特別な武術大会
学園の登校初日は嫌いだ、この学園は宿題がない。登校初日は、校長の挨拶2.3分位い、クラスの移動と担任の挨拶で10分として、15分後には下校時間だ。今日も冬の社交ご苦労様で終わるはずだ。
「冬の社交ご苦労様」
終わりました。
「今日は皆さんにお話があります」
珍しい、いやこんなに長く話した事がない。
「後はよろしく」
短くなったな。
教壇に歩き出す男子生徒がこちらを向いて話し出す。
「毎年行われている武術大会は、今年も行われますがユーリ君は出ません」
名指しされました、去年も辞退したので今年もか、それだけだと思った。
「今年から、2年生の時に使った魔導防具を使う事が決定しました。これにより魔法の得意な生徒も出る事が出来る様になりましたが、ユーリ君は1年の時に優勝しました。3年生にも勝ち、ユーリ君が3年生では勝てる見込みのある人がいませんので、代表はユーリ君以外の3人になります」
まあ、妥当ですね。
「しかし、それではユーリ君が可哀そうだと多くの生徒から指摘があり、武術大会の初日の前の日に違う武術大会を開催します。今年の一日だけの武術大会はユーリ君対希望者全員が戦えます。希望者は当日までに申し込んで下さい」
なるほど、勝ち抜き戦で僕の体力を奪う武術大会、参加者が多ければこちらの疲れが溜まり後半に強い生徒を当てるのか。
「クラスの代表は明日の授業の後に決めます。立候補、推薦を考えて来て下さい。投票で決めます。委員長の僕からの説明は以上です」
このクラスに委員長がいたのか、いつ決めたんだ。
「説明が終わったので、帰っていいです」
先生が帰っていいですを言うとみんなは帰りだす。
僕も帰ろう登校初日にしては、長くいた。
授業の後に決めたクラス代表は、剣術の男子生徒1名、魔法の生徒男女1名が選ばれた。
「ユーリ、私の魔法に当たりなさい」
「ユーリ、私の雷は痛くありませんよ」
「ユーリ、エミリー様とアンバー様の言う通りです、ここは大人しく攻撃に当たりなさい」
「え~と、まあそんな感じだ、ユーリ」
魔法軍団は僕の作戦を分かっていたのか、その場から動かなかった。
今日だけの特別な武術大会は僕が予想したのとは違っていた。
僕対応募者全員だった。
会場にいる生徒が応募した生徒だと分かったが、挨拶もそこそこに。
「僕から説明します。新しい魔防具は体力、疲れすぎても光ります。ルールは簡単です、ユーリの魔防具が光るか僕達の魔防具が光るかです。光った人は会場から出て下さい。先生も光った生徒を会場から誘導します。以上です」
なるほど、疲れても光るのか。
「始め」
説明の話をなるほどと考えてると先生の「始め」の声が聞こえた。
開始の合図で魔法が飛んで来た。あれ?会場には沢山の人がいるよ、僕対希望者の戦いは総当たり戦ではない。言葉通りなのか。
会場には100人以上いるけど、この生徒全員が対戦相手なのかと更に考える。
罠、ダミー、人柱、通行人。どれも違うようだ、剣を持っているし魔法を発動させて飛ばしてくる。
それなら皆さんには疲れて貰おうと、会場の中を走る事にした。
この作戦で頑張って魔法を当てようとした生徒が次々に疲れた。
僕を追いかけている剣を持った生徒も疲れていく。
この作戦は時間が掛った、疲れないが剣の攻撃の方が楽だった。
この作戦の間、何もしないで見ているだけの生徒がいた。
今その一人と対峙している、残っている生徒が1対1の戦闘を望んでると理解した。
「ユーリ、勝負です」
「分かりました、僕も全力で行きます」
シャシカ嬢が攻撃してくる。シャシカ嬢は2銅の時のチームのメンバーの1人だ。
攻撃を回避する、それもシャシカ嬢が疲れる様に、剣が当たりそうな時にそれ以上の余分な動きを誘う、当たりそうなので余分に追いかける事になる。無理な姿勢での攻撃は疲れる。魔防具が光る。
「ずるいです、全然攻撃してこないなんて」
「今ので、分かったと思いますが、剣が届きそうでも自分の姿勢を崩さなければ疲れなかったと思います」
「そうか、当てる事ばかり考えてました。ありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
次はアシカ嬢だった。
「私はよく見ていたから今の様なことにはなりません」
僕はそれならとアシカ嬢の近くをグルグル回る。
「疲れました、私の負けです」
「大丈夫ですか?」
「目が回りました」
僕は回っていた、アシカ嬢の周りをひたすら。
「そんな事は僕に通用しないよ、ユーリ」
「行きます」
一撃でやられるカタル子息。
「今ので終わりなのか、はぁ。始めとかはないのか」
合図が欲しかったカタル子息。
「誰も疲れさせらる事が出来ないとは。次は僕だ、平民」
「始め」
僕は始めを言って走り出す。
「僕には言ってくれなかったのに」
特別な武術大会で初めて剣と剣がぶつかる。
「流石に当たってくれないか」
「当たって欲しいと思ったら駄目ですよ。剣はこう使うんです」
当たらない様に鋭い攻撃を連続でする。それを避けようと後ずさるが、僕は攻撃をやめて一気に間合いを詰めて剣を首筋で止める。
「剣を目で追いすぎです、当てない使い方も剣術にはあります。許嫁の女性が声援を掛けてますよ」
振り向いて客席を見て「あれは妹だ」
「でも、スコットと呼び捨てですよ」
「何も分かってないな平民、呼び捨ては家族以外に許されないのだ」
「そうなんですか」
「僕は疲れた、負けでいい。平民」
「お疲れさまです、スコット子息」
僕が振り向くとそこには剣の攻撃が、フレディ子息だ。
足音がしたのでそんなに驚かない。
「さ~あ、僕の番だ」
「僕の番でもあります」
1年の授業で一番対戦したのがフレディ子息だ、何故申し込まれたのか分からないままだ。
久しぶりだ、あの頃と違い無駄が無くなっている。
僕も無駄な動きをなくす努力はしてきた、オーク相手に。
練習には人間の方がいいな、避けてくれる。
僕とフレディ子息は無駄な動きをなくし回避する、回避合戦の様になってきた。
「1年の時に僕に対戦を申し込んできたのは、何か理由があったんですか?」
「あるお方が、僕のクラスに変わってる方がいると僕に聞いて来たんだ」
僕の事を・・・・・聞いたのがリリー嬢なんだ。
「それで、どうして僕と対戦する事にしたんですか?」
「まあ、色々だ。気になるみたいだった」
「その話だと・・誰かからさるお方が聞いて、フレディ子息に話したみたいな感じですね」
「まあ、今ならそうだと言える」
確かスカーレット嬢とリリー嬢は仲が良かった、2人の間で僕の話題で変わった生徒の話して、それをリリー嬢がフレディ子息と。
「ユーリ、無駄話はもういいのだ、本気を出したまえ」
「では、本気で行きます」
足を使いフェイントいれて、寸止めの攻撃を連続でする。
「僕の負けだ、もう避けれない」
「ありがとうございました」
剣と剣の戦いが終わった。
まだ5人残っている、それぞれが離れていて中心が僕で五角形をしている。
「みなさんはご一緒に戦われるんですか?」
「「「「「そうです」」」」」
なるほど、声が重なるぐら仲がいい。
そうですの後にみんなの魔法攻撃飛んでくる。
雷と氷の魔法は避けておく、風と火の魔法は剣でしのぐ。
その後に4個同時に飛んでくる魔法の速度が遅いので避けて観察する。
同時に4種類の魔法を飛ばすリリー嬢、天才がいた。
火と水と雷と風だ。同時に出せるのは凄いはずだ。
「すいません、リリー嬢とお話をさせて下さい」
「ユーリ、お話ですか。それはどのようなお話なのかしら」
「ユーリ、魔法に当たってからではいけませんの」
「ユーリ、エミリー様とアンバー様の言う通りです」
「ユーリ、僕は構わないよ」
ポール子息からお許しが出たので、リリー嬢に話しに行く。
三令嬢にポール子息が「どうしてですの」「そうです」「これは罠です」と責められてる?
「それ以上近づくな」外野から励ましの声が聞こえる。
「ユーリ君、話とは何ですか?」
「これからは小声でお願いします」
「はい、分かりました」
僕の話に頷くリリー嬢、「分かりました、試してみます」
僕とリリー嬢はそこで仲のいいカップルが線香花火をしてる様な感じで屈む。
「試してみて下さい。イメージを忘れないでやってみて下さい」
「はい、では試します」
リリー様は竜巻を魔法で実現する。
「出来ました、初めて見ます」
竜巻を見れる人はあまりいない、危ないし。
「今のイメージに火を入れて見て下さい」
「はい」
火柱が回転している。
「次は水でお願いします」
「はい」
水の柱が回転している。
呼び名は分からないが、僕がよく練習していた魔法がそこに。
リリー嬢の魔法は火に風の火柱の回転、水と風の回転だ。
「リリー嬢、火を同時に何個出せますか?」
「はい、4個です」
凄いな、おそらくイメージしてないで無意識だろう。そんなイメージだリリー嬢は。
「僕の手を見て下さい」
「はい」
僕は両手を回転して見える様に頑張って見せる。
「今のは火の魔法が飛んで行くイメージですが、そこに風の魔法で回転で誘導するイメージです。先ほどと似ていますが、今度は飛んで行くので少し難しいです」
「はい、やってみます」
僕が見せたのは両手だから火が2個だったが、4個の火が回転して飛んでいく。
凄いのは、僕の伝えただけの教えで全てを成功させているところだ。
最後の火が飛んでいくのは速度が出ていて、最初にリリー様が飛ばしたよりも速い。
他の人達より飛ばす速度が出ている。
「ユーリ君、凄いです。これなら敵に当たります。ありがとうございます」
今の敵は僕だよね。
「私負けました。降参です。フレディ様に見せてきます」
「そうですね、屈んでする魔法は2人で見るのがいいですね」
「はい、2人で見ます」
急ぎ足で歩いて会場を後にした。客席で見せるんだろう。
「お待たせしました。みなさん僕はいつでもいいです」
本当の戦いは始まった。
魔法軍団対僕の戦いだ。中央に居るので避けるだけ、飛んでくるのを避けて回転していれば次の魔法の位置を確認して避けるのは簡単だった。
飛来系しか撃ってはいけないので、魔法軍団の攻撃は本来の力を出し切れていない。
みんなが疲れるのは可哀そうなので作戦を決行、スキル今日だけは許してくださいを発動する。
先ずは、エミリー嬢だ。一番強くて侮れない存在だ。魔法軍団のリーダーでもある。
全力で走って近づく僕に驚くエミリー嬢は魔法攻撃をやめてしまう。
目の前に立った僕は「エミリー嬢、足元に美味しそうに焼けたハンバーグがあります、タレは何にしますか?」
「まあ、ユーリ、タレの味ですか。ユーリが言っていた和風がいいです。でも足元に干し肉が落ちてます」
「何処ですか、3秒ルールを知っていますか、どの位経ったんだろう」
足元を見て干し肉を探していると、魔防具が光った。
「そんな、干し肉が落ちてない」
「ユーリ、そこは嘘ですかだろ」
後ろからポール子息が笑って近づいて来る。
アンバー嬢とスカーレット嬢も笑っている。
「もしや、干し肉は落ちてない」
「ユーリ、干し肉にこだわり過ぎです。それでは強くなれませんよ」
「負けました、干し肉に」
「まあユーリ、私達に負けたんです」
「そうです、アンバー様の言う通りです」
「そうですね、みなさんに負けました。いつか魔法でみんなに勝ちます」
「そうです、いつか使える日が来たら私の魔法軍団に入れてあげます」
あれ戦うではなく軍団入りのお話。
「今日はいい勉強になりました」
「終わり」
先生の終わりが聞こえた。
先生が僕達の会話を聞いていて、くぎりのいいところで終了を告げた。
特別の武術大会は終わった、特別なので何もないと校長が説明。
特別に何もない。特別に用意できないのだろう。最初に僕が負ければ100人分以上に商品が必要だ。
逆に僕が勝つと100人分以上の商品が余る。特別でなので何もない。
次の日から始まった武術大会は戦闘に自信があった生徒が、特別な武術大会に出る為に推薦を断ったために、本来なら参加しない生徒しか出ない武術大会になってしまい、見ている観戦者がまだ終わらないのと言いたくなる程酷かった。優勝は1年生の女子生徒でスコット子息の妹さんだった。
最終日に学園長に呼ばれて「ユーリ、これあげる」
学園長は自分の部屋に入って行った。
僕の手には軽減リュックが、嬉しかったので大声で「一生大事にします」
武術大会の全行程は終わった。




