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子供の喜ぶおかず

扉を開けて中が見えると、ここは何処?池袋のホテルのバイキング位の広さがある厨房?かな。


もしシェフ見習いが初めて来てここを見たら「うわ~、僕ここで働けるの」と感激するぐらい立派な厨房だ。


「すいません、本日のお食事の用意に来ましたユーリです、よろしくお願いします」


僕が挨拶すると綺麗なシェフコートを着た清潔そうなおじさんがこちらに来た。


「私がここの料理長のシェフトだ、侯爵様からこの厨房を貸し手伝うように言われている」


「寸胴鍋を2個、ボールがあれば大きめなのを1個貸してください」


「おい、今言われた物を用意しろ、後は?」


「大きいボールの半分強の牛乳とワインの瓶を5本用意してください」


「今の用意を、他には?」


「調味料で、塩、コショウ、砂糖、ソース、後でバター取り敢えず以上です」


「今の物をそこの台に置いとけ」


味の違いはあるけど調味料があるので作れそうだ。


僕は用意して貰った道具に材料を使い先ずは、小さく切ったオーク肉をボールに入れ牛乳で漬け込む。


寸胴鍋に切ったオーク肉を入れてワインで漬け込む。


使ってない寸胴鍋にワインで付けたオーク肉を全面焼いて入れる、それに水を入れて弱火で煮る。


温度は湯気が少し出るか出ないか位でアクと油は直ぐに捨てる。


ワインの入った寸胴鍋の火にかけアルコールを飛ばしておく、この時も温度は低めで飛ばす。


僕はここで夜までには間に合うよねと思った。時間がかかるのだ献上するぐらいの料理は。


オーク肉が柔らかくなったのでオーク肉と野菜をワインの寸胴鍋に入れてまた煮る。


煮詰まつて来たので味を調える。


ボールのオーク肉を牛乳をよくきりミンチ肉に、玉ねぎをみじん切りにしてよくこねる。


塩とコショウは少なめにいれてハンバーグのたねの出来上がり。


芋の皮を皮むき器でむく、それをボールに入れて水で浸す。


ビーフシチューは出来上がり焦げない位の火力にする。


約15分ぐらい水に浸した芋の水分を取る。


「すいません、侯爵家のみなさんは後どの位でお食事の時間ですか?」


僕が話すと目の前にいた料理長が「後30分でしょうか」と言った。


まだ焼くのには早い、忘れていた。お皿を用意して貰わないといけない。


「料理長、ステーキを載せる皿を4枚に、パンを載せる皿を8枚、ナイフとフォークが4セット、ステーキ用の皿4枚とパン用の皿4枚はここで料理を載せてお出しします。パン用の皿4枚とナイフとフォークをテーブルにセットしてください」


そろそろ焼いてもいいな、フライパンでハンバーグを焼き始める。


忘れていた鍋を用意して貰い、油でフライドポテトを揚げる。


芋の水をよく切り小麦粉をまんべんなく付ける、余分な小麦粉を落とし鍋に入れていく。


入れ終わった鍋に油を入れて火を付けて低温で中まで火を通し柔らかくなったら強火で揚げる。


ハンバーグの片面がよく焼けたのでひっくり返して焼く。


ここで大事な事を思い出す、揚げ物の油をきる為の物がない。


あるここは平民の家ではない。


「すいません、急いで紙を数枚用意してください、何も書いてない紙です」


「おい~、急いで持って来い」


僕の調理をしているところを見ているので前には料理長がいつもいる。


ハンバーグが良い感じに火がとおって少し膨らんできた。


紙も用意されたのでポテトフライを紙の上に載せて油をきる。


皿に盛り付けて出来上がった。


ビーフシチューのタレを少し緩めにしてハンバーグにかける。


フライドポテトは薄味の塩にした。


「出来ました、運んで貰えますか」


「完成か、どれどれ」


みんなは運ぶ事よりも見る方が大事なのか、手に取る人がいない。


そこにラキトさんが来て「おい、出来てるなら運んでくれ」と指示を出す。


「ユーリ、一緒に食べていいそうだ」


僕は最初から一緒に食べるつもりだった。


「ありがとうございます」


僕はラキトさんに付いて行き食堂をノックする。


扉が揺れたり、何か擦れる音がしたり、扉の向こうで誰か小さい子が何かしてる様な・・・セシルちゃんかな。


「どうぞ、入ってください、ほらセシル来なさい」


夫人に入室許可を貰い扉を開ける。


夫人に手を引かれ席に向かうセシルちゃん、久しぶりだ。あまり男性には合わない方がいいと誰かに聞いて前回は会わないで帰ったんだ。


僕は何処に向かえばと思ったがすぐに気が付く空いてる席にナイフとホークが用意されている。


この前と同じように右が侯爵様で前が夫人にセシルちゃんだ。この前はセシルちゃんがいなかったが、まだ食事を食べる歳ではなかったのだろう。


「ユーリ、楽しみにしていたぞ。料理長から丁寧に下拵えをした調理法だと聞いた。そして作った事のない料理だと言っていた」


僕は頷いて「はい、初めてで良かったです。実は侯爵様が初めて食べる物かどうか少し自信がありませんでしたが、セシルちゃんにあった食べ物があまり無いように思えたので作りました」


僕と侯爵様が話していると料理が運ばれてきた。


侯爵様から料理が配られ最後に僕だ。


「では、食べよう」


久しぶりのハンバーグだ。特別好きではないが美味しい料理だ。


材料とよくこねるのを忘れなければ不味いハンバーグを作るのが難しい料理で、ソースも種類があるので色々な味が楽しめる。


セシルちゃんも嬉しそうだ、僕の最高のハンバーグに手が?手で食うのか熱いけど大丈夫なのか、僕が危ないと言う前につかんだ。


ポテトフライの方か、しかしポテトフライを手で食べるとはなかなか食べなれているな。


「凄くおいちい」


セシルちゃんはポテトフライを気に入ってくれたようだ。


夫人がフォークをセシルちゃんに持たせて。


「セシル、ホークを使って食べるのよ、手が汚れるでしょ」


「は~い」


手で食べる習慣ではなかったのか。


「セシルちゃん、もう一つの料理は熱いから手で食べたらダメだよ」


僕は自分が作った料理なので注意しなくてはいけない。


「は~い」


返事は凄くいいのだが、またポテトフライを手で食べてる。


僕も食べよう、先ずはポテトフライからだ。


少し甘くジャガイモとそんなに変わらない、これならもっと早く作ればよかった。


「これは凄いぞ、ステーキと違い切りやすい、ナイフがお肉を開いて行く様だ。そして歯ごたえが柔らかく旨味が口の中に広がる、それにこのソースがその味を更に美味しくしている。ユーリ、まさに初めの食べる料理だ、しかも最高の味だ」


「そうです、比べていいのか分かりませんが、ステーキよりこちらの方が私は好きな味です」


夫人も美味しいと言ってくれた。


セシルちゃんはホークでポテトフライを完食、好きな物を先に食べるパターンですね。


夫人がセシルちゃんのハンバーグを切ってあげてたので、ハンバーグを刺して口にパクリ。


「おいちい」


子供は小さい時、ホークを持つ事が出来ず握る。


「この薄い塩味がかえって芋の味を分かりやすくしていて美味しいな」


「はい、お芋の甘味がよく出ています」


「いや、絶品だよ。ユーリまさに国王様に献上できる味だ」


「お褒め預かり光栄でございます」


やっぱりあの人達の誰かが言ったんだな。


「お肉にかかっているソースも絶品ですね」


僕はここで説明するソースの事を。


「実はこのソースは、ワインをベースにした他の料理のソースなんです。ですからそのソースで煮込んだシチューがもう一品、厨房にあります。今いただいた料理のソースは、セシルちゃんが食べ易い様に少し薄めてあります。厨房の料理は、大人の味になっています。温めればシチューと同じでいつでも食べれます」


「他にも一品あるのか、ラキト直ぐにセシル以外のみんなに出してくれ」


ラキトさんが分かりましたと言って厨房に向かった。


「まだお食べになるんですか?」


そんなに大きくないがハンバーグを食べたのだ、これで終わりだと思っていたのに。みんなパンを食べてない、僕は3個も食べたのに。


「お待たせしました、こちらがオーク肉のシチューです」


「これか、ソースが先ほどよりもトロンとしているな、いつものシチューとあまり代わらないが味はどうだろう。これが大人の味か、うむ美味しいぞ」


「まあ、なんて深みのある味でしょう、先程の料理はお肉を引き立たせる為に味付けは薄めでしたが、このシチューはソースだけでも食べれます」


喜んでいただけたようだが、僕はもう食べれません、一口も。


「ユーリ、これも絶品ではないか、いままで出し惜しみをしていたのだな」


「違いますよ、僕にはワインが高価なのでこの料理は作る機会があまりないんです」


「しかし、ここまで美味しいと国王様に献上しない訳には行かないな。私よりも上手い物を食べてるのかと怒られる」


怒られるのか、それで何かされたら困るな、それで献上なのかな。


「ユーリ、この料理法を国王様に献上していいだろうか?」


「いいですよ、食事は誰が食べてもいいんです。食材が買えれば」


「いいですわね、食材が買えればとオーク肉はあまり出回らないですからね」


違う意味だけどまあいいか。


「お肉食べたい~」


セシルちゃんが完食、そしておかわり。


「もしよろしければ、僕はまだ手を付けてませんのでお肉だけでもお食べになればいいと思います」


僕の話にラキトさんが反応して、僕の前のシチューが夫人の前に、夫人がナイフで食べやすい大きさに切って、空いてる皿に載せてセシルちゃんの前に出す。


「セシル食べすぎはいけませんよ」


「は~い」


僕はここで言っていいのか悪いのか分からないが判断は侯爵様がすれば言いと思い話す。


「実は、貴族様には下品な食べ方かもしれませんがパンをソースに漬けて食べると美味しいです」


「ユーリ、貴族は魚料理のソースをパンでつけて食べるから下品ではないんだよ」


「ああ、そうなんですか、よかったです」


僕の言葉に夫人が先ずパンを付けて食べてみる。


「まあ、美味しいですわ、ソースを少なめにパンに付けるとパンの甘味とソースの濃厚な味が絡んでとても美味しくなります、別々に食べるのが勿体ないですね」


「おいしかった」


食べ終わったセシルちゃんから美味しいを頂きました。


美味しい食事の時間が終わり、夫人とセシルちゃんは退室して、侯爵様が話し出す。


「そうだ、明日のパーティだが私は先に行かなければならないので、後から来てくれ。これが通行書だ」


渡された通行書を見てみると、パーティに招かれている事と通行を許可する事が書かれていた。学園に入る前だと一つの単語も分からなかったはずだ、改めて言葉の大事さが分かる。それに遠く?か、分からないが僕の母さんとテレサさんは言葉が分かれば手紙のやり取りをして家族が今どの様に過ごしてるか伝える事も出来る。


「ありがとうございます。パーティは何時頃に行われるんですか?」


「正午に始まるのでそれよりも早く行っていなくてはいけないよ」


「そうですか、それでは少し前までには伺います」


「それにしても、今回のパーティが延期になり主催者の国王様は大変であったであろう」


延期にしたのか、どのくらい遅れたのかな。


「何日ぐらい延期したんですか?」


「3日延期をした、何でも王都でおきていた連続誘拐犯のリーダーとその誘拐された子供を買ってた貴族数名が捕まった。その処理をする為に時間がかかったそうなんだ」


「侯爵様は何日前にこちらの屋敷に着いたんですか?」


侯爵様は少し考えて「5日前には着いていたかな」とおっしゃった。


あれ、僕が帰って来たのが夕方より前だから今日だよな・・・・・・・・僕はパーティに間に合ってない。


母さん僕は1回死にました。親不孝をお許しください。


これからは約束を守り行動します。約束はなるべくしません。


これでいい、反省はした。明日のパーティは時間を守ろう。


「明日は早く行きたいと思います、遅刻はいけません」


「そうだな、それでは休むとするか」



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