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戻ってきました

「なんだよ、沢を歩いてるみたいに緩やかだ、これなら全力で帰れば街にすぐ着いちゃうよ。1日は掛かるだろうけど」


なんだろう。緩やかな草原を歩く爽やかな少年だよ。


「斜め下からのフウ~、フウ~」


「横からのゴ~、ゴ~」


「後ろからサラサラ~、サラサラ~」


本日も練習をする魔法、少しやけ気味の詠唱、現れない効果。


「ここは、文句を言ってはいけない。僕の情報不足だ。街で聞いたのはドラドラ山が何処にあるかで、行き方ではなかった。それにあそこの人達に会えた、出会いはいいな。みんが『あそこ』と言った時は面白かった」


「あそこ」「あそこだよ」「目の前の山だぞ」色々言い方あるのに、みんなは『あそこ』、面白い。


それに偽ドラドラ山は、ドラドラ山だった。


このまま西に行けばボラジュに着けるぐらいに北上しているはずだ。


頭の中の地図に街道が付け加えられた。ボラジュまでに街とか村とかあるのかな。


忘れていた、何であの5人に聞かなかったんだ。グリュックのみんなに冒険者だから地図が無くても話せば色々聞けたのに。もう引退しているだろうな、みんな年寄りだからな。


緩やかな斜面で歩く速度は少しは速い。街道が見えてきた、山に隠れていてメルーンに続く街道が見えない。西の方に伸びてる街道はよく見える。


「この辺で寝ようかな、魔物はいない草原、どこで寝ても安全」


熊は動物?魔物?この世界の常識が足りない。


「ここで寝よう、寝ていれば熊には襲われない」


干し肉をかじり・・・・寝たふりじゃない、寝ているから襲われない。





「後5分寝かせて下さい、誰か」


僕の顔舐める誰か、舐めて起こす猫か。


驚いて起きると、スライム?が近くにいた。


見た事がある、色が似ている。


僕を舐めていたスライムは話し掛ける前に凄い速さでいなくなった。


「恐ろしい、全力でも追いつけないぞ。重りバンドを外してもおそらく無理。ジェシー、君よりも速いスライムを信じますか。僕は信じます、見たんだから」


でも、追われて走れば更に速く走る練習にはなりそうだ、併せ馬ならぬ併せスライム。


「ごめんよジェシー、君よりも速くなる事を考えてはいけない。そう魔法で速くなるのはいい。いつか君と併せ馬をするよ」


街道にちらちらとあのスライムらしき色が見える。


「もうあそこに居るのか、優しそうなスライムか。もし魔法が使えるなら師匠にしたいな、何か凄い事が出来るスライムに違いない」


誰に話しても信じて貰えない物を見たが、幽霊と同じだ。いるとは言えないが見たとは言える。





「やっと、街道に出た。親切に案内標識とは、ドラドラ山はここから東」


親切だけど帰りに発見して見る、あるあるか。


「下にまだ書いてある。エミリー、知っている人の名前に似ている」


エミリーは何処のエミリーかな。ここはエミリー嬢の広大な庭だよな。


なんか足が重いぞ、振り向くと案内標識。


見なかった事に。あれは誰かの罠だ。テレビのドッキリと同じで見なければ罠に引っかからない。





街が見えてきた、着いた。折れそうな心を取り戻した。


山脈に続く脇道を見た時に、次は通りませんと叫んでスッキリした。


久しぶりなのか分からないが、街の中で市場を目指す。


「この山芋はいくらで買い取って貰えますか?」


「珍しいね、銅貨3枚だね。折れてないしと美味しいんだよね。サイズも大きいから意外と割安かもな」


ほう、ここに儲け話があるな。


「もし定期的とか数が揃っていたらどうなりますか?」


「そうだな、定期的に持ち込むと値が崩れっるけど山芋は折らない様にするのが色々と大変だから、値が崩れない。数が揃えばお客も喜ぶよ」


いい話を聞いたな。そうだキノコはどうだろ。


「このキノコは買い取り出来ますか?」


僕の持っているキノコを見て「それはダメだ、人気が無い。椎茸なら美味しいのでよく売れるが松茸はダメだ。香りだけだないいのは」


ダメなのか、名前は松茸で見た目は普通のキノコ。誰が名前を付けたんだろ松茸、日本人にはありがたがる名前。匂いを嗅いでみると松茸、嗅いでみると「松茸~」あ、つい叫んでしまった。


「ああ、松茸だ。香りだけの松茸」


神様はいない、山のみなさんありがとう。僕は松茸が大好きだ。土瓶蒸しが大好きなんだ。いくら飲んでも飽きないけど、お腹いの調子が悪くなる土瓶蒸し。確かに美味しくないが、土瓶蒸しの汁は美味しい。


「売ってますか?」


「ないよ、売れないからな」


売れないのか、買いだめは危険だから、あの集落に取りに行こう。旅ではありませんので全力で行きます。


「ありがとう、いい事が聞けました」


「そうか、買って行ってくれないか?」


「椎茸を見せて下さい」


おじさんは山の様に積んである椎茸を指さした。


その椎茸を取り匂いを嗅いでみた。椎茸は分かりづらいな、でもそれらしい匂いはするな。


荷物を片して鞄の中を空にする。


「この鞄に入るだけの椎茸を入れて下さい、買いますので」


「そんなに買ってくれるのか、おまけしとくよ」


「ありがとう、カードです」


鞄に詰めてたおじさんがカードを取り「詰めてから処理するから」と言われた。


「はい」




山脈に戻って来た。


あれから色々準備した。リュックを2個を購入して片方には干し肉全部、もう片方は干し肉が半分でラム酒が入るだけ。


集落が見えて来た時に上から手を振る少年が見えた。


「久しぶり、また来たよ」


「干し肉は?」


僕は急いで登り少年の前でぐるり回って見せた。


「このリュック一杯入ってるよ、倉庫に置きに行きたいけどいいかな?」


「うん、いいよ」


倉庫に歩いて向かってると、歩いているおじさんに話し掛けられた。


「また来てくれたのか、誰か嫁にしたいのか?」


「アハハ、違いますよ。ここの綺麗な女性は魅力的ですが、お土産と物々交換がしたくて来ました」


僕はパンパンのリュクを叩いて見せた。


「この中にあります」


「干し肉か、嬉しいなそれもそんなに沢山。良く登って来れたな」


おじさんが、リュックに挟まれた僕を見て笑っている。


なんと、松茸と椎茸を交換して貰う事に成功した。土産の干し肉とラム酒を倉庫に置くと直ぐに下山する事にした。


「いいのかい、今夜は宴会だよ。君が持って来たのに」


「急いでるので、帰ります」


「あれは何だろう、変な布が沢山ロープに付いているけど」


一列に何枚もの水色の布が付いたロープ、崖の下からでも遠くからでも見える様に木と木に結んである。


「あの布が付いてると幸せを運んでくると言われてます」


「幸せを運んで来てくれるのか」


「外さないで下さい、僕が来る時の目印にもなるので」


おじさんは、もう一度見て「邪魔にならないし外さない様にするよ」と言った。





「メルーンはいい街だっけど冒険者は来ないよな、付近に魔物がいないと討伐依頼ももないし、遠くの依頼だとカルテドの方が近そうだな」


キラスト村のギルドによって依頼を確認した。メルーン方面と北の方に向かう依頼は無かった。


キラスト村の南を南下すれば討伐依頼が少しあるが村なので規模的に栄えたて無いのでカルテドとメルーンの中間の宿屋の様に使われているんだろう。


そうだ早く帰って来れたよな。計算してみよう。


オーク王国10日、メルーン2日、服6日、偽ドラドラ山5日、本当の偽ドラドラ山2日、本当のドラドラ山2日、メルーンに紙2日、偽ドラドラ山3日、ドラドラ山2日、メルーン4日、偽ドラドラ3日、メルーン2日、メルーン1日泊、ここまで1日。合計で45日位だ。


「思い出したのを足すと45日、もっと山で日数が掛かってたと思ってたけど、これならまだ旅ができるかな、カルテドには直ぐに着くし何処に行こうかな」


色々できる図面を渡しにローランド、ジェシーなら余裕、ブラック君に挨拶これも余裕。


14日だと急ぎ旅か。図面は早く届けて、かき氷を一日でも早く実現する。


届けよう急いで。名刀が出来ているかも、名刀お姉さんで二刀流。


ローランドに行く用があるから行かないと。


「決まりだ、カルテドまではのんびり歩こう。今回の旅は歩くだ」





カルテドの東門で最後尾に並んで順番待ちだ。


「いたぞ、リュックの少年」


リュックの少年、並んでいる人達を見ると少年がいない。横に出てもう一度確認、青年位の人がいるけどリュックは背負って無い。


両手をつかまれて「え、え、え、」驚くしかできない。


「探したよ、ユーリ君だろ」


「え、僕の事を知ってるんですか?」


「さるお方から頼まれてね、探していたんだ」


馬で来た2人の騎士様、さるお方はどちらかな。お嬢様、伯爵様のどちらかだよね、来た方向からすると。


「では、宿で話しましょう。うちの宿は西側なので近いですよ」


「悪いね、急いでメルーンのさるお方の屋敷に来て欲しいんだ。これ命令だからさあ」


伯爵の命令を僕は受けてないけど、騎士のこの人達に迷惑掛けるのも悪いな。


「分かりました、では向かいます」


「それが急ぎなんだよ、荷物は持つから走って来てくれないか?」


「僕の全力でいいんですか、だいぶ掛かりますよ」


僕は荷物を渡して確認する。ここから4時間は掛かる。


「ユーリ君が速いと聞いている。それに走るのが好きだと聞いているのでお願いします」


そこまで言われたら、全力で行こう。数日の登山で鍛えて昨日はのんびりと過ごして疲れてない。


「では、全力で走ります」





4時間全力は辛かった、だが今は最高に嬉しい。


「馬に勝ったぞ。ついに僕の足は速くなった、僕に追いつけるのはジェシーしかいない」


追いついて来た騎士のおじさんが「速いね、行きに全力で走らなければ負けなかったのにな」と言われてしまった。


僕の幸せは1分はあったかな。


「案内して下さい、どこですか?」


「あんなに大きい屋敷を案内するのか」


見慣れているお城、あれか見慣れすぎて屋敷と認識できないよ。領主様はほとんどお城住んでいる。あれ僕は、アンバー嬢の屋敷に行ったけど、あの時点で領主様の屋敷?に入っていたんだ。


屋敷と言う名のお城は、領主様の屋敷。お城に見えるけど。常識が足りてないな僕。


ここから見える屋敷に歩いて行く。騎士の人も馬から降りて僕の前を歩いている。


「しかし、どんな鍛え方をすると足は速くなるんだ」


「秘密です。馬に乗れる騎士様は、速く走れなくてもいいんです」


「秘密か、速く走るのは諦めるよ」


若い騎士様は楽しそうだ。


「ガラガラガラガラガラ~」


上に上がらないのはないのか、重そうだ回すの。


回してみたいな、1人ですれば筋トレに。迷惑か。

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