お土産と驚き
無事に城から帰れた。次は自分から行くのは止そう。
「姐さん、名刀は出来たか?」
「あら、また来たの。まだ満足できるのは出来てないわよ」
「そんな、そろそろ出来てないと二刀流が出来ないよ」
剣をふきふきしてるお姉さんは声だけで、僕だと分かるのかこちらを見ない。
「私のあの剣で二刀流が出来るわけないでしょ、出来るならそこの両手剣を両手に持ってみなさいよ」
こちらを見ないのに。リュック置いて名刀お姉さんと同じ位の重さと長さの剣を探す。
手に取り重さを確認していく。
「これも重さが足りない、名刀お姉さんはもう少し重い」
長さと重さが同じ位の剣が無いので、剣の長さが長い剣の重さを確認する。
片手に持ち、重さを確認する。横より少し斜め上にして確認していると重さが似ているのを発見。10㎝ほど長い。もう1本も探すと有ったが、今度は20㎝ほど長い。見つけたので両手に持ってみる。
「少し長いけどこんな感じかな」
僕の声に「どれどれ」と言って初めて見る。
「嘘でしょ、それ両手剣よ。両手に持つなんて、君が魔法で軽くしてるの?」
そんな便利な魔法・・・・・・魔道具で剣は出来ないのかな、軽減リュックの応用で。
魔道具の研究が自分で出来れば色々できるのに・・・・・剣が打てないからダメか。
店内で振るのは危ないので、元に戻す。
「今ぐらいのなら長さ的に二刀流が出来そうだ」
「ねえ、もしそれが本当なら見せてよ剣を振ってるところを」
店内を見て「ここだと危ないですよ」
「やる気なのね、待って店閉める」
誰も来ないよ、名刀がないんじゃ。どうせ沢山あるんだ武器屋は。
僕のルールは街で行けるのは1軒の武器屋のみ。面倒だから、マニアでもないし。
閉めるのか、今日は終わりです。閉店ガラガラ~。
「さあ、付いて来て」
「お姉さん、剣は持って行くんですか?」
「ああそうか、持って来て」
それならと剣を持つ両手に。
裏口から出るお姉さんに付いて行く。裏庭には誰もいないが、目的地があるのかどんどん歩いて行く。
道に出てたどり着いたのが屋敷、門も有って屋敷の横が中庭、中庭が剣術の練習場なのか地面が土になってる。
「さあ、ここで思う存分振ってみて」
良い感じだ、重さが同じ位だから、長さが長い剣の練習になる。久しぶりの二刀流、それも本気の練習が出来る。
そうだ動きのチェックもしとこうこんな機会はあまりない。
「準備するので待って下さい」
「うん」
花壇の縁の様な石の上にバンドを置いて行く。
「それは何?」
「これは重りです、負荷を掛けて日常を過ごして筋力付ける為の物です」
準備が出来て中庭の中央にで剣を構える。
長いので右手が上で左手は右の脇腹に構える。
二刀流で剣がぶつからない軌道を思い描く。
片手が防御の様になる動き、片手が攻撃してしてもぶれない様にする。
イメージが出来たので、足と体の姿勢を組み入れていざ全力剣術。
イメージの右手から動いて、相手はオークで剣が効かないので連続で攻撃する。
「いや~、」
ここから全力だ。
「ふう、良い感じだ。回転も入れたから少し隙があるかもな」
最初から最後まで見ていたお姉さんが「ねえ、何者なのあなた、今のおかしいよ、ぶつかりそうなのに2本の剣が綺麗に交差したり、片手だけの動きは防御も出来てるみたいだった。何よりそれ両手剣なんだから両手に持たないでしょうが」
「お姉さんは甘い、とても甘い。両手剣なんだから両手に持つでしょうが、両手剣だけに」
「は~、ダジャレはいいのよ。片手で今度はやってみてよ」
「いいですけど、何かの参考になるんですか?」
「見たいだけよ」
お姉さんは出来る。感性が、僕に似ている。
「見たいだけ見なさい。行きます」
今度は足の動きも全力だ。中庭を広く使って、相手はワイルドベアの剣が効かないタイプをイメージ。さ行くぞ。
「いや~」
1本の剣を両手で持ち、時には柄をひねる動きを入れて速い突きを連続でする。
その場で留まらないで絶えず動く、必ず移動して攻撃をする。
「どうですか、参考になりましたか」
「剣を作る参考にはならないわね」
考え込んだお姉さんは「さあ店に帰ろうか」
無言のお姉さんに無言で付いて行く。
お店に戻ると何かふっ切れたお姉さんが「名刀を作るわよ、君が満足できる様な凄いのを」
よく分からないが、帰る事にした。怖かったので。
「フフフ、フフフ」
お礼は言わない怖いから。お姉さんは静かに出ていく僕に気づいていない様だった。
1泊するのでお土産を買いに小物屋さんに行った。
前に行った店だ。デザインが似ているけど、色の種類が増えていて、薄い青、薄い水色、薄いピンク、綺麗な緑色を選んだ。
「お値段は?」「銀貨2枚でお願いします」「ありがとうございます、ラッピングをしてきます」
こんな感じの流れで買い物が終わった。ついでなので温まるんですの展示を見てから店を出た。
ロールケーキを買いたいが、女の子のお店が何処にあるか頭の地図には入っていなかった。
焼き菓子を人数分買って宿屋の泊まる。
今日が5日目、後7日位あるので寄り道して帰る事にする。
宿のドアを開けて通り出ると、ノエルの分の手鏡とブラシを買ってない。
みんなの分を買って、貰えない人がいるのはちょっといけないと思い買いに行く。
お店はやってない、朝早いでドアの前で待つ事にした。
待つのが暇で嫌になり、それならと侯爵様の屋敷にオーク肉を届けに行く。
「すいません、ユーリです、オーク肉を屋敷で使って下さい」
「いいのか、侯爵様家族はここにはいないけど」
「はい、この後にオークの生息している所に向かうので、鮮度が落ちる前に食べて下さい」
「厨房に届けとくよ。おい、ジェシーはいいのか連れて行かなくて」
僕が屋敷前から歩き出したので慌ててジェシーの事を言ってくれる。
「後で来ます。お土産の買い忘れを買ってきます」
「そうか、分かったよ」
門番さんにオーク肉をお願いして、小物屋さんに向かう。
途中で忘れていた焼き菓子を買って小物屋さんに到着した。
「おはようございます、同じ様なセットはありますか?」
「昨日の商品が最後でした。すいません」
そうか、あんなに買えば無くなるよな。僕のセンスでは同じ様なのを選ぶのが無難なのに。
「何でもいいので似た様な小物ありませんか?」
「その、手鏡とブラシのセットはあるんですけど、お値段が高くてお勧めできないんです」
「そのセット見せて下さい」
「はあ、今持ってきます」
何故あんなに控えめなんだろうか。
お姉さんがとても綺麗な木箱を持って来る。
昨日買ったセットも木箱だったが、見るからに全然違う。セットで売るための木箱が昨日のだとすると目の前の木箱は箱も商品だ。
開けて中を見せてくれるお姉さん。
「どうですか?」
「買います、おいくらですか?」
「おいくらで買ってくれますか?」
この店はお客が値段を決めるのか、それでは利益が出ない。
僕なりに考えようと手鏡とブラシを見る。豪華すぎて分からない。
何故金色、金塗装は高い誰でも知っている。その塗装が素晴らしいのだ。
金塊の色の金よりも薄く、金箔の様な色で塗装されていて輝きも凄い。
本当に分からない、高いのだけは分かる。どうでもよくなってきた。
「すいません、大銀貨3枚でいいですか?」
「はい、それでおねがいします」
お姉さんの笑顔で外れたのが分かるがいいか、この勝負は男性には勝てない勝負なんだ。
「包んできます」
弾んだ声を聞くと、大きい負けにダメージをくらう。
ここである事に気づく、誰にあげればいいんだと。
あげるまでに考えよう。
「お待たせしました」
カードで支払いを済ませて店を出ると「在庫がなくなった」と喜ぶ声が聞こえた。
ジェシーと王都からマルネ村に向かい、崖下でオークを倒して新品のリュック2個にオーク肉を詰めてボラジュに着くと、最初にアンバー嬢が何処に居るのか確認しに屋敷に行った。
お嬢様は2日前にカルテドに向かったと教えて貰えた。お土産を渡すのにこの街に居るなら渡そうと確認した。
テレサさんのお腹は少し膨らんでいたが言われないと分からない。
ノエルに金色以外でどれがいいか選んで貰った。薄い青色を選んだ。
オーク肉のリュックの1個を猫の宿にお土産に置いて行った。
焼き菓子を渡すのを忘れたが、門を出た所で思い出したので渡して、ボラジュを出発した。
ジェシーには疲れない様に走る事をお願いした。
カルテドの北門に着いた時に馬車の行列が出来ていた。
「全部貴族様の馬車だな。学園が始まるのに合わせて戻って来たんだ、空いてる門は南門だけそこに向かうか」
僕が色々考えて南門だと結論を出した時に声を掛けられる。
「まあ、ユーリ、お久しぶりです。今お帰りですか?」
「はい、アンバー嬢。旅から帰ってきました。お土産を後でお届けします」
「嬉しいです、待っております。馬車に戻りますので、ユーリ後で」
見つけて来てくれたアンバー嬢が馬車に乗るのを見届けて南門から入り、ポール子息の屋敷にジェシーと歩いて行く。
「ジェシーありがとう。予定よりも早く帰れたよ」
ジェシーを預けて、ポール子息にお土産を届けてスカーレット嬢、エミリー嬢の屋敷にも届けてアンバー嬢の屋敷に着いた。
「お約束していたお土産を届けに来ました」
門番さんに約束のお土産を渡して帰ろうと思っていたら、メイドさんが「厨房はこちらです、ご案内します」と案内された厨房でアンバー嬢が待っていた。
「ユーリ、ハンバーグです。ユーリの作ったハンバーグです」
「お屋敷の調理長は作れるようになっているはずですが」
「ユーリの味には少し時間が掛ると料理長がおっしゃるのです、なのでユーリが作って下さい」
門で会ってしまったのでしょうがないと作る事にした。しかし、アンバー嬢が「待っております」と言ったのは、ハンバーグを作りにかもと考えたが、そんな事は無いと思う事にした。
ソースの事を考えてビーフシチューも作る。大人の味だ。
料理が出来たので挨拶もしないで屋敷をあとにした。
「これは結婚の申し込みですか?」
真面目なメシルさんに問題の金色のセットをあげる事にした。
「妻よ考えすぎです。無かったのです在庫が、しかし妻にあげる物が無いのは失礼なので、この金色を贈ります」
「ありがとう、ユーリ、大事にする」
「メシルさん、妻と呼んでるのは、ユーリの冗談だからね」
リカちゃんが感激しているメシルさんに教えてあげる。
「そうなんですか」
メシルさん、メルーンでもお同じ事をしたのを覚えてませんかと言いたかった。
「私にもありがとう、大事にするわね」
メメルさんも喜んでいる。薄い水色を選んだ。
リカちゃんは薄いピンク色だ。これは最初から決めてたのだ、同じ家の中で似た色を避けた。
女の子はピンクが好きだからこれでいい。
「私のピンク色、凄く綺麗。ユーリありがとう」
焼き菓子も渡して家に帰った。
朝からハンバーグの姉妹が、夜でもハンバーグだった。
送りすぎたオーク肉を頑張って消費しているんだろう。
「ルチルにお土産、どうぞ」
「ありがとう、後で食べるね」
後で食べるのか、開ければ分かるからいいか言わなくても。
「ユーリ、おかえり。旅は楽しかった」
ここで僕は驚く、母さんのお腹が膨らんでいた。テレサさんよりも膨らんでいる。
「ただいま、母さん。おめでとう、予定日はいつですか?」
「こないだ話したでしょ、夏には生まれるわよ」
初耳だが、いいか予定日は変わらない。
「名前は僕が考えます。何がいいかな」
「名前は決めてあるのよ、生まれたら教えてあげる」
僕が決めると決めていたのに。
ドラマで、お兄ちゃんが決めたのよとお母さんが言ってるシーンの再現は出来なそうだ。




