


僕が走り出すと後ろからマシュさんが。


「俺達も街に行くから一緒に行こう」


「分かった、競争だよ。負けたらご飯の奢りだよ」


カカルさんは直ぐに「勝てん」と言った。


「間に合うんだから歩いて行こう」


ヴエルナさん提案にのって歩いて行く。

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