山芋と図面
「すいません、メシルさんいますか?」
「いないよ、何でもお菓子屋さんに仕事が決まったらしくて。良かったよ、真面目な子だから仕事が無いのが辛そうだった」
「そうですか、教えてくれて、ありがとうございます」
「おじさん干し肉50日分下さい」
「また補充か、その他の物は食べないのかい?」
「食べません旅の間は」
「そうか、街で何か食って行けよ」
「ありがとう、また来ます」
カードを返してもらう。
「山芋は無いよ。探すのが大変なんだ、それに折れると不味くなる。折れない様にするのも大変だ」
「ありがとう、他を探します」
メルーンの北の街道から脇道に入った所を歩いている。街道は全力走りだ。
眠くなってきたので大岩を探すが、近くに無い。
「頑張りすぎた、フラフラです」
周りを見る、暗くて遠くが見えない。
少し集中して聞き耳する。
「もしかしたら、何処でも安全かも」
結論が出たとそこに倒れ込む。もう歩かん、ここで寝る。
「お腹空いたけど、食べれない。かじりながら・・・・・・・・・・・う」
「どんどん登る~、右手に名刀お姉さん~左手だけで登る登山、左手を鍛えて鍛えて~完璧な二刀流~五右衛門は越えられない~それでも近づくぞ、いっか~」
強くなれそうな歌だった。まだ3合目位だ。
「歌は上手くならないらしいな僕は」
「バキューン、バキューン、バキューン」
「バキューン、バキューン、バキューン」
魔法は今日も不調だ、不調て言葉はいいな魔法が使えるみたいだ。
「下からだと集落が見えない。振り向くとドラドラ山、見た感じだともうすぐだ」
「おお、着いた。集落だ」
「あんれどうすた」
「こんばんは、山芋はありませんか?」
おばあちゃんが僕を見つけて来てくれたので聞いてみた。
「山芋かい、沢山あるけど飽きるべ、毎日だと」
毎日食べてるんだ。ここは全てを出そう。
「この鞄に入るだけの山芋を分けて下さい」
「よかよ、持っていき」
「それで、みなさんがラム酒を喜んでくれたので持って来ました」
「ほんとかい、直ぐに知らせないと宴会だよ」
あのなまりはわざとか、僕よりやる人がここに居た。ちょっとだけだけど。
こないだのお姉さんだ、後ろから樽がくるぞ。
「よく来たラム酒、よく来た少年、こんなに来てくれるお客は初めて」
僕がラム酒を10本出すと5本は何処かに持って行った。
残りはこないだと同じだ。
カップを渡され少し飲む。
お姉さんに返すとその後も同じだが、ここで言わないと。
「今日は干し肉を配りますので山芋は食べなくていいです」
「おお、お客人干し肉を持っているのか、何年ぶりだ」
おじさんが興奮している。手に持っている干し肉を見て毎日食ってるよ僕。
「俺は4年ぶりか」「私は2年ぶりかな」「覚えてないな」「1年前に食べてるのを見たな」
「僕は2日前」
「「「「「「「「何~何処で拾った」」」」」」」
「4日前にも食べた」
「「「「「「「「だから何処で拾ったんだ」」」」」」」」
「この人に貰った」
みんなの視線が痛いです。
「今配りますから、それに何日か食べれる分を置いて行きます」
ラム酒を早く飲みたい人もいるだろうと急いで干し肉を配る。
ラム酒を飲まない少年に、干し肉を置いとく場所を聞いた。
その話が聞こえたおじさんが「山芋が欲しいんだろ、同じ場所だから案内する」
食料庫はとても大きい建物だった。
「ありがとう、みんな喜んでる。ここは山芋ばかり食べているから、特に加工したものは珍しい。お酒もそんなに飲まなくてもいいが、飲みたい奴もいる。物が少ないんだ」
「どうして街に買いに行ったり、山芋を売ったりしないんですか?」
「不思議かもしれないが我々は山から出ない、ドラドラ山の守り人だ。この地から出ない。街と交流をと言い出した者はいたが交流すればここには帰ってこない。だから厳しいかも知れないがあまり遠くまで行くのを禁じている」
大変だな。少年が純粋に「頂戴」を言っていたんだと、それはあたり前か、ドラゴンを見守る人達。
最高だ、偉い、尊敬する。でも僕には出来ない。暇なのが嫌い、同じ事の繰り返し飽きる。
「何かいい事があるといいでね」
「君が来てくれた、久しぶりのお客だ。みんな喜んでる。ラム酒も飲めるしな」
「後は自分で出来ます、みんなの所に行ってラム酒を飲んで下さい」
「そうか、ありがとう」
おじさんがいなくなり、干し肉を木箱に入れる。その横の木箱にキノコが入っている。
山で採れるキノコか、鞄に山芋を入れる。あまり持って行っても悪いのでほどほどにする。
「ゴト」後ろで音がしたので振り返ると少年がこちらに歩いて来る。
「どうしたの、干し肉でも取りに来た?」
少年は、僕の横を通り過ぎて「これ嫌い、美味しくない。あげる」
キノコを鞄に詰め込む。
「その位でいいよ、ありがとう。美味しいキノコはあるのかな?」
「あるけど、珍しいから見つけられない」
「美味しい方も見たかったな」
僕は鞄を持って外に出る。折らない様に気を付けよう。
「寝るならあそこ」
指差して場所を教えてくれるが、そこは少年の家だった。
「お世話になります」
「のんびり降りるのは疲れるな、山芋が折れない様に慎重に」
ドラドラさんに美味しい山芋を届ける為にのんびりと降りている。
勿論湧き水も入れて貰ったので、瓶が割れない様にしないといけない。
3合目まで来れたので傾斜は緩やかになってきた。
「ユーリ、急いではいけません、山芋が折れてしまいます」
「ユーリ、エミリー様の言う通りです、折ってはいけませんよ」
「そうです、エミリー様、アンバー様が心配しておりますよ。ユーリ」
「僕も心配だ、折れたら美味しく食べられないぞ。ユーリ」
「似ていた、凄く似ていた。今度はオーク肉バージョンを練習だ」
「ユーリ、オーク肉が足りませんよ。難しいオーク肉の時はどんな事を言ってるんだろう、覚えてないな」
モノマネの練習が出来るぐらい斜面は緩やかになり小川を渡る。
麓まで2.3時間掛かるんだよな。
「忘れていた、手は動かしていいんだ。何か出来ないかな」
思いつかない。そんな時は魔法の練習だ。
「バキューン、バキューン、バキューン」
7合目の大岩で寝た、ここまで聞こえたいびき。
「グゴ~グゴ~、グゴ~グゴ~、グゴ~グゴ~、グゴ~グゴ~、グゴ~グゴ~、グゴ~グゴ~」
何処から出ている音なんだろう。
干し肉をかじる。少年が少しくれた干し肉だ。
僕が全部出したのを見てたのか、それともスキル透視が出来る少年かどちらだろう。いい子だ。
「のんびり登るぞ、美味しいのを届けるんだ。料理と変わらない、美味しい物を届ける」
僕は父さんの子だ、美味しい物が大好き。作るのも好き、才能は無し。ずるい知識あり。
もう父さんにビーフシチューでは比べれない位差が付いてる、それでいいのだ後はプロにお任せだ。
叔父さんとも差が付いてる。プロと比べるのは間違いだ。
のんびり登ると色々考えれるな。
冷たくなる魔道具が出来たらかき氷だ。
「そこは違うのじゃ、こうなのじゃ」
地面にドラドラさんの書いた図面?を書く。僕には解読できない。元日本人の僕が分からない、凄い。
どこがと聞かれたら図面なのに法則みたいが無いような感じだ。線が途中で切れたり、数が増えたり減ったりと不規則。もしかしたら不規則に最大の謎、それが分かるのがローランドの研究者だろうな。
「今度は書けてますか?」
「似てきたのじゃ、そこが違うのじゃ」
なるほど他にも謎があり、これ以上知ってしまうと自分で作りたくなる。僕は勉強が嫌いだ。
だけどこの図面は好き。謎が多いからだ、体育以外で得意のだったのが算数、数学。大嫌いなのが歴史。昔の人の戦争とかが嫌い、後名前覚えられません。面白いのが、友達が歴史の赤点を取った、友達は工業高校だったが、歴史の追試が歴史上の人物の読み方?名前が読めればいいらしい。難しい人いたかな?
「何を考えているじゃ、早く書くのじゃ」
「すいません、懐かしい事を思い出していました。こうなってこうかな。どうですか?」
「才能を感じるのじゃ、おぬし変なのじゃ」
ドラドラさんのと同じ様に書く事が出来た。なるほど秘密2を見つけた。長さも大事。
これを小型にするのは大変だ、流石魔道具。僕には作れないな。残念だ、この先はプロにお任せだ。
そうなのだ、使う材料の違い大きさそれはプロしか分からない。
でも考える事はいい事だ分からなくても。
「おぬし、何かの研究者なのかじゃ」
本当にじゃがおかしいよ、ドラドラさん。
「研究者じゃありません、知りたい事が沢山あって少しでも謎があれば興味が湧く子供です」
「興味深い考えじゃ、そろそろ山芋が食べたいのじゃ」
食べたばかりなのに。
「どうぞ、湧き水もありますからどんどん食べて下さい。それで質問しますので、答えられたら答えて下さい。お願いします」
「質問するのじゃ」
この言葉はカッコいいな。質問するのじゃ、いつか誰かに言ってみたいな。
「シュラさん、ブラック君、レッドちゃん、みんなドラゴンです」
「我は最古のドラゴンじゃ、全てのドラゴンを知っているのじゃ」
きた~、この瞬間に僕の人生が大きく?何か変わるかな。
「ドラゴンの名前を教えて貰ませんか?」
「知っている様で知らないのじゃ。名前は元々無いのじゃ。友達に付けて貰うのじゃ」
そうなんだ、そうすると色で呼んでるレッドちゃんにブラック君は名前の可能性があるのか。
僕が付けた様な名前のブラック君にレッドちゃんか、元の世界で飼っていたアライグマの名前はクマだった。散歩に連れ歩くとあらタヌキとよく言われた。
言われた時、タヌキて飼う動物なのかと考えた。
そうすると他のドラゴンは色で呼ぶとして何処に居るんだ。
「僕が言ったドラゴン以外は何処に居るか分かりますか?」
「分からんのじゃ、海の向こうじゃ」
分からないのに海の向こう。
「それはこの大陸には居ない事はわかっているが、海の向こうには居るんですか?」
「そうなんじゃ。海の向こうじゃ」
後の3体は海の向こうか、ローランドの西側になるな。
ローランドの西側がどうなっているのか何も知らない。
わくわくしてきた知らない事は知ればいい、歩いてする冒険の良さが少し分かった。
考えながら、湧き水を舌の上に垂らしていく。
大事な事を忘れていた。
「ドラゴンの中に変身、姿が変わるドラゴンはいますか?それとどのドラゴンが出来るか分かりますか?」
「いるんじゃ、誰が出来るか忘れたのじゃ」
ああ~、姿が変わってたら探せないよ。
「それとこの近くに魔物がいないのは何故か知っていますか?」
難しい質問かな、分からない事もあるし忘れている事もあるんだよな。
魔法で忘れている事を思い出すこと出来ないのかな。
催眠術は信じてないし、長生きしてるんだから忘れてもいいのか。
「我がこの地を守っているじゃ、我は魔物を何かで遠ざけてるのじゃ、忘れたのじゃ」
その秘密が分かれば他のドラゴンも出来るのかな。
忘れてるから聞いても答えは出ないよな。
他に聞く事は、思い出せない。聞きたい事は聞いたよね。
カルテドからそんなに遠くないからまた来ればいいや。
「ありがとうございました。色々教えて頂き感謝してます」
目的の旅が終わった・・・・・・終わってない。
「落ちている鱗は貰っていいですか?」
「そうじするのじゃ、邪魔な時があるのじゃ」
沢山ある鱗に牙、掃除するかな。
「それでは、僕がチョロチョロしますけど潰さないで下さい」
おじいさんドラゴンのドラドラさん体の下を鱗をと牙を拾うのはドキドキだ。
嬉しいドキドキではないのが自分でもわかる。段々下に天井が落ちてくるアレの様だ。
遺跡にそんな大掛かりな仕掛けを作れないのに映画で見たな。
今は映画の中の主人公が迫りくる天井を気にしながら金塊を拾っている。
「急げ、持ち帰らないと全ての謎が潰れてしまう」
こんな感じのセリフでいいのか。
ドラドラさんの住処は綺麗になった。
帰る準備をする、鞄からリュックを出して入れ替える。
鞄にキノコ、リュックにお宝。3個目の鱗が手に入った。
「ありがとうございます。また来ます」
「また来るのじゃ、お土産を持って来るのじゃ」
お礼とお辞儀をして、降りて来た山頂の縁を登る為に手を掛けると。
「近くの街に帰るのじゃ、後ろが緩やかじゃ」
後ろにこちらよりも緩やかな斜面があるのか、ではそちら側から帰るか。
「ありがとう、そちら側から帰ります」
掛けた手を放し、教えて貰った縁に手をかけ登る。
緩やかだとても、その言葉以外ない。
努力をして登って来て、帰る時に見たくない光景がここにある。
滑り台の台の角度が間違ったのと言いたいぐらい。
「この角度だと押して貰っても滑らない、雪の上なら何とか・・・・・」
後ろからドラドラさんが「嬉しくないのか緩やかじゃ」
「とても嬉しくて、感動していたところでした。雪があれば子供用のソリでここ長くていいねと言えるぐらいに感動してました」
「我も嬉しいのじゃ」
「さようなら、ドラドラさん」




