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ドラドラ山

寝ていて物音が聞こえないほど静かな山に朝日が射し込んできた。


「キラキラ光って綺麗だ、最高の景色だな」


前世で最高の景色だと都会のネオンや窓の光を確か100万ドルとかと言っている人がいるけど、作り物なら前世の技術があれば何でも出来る。でも自然はこんなにも綺麗で神秘的だ。この景色を東京の人に見せたら喜ぶだろうな、僕が喜んでいるんだから。


感動していたがお腹が空いたので、素晴らしい景色を見ながら干し肉をかじる。


「美味しい、景色も良いけど干し肉は最高だ」


「ガサッ、ガサーッ、ガササー」


干し肉をかじりながら音のした草花に視線を向けると、8歳位の少年がこちらを見て立っていた。


音は草をかき分けて来た音だったんだな。


「おはよう、この辺に住んでるの?」


僕が話しかけたけど返答がない、でも、続けて話す。


「ここはドラドラ山かな、知ってたら教えてくれないかな?」


少年は僕の方をジィーと見ている。


「頂戴」


初めて話した言葉が頂戴。


僕はここで考えた。この少年に何をあげればいいんだ。


がじっている干し肉を見て、新しい干し肉を鞄から出して少年に渡した。


干し肉で良かったのかな。


「それでドラドラ山は何処か分かるかな?」


「あそこ」


少年の指差した山はここからだと目の前の山だ。8分の1は外れていた。


「そうかあそこがドラドラ山か、あれ、あの少年がいない」


ドラドラ山を教えて貰い喜んでいたら少年はいなくなっていた。


干し肉を食べ終わると、今まで登って来た道のりに視線を向けた。


「ここまで登ったのに間違っていた」


少年は、この近く?に住んでるのか、ここから村や集落は見えない。





「ふ、なかなかやるな山の斜面。ここ最近僕に擦り傷を負わせたのはお前だけだ」


降りるのは速かった。スキーの板なしで滑った経験を思い出し踵で滑る様に降りていた。


思いのほか楽に降りれるのでジャンプした、運動神経がいいので踵で着地「完璧」と思った。


うん、そこまでは完璧だったが地面は崩れた。斜面は急なので直ぐには止まれなかった。


目の前に大きな木、少しでも衝撃を少なくする為に名刀お姉さんを真ん中に、足を開いて木を突いた。


木は倒れて僕は止まる事が出来たが、この行為の危なさを考え付かなかった。


足を開いて木の方に滑る。もし名刀お姉さんが弾かれたりしたら、僕の大事なところは危なかった。


麓について袖を上げて見ると、擦り傷があった。


「いつか偽ドラドラ山を制覇してやる。そしてそこに山があるからと叫んでやる」




麓から麓まで大分あったな。約半日掛った。


「どうするかな、このまま登って大岩の上で寝るのと、ここで寝るのと」


周りを見るとなだらかだ、魔物はいないがもしもがある。


「登ろう時間はまだあるが、学園の休みから何日経っているのかな?」


憶えてない。登りながら考えよう。


「まずメルーンには1日で着いたはずだ、全力で走ったのを覚えている。その後は何かしてから、オークの王国に向かった。久しぶりのジェシーは速くて、おそらく1日で猫の宿に着いてそのまま王国入り、その後は7日間と決めていた。王国の後に猫の宿で1泊して、メルーンに2日後に着いたとして。それから」


ここまではいい感じで思い出せた。この後は。


「そうだネズミだ、孔明様が逃げて仲達様が踏ん張り2.3日で攻略した。その後に街を出て服を買いに戻り今ここに」


「うん、何故か最近が思い出せない。澄んだ空気がのんびりしろと自然に帰れと言ってるんだな」


「そうだ、学園には遅れてもいいドラゴンがそこに居るんだ」


考えるのをやめた。計算は得意だが覚えてない数は足せない。


うん、少し名言ぽくていいな。


大分登って来れたな、大岩があるのであそこが今晩の寝床だ。


「偽ドラドラ山が見える、やはりあの山の方が標高は高いな」


大岩に座る。気分を出すために横になり干し肉をかじる。


「下界が見える、あそこでは何をしているんだ」


取り敢えず山の仙人になる。


「いつか下に降りてみるか」


独り言も慣れてきた、あの少年に会わなければ目的の山は分からない、人に会わなかった可能性もあるな。感謝だ。


仙人は疲れたので寝る。




おそらく8合目ぐらい、あの大岩からここまで来るのに、朝起きてからお昼過ぎ位に着いた。


休憩場所は大岩に決定した。これからも休憩するなら大岩にする事にした。


後2回ぐらい大岩の上を利用する予定だ。


大岩に座り干し肉を食べる、ここから見える景色も最高だ。


飛んでる鳥も見える。


「バキューン」


今のは物理魔法だ。ある物体を作り出して、狙った標的に当てる。


鳥は飛んでいる、怪我が無くて良かった。


「素晴らしい魔法は次の機会だ」


魔法の練習をしないと、ここでは剣術の練習は出来ないから。


「バキューン以外に無いのかいい擬音。ヒューンは外れそうだしな。難しい、擬音を考えよう」


水を飲んで「ピュー、水鉄砲は水魔法だ、物理で」


無い、考えたが爆発音と風を切る音の組み合わせにいいのがない。


「バキューン、バキューン、バキューン」


物理魔法の練習はバキューンに決まった。


休憩兼魔法の練習が終わって立ち上がると、真横より少し下に集落がある。


この急斜面にえぐられて平な場所に集落が見える。


意外と大きい集落は、木造の建物が20軒ほどあるようだ。


どうして住めるようにえぐられてるのか分からないが集落がある。


ここからなら1時間もかからずに行けそうだ。


「迷うな、行ってみたいけど。そうだ、あの集落でドラゴンにお土産に何がいいか聞こう。ラム酒だけでは失礼だ」




「まあ飲みなさい、美味しい水だから」


「冷たくて、美味しいです」


いい集落だ、最初は警戒していたがドラゴンを探していると答えたら。


『そうか~、あの伝説のドラゴンを探す旅か、若い者は夢がある』


歓迎されたのである。久しぶりの客人で本当に本当に小さい飲み会になっている。


5人の大人に囲まれて飲んでいるのは湧き水なので、僕は聞いてしまった。


「他の人が参加していないのはいいんですけど、こんな時はお酒を飲みませんか?」


僕は飲めないけど、大人ならと聞いてみた。


「お酒を買うお金が無いんじゃ、このとおり何もない集落だ山芋でもかじって過ごしているよ」


僕の鞄の中にはラム酒が、たいして親切にして貰ってないがドラゴンも毎回酒好きだとは限らない。


「よろしければ、飲みますかラム酒ですけど」


「なんと、おしゃれな名前のお酒だな。美味しいのかラム酒は?」


「さあ、僕は飲んだ事がありません。子供ですから」


長老みたいなおじさんが拍手すると、ここに居ない人達がどんどん来る。60人位かそれ以上いるかもしれない人達が周りに来て戻って行った。その際に何か小声で話していた。


女性が樽を運んでくる。3人で運んで来たので中は重たい物が入っているんだろう。


僕の前には火が起こしてあり、僕の所に来て手で邪魔と手を振られる。


火から離れ見ていると女性が手を出して「出して下さい」と。


出して下さいの意味が分かると直ぐに鞄からラム酒を3本取り出して渡した、すると樽の中に全部注いだ。


かき混ぜる棒でかき混ぜてカップに注いで渡された。


「僕は飲めません、どうぞみなさんで飲んで下さい」


女性は首を振り「ダメ、含むだけでもいいから、それしないとみんなが飲めない。貰い物の最初は本人が飲む、その後みんなにふるわれる、だから飲む」


仕方がないな、慣わしなら飲まないと、それにみんなの期待の目が僕に注がれている。


少しだけ口に含み飲む、美味しいな・・・・・・・ラム酒割だ、水の味に何かの味だ。


僕はカップを返した。


「お酒だ~」「何年ぶりだ」「初めてだ」「薄いのに酔うなよ」


色々と声を上げながら自らのカップを突き出すみんな、それに注ぎ込んでいく若い女性たち。


楽しそうだな。そうだドラドラ山に今でもドラゴンがいるか聞いてみるか、こんなに居れば誰か見た事がある人もいるかもしれない。


「すいません、みなさんの中にドラドラ山のドラゴンが何処に居るか知っている人はいますか?」


僕の声がよく聞こえたのかみんなの声が重なる。


「「「「「「「あそこ」」」」」」ほぼ全員でいいだろう。それだけのあそこを聞いた。


僕は見た「あそこ」を目の前の素晴らしい景色の先に在る標高の一番高い山。


あそことみんなが指差す先は、偽ドラドラ山だ。


今いる山の山頂を指さして「あそこ」と言うと。


僕の指をつかみ方向を変えて「あそこ」と。


あそこか、2日前にあそこに居たな。あの少年が確か「あそこ」と教えてくれた。


あそこにドラゴンが居るんだ。


泣きたいのを我慢して干し肉をかじると「頂戴」と聞こえて声の主を見た。


この子か、欲し肉を出して直ぐに渡して「どうして?」これだけでいいだろう。


子供は干し肉をかじりながら「直ぐにくれなかった」と言った。


そんなに渡すのが遅かったのだろうか。


まあいいか、あそこにドラゴンが居る。


夜はどうするかと考えてると。


「泊まりに来る、お礼に泊っていいよ」


いい子だ、お言葉に甘える事にした。

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