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寄り道

「こんばんは」


僕とジェシーはマルネ村に着いた。


「どうしたこんな夜に」


「ローランドを夕方に出発して今着いたんです」


おじさんは驚いて「馬はそんなに速いのか」


「そうなんですよ、凄く早いんですよね」


僕は自慢のジェシーを撫でて「ここにジェシーを置いて行っていいですか?」と言った。


「ここに?」


僕は村の柵を差して「あそこの柵に手綱を結んで置いて行きたいんです」


「オークを狩りに行くのか?」


「はい、お土産にオーク肉を持っていかないといけないので、マルネ村に来たんです。おじさんにもあげますね」


「いいのか、嬉しいな」


おじさんは嬉しそうで、僕からジェシーを受け取り柵の内側、村の中に結んでくれた。


僕はもう1人のおじさんにもあげるよと言うと。


「いいのか高価なのに。前にも貰った時は、美味しかったな」


「はい、交代までに帰って来る様にしますので、その時に渡しますね」


僕は崖に向かって走る。崖から下を見て松明を忘れたのを思い出し、村に戻る。


僕を発見したおじさんが、「おいどうした?」


「松明を忘れました、貰えますか?」


おじさんが松明を渡して「ほら、気をつけろよ」


「ありがとう、オーク肉を持って来るね」


僕は走り出し崖まで来るとそのまま崖を降りて行く。反対の崖だと降りるより滑り落ちそうだと思い出す。


下に着いて、滝を見てオークを狩るのにどちらがいいか考える、前回は滝の向こうなのでこちら側でオークを探す事にした。


右が松明、左に剣を持って走り出す。


松明の明かりはそんなに遠くまで届かないので、走る速度を遅くしてオークを探す。


学園に戻れば剣の修行は出来ないので、ここで今出来る事をする。


まず、集中して一撃で痛手を負わせる様に次の次ぐらいの動きまで考えて構える。


オークが多ければ松明を落として右にも持つ。


暗くてなかなかオークを見つけられないが、前方で魔物の動くシルエット。


見えてきた魔物はオークだった。


そんな数が多すぎだ、何体いるか分からないがここはひとまず退散した。全力で走る。


追いかけて来る、松明を下に落とし反転オークを迎え討つ為に深呼吸して相手の動きを見る。


剣の届く範囲でオークを選んで攻撃をする、向かって来るオークを攻撃しながら斜めの方向に走って攻撃する。


オークに囲まれたり、同時に戦うオークの数を減らしながら、ある時は止めを刺すように攻撃して、ある時はオークの動きを鈍らせる為に攻撃をする。止めをさせない、鈍らせる事ができない場合は回避する。


この行動をしていると正三角形の辺の部分を走ってる様だと気が付く。これが正三角形の法則か。


冗談を思いつく位にオークは減ってきた。後3体だ、足を止めて今の最高の連続攻撃を心がけてオークを待つ。


最初のオークを、上段から斜めに振り下ろす攻撃をする。止めは後にして2体目に下からもとの上段に戻るように攻撃。流れる様な動きを続けて「いい感じの動きが出来た、3体目は後だ」


左手に剣を持ち、2体目の方が倒しやすい位置にいるので止めを刺す。続いて1体目にも止めを刺す。


3体目は倒した2体に阻まれてこちらに来れない。少し後退して突きの構えで待つ。


「おりゃ~」


ミスリルの剣の乱れ突き、全力でくり出す突き。最後の1体を倒しその前に立ち「食べる事考えず無数の突きを入れてしまった」


落ちている松明まで戻って手に取り周りを見回す。


よかった、10体以上いたんだ。


「広範囲で戦ったな、解体しないと」


名刀ナイフを取り出し解体を始める、気持ち悪くならない様になって大分経つ。


解体して最後に倒したオークを見る、食べる事が出来ないオークになってしまったようだ。


食べれるオークは13体だったので、リュックには入らないので滝の樽に3体分を入れて村に戻る。


見張りのおじさんが見えてきた。


「おじさん、オーク肉持ってきたよ」


「早いな、もう倒してきたのか?」


僕はリュックを下ろして、おじさんに話す。


「このリュックの中のオーク肉をおじさん達にあげたいんだけど、どうにかならない?」


「その中の全部がオーク肉で俺たち2人にくれるのか?」


「うん、僕はこのリュクにもう一度入れてくるから、中を空にしてほしいんだ」


おじさんは考え込む。するともう1人のおじさんが提案した。


「オーク肉を置いて来る間、俺1人でいいから家に置いて来いよ、後で分けてくれればいいぞ」


「わかった、悪いがすぐに行って来るから、ユーリも一緒に見張りをしてくれお願いだ」


「もちろんだよ、それにリュックを待っているんだから僕はここにいるよ」


おじさんは急いでリュックを背負い歩き出す。


「おいユーリ、すごく重いぞ、よくこれを2個も背負って走れるな」


僕は離れて行くおじさんに「若いから」と言った。


「いってろ」


僕と一緒にいるおじさんが「いいのかあんなにオーク肉をくれても」


「いいんだよ、崖の下には沢山いるから、それよりもオークは登ってこないの?」


「たまにはいるさ、だがこうして見張っているから大丈夫だ」


そうだろうけど、あの崖の下のオークの多さを知ったら、村は大丈夫なのかと誰でも思いそうだけど。


「ユーリ、リュック。俺のかみさんが喜んでたけど、なんでこんな時間なのと少し怒っていた」


「それは失礼と謝っといて、それでは最後の狩りに行ってきます」


「ありがとう、最後まで気を抜くなよ」


僕は滝のオーク肉と合わせてリュックが一杯になるようにオークを倒した。





「ジェシー、重くてごめんよ。ボラジュに着けば少しは軽くなるから」


ジェシーは今、リュックを2個にお土産、剣を3本、それに僕が乗っている。


それでも少し遅くなったぐらいで、それでも速い、マルネ村を朝になる前に出発した。


予定よりも早くオークを倒す事が出来たので、ボラジュに向かう事にした。


もうすぐ着いてしまう、街の中に入れる時間に早いかもしれない。


門には既に並んでいる人がいる。ここから見える人は冒険者のようだ。


並んでいる人の多くが冒険者だ。


僕も馬から降りて並ぶ、一番前の人が入るための検査を受けている。


こんな早くから冒険者が街に入る為に沢山並んでいる。


僕の番が来て、街にどんな用で来たのか聞かれ「親戚の家に遊びに来ました、猫の宿が親戚の家です」と言うと「あそこの食事は美味しい物が多くて何度も足を運んでいる」と言われた。


もともと怪しい物には見えないはずだが、街の中の宿屋の親戚なら簡単な質問で入れる。


猫の宿屋の裏の厩にジェシーを入れて水に干し草を用意して荷物を背負い宿屋の受付に向かう。


「おはよう、ソラちゃん」


「ユーリ、おはよう」


「一番いい部屋を用意してくれるかな、一番だよ」


「はーい」


いい子だ、従妹とは驚きである。そして痛い。


「ソラ、ユーリは家族なんだから、一番安い部屋でいいのよ」


痛い頭を撫でていると、とんでもない事を言いだすテレサさん。


「おはようごさいます、テレサ叔母さんいい部屋をお願いします、疲れているので直ぐに休みます」


「誰が叔母さんかな、テレサさんでしょ」


「では、おはようテレサさん、休める部屋を目が、目が閉じてしまいます、早く」


「もう冗談はいいから、何しに来たのよ。ローランドには行ったの?」


「行きましたよ、その帰りにマルネ村でオークを倒しオーク肉をお土産に持って来たんですよ」


僕は話しながら厨房に向かう。


「おはようございます、おじさん」


「おはよう、ユーリ君」


おお、叔父さんが前より話してくれる様になった。


「お土産のオーク肉です、ここに置きます」


調理台の上にリュックを載せる。


「ありがとう、ゆっくりして行ってくれ」


「はい、お世話になります」


叔父さんにお辞儀して受付に戻る。


「ユーリ、オーク肉まだあるわよ」


「従妹の為に持って来たんですよ、それで部屋の用意は出来てますか?」


「空いてる部屋でいいならどうぞ」


僕はソラちゃんにお願いして部屋に行き寝た。




よく寝た、この頃子供なのに夜更かししたり徹夜をしたり徹夜でオーク狩りしたりと忙しい日々を過ごしてきた。


のんびりしよう、子供なんだから、でも疲れが取れれば何かしたいなと思ってしまう。


鞄からお土産の箱を出し確認する、赤色とピンク色の箱を持ち階段を降りていく。


受付でウトウトしてる従妹のソラちゃん。この世界は子供に自由な時間が少なすぎる、遊べる子、遊べない子、街の外は魔物で危険それなら街の中に住んでる子供だけでも遊べればいいなと思う。それが従妹なら尚更自由に遊んでほしい、勿論危険な街の外に出ないで。


ソラちゃんの前にピンクの箱を置く。赤の箱を持ってテレサさんを探す、厨房で夜の食事の手伝いをしていた。


「これお土産です、後で開けてください。疲れが取れたので、街の中を散歩してきます」


「ありがとう、ユーリ。夜の食事はどうするの一緒に食べる?」


僕は考えて「帰って来てから食べるのでシチューの残りにパンでも取っておいて下さい。行ってきます」


「分かったわ、あまり遅くならない様にね」


「は~い」




「すいません、こんな感じに製作してほしいんです」


僕が書いた図面に説明を書き、作って欲しい依頼をした。


「はい、分かりました。明日のお昼には出来ると思います」


僕は先に鍛冶屋で刃の部分を注文してきた、その時に納品先が決まったらもう一度来ますと言って、急いで小物細工の得意な工房に来ている。


鍛冶屋さんに教えて貰ったのが、隣にあるこの工房だった。隣同士で良かった思う。


もし大量生産する様になれば運ぶ手間が隣同士なら少ない。


「カードで支払います、僕は隣の工房に刃をこちらに納品してくれる様に頼んできます」


「分かりました、支払いの処理をしときます」


僕は隣の工房に行き「親方、紹介ありがとう、作ってくれるそうです、刃の部分が出来たら隣の工房に納品してください」


「分かった、もう出来るから後で届けとくよ」


「ありがとう、よろしくお願いします」


小物細工工房に戻る。


「頼んできました、もう出来るそうなので、後で持って来てくれると言ってました」


「そうですか、はいカードです。刃も揃うので予定のお昼には出来ていると思います」


「では、明日以降に取りに来ます、書類の作成よろしくお願いいします」


出来た物の説明書と明細書を書いて貰えば、署名した人に権利がある。


テレサさんにお願いする。


これは従妹のソラちゃんの為に僕の様に好きな事、やりたい事の時間が出来ればと思いプレゼントする。


この商品が売れればソラちゃんの代わりに誰か雇えるかもしれない。僕の家にシシルが来てくれた様にいい人が見つかるといいなと思う。


でもそれを考えるのは両親のテレサさんと叔父さんだ。叔父さんの名前を聞こう。教えて貰ってないよな。僕は成長してるのだ昔の僕なら叔父さんで通したはずだ、名前を聞こうなど思う事もない。


外に出て全ての用事が終わったのが、夕方を過ぎていた。


冒険ギルドに行ってみよう、冒険者が多くこの街に来ていたのが気になる。


ギルドに入ると冒険者が20人以上いた、その皆が集まって話をしている。


僕は掲示板の前に行き依頼を見る。


オーク、ゴブリン、コボルト、ベアの討伐クエが張り出されていた。


素材や手紙の配達もある。いつもどおりのクエだ。


お腹が空いたので宿に帰る事にする。





「叔父さんの料理は美味しいな、干し肉ばかり食べてるから、温かいのが嬉しい」


僕が食べてる横でソラちゃんも食べてる。


「ユーリ、ブラシと鏡ありがとう。綺麗な色で嬉しい」


「気に入って貰えて良かったよ、王都で取り寄せて貰ってたんだよ」


「取り寄せってなあに?」


「欲しい物がお店になくて他のお店から持って来て貰う事だよ」


「お店になかったんだ」


「そうだよ、ソラちゃんにあげた物を他のお店から持って来て貰ったんだ」


「ソラ、喋ってないで食べなさい。ユーリも」


「「は~い」」


良い返事の出来るソラちゃん。同じ言葉でもだらしなく言う僕。


「テレサさん、叔父さんの名前教えてよ」


「ユーリの叔父さんはシタンです」


「シタン叔父さんか」


テレサさんはもういない、空いた皿を持って厨房に行った。


「ソラちゃん、お父さんの名前は?」


「シタン」


ソラちゃんは知っていた。僕の小さい頃は・・・・・知っていたはずだ。


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