二刀流でオーク
僕を見るなり怒鳴りだすギルマス。
「俺達がどれだけ苦労して依頼を取り付けてきたか、どれだけ時間が掛かったのか分かるか、君は現れない、依頼は増えるだけで減らない、どこに行っていたんだ」
僕のターンなのか、話していいのかな。
ギルマスの横に立っている、いつものお姉さんにお願いしよう。
「はい、依頼書です、完了の署名を頂きました。入金お願いします、カードです」
「全部終わったの?」
「はい、出来る農民の方々でした」
驚いたお姉さんはパラパラと速読を僕に見せつける。いつか僕も出来るかな。でも、毎日パラパラは嫌だな。
「はい、全部署名されてました。入金して来ますのでお待ちください」
「全部終わったのか?」
「はい、みなさんが自分でしてくれたので早く終わりました」
「全部か?」
もう、そう言っているのに。
「はい、お待たせしました。ご苦労様でした」
ギルマスと違って、状況をのみ込めたお姉さんがカードを返してくれた。
疲れるギルマスだなと思いながら、僕はお姉さんにお辞儀をしてお礼の言葉を伝える。
「はい、ご苦労様でした。お疲れ様です」
僕は掲示板の依頼を1個1個確認する。ついに無くなったネズミの討伐の依頼が、王都とは恐ろしい街だった。
僕がギルドを出て武器屋に向かおうと指を出して、こっちだっけと指をクイクイしているとギルドの中から「全部だと~」と怒鳴り声が聞こえた。
あの人を誰か左遷してよ、王都に向いてないよ。うん下町が似合うぞ。
「綺麗なお姉様、名刀が無くなってます」
お姉さんがニヤリと笑った。
「まあありがとう、見てのとおり売れたのよ」
「そんな、お金がたんまり入り買える様になったのに既に物は無し」
「まあいいじゃない、私の作った名刀がほら有るから」
お姉さんは笑顔で自作の武器を指さす。
僕はカウンターの前で力尽きていたが、すぐに聞く。
「それで次の名刀は出来ましたか?」
「え・・・・・」
「だから次に来た時に次の名刀を買うから作りなさいとあれほど言ったのに」
「聞いてないわよ、月末に取りに来ると言ってたけど、作れとは言ってないわよ」
そうか言ってなかったのか、言い忘れだな。
「まあ次に来た時に名刀が欲しいので作りなさい寝ないで」
「何で命令口調なのよ」
「親父さんの名刀が無くなり、自作の名刀も無いこの武器屋に見に来る価値があるとでも言うのですか。残念だ」
「直ぐには作れないわよ材料がないし、それに時間がかかるのよ」
「それは失礼しました。それでいくらで売れたんですか?」
「これよ」
指が二本・・・金貨20枚、僕に言った金額の2倍、元々買うつもりはなかったんだ。
上を目指すのにあの武器は今の僕では扱いきれない、練習にも使えない。
あの武器を使いこなすには1年間はあれよりも重くて長い物で練習しなければならない。
最低でもあの武器を重たく感じない位の筋力が無いとダメだ。
お姉さんが名刀をもう一振り作ってくれればそれが欲しかった。
「凄いな、それを元に思う存分材料を買って親父さんに負けない名刀を作って下さい」
「そうか、材料代にはなるわね。楽しみにしてなさい、いつか作るから」
いいぞ、お姉さんがやる気になった。
「僕は楽しみにしてます、では次は剣を受け取りに来ます」
ベットの上でゴロンゴロンとして考える。
暇なのだ、そして次なるアイテムを作る予定だ。
2種類作りたいと思っているが、片方は簡単にできる。
この街で作ると母さんが間に入れないそれは困るのだ。
お金よりも母さんを間に入れて何もしたくないのだ。
そうだな、帰ってから作ろう。
本当なら確認しなければいけない日だが、完了の署名を頂いたので街の外に行きたくない。
僕は今まで旅に出た時の事を思い出す。ただ地図を思い出してるだけだが、色々行ったなと。
僕の知る限りの街や村の場所を頭の中で地図にする。
気が付きましたよ僕は、急いで荷物を鞄に入れる。
ベットの横に書き置きをする。
(探さないで下さい。ここには帰って来ません。この部屋は貸してもいいですよ。)
僕は急いで鞄屋さんを探す。
「一番大きいリュックを下さい。2個」
「こちらになりますが宜しいですか?」
「急いでください、カードです」
僕は急いでいる、支払いが終わりお礼を言って侯爵様の屋敷に戻りジェシーを連れて北門に向かう。
侯爵様はまだローランドに到着してないと屋敷の人に言われた。僕は行かなければならない所が出来たので必ず帰って来るので探さないでと言って急いだ。
「ジェシー、急ぐのだ僕達をマルネ村が待っている」
北の門を出て後、農家の人にありがとうと言われ、僕もありがとうと言って、そのまま急いで街道を北に向かう。
農家の人が喜んでたけど一杯捕まったんだろうな。あの周辺のネズミがいなくなれば、凄い事になるな。
大変な農家の仕事も楽しくなるかもな。
「ジェシー、本当に速くなっているな、成長期なのかい。それとも魔法でも使えるとか」
僕の予想よりローランドは北に位置していたらしい。
ローランドを朝出て来たのに夕方には、マルネ村に着いていた。
急ぎ宿のおじさんの所に行く。
「おじさん、久しぶり、部屋空いてますか?」
「久しぶりだな、部屋は空いてるよ。また荷車を置くのかい」
本当に覚えていてくれたんだ。
僕は外を差して「僕の友達のジェシーの面倒も見て欲しいんだ」と頼み込む。
おじさんは前回と返事は一緒だった。
「そこに置いとけ」
「ありがとう、今日は外で野宿するから明日泊まるね。代金は今日からでいいからジェシーに美味しい食事をよろしく。荷物置いてすぐに崖下に向います」
「分かった、部屋はこないだと同じで奥が空いてる」
僕は楽しかった。ここにはオークが沢山いる。
「くらえ、新奥義ミスリル二刀流連撃、これヤバイ、よく切れる」
そうなのだ、両手にミスリルを持ち奥義でオークを倒した。
そこで膝をついて地面を何度も叩く。
「くそ、僕はなんて愚かなんだ。名刀を買ったのに、受け取ってくればよかった」
街にいるから使う事もないと買い物した全てを帰りに受け取ればいいと思った。
ここに来る事を考えたのに、名刀まで気が付かなかった。
あの名刀で更なる練習と筋力アップを狙っていたのに・・・・・・。
次の旅には持って行こう。
今回ここに居れる時間は短いので効率よくオークを倒して解体をしよう。
遺跡が気になったが、ドラゴンはいないのであそこには行かない。
素早く倒して解体をすれば、後はローランドで買ったチュックに詰めるだけ。
いつもお借りしているボール子息の軽減付きリュックだとオーク肉が3体分入った、新しく買ったリュックは5体分はいる。借りたリュックは3個で9体分、買ったリュックは2個で10体分で前よりも1体分多く入る。
そうか、軽減付きだと体力作りにならないな、今回はいい体力作りになりそうだ。
2個あるうちの1個を背中に背負いもう1個は前で持つ。見た目で言えばリュックに挟まれな子供だ。
オークの数が多ければ両方置いて戦う、少なければ前に持っているリュックだけ置く。
前に来た時に発見した滝の裏に大樽を1個置いた。半端をここに入れて置く事にした。崖の上に行く道が近いから便利だ。
うまい具合に10体倒せればそのまま村に戻る。
木の技を使わなくても倒せる様になっているので剣術が上達しているのかもしれない。
朝までに何体倒せるかな。今のところ5体だ。
オークを発見、4体もいる。
全力疾風斬り、もしやオークは僕の敵と認定できない位に弱体している。
このままだと不味いぞ、剣が上達しない。見た目が悪いし戦いにくいが、リュックを置いて戦うのはやめよう。
面白いぞ、リュックを守って戦わないとオーク肉を持って行く効率が悪くなる、真剣にリュック守って戦おう。破られたら持って行く量が減る。
無駄な動きを更に減らす。少し重く感じるがもしかしたら鍛錬にはちょうどいいかも知れない。
戦う前にイメージして戦うようになってきた。
走る時は全力で戦う時は無駄な動きを省く。
「僕、強くなっているかも」
解体が終わったのでリュックに詰めて滝に全力で向かう。
樽に詰めてみると8体分の肉が入った。
ここからなら川を挟んだ向こう岸でオークを狩ろう。
こちら側の崖は急斜面の道だから去年は全くこちら側でオークの狩らなかった。
沢山いる、大丈夫かな。12体もいるぞ。
集中しよう。オーク1体1体の動きをよく見て、どう動く考えよう。
僕は全力で走り持っていたリュックを投げ置く。
無駄な動きをしない事を心がけよう。
最初の1体に近づき数を減らすために全力の突きを首に。少し後ろのオークにも首に左の剣で突く。
ここで2体目に回し蹴り入れて当たった瞬間にもう片方で蹴りを入れて後ろに飛ぶ。今の状態は2体倒して少し後退して残りのオークが向かってくるのをここで待とう。
両手剣の基本に戻り、左手が防御に右手が攻撃を次に来たオークの攻撃をかがんで避けて右手を突き上げる、左から来たオークの足首を左手で切りつける。流れる動きで、体の体重移動をして右手の剣を抜く。
倒れたオークを障害物とみなして後ろに飛ぶ。仕留めた2体が地面に転がっているので、オークの前進が遅くなった。
8体になって、円の中心に8体がいる様に移動して次々に斬りつける。
「分身の術は凄いんだな、後何倍速く走れれば習得できるんだ」
僕の動きに、オークは他の7体が邪魔でぶつかり合っている。
体勢が悪いオークよりもこちらに向かってくるオークに攻撃だ。
魔物は連携する事が無いのでオーク同士で邪魔になっているので、戦闘がやりやすい。
オークが最後の1体になったので一息つく。
「人間が相手なら3人同時に戦うのも難しいだろうな、魔物でよかったよ」
感想を呟いた僕は、最後の1体の首に突きを入れて、足をかけて引き抜く。
「これが終わったら村に行こう、先ずは買い取って貰うぞ」
そろそろ夜が明ける、両手剣で奥義の練習をして楽しみすぎたかもしれない。
樽が足りないな、村から持って来よう。
何とか12体をリュックに詰め込んだ。無理して詰め込むのはよそう、面倒だし時間が掛かった。この状態で戦闘は出来ないな、前が見えづらい。滝に戻ろう。
滝の裏の洞窟をキョロキョロと見て思う。ここいい、静かで誰も来ないし隠し物を発見される事がないだろうな。
リュックから出したオーク肉を樽に入れたが蓋が閉まらず、樽から出たオーク肉が蓋を載せてる様に見える。
急げ新鮮な肉が悪くなる、滝を出て右が登るのが大変な崖、左が登りやすい崖。
右の登りにくい崖を駆け上がる、ここから村は凄く近い。
「火の明かりが見えるな」
見張りのおじさんが見えてきた。
「おじさん、もう入れる」
「いいぞ、今年も来てたんだな」
「昨日の夕方に着いて、夜通しオークを倒していたんだよ」
「今年も安くなったら少し買うかな」
「今日のあがりは何時ぐらい?」
「3時ぐらいにはあがるかな」
「その時にオーク肉持って来るよ」
「いいのか、高価なんだぞ」
「いいんだよ、僕にはタダで手に入るんだから、またあとでね」
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
僕は見張りのおじさんと約束してギルドの裏の買取所に向かう。
「ギルマスのロードさん早く来ないと値が釣り上がりますよ」
「誰だよ、値が釣り上がるなんて・・・・ユーリ、また来たのか?」
「また来ました、買い取りお願いします、台に載せていいですか?」
ギルマスは僕を見てから載せてくれと言って「大きくなったな」
「いいでしょ、ローランドで買ったんだ」
「おいおい、背が高くなったんだなと言ったんだよ」
「なんだ身長か」
僕が載せたオークを確認するギルマス。
台に全てのオーク肉を載せて「これで全部です」
「前よりも多くなったなそれで何体分なんだ」
そうだった、重さではなくて1体いくらかだった。
「10体分だよ、去年は確か9体分だった」
ギルマスが考える。買い取り金額を考えてくれてるのかな。
「ユーリ、これからも持ってくるなら去年と同じでいいか、銀貨5枚で」
僕は考えてるふりをして言い出す。
「まあいいですよ、その代わり必ず買ってよね」
「分かってるよ、カードあるか、入金してくるから貸してくれないか」
僕はカードを差し出す。
「よお、今年も沢山売ってくれよ」
作業していたおじさんが話しかけてきた。
「どうしてですか?」
見覚えがないけど去年もいたのなら、僕が持ち込んだオーク肉の作業してくれた人なんだろうな。
「去年、君が持ち込んだ量が多かったから給料に上乗せされたんだよ」
へえ~、そんな事が。
「頑張りますが、滞在期間が短いから去年ほど持ってこれませんよ」
「それは残念だな」
おじさんは、話しながら作業していたがもう終わりそう。
「気を付けろよ、聞いた話では去年よりもオークが増えてると言ってたな」
「ありがとう、今年も給料が増えるといいね」
「そうだな」
ギルマスがこちらに来るのでおじさんは離れていった。
「ほらカード、ランクがCになってたな、おめでとう」
「ありがとう、また来るね。それじゃ」
「ああ、よろしくな」
急いで近くの工房に行く。
「すいません、こちらでは樽の販売はしてますか?」
「あるよ、大きさは決まってるのかい」
「ええと、あそこの木箱位の大きさを1個と一番大きいのを2個ください。その配達とかも出来ますか?」
「出来るけど何処に持って行けばいいのかな」
「この村の見張りの所までお願い出来ますか。西側です」
「いいよ、急がなくてもいいのかな」
「はい、お願いします。カードで支払い出来ますか?」
おじさんが手を出すのでカードを載せる。
「直ぐにすむから」
「はい、カード。配達しとくから、ありがとう」
「それではよろしくお願いします」
僕は店の入口横に置いて有る大樽を1個持つ。
「おい、運ばなくていいのか?」
「あ、すいません、これだけ持って行きます」
「そうか、今ドア開けるから」
おじさんにドアを開けて貰い崖下の滝に向かう。
「おじさんありがとう」
「運んでおくからな~」




