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代わりに数えて

大きい鞄を持って受付に立つ。


お姉さんは何処かな、中にはギルマスが居る。


ギルマスでもいいので呼ぼうとしたら、肩を叩かれ隅の方に手を取られて連れて行かれる。


小声でお姉さんが「どの位倒したのよ、小声で教えてよ」


よく分からないが「さあ、数えてません。マルネ村のギルドなら書類があるので合計すれば分かりますよ」


「そんなに倒したの、どうやって数えればいいのよ」


持っている鞄をお姉さんに見せて「この中にあります、数えて下さい」


「嫌よ、恐ろしい数が入ってるんでしょ」


「さあ、2000耳ぐらいはあるかもしれません」


「2000・・・・・・・その鞄に2000も入ってるの、大きいけどそんなに入るかな」


ニヤリと笑い顔を作り「数えて下さい、仕事です」


「仕事だけど、前にも数えさせられて嫌な記憶が残ってるのよ」


「ギルマスに頼みますか?」


「そんなこと出来ないわよ」


「それと、マルネ村の領主様は何処に居るんですか、ローランドですか?」


「それなら、この街の領主様が治めているわよ。ハート伯爵様よ。ああ、お嬢様とオークの討伐クエを受けたでしょ」


声が大きくなるお姉さん。


「そこで何を騒いでいるんだ、また君か。またオークを倒しに来たのか。ほら依頼書だ。」


隅に来ていたが、ギルマスからは掲示板の依頼の紙が届くので剥がして渡された。


ふむ、依頼を受けた処理は最初にされてるけど報酬の処理はされてない。見ると大銅貨2枚だ。


悪知恵発動する。


「ギルマスにお願いがあります。」


いつもより丁寧に話す。


「何かな」


「オークの討伐部位をギルマスに数えて欲しいんです。それとお姉さんの貸し出しです」


「何で私が数えないといけないんだ、それに職員を君に貸し出すはずがないだろう」


マジに怒っているギルマスに更にお願いする。


「お姉さんと大事な用があるんです、その間にギルマスにオークの耳を数えて欲しいんです」


「だから何で君の意見に従わないといけないんだ」


ここでお姉さんに登場して貰おう。


「僕が討伐したオークの数をだいたいどの位かギルマスに教えてあげて下さい、お姉さん」


話を振られて困るお姉さんにギルマスが聞く。


「この子が何を言ってるのか分からないが、オークを何体倒したんだ」


お姉さんは僕を見たので頷くと「この子の話では2000体ぐらい倒したらしいです」


「はぁ、2000体だとそんなに倒せるか、この子が」


そうなのだ見た目は子供なのだ。あ、僕は子供だ。


でも今は見習い冒険者として提案しないと。


「そうです、疑るなら数えて下さい。そして支払いをお願いします」


「分かった、数えよう」


あれ、僕のシナリオではそこでダダをこねるはずだけどまあいいか。


ギルマスが部屋に向かうので付いて行く。ここがギルマスの部屋か。


「出してくれ、数えるから。そこで見ていなさい」


見ていたくないので逃げの言い訳を。


「取り急いでしないといけない案件が出来ました。お姉さんがいないと解決できません。それにギルマスにもかかわる事なので、ここは行かせてください」


「それなら、私にも教えてくれないか?」


「それは出来ません、秘密なんです。ここで行かせてくれないのでは困る人が要るんです。それも秘密ですが」


「それはだ、後でなら教えてくれたりするのか?」


あれ、聞きたくなって丁寧になってきた。


「それは勿論です、この問題には優秀なギルマスが必要なんです」


「分かったいけ、誤魔化さず数えておく」


許しが出たのでお姉さんを連れ出す。





「ねえそれでどこに行くの?」


「先ずは馴染みの工房に行きます」


お姉さんを連れて木工工房に行く。


「親方、いませんか」


奥から出て来た親方は「おお、君か妙な物を作らせた」


お姉さんが反応して「妙な物」


「久しぶりです、その妙な物を沢山作って欲しいんです」


「そうか依頼か、嬉しいな。冬は仕事が少なくてな見てくれよみんな遊んでる」


僕は職人さんを見て道具の手入れをしているのが分かったが、仕事が無いのを遊んでると言うのかな。


「それで何個作るんだ、こないだは12個位作ったんだよな」


憶えてない、農家3軒分だったのかな。同じ事をどこでもしてるから、まあ今頼みに来たんだ。


「800セットお願いします、カードです」


カードを渡された親方が「800個なのか?」


「はい、800個です。急ぎませんのできたら。お姉さんギルドに倉庫はありますか?」


「ギルドの横の建物が倉庫よでもどうして」


「親方、800個出来たらギルドの倉庫に運んで、邪魔ならその都度運んで」


「いいけど800個か、支払い済ませてくる」


「ねえ、何を800個も頼んだのよ」


「説明は後、鍛冶屋に材料屋さんに行かないといけないから」





猫の宿の食堂でお昼を食べてるお姉さん。


その前で手紙を書いてる僕。


「凄く美味しい、何この美味しさ、初めて食べる料理よ。このお肉どんなのが使われてるのかしら」


手紙を書いてる手を止めて、お姉さんを見て「オーク肉だよ」と言って手紙の続きを書く。


「ガチャン」


「私、払えないわよ。ああ~食べちゃったわ」


面倒なので「ここ親戚の宿で、そのオーク肉は僕が持って来たからタダだよ。美味しいなら味わって食べた方がいいよ。ここの食事めちゃ美味しいから」


「めちゃ?」


「静かに食べてよ、手紙の書いてるんだから」


「ごめん」


食べ始めたので続きを書く。




ハート伯爵様


はじめまして、突然のお手紙をお出しする事をお許しください。


ワーム攻撃用の武器はどうですか?


今回は、作物の害虫のネズミの駆除のお願いです。


街の工房で作って貰った材料が冒険ギルドの横の倉庫に入ってます。


材料をセットしてネズミの駆除を領主様にお任せします。


既に3軒の農家でネズミの駆除に成功してます。


説明書を見れば分かるはずですが、分からない様なら、西門から出た街道の右の農家に設置されてるので参考にして下さい。



別件でマルネ村の南の崖の下にオークが生息している森があります。


領主様の治める場所の様ですので、お知らせします。オークが異常に増えてます。


冒険者だけで討伐出来る数ではありません。


どうかこの件も領主様の力をお貸しください。


追伸


最近、オークの討伐がされた様なので、この後はどうなるか分かりませんが、よろしくお願いします。




分かり易く書けてるかな、調べれば分かるから大丈夫だよな。


設置の仕方を書いた、説明書もあるから大丈夫だろう。


厨房で、お昼のハンバーグを3個載せてきた。


ソラちゃんは食べ終わって僕からの宿題のおやつを買いに行った。


あの番組は好きだったが助けないスタッフに怒りを覚えた。あれを見て怪我人も助けないんだと思った。


ハンバーグを口に入れる瞬間を見つめる目が目の前にある。


僕は口に入れて自分の皿をお姉さんの方に突き出す。


「いいの、食べて?」


頷くと、何故か2個を自分の皿に移した。


ハンバーグを食べ終わり、焼いて貰うよりパンとスープを持って来て食べた。


僕の前のお姉さんは一口一口を味わって食べているので遅い。




「どうして私が持って行くのよ」


「お姉さん、これが仕事です。僕の事は秘密でお願いします」


「どうして、お嬢さんとは友達なんでしょう」


「だから、あまり関わると領主様に迷惑が掛かるんです」


お姉さんは渋々門番さんに手紙を預けに行った。


受け取って貰えなかったらどうするのよとお姉さんが行ったので。


一大事で、読んだ方がいい報告書だと言えばいいと吹き込んだ。


それでダメなら、冒険ギルドの職員だと名乗ってくださいとお願いした。


門から見えない所で待っているとお姉さんが戻って来た。


「渡してきたわよ、届けてくれるって言ってた」


作戦は成功した・・・・ほぼ。


後は読んで貰った後にハート伯爵様が判断すればいい。


報告書を渡す事が出来たので、そろそろギルドに向かう事にする。


オークは全部で何体倒したのかな、ちゃんと数えてくれたかな。


お昼過ぎのギルドとは静かだ、冒険者が数名話してるだけだ。


「今年はワームの特別クエは出てないんですか?」


「出てないわね、新しい武器が役にたってると聞いたわよ」


あの武器だよね、それとも違う武器。ワームが減ってるならどちらでもいいよな。


「おい、あれは本物か?」


ギルマスが自分の部屋から出てきていきなり、問い詰めてきた。


そのままギルマスが部屋に戻るので付いて行く。


見たくない物を見てしまった。


数え終わっていたなら、テーブルの上からどかしといてくれればいいのに、山積みの耳。


山積みを見て、鞄によく入ったな。詰め込むとあれが全部入るのか。


「本物とは、どういうことですか?」


「この耳が多すぎる、だから偽物なのかと聞いている」


「はぁ。それで何個あったんですか?」


ギルマスは耳を見て「2018個だ、こんなに倒せるはずがない」


僕も耳を見て「はぁ、あんなに偽物の耳を作れるんですか、それに疑われない様に右耳だけにしてきたのに」


そうなのだ、討伐部位は左右どちらでもいい事になっている。だます冒険者がいない事を前提にしている。それに不正があると冒険ギルドのクエストは受けれない様になるし、ギルドカードの没収もあり得るので不正をしない。永久に再発行はされないので、よほどばれない自信が無ければ不正はしない。


「はぁ、作れないか」


「ところで、何でそんなに数にこだわるんですか、耳がここにあるんだから認めるしかないのではないですか」


「私も、気になっていたんです。この頃報酬が少ない様な気がして」


「予算だよ、討伐のクエの個人からの依頼はいいのだが、近隣の魔物が出た時はギルドからの依頼として募集しているので予算を使いすぎているんだ」


それだと、オーク以外にも増えてる?全体的に魔物が増えてるのかな。


忘れるところだった。最初の予定ではオークの討伐の報酬を大銅貨2枚から1枚にしてお姉さんを借りてギルマスに耳を数えて貰う計画が、ギルマスが数えると言い出したので、お姉さんを借りるのに理由を付けたんだ。


「それでは、こうしませんか。ギルマスは耳を数えてくれた、お姉さんはよく働いた、2人はよく働いたので、オーク討伐報酬の大銅貨2枚を1枚にするのは、大手柄ですねギルマス。オークの討伐は2018体で報酬を半額にする事が出来たんです」


笑顔で話す僕の言葉に「おお、そうか。オークは沢山倒して貰い、報酬は半額か。いや、いい仕事した」


耳を数える仕事は褒めよう。それ以外は何もしてないのに気づきなさい。


「カードに支払いお願いします」


「そうだな、待っててくれ」


自ら支払いの処理に行くギルマス、お姉さんもいるのに。


「ありがとうございました。上手くいった様です」


「こちらこそ、報酬を半額にして頂き、ありがとう」


「気にしないで下さい。もともと受けなくても良かったんですけど、少しでも効率良くお金を稼ごうと思っただけだから、冒険ギルドに登録したばかりの駆け出しの僕に教えてくれた事を思い出しただけなんです」


「そう、いい事を教えて貰ったわね」


「お待たせした、ほらカード」


丁寧さが無くなっている。


「ありがとう、では失礼します」


「ありがとう。お昼もご馳走様」



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