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隠れても無駄だ

「ユーリ君、久しぶりだね。座ってくれ」


勧められたので、伯爵様の前に座る。


「大変困っていたところに、騎士団から報告でここ数十日の間に街を出たり、入ったりする少年の報告が来たんだが、その出入りがとても多いのに街に住んでない少年で名前がユーリだったのでもしやと思い探させていたんだ。北の見張り台の騎士からとても速い少年が北に走って行った。この報告は私が探していた後にきたんだ。まさか速い少年がいるとは報告する騎士はいないが、探している少年は足が速い」


「僕を探してたんですか、いつからですか?」


「昨日だよ、ユーリ君が近くに居なければそもそも探そうとは思わなかったよ」


まあ、カルテドに居る人をここで探す人はいないよな。


この部屋色がいいな水色に近いな。警護の人も真剣にこちらを見てる。


「それで何をすればいいんですか?」


「予想は付いてると思うが、社交界の料理をお願いしたい」


「料理長とかいますよね、この屋敷に」


お城みたいな屋敷には何人の料理人がいるんだ。前にもこんな経験したな。王都で侯爵様の屋敷だ。


お風呂あるかな、ダメだここは危険だ。エミリー嬢に他にもご兄弟がいて鉢合わせしたら死罪だ。


家族構成の知っていた侯爵様の屋敷とは違う。


「そうなんだが、全員が嫌だと高級すぎると言って、誰かその道の専門の人にお願いして下さいと泣きつかれた。諦めかけていたそこに君がいた」


君がいたて、カルテドの順番待ちから連れてこられたのに。


「分かりました、何人分ですか?」


「300人だ。今年は情報が漏れたのか、オーク肉が出ると知った者たちが、普段は来ないのに来ると言い出したんだ。社交界だから来てくれるのはありがたいが増えすぎてしまった」


「それで、いつ開かれるんですかパーティは?」


「明日の夕刻に行われる、お客はこの街に着いてるだろう」


300人分なんて作れるのか、これこそ分からない。誰かいるのか、丈夫ですと言える人は。


「質問です。そのパーティでは食事の重要度はどれくらいなんですか?300人分なのか、300人がつまんで食べるみたいな、1食分食べない300人分ですか?」


伯爵様は小声で「そうだな、どうするかな」と言った後に、ご自分の足を叩く。決定したみたいな感じだ。


「みんながお代わりをする300人分でお願いしたい」


あれ、それだと食事会?パーティは食べたい物を取って食べるとかじゃないのか。まずいスキルを発動してウエイターをして逃げたので、快復パーティーがあの後どうなったのか経験していない。


経験してもこの状況は変わらないか、準備だ、急いで準備だ。


「分からない事が多いですが、人数が多いので直ぐに300人分作ります。その方効率がいいです」そう、この状況で考えても解決しない。


「そうだ、作り始めた方がいいだろう。全て任せた。明日の夕刻まで1日料理長だ、ユーリ君の指示は私の指示の様に従う様に伝えてくれ」


警備の人が来て「ご案内します」と厨房まで案内された。




300人分のオーク肉の料理を考える。


定番で美味しいビーフシチューにするこれなら楽勝だ。


300人分をワインに漬けるこれが大変だった。


肉を切り寸胴に入れて行ったが、お代わりするんだと思い出し寸胴を2倍にした。


表面を焼くのをみんなにして貰ったが、最初は嫌がったが、「今経験してください。失敗は僕の責任です。ここで経験しないと次に作ってくれと言われた時はどうしますか、次も断りますか、分かったらステーキを焼くようにするんですけど焦げればそこで返してください。火は通さなくていいです、表面を焦がすだけです」


焼くのを任せて焼けたオーク肉をどんどん寸胴に入れて弱火でアクを取りる。柔らかくなったらワインで煮込む。


料理長にここまでの手順とこの後の調理の仕方を教えて任せた。


「ここからは、味を調える様なので私がやります」


「お願いします、塩と胡椒で味が整うのでお任せします」


プロには少し見せれば後何をすればいいか分かる。


次にハンバーグだ、料理人が30人位いるので、真似をして貰った。


種を作り焼くところを見せた。味見もして「美味しい、面白い調理法だ」と喜ばれた。


ハンバーグにビーフシチューのタレを掛けて味見をして貰い、ハンバーグに合うような味に調えるのを任せた。


準備が終わったのがお昼頃で、ハンバーグは直前に焼く事が決まり。ビーフシチューは温めるだけになった。


僕の出来る事が終わったので、挨拶もしないでカルテドに向かった。





「メシルさん、おはよう」


「ユーリ、おはよう。お陰で雇って貰えた」


凄い笑顔だ、ギルドの仕事は増えないもんな、毎週2件はあるけれど誰か受けてくれるといいなそれも街に住んでる人がいいな。


「シシル達に会った?」


「あの子達に案内して貰ったのよ」


「そうか、兄弟で同じ街だね」


「そうか、考えてなかった。同じ街にいるんだ」


「近いんだから遊びに行きなよ」


「そうねそうする」





「ジェシー、急ぎだよ。先ずはガーランドの南だ。ブラック君にお土産を落とすだけだけど行こう会いに」


ガラーランドの南の山の峠の登り。


「凄いぞ、氷柱が反対になったような岩山?ジェシー無知でごめん、あれは切り立った山?切り立った岩?どちらなんだと思う」


「ヒヒヒーン」


「そうか、岩かもねと言いたいんだな。あの切り立った岩はどうやって出来たんだ、無数にある」


「高所恐怖症ではないが、あそこの上には立ちたくないな。登れないか」


山も岩が多いくて何かの鉱石が採れそうだ。


金塊を何処かで採った様な記憶があるが忘れた。


この世界でも金は高いのかな。


切り立った岩が周りから無くなってきた。


峠も標高が高く無いので、丘を越えた様な感じだ。


「村が見えてきた、ジェシーはあそこで留守番だ」


ジェシーをお願いして山らしきものを探す。


山が無いので山らしきだ。それか丘の上に岩場とか、人に知られてないから大穴がありそうな所を探す。


ドラゴンが出入りできるほどの大穴は何処にもなかった。おかしいな。地下に続く洞窟その中の大きい広場から上に開いてる大穴の突き出た岩場の上にブラック君はいた。


分からないので洞窟の入口に向かう。


「アサルト村から遠くに洞窟がある。僕の記憶だともっとアサルト村に近いはずだよな。ここの洞窟は何?」


入口がとても大きい、中に入ろう。名刀お姉さんを握る手に力が入る。


「ヒュー、ヒュー」


風が抜ける音がする。もしかして洞窟の奥は無かった。


入ってすぐに大穴、地面には鱗だ、


「拾っておこう、牙もある」


楽しいぞ、この世界の落し物は届けてはいけません。鱗だから。


なにか聞こえる上の方で、穴に落ちない様にギリギリに立って上を見ると空が見えた。


穴は小さかったドラゴンの出入りが出来ない。僕よりは大きいけどそんなに大きい穴ではない。


「隠れてないで出て来なさい、あなたは丸見えです」


僕は隠れているドラゴンに話しかける。


下から見ると天井の様に見えるが、突き出た大岩に少しづつずれて大岩に隠れようと努力しているブラック君。


「まずい、伝説のドラゴンソードを待って勇者が走って来る、ヤバい早くここから出ないと・・・」


「そんな、伝説のドラゴンソードを持った勇者には勝てないよ。どうすれば、そうだこの岩に隠れれば見えない。たまに来る人間には気づかれた事がないんだ」


「今ならラム酒が飲めるので、降りてこないブラック君」


「あれ、僕の事知ってるの、君はだあれ」


まだ隠れているけど会話できるからいいか。


「シュラさんとドラドラさんとは友達なんだ、よかったら降りてこない。少し話をしたいんだ」


僕は危ないので降りて来た時に邪魔にならない様に入口の方に向かって歩く。


後ろで地面に降りた気配がして振り返る。


ブラックドラゴン、見た目は子供の様な顔かな、それも男の子だ。他の人が見ても同じ感想だろう。


シュラさんが白くて美人顔、ドラドラさんはおじいちゃん顔。個人的に人間の愛嬌がある顔をみんなしてる。強そうとか賢そうとかが全くない。失礼な言いかだと可愛いからペットにしたくなると言える顔をしている。


「懐かしいなシュラさんか、じいじも元気なの?」


「元気だよ少し前に会って来た。語尾に『じゃ』と付くんだけど知ってるかな?」


「じいじは『じゃ』なんか付けない。『我はドラゴン、何しに来た』が口癖だよ」


じゃは、エミリー嬢に会った時に何かあったんだな。元気そうなのに年寄りのふりをしていた。


ラム酒を出すと舌を出してきた。ドラドラさんと同じ飲み方だ。シュラさんが瓶の近くに手を出してくれれば、手で酒瓶を咥えたドラゴンに見える。


「甘くて美味しいね、久しぶりに飲んだな」


「今日は挨拶だけしに来たんだ、僕はユーリ、冒険者見習いだよ。1個だけ質問、ブラック君は変身できるかな?」


「僕は出来ないよ、シュラさんとじいじも出来ない。海の向こうのブルー、イエロー、レッド、後何色?」


何故、最後に聞かれたんだ。


「グリーンとかいそうだけどどうかな」


「そうかグリーン、7体いればいい事が起きる。何が起きるのか忘れた」


ドラゴンは長生きでよく忘れる。でもいい事が聞けた、7体のドラゴンが集まればいい事が起きる。


「もう隠れていいよ、帰るから。来れたらお土産を持ってくるよ」


「僕は、甘い物が好きなんだ。だから甘い物を持って来てよ」


体の横を撫でて「分かった、甘い物を持って来るよ、さらばだ友よ」


最後カッコよく言ったが、ブラック君は隠れる為に移動して聞いていなかった。





「こんにちは、金を下ろして下さい。大銀貨5枚」


「はい、カードお預かりします」


お姉さんが僕の銀行口座から下ろす処理をしてくれる。


ここは強い魔物が近くに生息しているアーネストのギルドだ。


久しぶりだ、冒険者なら何度も同じ街や村に行くだろうが僕は違う飽き性だから、それに魔物は何処にでもいるので僕からすると何処に行っても同じ事をするなら色々な所に行きたい。


例外はオーク王国だ、あそこは剣の修行と腹空かしの連中のためのオーク肉の産地だ。


この認識でいいのか分からないが異世界あるあるだから気にしてはいけない。


「はい、カードとお金になります、金額を確認してください」


「ギルマスを呼んでくれ、お姉さん。奴しか、役に立たないんだ」


困り顔のお姉さんは「あの~、何か不手際がございましたか?」


「丁寧な対応で素晴らしいです。ですがギルマスしかこの役は頼めない奴はいますか?」


「はぁ、呼んで来ます」


奴しか出来ない、奴は奴の知り合い。


「なんだ、君か。確かユーリだったかな」


「ここに、大銀貨5枚ある。マキノちゃんと結婚させてくれ、お願いだ。あの焼き鳥を狙う目あれは只者ではない。心を奪われてしまったのだ」


「は~、いや何言ってるんだ。マキノは子供だ君よりも6歳は下だ。まだ早いだろう」


やばいぞ何か悲しそうなオーラを出し始めている。


「まだ早い、よくわかりました。今日の所は諦めます。大銀貨5枚は禿のおやじに返しといて下さい」


「禿おやじ?」


「お子さんが病気で、薬が欲しいと泣いていた禿おやじです」


ギルマスも事のなりゆきが分かり、笑顔になる。


「奴に言っといたから気にしなくていいぞ」


「お金を稼げる様になって大金だったと、お釣りを返そうとカルテドからついでに来たんです。禿のおやじに渡して下さい。それとマキノちゃんは元気ですか?」


「元気にしているよ。母さん、マキノのおばあちゃんがちゃんと見てる」


元気にしてるのか、あの時は迷子と思ったけど、あれが最初の冒険だったんだな。いい冒険者になるな。


「このパリパリは、お土産です。行きますね。禿に返しといてね」


「もう行くのか、お土産ありがとう。奴に返しとくよ」


「お姉さんも食べてね、はい。ポンポンじゃあね」



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