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ユーリ、驚く

よし樽が2個になったぞ。リュックに10体分入るから丁度いい。


全てをリュックに詰めて樽を見る。剣はどうするかな樽の中?それとも樽の外、無くなるならどこに置いても無くなるか、どうせ誰も来ない。樽の外でいいか。


急いで村に戻るぞ、今日は忙しいのだ。


意外と早く走れるな、村の入口が見えてきた。見張りの人の横に樽がある。


「ただいま、樽持って来たくれたんだね」


「ああ、持って来たけど、どうするんだこの樽を?」


おじさんは樽を叩いて聞いてきた。


ここだと見張りの人の邪魔になるから、外側で見張りからは見えるけど邪魔にならない・・・あそこに置くか。


「おじさん、ここに樽が有ると何かの邪魔になるかな?」


「邪魔にならないけど、何でそこに置くんだ」


おじさんは少し考えてから、僕の質問に答えてくれた。


僕も樽を叩いて、ここに置く理由を話し出す。


「僕がオーク肉を臨時に入れる為なんだ。夜だと中に入れてもらえないから、樽に入れて狩りに行きたいんだ、中に入れる様になるまで貯めて置きたいんだ」


「なるほどな、邪魔にならないけど帰る時はどうにかしてくれよ」


「分かっています」


僕はおじさんの横に置いてある小さい樽に、リュックからオーク肉を出して詰めて蓋をする。


「これおじさんの分だから、空いたらその脇に置いといてよ。おじさん用オーク肉の樽だから」


「おお・・・この樽の中のオーク肉が俺のなのか、いいのかこんなに?」


僕はリュックを背負い、リュックを前に持ちその場で回転した。


「こんなにオーク肉持ってる僕を見て遠慮してもしょうがないよ、そうでしょう」


「まあ、そうなんだが。オーク肉は高価な肉だからな」


僕は意地悪を言い出す。


「そうなんだ、それならおじさんと交代する人にはおじさんの分もあげるか。まあしょがないか」


「いや、高価なオーク肉だが人の好意を断るのは、うん、いけないな」


おじさんの中で何かふんぎりがついたみたいなので、ギルドに向かおう。


「おじさん、そんなに気にしなくていいよ。どうせ毎日持って来るんだから、じゃね~」


僕は走り出しながら言って手を振る。


「おお、毎日か。ありがとう」


なぜ、毎日だと嬉しいのだ。それとも貰う気になって、毎日で嬉しいのか。両方だな。


「悪徳商人はいるか?」


僕は買い取りカウンターで叫んだが、ギルマスは僕の後ろにいたみたいだ。頭が痛いぞ。


「その悪徳商人に今度は何の用なんだ」


「ここにあるオーク肉を半端だが買って欲しい。出来るかギルマス」


「その喋りは何なんだ、子供のあいだではやっているのか?」


「僕の中で流行なんだ、4体分と少しをどうぞ買取して下さい」


「どうしたんだ、早すぎないか」


ギルマスがオーク肉を持って来るのが早いと。


「そこは、子供の知恵で」


ギルマスは台の上のオーク肉を見て、4体以上あると直ぐに確認してくれた。


「カードに4体分の入金を願いします」


「いいのか、半端分も買い取るけど」


待つのが嫌なので、おまけに置いていく。


「ああいいです、面倒だから」


「面倒なのはうちの作業員だけど」


「その面倒を待つのが面倒なんです」


「わかったよ、ほらカード」


ギルマスは笑いながらカードを僕に返してくれた。


「ありがとう。今日はもう来ないかもしれないけど、また来ます」


「そうか。ありがとう、また来てくれ」


僕はギルド内に入り掲示板の前に立つと依頼書を探した。


オークの討伐依頼があった、今度は受けようかな。


宿屋に戻ろう、急がないと寝る時間が減る。





「ジェシー、君にお願いがあるのだ、その荷物を載せて走ってくれ。僕も走るから」


村の東を出て街道でジェシーにリュックをくくり付けた。


僕とリュックを乗せて走るのは大変だと考えて、僕が走る事にした。


「競争だジェシー。どちらが先に街に着くのか君には負けない。日頃の僕の努力を見せよう」


僕は本気だ、僕は準備運動をして「ジェシー、よーいドンの最後のンで走り出すんだぞわかるな」と言って体を撫でる。


「ジェシー行くぞ、よーい~ドン」


僕は走り出した。全力だ、ジェシーは遅れて走り出したのが横目で分かった。


「ジェシー、そこでストップ」


僕は頑張った5秒ぐらいまでは僕が優勢だっただろうが、今はジェシーが見えなくなる前に止まって貰っている。


「ジェシー、馬ってそんなに速いの、そんなに重い荷物を載せてるのに」


追いついた僕は、君の勝ちだと言って撫でる。


「君に勝てないのが分かったよ。異世界なら馬に勝てるのかと思ったけど無理なんだな」


異世界で人間の体力だけ凄くなっている事は無い様だ、検証のつもりはなかったけど、勝てないのがよく分かった。


「僕は走るけど、ジェシーはのんびりか僕に合わせて走ってね。行くよ」


取り敢えず勝てないけど、全力で走る。体力と速く走るためだ。




僕の目的の冒険宿前に着いた。


ジェシーに並走して貰い街までたどり着いた。


ボラジュの街とマルネ村は近い走って1時間ほどで着いたと思う。


僕の足で1時間だと約20キロ位だろうか?


前世では10キロを35分ほどで走った。その次の年は43分、飽きてしまったのだ。


おお~、高校の1年の時35分で2年が43分、そうか高校の2年のマラソンまでは生きていたんだ。


あ、それ別に重要じゃないな。死んだ原因はどうせ分からない。


「それに今は、このぼろい宿屋に痛い・・・・」


後ろを振り返るとテレサさんが睨んでいる。


「痛いじゃないですか、頭を叩かれるとバカになるからやめて下さい」


「このぼろい宿屋が聞こえたよ」


僕は3軒先の建物を指さして「このぼろい宿屋に何かあるのかな」


「そこ鍛冶屋だけど」


「このぼろい鍛冶屋に良い武器はないよな」


テレサさんは腰に手をかけ「何しに来たの、泊るの?」と言った。


「いえ、今日はマルネ村からお土産を持って来ました」


テレサさんが宿屋に入って行くので後を追う。


受付に座っているソラちゃんに「ひさしびり、元気?」と聞いた。


「元気、ユーリは何しに来たの?」


「近くまで来たから、お土産持って来たよ」


「ほんと~、オーク肉が食べれる」


あれ、まだ何も言ってないのに。もしかして、お肉のお兄さんと覚えてるんじゃないだろうな。


「何で分かったの?」


「だってリュック背負ってるから」


子供は利口なんだな。


「テレサさん厨房入ってもいいですか?全部オーク肉なので」


「ええ~、それ全部オーク肉なの?」


「そうです、それで入っていいですか?」


「いいわよ」


僕はカウンター横のから厨房に中に入る。おじさんが居たので挨拶をしよう。


「こんにちは、台の上にオーク肉出していいですか?」


「おう」


無口だよね。


僕は床に置いたリュックから次々とオーク肉載せていく。


全部載せ終わり、台の上はオーク肉の山になった。


「多いな」


無口だから単語が短い。


「後お願いします」


「ありがとう」


おじさんにお礼を言われたぞ。


僕は受付に戻り店番をしているソラちゃんに話し掛ける。


「ソラちゃんはいくつになったの?」


「5歳になったの、ユーリはいくつ」


「僕は11歳だよ、僕の家も宿屋さんなんだよ」


「ユーリの家も同じなの?」


「そうだよ、僕も小さい時はソラちゃんと同じで受付をしてたんだよ」


「そうなんだ、どこにあるの?」


「カルテドにあるんだよ」


僕とソラちゃんが話している横にいたテレサさんが、急に僕の顔を両手で挟み込む。


このパターンはまずい、頭が飛んでくる。あれ、頭突きがこない。


テレサさんの顔がどんどん近づいてきて止まる。


何か驚いてるけど、どうしたんだ。


「ねえ、お母さんの名前はエルザ?お父さんはカシム?」


「違うような気がします、母がエルザ、父がカシムです」


「同じじゃない、私はテレサよ。聞いた事ない?」


「ああ、ありますよ。ソラちゃんのお母さんのテレサさんですね」


僕の会心の一撃をくらえ~。


「痛いです」


僕は頭をさする。


「姉、姉、私の姉がエルザなのよ」


「同名ですか、よくありますよね。苗字ないから」


「苗字?何よそれ。本当の姉なのよ」


?????


「だから、ユーリは私の甥なのよ、ソラは従妹」


何を言ってるんだろう、僕の母さんの妹?ないない、聞いた事ない。


「人違いです、うちの母さんに妹はいません」


「いるのよ、私が妹なのよ。聞いてないの?」


あれ、そもそも父さんと母さんの両親を知らないぞ、聞いた事もない。あれ僕からも聞いた事が無いかも。いや、それでも家族の事は話すよな。父さんは無理、無口だから。母さんは話すよ、妹がいたなら。


「そもそも両親の家族構成は聞いた事がありません」


「そうだ、宿の名前はエルザの宿よね」


「名前があったのか」


あの宿屋に名前があるとは思えない。看板はベッドとお酒の絵が描いてあるだけだ。


「私は姉さんからユーリと名前を付けたと聞いたのよ、それで私が女の子の名前だよねと言ったのよ」


どうすればいいだ、母さん、家族構成は話そうよ、父さんは自分の家族構成を母さんからでもいいから僕に伝える様にしようよ。


「それにユーリは姉さんに似てるわよ」


どうすればいいのだ、今も子供だが小さい時は、よく似た親子ですねと何回も言われてた。


「僕は叔母さん会えて嬉しいです。あれ、ソラちゃんにはテレサさんにお姉さんがいる事は話したんですか?」


「話してないわよ」


姉妹決定だ。何で話さないんだろうこの人達は。


「それで従妹てなに?」


「それはお母さんとユーリが甥で姉さんとソラが姪なのよ」


分かりづらいなもっと簡単に言えばいいのに。


「分かんない」


「ソラちゃんと僕が家族なんだよ。遠くにいる家族なんだよ」


「家族なの」


「そうだよ、家族だからオーク肉を沢山持って来たんだよ」


「そっか、家族だからオーク肉が食べれるんだ。家族っていいね」


僕は、従妹の頭を撫でながら「家族は仲良しなんだよ」とそれらしい事を言った。


仲良しの筈だけど・・・・・・教えて貰えないと仲良しに慣れないよな。


「ユーリ、泊まっていくの?」


「今日は家族のソラちゃんに会いに来ただけなんだ、帰らないといけないんだよ」


僕はテレサさんに顔を向けて。


「何か伝えますか?」


「そうね、元気にしてると伝えてよ」


僕は確認しなければいけないと思いテレサさんに話しかける、小声で。


「呼び方どうしますか?叔母さんはいやですよね」


「テレサさんでお願い」


僕に合わせる様に小声で答えたテレサさん。


「わかりました」


まだ小声で了解した僕。


「来て良かったです。また来ます、叔父さんによろしく。後、甥だと教えてあげて下さい」


甥でいいんだよな、その辺の知識は無いな。うん、若者が知る必要はない。甥、姪でいいだろう。


「ありがとうね、オーク肉。義兄さんにもよろしくね」


「わかりました、ソラちゃんまた来るね」


ソラちゃんの頭を撫ぜ手を振る。


「ユーリ、また来てね」


僕は長い時間またせたジェシーを引いて門に向かう。




「ジェシー、驚きだよ僕に従妹がいて母さんに妹がいるなんて、帰ったら聞いてみるか」


まだお昼にもなっていない。帰りはジェシーに乗っているので30分もしないで着きそうだ。


「ああ~、あの姉妹に両親、僕のお祖父ちゃんにお祖母ちゃんがいるんだ。父さんにもいるよな。何で今まで気がつかなかったんだ。あれ、父さんにも兄弟がいるのかな。帰ったら全てを聞かないといけないな」


僕は母さんに性格も似てるのかもしれない。


マルネ村が見えてきた。

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