卒業
後7日経つと卒業式なので3年間のまとめ授業をしている。戦闘は剣術の基礎と魔法の基礎、貴族の心得の基本は、分からない人ともう一度聞きたい人が集まる授業になっている。
社交の授業は教える事は全て教えたと担当の先生が言うので、他の授業になった。
僕を含めて、卒業すれば今と違う生活が待っている。
卒業までの楽しみがお昼だ。
冒険の旅に出ると美味しい食事を食べる機会はあまりない。
美味しい物を毎日食べるのが今の楽しみだ。
暑いので、温まるんですで食べるのを止めて、出来ている物を持って来ている。
今日はカツサンドにアイスティーだ。カツは薄めにしてサンドイッチの数を多めにしている。
「ユーリ、その箱は何かな?」
冷えるんですの携帯用を見て「冷やす魔道具です」
ポール子息が扉を開けようとするので。
「開けては駄目です。危険です、誘惑に勝てなくなります。我慢して下さい」
止めるしかない、冷えた水に冷えたアイスティーを飲んでしまえば冷えてない飲み物を飲むのが嫌になる。
僕は経験済みだ。朝起きて冷えてる水、昼はお昼に合わせた冷たい水、夜も冷たい飲み物。そうなのだ、冷えてない飲み物が飲みたくない。
「いいだろ、開けるくらい。ここ何日かユーリの持ってくるその箱が気になって。それに冷すとはどんな事なんだ」
「お試しになりますか、僕は止めましたよ」
忠告を聞かないポール子息は扉を開けて中を見る。
「なんだ、容器が何個も入ってるだけじゃないか、容器の中の液体が冷えてるのか?」
僕の忠告が良かったのか、飲みたいと言わないポール子息。
「液体が少し冷えているだけですよ。ポール子息なら氷魔法で色々出来るでしょ」
「はぁ~、それがダメなんだ。ユーリが試してみればと言った方法をしてみたが触れると全て凍ってしまうのだ。あれでは危険で触れない」
僕はポール子息に氷魔法で何かを凍らせて、その上に水を入れたボールを置いて冷えるのか、危ないのか試してみてもいいかもと進言した。その結果を今教えてくれた。
ポール子息の氷魔法で何かをするのが危ないのが分かった。かき氷は今のところ作れないのが確定した。
「他の氷魔法も同じか分かりませんが、危ないのが分かれば違う使い方が出来ますね」
ポール子息が驚いてこちらを見る。手にはアイスティーの入った容器を持っている。
「それはどんな使い方なんだい、教えてくれないか?」
僕も考える、どんなのがいいかと。
「自分の周りに水で囲い、魔物に馬鹿~お前の父ちゃん浮気してたぞと言えば怒ってこちらに来るはずです。そこで水に氷魔法で氷にして、怒った魔物が歩けば氷の魔物の出来上がりです。なずけてポール子息でホイホイです。さあ練習して効果を高め、多くの魔物をホイホイに呼ぶのです。大丈夫です、干し肉をかじってれば何日でもホイホイ出来ます。騎士団も喜びます・・よい新人が来たと、おめでとうポール子息素晴らしい新人だ」
「ありがとう、ユーリ。素晴らしい新人は嬉しいけど干し肉をかじって、ホイホイはしたくないな。オーク肉なら考えるけど、持ち込みも怒られるだろう。喉が渇いた・・・・冷たくて美味しいね、暑い日にはこれだね」
勝手に飲んでしまったポール子息が、冷たくて美味しいアイスティーを見て。
「何でこんなに冷たい、冷えるて言ってたけど、冷たいの間違いだ。いいなこの冷やす魔道具、今の季節に丁度いいね、もうい少し飲んでもいいかな?」
「どうぞ、暑いですね」
自分のカップにもアイスティー入れて飲む。
「あのポール子息、どうして隣で食べてるんですか?」
卒業までの貴重な時間をのんびりと噛み締めているのにポール子息はアイスティーを飲んだ次の日の今日僕の横に座り、冷えるんですから冷えている水を出して飲んでいる。冷えるんですホイホイに掛かってしまった様だ。
今回は何も作戦として行動してない。自然に売れると思っている。
この暑いのに冷えるんですを買わない貴族はいない。
飲み物が冷えている、それだけで飲み物を買うだろう。
高価な物なので貴族様も考えてしまうが、冷えてるビールを飲んだ両殿下の喜びは冷えてないビールはもう飲めないと思うほどだったはずだ、だから買うはず、買わない人がいない。冷蔵庫だから。
「冷たい飲み物が飲みたいんだ、オークの角煮と冷たい水はこの季節の最高の贅沢だ。ユーリ、何処で売ってるんだ、父上も冷たくなる魔道具など知らないと言っていた。父上も『ユーリに聞いて来てくれ、冷えた飲み物がどんなに美味しいか飲んでみたい』と言っていた」
そうなんだ、最初に虜になったのはあの国王様の所に居た5人だ。
侯爵様も『ユーリ、私の屋敷にも国王様と同じ冷えるんです改を届けてくれ、礼なら何でもするお願いだ』と言っていた。
僕も侯爵様に『好きなだけどうぞ、沢山あります。容器も色々あるのでセットで送ります』
あの国王様専用改の後も色々作った。自分の為だ、欲しいのだ、でも本当はデータを取りたかった。
研究チームの真似事だが、そこから冷えるんですの応用を探りたかった。
井戸に付けて機能したら夏場だけでも冷たい水が飲めるようになるのか、家に取り付けて断熱効果で冷えるのかとか、研究チームに面白い事考えるねと言われ、色々考えるのは面白いですから、実現すればまた違う事に応用できる様になると言った。
「お買いになるんでしたら、オンデマ商会で扱ってます、新製品で売り切れですが予約でも生産が間に合わない様です」
「そんな、どうしたらいいんだ、ユーリが忠告してくれたのに。父上も直ぐに手に入れるんだと息巻いていたのに」
僕は鞄から1枚の紙を渡す。
「これは何だい『特別製品の購入許可書』て書かれてるけど」
「冷えるんですの家庭用です。ここにあるのは冷えるんですの個人用なんです、売り切れているのは個人用なので家族用なら大きいサイズになるんで色々と入りますよ」
「ユーリ、ありがとう」
「ユーリ、私は冷たいアイスティーが飲みたいです」
いつか来るだろうと思っていたが。ポール子息の方を見ると。椅子の角度が変わっていた。
「それは、後ろのお2人も同じなんですか?」
「はい、私も飲みたいです」
「私も、冷たい飲み物が飲んでみたいです」
「では、出して下さい」
僕の言葉にエミリー嬢、アンバー嬢、スカーレット嬢は手に持っていたカップを出す。
「「「お願いします」」」
3人のカップにアイスティーを注いでポール子息を見ると、見ていたはずなのに向こうを向いていた。
3人はお礼を言って戻って行った。
「ユーリ、僕に入れてくれアイスティーを」
「分かりました、カップを出して下さい」
勿論、両手にカップだ。
「フレディ子息は、卒業後どうするんですか?」
「領土で父上の手伝いだ」
「大変ですね」
「みんなそうさ、気楽なのはユーリだけだ」
なるほど、僕だけか。
「入りました」
「ありがとう」
嬉しそうに自分の席に戻るフレディ子息の先にリリー嬢が会釈している。口が動いていたので『ありがとう』だろう。
スコット子息とアジス嬢がカタル子息の後に続いて、僕のテーブルに来た。
「何やら、ここに来ると冷たい飲み物が提供されると伺った、ユーリ、よろしく」
「私も、伺いした。それはとても冷たく、紅茶と同じの飲み物だと分からないと」
「僕が聞いたのは、学園に戻ってから僕達が気が付くまで誰にも言わなかったと、そうなのか平民」
素直に飲みたいと言っている2人と遠まわしに秘密の冷たい飲み物を提供を受けようとするスコット子息。
「お持ちのカップを出して下さい」
「よろしく」
「お願いします」
「・・・・・入れてくれ」
それぞれのカップに注ぐとカタル子息とアジス嬢は自分のテーブルに戻っていた。
「どうされました、スコット子息?」
「もう一杯入れてくれ」
出されたカップは左手に握れている。
ニヤリとしてアイスティーを注ぐと。
「勘ぐるな、妹の分だ」
自分のテーブルに自分のカップを置いてラウンジから出て行った。
僕の所に冷たい飲み物を飲みに来たみんなは購入すると言っていた。
暑い時にも飲めるが、有ればいつでも飲める。それに暑い夏は毎年訪れる。
卒業式、遅刻しないで来た僕が校庭に並ぶ馬車を見て。
「見納めか、学生が歩かないで馬車で来る。有名な学校で毎日の車で送り向かい、同じ事がこの世界でもおきている。金持ちがする事は世界が違っても同じか」
入学式と同じ場所で卒業式だ。
「みなさんは、よく頑張りました。歴代の卒業生より、色々な経験が出来たと思います。模擬戦の導入の際の魔導防具を体験、合宿では数名が村を救うなど素晴らしい事がありました。生徒による催し物の開催は、今までありませんでした。これから皆さんは、それぞれの道に進みます、学園での経験がお役に立てればと思います。卒業おめでとう」
校長先生の挨拶が終わり、女性の先生が話し出す。
「これより卒業生に卒業認定バッチを渡します。金のクラスから1人1人貰って下さい。貰った人から退室をお願いします」
既に卒業式は終わっていた。認定バッチを貰い出ていく生徒たち。
僕が最後か、生徒は貰うだけなので早い。もう銀のクラスの生徒だ、渡している担任も声を掛けていない。
金のクラスの担任はもういない、うちの担任しかいない。
僕は侯爵様にお礼を言いに行く。学園への入学の命令・・・・間違えた、学べる場を与えてくれた事を心から伝えたいと思っている。10歳で冒険者見習いとして冒険者ギルドのクエをするより多くを学べたはずだ。一番は言葉だ、読み書きの出来ない冒険者にならずに済んだ。二番目はいつか魔法が使える可能性がまだある事。
「ユーリ、貰いに来てくれ」
考え事をしている間に僕だけになっていた。
「先生さようなら」
「面白い生徒だったよ」
先生は出て行った。やはり言葉が短い。
会場を後にして校舎を抜けると沢山の馬車が生徒のみなさんは馬車の横で中に乗っている誰かと話している様だ。数が多いので他の学年の生徒もいるんだろうが、1.2年は本日は休み。部活の無い学園に休みに来るとは僕には想像が出来ない。
僕が校門の所に来ると「ご馳走様」と聞こえた。
振り返るとみんなが手を振っていた。
手を振り返し「たら腹食いやがって、ちくしょう~。覚えてろよ」取り敢えず言いたい事を言えてスッキリしたので帰る事にした。




