久しぶりの学園
「おい平民、長く休みすぎてたるんでいるぞ」
「ええ、でも何回唱えても何も出ませんよ」
今は魔法の授業中、何故かスコット子息が僕に魔法のコツを教えてくれている。
頑張っているのだが、魔法で何かが起きた様な形跡はどこにも無い。
「スコット子息は上達してるんですか魔法が?」
「ふ~、俺は既に魔法は諦めてる、ほんの少し使えても役には立たない」
魔法が得意ではないスコット子息が、なんでこんなにやる気なんだ。
「模擬戦の練習がないとつまらんな」
そうなのだ、模擬戦の装備がメンテ中でしばらく練習が出来ない。
もしかしてこれも練習を頑張ってる事になるのか?周りを見ると僕のチームのみんなは頑張ってる様に見える。しかし、僕は模擬戦の練習が無いのでみんなのお昼を用意してない。まさかみんなは何も持って来てないとかはないよな。
独り言のように振舞って確認する。
「どうしたんだろう、みんな頑張ってるな」
「それは今日のお昼がたのしみだからだろ」
聞きたくない事を知ってしまった。
ラウンジでご飯を食べれない僕達のチームの男子。女子は僕の弁当を皆で分けて食べている。
男子は無言、女子は「もっとお腹が空きましたわね」とお腹の足しにならないと女子のみなさんがおっしゃる。
「みなさんすいません、旅に出て浮かれてました。今度の練習の後にはお昼を食べれる様に用意してきます、食後にこの世界で7人しか食べた事のないパリと美味しいお菓子を持ってきます」
「まあ7人しか食べた事のないお菓子ですか」
「早く食べたいですわね」
「どんな味かしら」
今気が付いた、ポテトチップスはかさばる、明日でいいや持ってくるの。
「明日持ってきます、お詫びに早く召し上がれるように明日に」
「明日ですか、楽しみですね」
「お菓子か、男子でも楽しめるのか」
「はい、このお菓子は男子にも女子にも喜ばれると思います」
貴族の子供たちが食事を我慢したのはこれが初めてかもしれないなと思った。
市場の露店にが並んでいる場所に来た。一度家に帰って、着替えてきた。
制服を着てると誘拐される危険性があるからだ。貴族の子供達も学園以外には着て行かない。
僕の目指すお店は野菜の売ってるお店で、リカちゃんが働いているお店だ。
「ユーリ、久しぶり」
リカちゃんは売り子の仕事をする様になって、喋り方が大人ぽくなっていた。
「りかちゃんはどう慣れてきた?」
リカちゃんは少し考えて話す。
「計算を間違える時があるの、それと野菜の種類が多いから並んでないのは分からないの」
なるほど、そうなのだ。バイトで自分の世界と違う所に行くと覚える事が多い、間違える事も多い。でも少しづつ慣れていくしかない。
「芋を1箱買いたいんだけどありますか?」
「待って聞いてくる?」
カルテドの街は大きいな、何人住んでるとか分かるのかな。王都ローランドの次に大きいカルテド久しぶりだな、自分の街にいる感覚は。
「ユーリ、大銅貨1枚で、あそこの箱だよ」
「はい、大銅貨1枚。それとこれは注文書と許可書、学園に運んで欲しいんだ。注文書に説明も書いといたから読んで欲しいんだ。その条件を守って欲しいんだ。聞いて貰えるかな?」
「分かった、発注書を見せてくる」
リカちゃんは女将さんの所に行って僕の発注書を渡した。
読んでくれてるな、いい話だけど運べるかが問題だよな。
「読ませて貰いました、いい話ですけどどうしてうちのお店に注文してくれるんですか?」
「リカちゃんの友達なので、野菜等はこちらのお店で買いたいと思ってます。この注文も夏の頃までなので、あと半年こちらから買いたいと思ってます。どうですか?」
女将さんは大きく頷いて「お願いします」と言った。
「お願いしたいのは僕の方なんですよ。運ぶのが大変だから。それとその許可書は必ず持って来てください、学園に入れないので」
「支払いはどうされますか?」
僕は考えて「30日毎に支払います、注文が変わったらその時また話しましょう。カードを渡しますので30日分でお願いします」
「はい、カードを預かります」
女将さんは支払いの処理をしに行った。
「いいのユーリ、このお店で買って?」
「いいんだよ、これは僕が使う料理の材料なんだから、どうせ買うなら友達のお店で買うのが常識なんだよ」
「ユーリが無理してないならいいや」
「お母さんは元気かな?」
「うん、元気だよ。こないだ家のドアの前に薪が有ったけど薪を見たら分かったて言ってた。薪でユーリて書いてあったてお母さんが言ってた」
「ドアの前に置きたかったんだけど、誰が持って来たか分かる様にしたんだ」
リカちゃんは笑って。
「そんな事するのゆーりしかいないね」
女将さんが来てカードを返してくれる。
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします。30日後にまた来ます。リカちゃんまたね」
「ユーリありがとう、またね~」
僕が歩く出して家の方に向かうと、後ろで「やった~」と女将さんが喜んでいる声が聞こえた。
「美味しいですわ、このパリパリが」
「ええ、お芋の味がよく分かりますわ」
「いくらでも食えるぞ」
「もっといい塩で食べたいな」
それぞれ言いたい事を言いながら沢山のポテトチップスが口の中に運ばれていく。
既に流れ作業になっているので、ポテトチップスが無くなるのは時間の問題だ。
しかし、無くなる問題に更に違う問題が僕の後ろに立つている。
「ユーリ、お芋をあの様に食べる方法があるのですね」
「ユーリ、どんな味がするのか説明してください」
「ユーリ、私は初めて見ました」
3人の令嬢が僕の後ろで食べたいと言っている。口に出さないけど。
「宜しければ、明日同じ物と同じお芋の違う料理をお持ちしますけど食べて頂けますか?」
「まあ、明日が楽しみです」
「エミリー様、違う物も食べれるようですね」
「アンバー様、私達もバリバリ出来ますね」
久しぶりの模擬戦の練習時間、メンテの終わった防具を装備して性能を確認する事になった。
2銅の全員が武器を持って走っている。魔法が得意な生徒は魔法を唱え、剣が得意な生徒は1人の生徒に攻撃するために走って近づく。
「さあ、そろそろ攻撃を受けなさいよ」剣が得意な女子生徒。
「いくら逃げてもこっちの方が数が多いんだぞ」剣の得意な男子生徒。
「的に大いなる炎をファイアー」火魔法の得意な男子生徒。
「魔物に偉大なる力をサンダー」雷魔法の得意な男子生徒。
「あなたの動きは見切った、連続斬り」剣の得意な女子生徒。
「そろそろ観念して逃げるのをやめろ平民」スコット子息。
「平民を引き裂く風のウインド」ジェイク子息
「私だって強くなったのよ」アジス嬢
「Aチームのリーダーの僕のからは逃げれないぞ」カタル子息
僕は誰からの攻撃も受けてない、逃げ回っている。
事の起こりは先生の一言だった。
「初めての時はユーリが、性能の確認に一役買ってくれたな」
この言葉を聞いた、1人の生徒が「今回もユーリにお願いしたら」と言った。
この時点でお願いではなく、決定された。
僕に剣で攻撃したきたが、全てを回避した。それを見て1人また1人と人数が増えて全員が僕を追いかけてくるが僕の足が速すぎると男子生徒が言ったので、ここで初めて先生がルールを決めると言い出した。
この広い運動場ではユーリに追いつけないし、何も出来ないので僕が動ける範囲を地面に跡を付けた。
そこから僕が出ないのがルールで、説明が終わると「始め」といつもの先生の開始の合図でみんなの攻撃を避ける授業?が始まった。
「もうそろそろ、授業が終わるわ。逃げるのはやめて戦いなさい」
Aチームの剣の得意な女子生徒が戦いなさいと言った。
「では、僕も本気で攻撃をします。怪我をしても知りませんよ」
僕は、本気になった。逃げるのに飽きたので攻撃して誰かの装備が光ればいい。
そこで先生が言った。
「ユーリは、攻撃しないで下さい」
この瞬間負けは決定した。
先生の言葉に、あれ僕のやる気減っていったよ。僕の足が止まった。
一斉に攻撃されて防具が光る。
「はい、やめてください。ユーリは死にました。防具は正常に動作する事が確認出来ました。授業を終わります」
1人対24人の鬼ごっこは終わった。
2021/03/20 誤字報告ありがとうございます。




