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始めての登山

「本当に終わったのね、もう依頼の束が無い」


「大変ですね、いやまさかねえ」


「何いつてるのよ?」


「だってほら、掲示板見てよ依頼書が貼ってない」


僕が指差す掲示板には何も貼ってない。


その横の掲示板にも何もない。


最後の掲示板にも何もない。


「だからどうなの?」


「仕事がなくなりました」


メシルさんの肩を叩く「ポンポン」と。


紙とペンを借りて手紙を書く。




ブラウニング伯爵



はじめまして、突然のお手紙をお出しする事をお許しください。


今回お渡しした商品の権利をお譲りしたく、お手紙を書かせていただいています。


この商品を街の食堂、食べ物を扱う店に設置するとネズミが捕れます。


ネズミの食料被害でお困りの場合にお使いください。


この商品を作った工房は説明書に書いてあります。地図もありますので参考にして下さい。




あまり長いと丁寧な言葉が思いつかない、これでいいか。


静かなメシルさんどうしたのかな。


「シシルとルチルには元気で働いてると伝えときました」


2人に聞こえてたよな。寝てたけど。


「私の仕事はなくなりました。今する仕事がありません」


ギルドの仕事の事は分からないけどクエストが無いとどうなるんだろう?


「ほら、依頼が来るよ。来ないほうがいいのか。どうなんだ」


魔物の討伐も冒険者には必要だけど、近隣の村とか集落だと困るよな。いない方がいいのは分かるけど。


「当分の間、何もすることがない」


この当分はどのくらいの時間表してるなかな、それと沈み過ぎのような感じがするけど。


「久しぶりに暇になったと思えばいいかと思いますよ」


「いつも暇なんです。まだ掲示板にオークの肉のクエストが貼ってある方が仕事があるような感じでした。今はそれもありません」


そんなにギルドの仕事がしたいのか、それとも働くのが好きなのか。


「その、違う仕事を探すとかは駄目なんですか、ギルドの仕事がないなら忙しくなるまで違う仕事をして、忙しくなったら戻ってくるとか」


メシルさんは下を向いたまま「ここのギルドは忙しくなる事などありません。忙しかったのはオーク肉が送られて来た時だけです」


街は大きけど近隣の安全管理が行き届いてるから魔物がいない。街の人にはいいけど、ギルドは仕事が少ない。


「仕事は直ぐに見つからないし、もう暇なのは嫌なんです」


気持ちは分かる、それもすごく分かる。僕も暇は嫌いだ。


自分から忙しくしてしまう事があるがそれは一遍が好きだから、大事になるけど普通に時間を過ごせる方がいいよな。


直ぐに仕事は見つからないか・・・・お菓子屋さんでもいいのかな、聞いてみるか。


「僕の知り合いに、忙しいお菓子の店で店員を募集してるんですけどメシルさんはどう思います」


「お菓子屋さんですか、素晴らしいです。あの甘味、柔らかい食感最高です」


違うお菓子屋さんだけど、そうだあれ食べて貰おう。


「お土産のお菓子食べてくれました?」


「まだ食べていません」


「今食べて下さい。これは就職試験です」


「分かりました直ぐに食べます」


食べ始めるメシルさん。


「パリパリ、パリパリ、パリパリ、パリパリ」


どんどん食べるので止めないと。


「はい、食べるのをやめて下さい」


食べるのをやめて真剣な目でこちらを見るメシルさん。


「では、今食べたお菓子の感想を聞かせて下さい」


メシルさんは考え中・・・・・・・


「美味しいです。それにパリパリして変わった食感です。少し甘いのが私好みでした」


凄い優秀さを感じさせる、パキパキと答えてくれたメシルさん。ここで聞いてみよう。


「このお菓子のお店で働くとしたら、このお菓子にどんな名前を付けますか?」


「そうですね、パリパリがいいです」


メシルさんの両手を取って「採用です、おめでとう」


「本当ですか嬉しいです。いつから仕事できますか?」


メシルさんのテンションがおかしい。クスリでもしたかのか疑う程に違う。


もしかして冒険ギルドの仕事は嫌いだったのか・・・聞かない方がいいな。


母さんの心得にあったか分からないが女性の事情は聴くな。うん、ありそうだ。


「直ぐに旅立った方がいいです。いつカルテドの方で私を雇ってと女の子が現れるか分かりません。場所は上手く伝えられないので、エルザの宿にいる、朝からハンバーグを食べれる姉妹に聞いてください。もしくは案内をして貰ってください。急いでください、あなたをお菓子屋さんが待っています」


「分かりました、すぐに向かいます。ありがとうございます」


満面の笑顔で「ギルドマスター様、お話があります」


用が済んだので、ギルドを出たら。忘れていた、手紙は誰が出すんだ、予定ではメシルさんにお願いしょうと思っていた。だが、誰も知り合いがいない。


親方にお願いする事を思いつき、誰に頼まれたか聞かれたら優しそうな女性だと答えてとお願いした。


ついにドラゴンの旅に出れる、それにこの危険な地域から出ないといけない。


「ユーリ、わたくしビーフシチューが食べたいですわね」と言われそうだ。


作るのはいいが、それはドラゴンと会えたり友達になった後だ。そうこの予定は変えられない。


僕の冒険者としてのまだ駆け出しだが、この地域は危ないと直ぐ離れなさいと感じている。


最後いいな、感じている。


よし、干し肉を沢山買ってのんびりと登山だ。




「この服は暖かいですか?」


「暖かいけど女物だよ」


「男物で暖かい服下さい」


「これだけだよ男物は」


女性物は綺麗な水色、好きな色なので確認したが、このデザインのどこが女性物なのか分からない。


胸の所が何か違うなら僕でもわかるが、性別関係なく着れそう服なのに、男物は茶色の赤が濃い感じ。


レンガに茶色を入れた様な色、買う人いるのかな。ダサイ服と呼べるレベルの服だ。


そうだこれだけしかないんだ。


「その服下さい」


支払いを済ませて干し肉を買いに行く。


「干し肉6日分下さい」


「6日前にも来たけど、もう無くなったのかい」


「いえ、無くなった分の補充です。これから旅に出ます」


「そうかい、頑張りな寒いから厚着は忘れんなよ」


「はい、ありがとう」






北の街道を歩く僕、一度脇道近くまで行ったが寒くて戻って服を買いに来た。


干し肉屋さんのおじさんに同じ事を言われたが、少しぐらいの寒さなら大丈夫と持っている服だけでドラドラ山を目指して街の街道を北上したが寒くて買いに戻った。


食べた分の干し肉も買いに行った、同じ忠告をされたのだ。


地元の人の話を素直に聞かないといけないとつくづく思った。


そうあれは、高校2年夏に友達と北海道にツーリングに行った。


友達の親戚に北海道に夏はないよと忠告されて、夏でも着れる薄いお洒落なパーカー。


1万5千円もした。網目でゆったりとしたデザイン、おそらくこの服どうと聞けば、男女問わず欲しいと言うだろう、その服を持って行った。


しかし着いた北海道は寒い、持って来たお洒落なパーカーは夏用。


北海道に親戚がいた友達も他の友達も北海道の人の話を涼しいぐらいに捉えていた。


夏はないよ、寒いからジャンバーとか持って来た方がいいよと忠告されていた。


そう現地の人が言ってくれたのは寒い思いをしながら旅は辛いから、暑いなら着なくてもいいから準備だけはしとかないといけないよ。


しかし一番の問題は、夏頃に冬用のローブを買った、怪しい店でそれも温かくなる効果付き。


冬になれば寒いだろう露店のリカちゃんにあげて、寒くなってから買えばいいと思い忘れていた。


「着てみたかった。効果の確認をしてみたかった。夏用は要らない、見た目暑苦しい」


歩きながら出来る事を考える。


久しぶりに、おじいちゃんの様な素晴らしい物を作りたいな。


凄いのは自作のカート。子供の乗るカートだ、タイヤとハンドル以外は鉄で出来ていてデザインは将棋の駒の形だ。ペダルも鉄だし椅子も鉄、右にギアチェンジ用のレバーが付いてる。レバーは飾りだがあれば子供が喜ぶ。


あのカートが素晴らしいのかと言われれば「別に」だろう。自作が凄かった。お金を出して買えば電動の時代に自作で作るおじいちゃん最高だ。


アイデアが浮かばない。


しまった、もんじゃ焼きを食べてない、大好きなのに。


1年ぐらい前に作れると、食べれると思ったのに。


「歩いて行くのが辛い。走って行きたいけど今回は歩いて旅をする、決定事項だ」


暇なのでロープを作る事にしたので歩きながの蔓の皮を剥く。


手に持てるだけ作り、野営の時に繊維を柔らかくする。


気が付いた事は、動物と魔物に遭遇しない。いる気配も感じられない。


農家を見かけなくなってから大岩が街道の横に置かれている様な感じ続いている。


今日は大岩の上で寝る事にした。




寒さ対策は完璧だ、重りの部分がひんやりして「うひ」と変な声を出す事があるが、戻って買った服はとても暖かい。


東京のお店と新潟のお店、扱ってる商品は同じでも生地の厚さが違う。


メルーンの街の服もこの地域に合わせた厚さのある服だろう。


歩いている沢の小川は「チョロチョロ」と音がする。夏なら涼しそうに聞こえるだろう。


街道から脇道に入り小動物が時折音を立てて逃げていく。


別世界だこれで雪でも振っていれば旅館を建てて経営してお客を提灯片手に案内すれば大観光地だ。


6日経ったが誰にも会わないのはしょうがない。でも会いたい、だってどこがドラドラ山なのか分からない。


無謀だ、街道から歩いて3日、周りに山があるが登山するためには山の麓まで行かないとダメなのに、ここから見える麓と呼べる所までが遠い、そして山、山、山。今の位置から見える山が8個ある。山の数え方が個か分からないが8個?ある。この沢からどこに向かうかで休みが終わってしまうか決まりそうだ。


3個ぐらいなら行けそうだが、確率が悪い。


運に任せる作戦が一番いいかも知れない。


落ちている枝を拾い、地面に立っている様にして頭を付けて回るひたすら回る。


これ得意ではないが負けた事が無い、運動神経に方向感覚のすぐれた僕は負け無しだ。


今は1人でそのグルグルをしている。


時間にして3分は回っているはずだ、気持ち悪いがまだ足元に余裕がある。


それから少ししてその時はきた。その場に立ち1回転回る。流石に歩けない、1歩踏み出して倒れた。


倒れた所でぐるぐるの効果が無くなるの待つ。


気持ち悪いのが無くなり、立つ気になり前方を見る。あの山がドラドラ山だ。


まだ沢だから山の麓まで距離が歩いて2.3時間掛かりそうだ。


小川から水を革袋に入れる。湧き水があればいいけど無いと次はいつ見つけられるか分からない。


この水を汲みが今のお気に入りだ、変化があまりないので冒険者気分にさせてくれるのが水汲み。


僕は水の心配をしていぞと自己満足している。




「きた~。麓に着いた。僕の想像では道があるよね。でも無いよ」


キョロキョロとついでにジャンプして見たが、道が無い。


もしかしたら呼んだら来てくれる。


「僕は~ユーリ、ドラゴンのあなたに会いに来ました~。降りてきて下さい~」


呼んでみて、待たないといけないよなあと30分ほど待ってみた。


「この山はドラドラ山だよな、8分の1の確率で倒れたんだから」


あの恐ろしい経験をした。グルグルはいいがその後の倒れてから起きるまでが長かった。もうしないと決めた。決めた理由がもう一つある、歩いて来た街道の方に倒れたらどうするんだ僕・・・・・


登ろう。道はないが登れない程ではない。


始めは緩やかで歩いてる感じで登れていたが、徐々に傾斜がきつくなってきた。


木に手をかけて落ちない様にしたり、岩をよじ登ったりと段々プロの登山家が登る様な斜面に見える様になってきた。


今いる所は、山の中腹より上の7合目か8合目ぐらいだと思う。


お腹が空いたので一休みと突き出た大岩ので登って来た方を向いて座る。


「良くここまで登れたな、プロの登山家がフル装備で登りそうな斜面が続いたな」


ここからの景色を楽しむ。


「残りの山も標高が高いなこのドラドラ山が一番高そうだけど、他は同じ位かな」


登山をして眠くなってきたな、暗くなってきてるしここでいいかな。


荷物から敷物と掛ける毛布を出して横になる。


「魔物がいないなこの辺には、メルーンの巡回とは関係ないのかもしれない。気配が分かるわけではないけど、ここにはと感じるよな。動物は逃げるけど、魔物は襲って来るのに街から出て1回も魔物を見てない」


声に出して再度確認する。ここは魔物がいないと。

「ここにはいない」

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