邪魔な魔物
お昼まで暇なので冒険ギルドに来ている。
昨日の夜よりも人の数が多い、そうだ僕は朝のクエの更新の時には来た事が無い。
この混みようは、更新前のイベント。
あれでも皆は掲示板を気にしてる様には見えない、何か話し合ってる様な、クエを受けに来た様にだんだん見えなくなってきた。
名刀を片手に近くのおじさんに聞いてみる。
「すいません、何か起きてるんですか?」
「ああ、知らないのか、ワームの大量出現で南の街道から村までの間が通れないんだ。それで、特別クエでワームの討伐が依頼されたんだ。ここに居るのはそのクエを受ける者たちだ」
ワームか北に出没した時に参加したけど大変だったんだよな。少し安全なのだが街道だけだから待つのも大変だった。
「それでどのくらい前から出没する様になったんですか?」
「20日位前かな、この街の近衛兵団が討伐に向かったが1匹倒すのがやっとだったらしい、怪我人が多く出て今では討伐に出る事が出来ないらしい」
そうなんだ、大変だな。南の街道・・・帰れない。
「討伐できないと南の村の方には行けませんか?」
「馬鹿な奴が、街道を通れば大丈夫だと言って、この街から出たすぐの所で襲われたよ。それからは、南に向かう奴はいなくなった」
おじさんの話を聞いてジェシーでもダメかもと思う。ジェシーは速いけど魔物の攻撃を避けれるわけではないので無理だろう。
王都に向かうと遅くて6日ぐらいでカルテドに着ける。どうするかな、王都に向かうかここで待つか、それとも討伐に参加するか、何匹いるんだワームは。
「おじさん、ワームの討伐クエの参加は僕でも出来るかな?」
「Cランク以上の冒険者なら受けれるけど、君には無理だな」
「君は去年いた少年だよな」
誰だろう、去年ここにいた人で・・・・ワーム討伐のリーダーの人か。
「去年リーダーを務めた人ですか?」
「そうだよ、経験者がいてくれてよかったよ」
おじさんが話しに割り込む。
「おい、この子が去年もワーム討伐にいたのか?」
「ああそうだぞ、それもこの子ともう1人の冒険者の活躍で1匹のワームを倒す事が出来たんだ。よく来てくれた」
背中を叩かれ痛いのを我慢する。
「ワームの事は今知ったばかりなんです」
「君はもしかして、去年も偶然ここにいただけなのか?」
「え、どういうことですか?」
「本当に知らないらしいな、特別クエはその街の限定の場合が多いが、色々な街や村のギルドに特別クエとして募集して、今回の様にこの街に集合してから皆で討伐に向かう事もあるんだ。去年もこの街の近郊の街や村のギルドには特別クエとして、ボラジュに集合してワームを討伐するクエとして募集してたんだ」
去年も偶然、今年も偶然。そろそろ必然。変な歌を考えてしまった。
「それで君はクエを受けたのかな?」
「まだ受けてません、Cランクじゃないと・・・僕Cランクでした」
「君、Cランクなのか子供なのに」
「去年でも受けれたんだ受けれるさ」
そうだった、去年も受けたんだから今年はランクの更新もしたんだから受けれる。
今僕の予定が崩れていく、僕は遅れて帰る事をワームのせいにして遅れたと言うつもりだったが、それが出来ない事に気がついた。
そうなのだ、何でこの街に来たんだと学園の先生に説明ができない。
ここは討伐に参加してワームを倒し何くわぬ顔で登校するほうがいい。
「僕受けてきます」
受付のお姉さんにギルドカードを渡して「特別クエのワーム討伐を受けます、お願いします」
「わかりました、よろしくお願いします」
お姉さんが笑顔でカードを返してくれる。ああそうか、去年もいたギルドの職員のお姉さんだ。
僕がクエを受けて戻るとリーダーが「行くぞ」と大声をあげ走って出ていく。
それに続く冒険者達、リーダーは今年もリーダーだった。
皆は南門に向かい、僕は南にある市場の露店に行く。
「おばちゃん、干し肉5日分くださいな」
「あんた、どうしたんだい?」
おばちゃんは干し肉を用意しながら僕に聞く。
「家に帰るのにワームが邪魔なんだよ、それで討伐に加わるんだ」
「そうかい、去年も参加したんだから大丈夫さ。ほら持っていきな代金はいいよ、去年は儲けさせてもらったからね」
「ありがとう、また来るね」
僕が走り出した背中に「頑張るんだよ~」と声をかけてくれた。
南門から街道を全速力で走る。他の冒険者が走って言ったと門番さんに教えてもらい後を追う。
前方に見えてきた。作戦は始まっている様で冒険者が散っていく。
それならと僕も街道から外れ草原を走る。街道からだいぶ離れた場所で止まり周りを見る。
ワームが遠くの方に見える。そちらに走って行くがワームは地面に潜ったのか目標を見失う。
歩きながら周りを警戒する。
大きい音にびっくりして、音の方を見ると冒険者が吹き飛ばされて飛んでいく。
飛んでも3メートルぐらいなので飛ばされただけなら無傷だ。
僕は走って飛ばされた冒険者に近寄り手を出して立つのを手伝う。
「おう、ありがとう」
「怪我は?」
「大丈夫だ」
ワームがこちらに向かって来た、おじさんを突き飛ばし僕も反対に飛ぶ。
僕とおじさんの間を通って振り返って、立った状態で威嚇の様に口を動かすワーム、僕はその一瞬に名刀お姉さんを両手に持ちワームの胴体に攻撃をする、切りつけた剣をその場で回転を加えながら引く。
凄い切れ味だ、引く事でワームを切る事が出来た。胴の部分を大きく切る事が出来たので、折れる様な感じで倒れた。何処が急所か分からないので突きを何度もする。
「おい、死んでるぞ」
何回も突きをいれて。
「なんだよ、お前のせいで帰るのが遅くなっただろ、どう責任取ってくれるんだ」
取り敢えずやつ当たりたりをして「おりゃ~」と雄たけびをあげ全力で走る、次のワームを倒す為に。
気合十分に走り出したらワームが沢山いるのを初めて見た。
一番近い所に向かう。
「ちきしょう、こんなにいたんじゃ攻撃してる余裕がないぞ」
おじさんが文句を言ってキョロキョロしてる。
僕はおじさんの方に走る。
僕がいるのに気づいていないおじさんが、自分の方に来るなとワームに言っている。
「こっちに来るな、あの速度で来たら何もできない、うぉ~」
「おじさんごめん」
僕は更に叫んでるおじさんを突き飛ばしワームが向かってくる直進上に立ちワームを待つ。
目の前に出て来た時にはジャンプして上から攻撃をしたが口の牙に弾かれ出て来た勢いと弾かれた事で僕の下を通過して止まるワーム。
落下に任せて剣先を下にして体重をのせて刺す。ワームの横に降りて横から突き刺して、切る様に下に押す。
横から切断出来たので、次のワームを探す。
草原を全力で走り土の動きでワームの向かっている方向が分かるので地面から出て来る所に素早く移動して出て来た瞬間に横から攻撃をする。
「地面から出てき瞬間に隙が出来るんだよ」
ワームに何度も切りつけ、止めの突きをして剣を刺したまま反転させて抜く。えぐり抜きだ。
「クソ、何とか口の牙で止まってるが攻撃できない」
僕は剣で何とかワームの口の牙を止めてる男性の後ろから走り込んで来て、ワームの口の後ろに剣を突き立てて、口の部分と胴体を切り裂くように剣を動かす。
剣で解体してる様だ。
ワームの口の牙に突き立て。
「横から攻撃お願いします」
このワームと戦っていた2人に横からの攻撃を頼む。僕はワームの動きを止める事だけに集中する。
「任せろ~」
ワームの動きが止まれば攻撃のチャンスと2人の冒険者は僕が止めている間に何度も剣を突き立てる。
よし、動かなくなった、次に行くぞ。
「あんまり動くな、剣が刺しづらいだろ」
ワームに動くなと言ってる冒険者。
「俺の方も刺さらないぞ」
「お前ら早くしろ」
冒険者は2.3人で組んでワームと戦う作戦で、この人達は3人組だ。
「名刀おお姉さん全力斬り~」
僕は、南門を出た後の集合をしてないので誰とも組んでない。自由に走り回ってお手伝いをしている。
「切断完了、後お願いします」
「ああ、分かった」
僕は切断出来たので、動きが遅くなったワームを任せる。
「いけ~、名刀お姉さん1号発射~」
1人で戦っている?今は逃げてる冒険者の後をワームが距離を詰めてきている、僕の投げた名刀お姉さんは見事に外れる、ワームの速度を考えて投げたがワームのだいぶ前の地面に刺さった。
逃げてる人が僕の行動を見てたのか「投げるなら当てろ~」と叫びながら走る。
ここからだと斜めにワームを追いかける事になる。剣も拾わないといけないので全力で回収に向かう。
「あれ、ワームが止まってる。あの人食べられたのかな」
僕の声が聞こえたのか「早く来い~」と叫んだ。
ここからだと見えないが何処かにいる。急いでワームの口の方に向かう。
動かなくなっているので口の方に行くと、ワームの口の中に冒険者がいる。
ワームは口から裂けて胴の部分の半分近くまで開いていた。胴体の裂けてない所の前に名刀お姉さんが刺さっていた。
僕は名刀お姉さんを取りに歩く。
「作戦通りだった」
「外れてただろ」
僕の後ろから冒険者の声が聞こえるがそれは無視。
「刃こぼれしてない、流石名刀お姉さん」
「俺の心配をしろよ」
僕は振り返り「大丈夫の様なので行きます」走り出す。
「下に潜ったぞ、気を付けろ」
「リーダーそっちに行ったぞ」
リーダーが横に飛ぶと、リーダーのいた場所からワームが凄い速度で口を出す。
リーダーは横から刺して切り裂く。
僕は反対側で同じ事をする。剣と剣の先が当たりリーダーが。
「おい誰かいるのか?」
「ああ、すいません。僕も刺して切り裂いてます」
僕の話が終わり頃には、口と胴体の部分は切り裂かれた。
「ああ、君か助かったよ。さあ次に向かうぞ」
暗くなる前に南門に冒険者は集まった。
「ご苦労様です、明日もよろしくお願いします。朝ここに集合してください」
リーダーの話を聞いて皆街に戻っていく。
前回と違い街に近い所で戦闘したので、外で野宿はしない様だ。
僕はいつも全力なので、一番に街に入る。
工房に行かなければならない。
「遅くなりました、商品出来てますか?」
「は~い、出来てますよ」
受付のお姉さんが僕の声を聞いて、作業をやめて商品と書類を持ってカウンターに来る。
「こちらが商品です。申請用の書類です」
「ありがとうございます。綺麗に出来てますね」
「はい、職人さんが頑張りました」
「発注が決まったら、よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。ありがとうございました」
僕は急いで、猫の宿に帰る。




