お菓子屋さん
リカちゃんの様子が気になり家に行ったら、元気なリカちゃんになっていた。
「そうなんだよ、薬が効いて5日後には寝なくても大丈夫になったのその後は元気だよ」
病気は快復したようだけど、顔は沈んだ表情をしている。
「お店を辞めさせられたんだよ、長く休んでいたから違う人を雇ったんだって、しょうがないけど、私を看病してくれたお母さんも仕事が無くなったの、ごめんなさい」
「リカ、気にしなくていいのよ。仕事は探せばいいから、それよりもリカの病気が治って本当に良かったわ」
沈んだリカちゃんの頭を優しく撫でるおばさん。
僕は涙もろくなっているのかもしれない、もう少しで泣きそうだ。これが年を取るという事か。
「リカちゃんが外に出れるなら来てほしい所があります」
病気から快復したなら外に出ても大丈夫だよね。
「うん、何処に?」
「まだ、治ったばかりなのに」
ここでおばさんにも来てもらわないと話が進まない、なので、お誘いしよう。
「おばさんも来ませんか、何か食べましょう。僕はお腹が空いたので奢りますよ」
「でも、悪いわよ。私まで」
僕はおばさんとリカちゃんの背中を優しく押して「行きますよ」と言った。
「どうです、久しぶりにのんびりと街を歩くのは?」
いつもと変わらない街並み、どれだけ大変な人がいても、時間は流れ、良い事も悪い事も起きる、でも、そろそろいい事が起きる予感がする。
「そうね、最近は家の中ばかりで、久しぶりにのんびり歩くわね」
僕は市場の露店で人数分の料理を買うとお借りした建物の前に来た。二人ものんびりと僕の後に付いて来た。
この場所は、市場から少し離れた場所で買い物客が通る商店の並ぶ地域だ、パン屋さんや食堂、雑貨屋さんや洋服屋さん、店内が見える建物、店内が見えにく建物色々な商売の商店が並ぶ通り。
「どうですか、凄い立派な建物ですよね」
「はぁ」「うん」
立ち止まった僕は建物を指して建物の感想を聞いたが、二人は何を答えていいのか分からない感じだろう。
鍵が開いた、ドアを開けて僕は入口から退くと店内に入る様に手でどうぞの仕草をした。
「中に入って下さい。この中で食べましょう」
「この中で?」
リカちゃんは驚いて僕に視線を向けた、訳の分からないおばさんは店内の様子を見ている。
「うん、料理が冷めちゃうよ、さあさあ」
カウンターの下から備え付けの椅子を出して2人に座って貰った。
聞いた説明をそのまま話そう。
そうだ、料理を出さないと。
「何十年か前に建てられたお店です。とても綺麗でそんな前に建てられたと思えないぐらいです」
「そうね、とても綺麗。新店舗と言ってもいいぐらいだわ」
「勝手に入っても大丈夫なの?」
「許可をもらっているから大丈夫だよ」
「せっかく買ったのが冷えてしまう、食べましょう」
2人は僕が用意した、お皿の上の料理の串を取ると食べ始めた。
露店に売っているのは、何かの肉の串焼きに野菜の串焼き。露店の近くで食べるならスープとかか皿を借りた料理も食べれるけど、お持ち帰りだと串焼きとかお菓子などになってしまう。
「このお店で食べ物を作って売りたいと思っているんですけど、販売を担当してくれる売り子さんと料理を作ってくる人を募集してるんですけど、なかなかいい人がいないんですよね」
2人は何の話なのか分からないので、料理を食べながら聞いているだけに。
「売り子はリカちゃんぐらいの女の子がいいと思うんですよ。売り子は女の子、この世界のルールですよね。調理は誰でもいいかな、リカちゃんでも出来る簡単なお菓子なんだよね」
「あの、それは私とリカでも出来るんですか?」
「誰でもいいけど、おばさんやリカちゃんみたいな人がいいですよね。どうせ任せるなら」
「私やります、リカ一緒にやってみない?直ぐに仕事が見つかるか分からないし、私達でも出来るとユーリが言っているんだから、ね、リカやってみない?」
「でも、ユーリに悪いよお母さん」
ここで重要な事を話さないといけないみたいだ。
「2人には悪いのですが、もう出世払いを待つのが嫌になったんです。そこでこの際、2人に出世してもらう方が早くお金を回収できると判断したんです。ここで働くのは僕のためです。もう待てないのです」
この建物でお菓子を販売したい事を説明した僕は、建物の内部の間取りを再度確認する為に2人を案内した。
厨房と裏の井戸を見て2階に、各部屋の家具やベットが置いてあるか。どうやら、前の持ち主が家具を置いて行ってくれた様だ。
3階も同じ様な作りだったけど、流石に家具が揃っている事はなかったけど、今のところ使う予定はないだろうから、これでいいよな。
3階からの階段を上がると屋上だった、何の為の屋上なんだろう。洗濯物を干すには大変だから・・・・・・煙突掃除用?なあ、どうでもいいのか。
僕の腰よりも高い屋上の塀から道行く人達が見える、意外と人通りがいいな。
「ユーリ、2階には私達が住んでもいいんですか?」
おばさんの質問に僕は頷いて、説明を続けた。
「はい、住み込みのお店にしたいと思っているんです、その方が便利だと思います。僕には両親と住んでる家がありますから2、人で住んで下さい」
「ここに住めるんだ、私の新しい家。もう追い出される心配しなくていいんだ」
ちょい泣けてくる、こんなに小さい子が住む家の心配・・・・・・。
「頑張ってくれないと、他の人を探さないといけないからね」
リカちゃんとおばさんは、僕がそんな事をしないのが分かっているので笑顔だ。
「ユーリ、どうしてここまでしてくれるの?」
「リカちゃんのお父さんと同じ冒険者を目指しているからかな、冒険者は助け合わないと。それは冒険者同士だったり、冒険者の家族、街の人達も入るのかな、まあ、助け合えば色々と出来る、お菓子屋さんのお店を出す事もね。厨房に行こう、お菓子の試作品を皆で作ろう」
「何これ、それに簡単に出来た。変な形」
「そう簡単に出来るから、材料と作り方は企業秘密でお願いします」
2人は不思議そうに手の上に載せている。
塩を振り二人に食べてみてと勧めた。
「面白い、特別美味しいわけでもないけどもっと食べたくなる」
その感想はどうかな、テレビを見ながら・・・・・・映画だな。
「お酒のおつまみでしょうか、売れるんですか?」
「さあ、わかりません、売れるように努力はするつもりです、それに違うお菓子をもう1種類売ります」
「それも作るんですか?」
「はい、作ります。それは少し手間がかかりますが、簡単です」
厨房の台の上に使う道具と材料を載せた、前もって用意していた物だ。
小麦粉に水と少量の塩、これを混ぜて力を入れて捏ね回すだけ。3人で同じ作業をして何とかそれらしく見える皮・・・・・・餃子の皮が出来た。
皮の中に含まれる水分がちゃんと無くなるまで、温まるんですで焼いていく。
素人の僕達は、色々な調味料の組み合わせで何種類ものソースを作った。勿論、味見をしているので、変な味のソースは無い。
焼けた皮にソースを付ければ。試食会の始まりだ。
皮を焼いている時に、リカちゃんには味の付いたポップコーンを数種類、作って貰った。
「ポンポンは塩味、塩バター、バター、はちみつの4種類を作りました。食べてみてユーリ、母さん」
定番は食べた事があるので、蜂蜜味を食べる。甘みが少し控えめな蜂蜜みたいで、甘いのが苦手な僕でも美味しく感じた。
おばさんはの名前はメメルさん。いつもおばさんと呼んでいたが、まだ私は若いし、これからも付き合っていくのだから、おばさんはやめてと言われた。2年近く経ってからのおばさんは止めてだった。
メメルさんはバター味のポンポンが好みだと、これなら買うかもしれないと言った。
リカちゃんは蜂蜜味が好みだけど、飽きない味の塩味の方が売れると予想した。
3人の意見は一致して、3種類を販売して人気のある順で作る量を決める事になった。
「パリパリはどうしますか?」
リカちゃんとメメルさんに、パリパリの味は何がいいのか質問した。好みもあるけれど、売れそうだと思うのを販売した方が、最初はいいだろう、その方が頑張れる。
改良は軌道に乗って気が楽になってからでいいだろう。
「私は少し甘いのが美味しくて売れると思う」
リカちゃんは女の子の喜びそうな味がいいと言っている。
メメルさんも売れそうなパリパリを指さした。
「ほんの少しの、分かるか分からない程度の辛みが、大人に人気が出そうです」
「僕はそんなに売れないかもしれないけれど、素材の小麦粉の味が分かるのを少しでいいので売りたいと思います」
3人の意見を3人で考えた、それならみんな売ろう人気が無ければ少なく、人気が出たのは多めに作って販売すると決めた。まあ、ポンポンと同じだけど。
2人に材料の仕入れはどうするのと聞かれた僕は在庫が、厨房と2階の奥の部屋に既に買ってあると教えた、それを聞いたリカちゃんが見に行って「あんなに売れるの」と在庫の多さに驚いた。メメルさんも後から確認しに行った。
「あの在庫は何年分ですか?」と聞かれてしまった。
買った時を思い出そう。
ポップコーンが出来たのが嬉しくて、その日に同じ種類のトウモロコシを全て買い占めた。一遍に買ったとも言う。そして早めに乾燥させないと駄目だと思った僕は農家の人にお願いして運んで来たのが2階の奥の部屋の在庫だ。
どうなんだ、言った方がいいのだろうか、後10倍ぐらい預かって貰っていると。
小麦粉も1年分位は買いだめしていて、ここには半分ぐらいが納品されている。
「さあ、どの位有るのか分からないけど、当分の間無くなる心配をしなくていいので、どんどん売りましょう」
そうだ、余剰在庫があると思うと、大変疲れるので、好きなだけ作って売れると考えて貰おう。僕ならそうする。
そうだ、名前はすぐに決まった。
2つの商品の名前はリカちゃんがポップコーンが出来る時の音から「ポンポン」。お煎餅は、食べた時の音で「パリパリ」と決まった。まあ試食している時から呼んでたけどね。
2人には商品を一定の味になる様にどんどん作って貰った。
2人が練習しているんだ、荷物を運んであげよう。引っ越しは早い方が喜ばれる。
「どうです、美味しいでしょう。それに珍しい」
「ああ、美味しいし珍しいな。この辛みがいい」
僕は小さい露店のおじさんやおばさんに練習で大量に出来たポンポンとパリパリを原価に少し利益を乗せた金額で買い取って貰い、隅でもいいので置いて売って貰う。
置いてくれない露店もあるがそれそれでいい、まだ下準備中でお試しと大量に出来るお菓子を少しでも認知してもらう為だから。
「本当にそんなに安くていいのか?」
「はい、お試しで置かせてもらうだけなので原価にほんの少しの手間賃でいいんです」
おじさんは空いてる所を指さして「そこに置いてくれ」と言ってくれた。
「ありがとうございます」
「へえ、珍しい食べ物だね」
「新製品のパリパリです。女性には甘い味が喜ばれると思います」
露店のおばさんは、置いてもいいよと代金を払ってくれた。
「お客に出す前に1枚食べてみるわね」
「どうぞ、美味しくて、もう1枚食べたくなりますよ」
おばさんは、「パリパリ」と音が出ているのを聞いて面白いと笑った。
「確かに新製品だね、焼き菓子より硬くて何回噛んでも、美味しく感じるわね。うん、もう一枚食べたくなるわね」
もう1枚手に取るとすぐに食べだしたおばさんは、合計4枚食べて「美味しいのに安いわね」と喜こんだ。
30枚置いてほしいと頼んだのに2倍の60枚にしてほしいと逆に頼まれた。
「売れ残っても私が食べるから、むしろ残って欲しいわ」
昼間は学園で呼ばれて大森林に魔物の討伐に行くが、呼ばれない時は発動しない魔法の練習とお菓子が売れる様にするにはどうすればいいかと日々考えていた。
庶民の味なので学園の生徒では広めることは出来ないと考えた、数人が食べたただけで学園には持って行かなくなった。学園が終わると色々な所に顔を出しお願いして廻る日々が続いた。
久しぶりに来た役所、あのカメは僕を睨んでいる。目潰しをしてみたら少し勢いがありすぎたのか指が痛い。カメも痛いと思っているはずだと思い、引き分けに終わる。
ヤーシャさんにお店を出すのに何か登録がいるかと聞いたら、「登録しなさい、そして税金を納めてお願い」と頼まれた。
何でも勝手にお店を初めて税金を納めてないお店が沢山ある。いざお店に行ってみると経営が苦しい、登録は出来ない税金も納められないと言われる事ばかりだと、役所に自分から来てくれたのは久しぶりだと愚痴っていた。
歓迎された僕が、お土産を渡すと「変な食べ物ね、本当に食べれるのこれ」とツンツンされたパリパリ。
「店長さんに持って行ってと頼まれたんだけど、ヤーシャが食べないならあの僕と同じ位の女の子にあげようかな」
ヤーシャは振り返って、女の子が貰えると思い笑顔になっているのを見て「私が食べます」とパクり。
「美味しい。何これ、触った時は固くて食べられそうもなかったのに意外と食べれる物なのね」
美味しいと喜んでいるヤーシャさんは2枚目に手を出して、違う味をパリパリを手の取った。
夢中になっている様なので女の子にもあげる事にした。
「お店には他にも味の違うのが有るから美味しかったら買いに来て下さい」
宣伝も忘れずに伝えて、ヤーシャの前の椅子に僕は座った。
「お客さんに出すのもおやつに食べるのもいいわね、このパリパリ」
喜んで貰えた様なので、登録をしてもらう、これで独占販売が出来るな。
帰り際に「ねえユーリ、どこで売ってるのよ教えてよ」と聞かれたけど、どう教えればいいんだ。
「どこで売ってるか教えるのは無理だよ、だってここには場所を示す何かが無いでしょう」
「何かって何よ」
簡単なたとえで、侯爵様の屋敷を1と決め役所を2と決めた。
1に行ってきますと言った先は侯爵様の屋敷とここまで言ったらなるほどと納得していた。
「市場の近くの商店街の綺麗な白い建物に売ってるよ、看板は丸い何かが何個とそのパリパリを3個書いてあるから、珍しい看板で分かるはずだよ」
お店の場所の説明をして、僕は家に帰った。
遂に温まるんです改が完成したので、大量生産が出来る様になった。
売り上げが凄い事になっている様だが僕は金額は知らない。
リカちゃん達には商人ギルドでカードを作って貰った。そのカードで仕入れ、売り上げ、2人の生活費を管理して貰う事にした。
給料もそこから使う様にと言ってある。利益の20%を僕の商人カードに入れる様にお願いした、税金を納めるためだ。
仕入れは小麦粉と味付け用の調味料だけなのでそんなにかからない。小麦粉は約1年分在庫がある。
トウモロコシは無くなるのか心配だ。
お店はいまのところいい感じで、軌道に乗っている様だ。
心配事のリカちゃん親子の問題がいい方向に向かうと、僕は学園の休みを利用して、シュラさんのところに行く事にした。
目的はオーク肉で、リュックの中にオーク肉が一杯になるとシュラさんの所に向かった。恒例のシュラさんの鱗探しをした、良い事があれば他の人にも喜びのおっそわけを。
「ユーリ、嬉しい、ラム酒は美味しいわね」
シュラさんが飲み終わると入口まで送って貰った。
「ありがとう、シュラさん。また来ますね」
「ユーリ、頻々に来るのを楽しみにしてるわね」
催促してシュラさんは隠れ家に帰って行った。
体力作りを兼ねて僕は全速力で街に向かった。
「今日は日頃頑張ってくれている2人にしゃぶしゃぶをご馳走します」
初めて聞く料理名に「しゃぶしゃぶ~」と首を傾けて言った、リカちゃん。
「そう、しゃぶしゃぶ、変わった食べ方だけどとても美味しいだよ」
準備しておいた割り下を温まるんですに入れて説明した。
2人は「美味しい、肉の旨味が」と喜んでくれた。
残ったオーク肉は予定通り2人にあげよう。
「こんなに沢山貰っていいの?」
メメルさんが遠慮がちに言ったので、そのつもりだった事を話そう。
「頑張ってくれてるお礼だから、それに2人の為に取って来たんだから遠慮は無用だよ」
「ユーリ、ありがとう」
「ユーリ、いつもありがとう」
「そうだ、当分来れないけど何かあって困ったら家の母さんにでも相談するといいよ」
「そうか、学園がもうすぐ休みなんだ」
「そうなんだ、冒険者になる為に冒険に行ってくるんだ」
「気を付けてよ。魔物は危ないのだから」
「ありがとう、帰ってきたら来ます」
2人は、お店の中で大きく手を振ってくれた。僕はお辞儀をしてお店を後にした。
「バイバイ、ユーリ」
外に出て通りを家に向かって歩いていると、2階の窓からリカちゃんが手を振っていた。




