あなた達も
ラウンジで1人のんびりと食事をしていると、僕の前に1人の男子生徒が立っていた。
僕に話しかけたいが話すきっかけが無いのか、何も話してこないので僕が食べてるところを見ているだけだ。
貴族様は意外と自分から話しかけてこない。
「カタル子息、僕にお話でもありますか?」
僕から話した事でカタル子息の顔が少し和らいだ。
「僕は、Aチームのリーダーをしてるカタル・グリーだ、君とは話した事が無い」
「そうですね、同じクラスなのでお名前は知ってました」
カタル子息は頷いて。
「先日の模擬戦の授業で君の逃げっぷりを見て只者ではないと思った」
「ただの平民ですけど」
「そこは、置いておこう。君は我がチームの事は知らないだろう」
僕は頷く事で返事をした。
「チーム分けの後、Aチームは強かった。Bチームに負ける事は当初ないと思っていた。冬の休み前頃にはBチームに負ける様になってきた。そして、冬休み後には両チームの差が開き始めてきた。Aチームは成長してないんだ。僕は勝ってるうちは、成長してない事に気が付かなかった、休み明けの模擬戦の練習でBチームが楽しそうに練習している姿を見て僕のチームに何かが足りないと思ったんだ」
何か非常に嫌な展開になっている。そうなのだ悪い予感は当たるのだ。
「許嫁のアジス様にBチームが練習を楽しそうに取り組んでいる事を教えて欲しいと相談したら、「私もよく分かりませんが、ユーリの食事を食べるとやる気が出るみたいなんです」と教えてもらった。僕のAチームでも同じ事をして欲しい。同じクラスのよしみで、どうだろう引き受けてくれないか?」
話は長かったが、Bチームの時と同じで頑張れば美味しい物が食べれる的な事をAチームもしたい、それは僕の料理じゃないとダメだとカタル子息はお願いしに来た。
許嫁なのは許そう、貴族は何かと大変だから。しかし、僕の逃げっぷりは関係なかった。アジス嬢に聞いて真似しようと思っただけじゃないか。
しかし、貴族の子供のお願いを平民の僕が断れるはずもない。目の前に立たれた瞬間に決まっていた。
「分かりました、お願いがあります」
「何だ、話してくれ」
悪い人ではない様だ。
「僕の料理はラウンジで調理が出来て温かい物が食べれる事が1番いい事なんです。貴族の子息のカタル子息は、お昼に少し冷めている食事を食べてると思いますが違いますか?」
カタル子息は考えてる、今まで食べた物で温かい物があったかと。
「ない、温かい物を食べた覚えがない」
「家の方で作った物なので冷めるのが当たり前です、そこでこの温まるんですは、調理と温めが出来る道具なんです。そこでお願いです、この道具は食べたい人が自分で用意してください、オンデマ商会で売ってます。食材は僕が用意しますんで道具を持参してきてください」
「分かった、その道具を持って来れば美味しい物が食べれるんだな」
あれ、美味しい物が食べれる?まあ食べれるでいいか・・・
その後、小声で打ち合わせをして次の模擬戦の時にカタル子息は何を食べたいかと聞いたらしゃぶしゃぶだと言った。アジス嬢から聞いていたんだな。
模擬戦の練習が終わった後のお昼のラウンジ。
僕は少し大きい声で。
「カタル子息、約束通りでした。模擬戦の練習を見てましたよ、Bチームのみんなの様に頑張ってました。僕も約束は守ります、温まるんですを持って来てくれてますか?」
「用意してきた」
カタル子息も僕に合わせて少し大きめの声で話す。
「良かったです、しゃぶしゃぶが食べてみたいと言ってましたので用意してきました。使い方はお教えした通りです」
「ありがとう、次回の模擬戦も頑張れば食べれる事が出来るのは本当なのか?」
「はいそうです、僕が頑張ってると認めたら食べれます。模擬戦の練習頑張ってください」
「頑張るよ、自分の為にもなるから」
作戦は終わった。ラウンジでは銅クラスは部屋の入口から奥の方、銀クラスは真ん中、金クラスは入口の近くの手前で食事をしている。僕とカタル子息のやり取りはAチームのみんなに聞こえていたはずだ。
カタル子息には温まるんですが無いと、食べれないと雑談の中に入れて拡散してほしいとお願いした。
便利なので是非買ってもらおう。沢山持ってくるの嫌だし。
カタル子息と僕の会話を聞いてたAチームのみんなは模擬戦の練習で頑張る様になってきた。
Aチームの中には頑張らないと食べれない事に腹を立てて僕の所に来て抗議した2名には、「生徒の僕が頑張った人に食べて欲しいと提供してるだけなので、食べれる様に頑張るのか食べないかを2人が選べばいいと思います」と言って考えて貰う事に。
僕が困った生徒が2名いた。見るからに頑張っているのが分かるが、少し違和感があった。
頑張るが、頑張り切れない様に見える。
模擬戦の練習後に2人を呼んでもらった、カタル子息はどうして2人を呼ぶんだと僕に説明を求めたので僕は「秘密です」と答えた。僕は嘘の付けない男なのだ。それにまだ何も分かっていない。
3人で話したいので人の来ない所を探して移動した。
「どうして私を呼んだんですか?」
「僕も、そこが知りたい」
女子生徒と男子生徒、僕はこの2人と話をした事は無い。
「僕はユーリ、同じクラスなので知っているかもしれませんけど平民です。僕がお2人をお呼びしたのは、お聞きしたい事があったからです。模擬戦の練習で頑張った人はお昼を僕が提供してるのは知っていますか?」
女子生徒は目線を下げて。
「はい、知っています」
「僕も、知っています」
言いづらいが言わないといけないな。
「どうしてお2人は食事の提供を申し出ないのですか?」
男子生徒が話し出す。
「僕の家では、あの道具温まるんですが買えません。ですから申し出る事が出来ませんでした」
女子生徒を見るとスカートを握っている手が返事をしていた。
「すいません、僕の配慮が足りませんでした。貴族の皆さんなら道具が買えると思っていました、すいません」
どうするかな、答えは出ている。
「お2人は、僕が提案して後に模擬戦の練習を頑張ってくれてました。もっと早くお話をすればよかったです。お詫びに温まるんですを差し上げますので、食後のお手入れをお願いします。それと今まで食べれなかったお詫びとして、元々の食事の提供日数と10日の合わせて17日分を提供させてください。勿論模擬戦の練習日を抜いて17日分です。これで許していただけますか?」
「「はい、ありがとう」」
こうして、クラス全員の食事を用意する事になった。
カタル子息からお願いされて、リカちゃんのお店に追加の注文をしたら、女将さんに飛びつかれた。女将さんお願いだ、僕は子供で身長が低いので支えられません、握手にしてほしかった。
僕は野菜を洗っている。隣の先生も野菜を洗っている。
ここは学園の井戸の横にある、石で作られた流し台。
流す台の横には沢山の野菜がある。
「先生なんで野菜を洗うのを手伝ってるんです?」
「先生は説明は苦手だが、この作業は好きだな」
「そうですか、毎回手伝ってくれてますね」
「そうだな」
週に3回、野菜を洗っている。先生と一緒に。
同じ会話を毎回している。
暖かくなってきた春の終わり頃、模擬戦の練習が減ってきた。
減った分の授業は剣術と魔法の授業になった。模擬戦が無ければ、練習時間は剣術と魔法の授業だった。
魔法の授業、みんなは成長していた。模擬戦効果なのか威力は勿論、魔法が飛んで行く速度も速くなったと喜んでいる生徒がいる。
その中で1人だけ成長してない僕。成長してないか分かりづらいので、成長してないでいい。
でも魔法の練習はする。いつか使える様になってから練習するよりした方がいいと先生が言った。
「全ての光を覆う闇ダークルーム」
「暗い部屋ですか?」
「いえ、暗くなって周りが見えないぞの空間です」
僕の説明に「そうですか」と言っていなくなるアジス嬢。
見ていたのか、そして聞かれてもいた。
僕はあまり声に出して唱えない。恥ずかしいし、効果が見えないので呟く子供になりたくないから。
しかし、使えないと手ごたえ見たいのが無いので、練習方法が合ってるの分からない。
後ろの方でピュンピュン飛んでるのを見ると異世界なんだと。
いいな、一度でいいからピュンピュン飛ばしてみたいな。1回だとピュンか。
「おお、凄いぞ。的が消えた」
聞こえた声に振り返ると的が消えていた。先生は地面を叩いている?生徒の成長が嬉しいのかな。
「的は消さないでと、お願いしてたのに」
うん、最初の頃言ってたな。忘れてたよ。
「そうだ、違う的を狙うと練習になるぞ」
そんな便利な的があるのか。
スコット子息の指は僕をさしてる。
「奴の逃げ足を捉えれる奴はいるのかな?」
みんなの目がそれも魔法の方が得意の人が目が獲物を狙う鋭い目になってる。
僕は、期待に応えてるわけではないが、逃げないと危ない。
僕が走り出すと魔法男子に魔法女子が追いかけて攻撃してくる。
後ろを見るとスコット子息が親指をあげて「グー」手に動かす。
なるほど、これは魔法軍団の体力を付ける計画だと気が付く。
ならば、全力で相手をしないといけない。
だが残念な事に誰もついてこれなかった。
計画は失敗に終わる。
スコット子息が僕の方に来て声をかける。
「どこまで逃げれるか見たかった、残念な結果だ」
違っていた、まあいい被害はない。
僕は後ろのへこたれている魔法軍団を見て被害がある場合もあると思った。
魔法の授業はこんな感じだった。




