みんな頑張りましょう
「眠い、誰も来ない」
誘拐犯から助けて貰った僕は城の騎士の詰め所で誰か来るのを待っている。
僕の変な歌を3回も聞いた隊長は、名前の紙とは別に歌の歌詞も書いて、歌の中に名前を入れたのかと感心してたが、僕の覚え方は間違っいる。
歌の中に頭の一文字しか入っていない。取り敢えず一文字だけでも入れた歌を作り、名前だけは忘れない様に何度何度も声に出さないで復唱した。
僕は名前を覚えるのが苦手だったが、この世界の名前は更に難しくほとんどの人をおじさんおばさんで済ませている。鍛冶屋のおじさんとか露店のおばさんとかで済ませている。
7人の名前を憶えられたのは、1日に2名憶えるだけでよかったからだ。
誰かが僕を揺すっている、名前も呼ばれている。
「ユーリ君、起きてくれ・・・・起きろ~」
「後5分したら起こしてください」
「ユーリ君、起きてくれ」
僕が目を開けると上から覗き込む隊長の顔があった。
あれここは何処だっけ、助けられて眠くて、椅子を並べて寝たんだ。
「おはようございます」
起き上がり周りを見ると50人以上兵隊さんがいる。
「ああ、おはよう」
この声は街で何度か聞いた声だ、何か探してた様な言葉を聞いたな。
僕の前にもう一人誰か立っている。見覚えがある。
「昨日は危ないところ助けてくれてありがとう、お陰でこのとおり元気だ」
「ああ、水魔法のカルラさん」
隊長とみんなが「ありがとうございました」と言った。
全員が同じ言葉を言ったので、凄い大きい。耳を塞ぎたいぐらいだ。
隊長が説明を始める。
「昨日やっと誘拐犯のアジトを突きとめられた、2人の子供を連れていかれる前に保護が出来たんだ。その後はアジトが静かになるのを待って突入した。1階の犯人たちは捕まえたが地下の入口を探すのに時間がかかったが発見できた。この後はユーリ君も知っているはずだ。詰め所、ここで君からもう一度話を聞いてすぐに親衛隊全員が君の覚えていた7名の屋敷に向かい、容疑者を捕まえて屋敷内にいる子供たちを救出する事が出来た。ありがとう」
説明が終わったので、そろそろ帰るか・・・・・誘拐されたせいで忘れてたよ。
ネズミ捕りの設置だ、僕は何個頼んだんだ。300個だ・・・
「あの子供たちは帰ったんですか?」
「ああ、分かる子は家に、分からない子は役所が預かり探す様にした」
「そうですか、よかったです。僕も誘拐されましたよね」
「まあそうなるな」
頷く隊長さんにお願いする。
「今すぐに僕も母さんの所に帰る準備をしたいので帰ります」
「待ってくれ、君は今回の貢献者だ。それなりの褒美を用意しなければいけないよ」
僕は怒る。
「ふざけるな、子供を助けた貢献者だと~、そんなもの貰えるか、あたり前の事をしただけだ。僕は直ぐに帰る」
僕の怒りに部屋にいる皆が驚く。
「しかし」
「まだ分からんのか、あたり前なんだよ、人をそれも子供を助けるのは、出口を教えろ~、カルラ」
僕の剣幕にどうしますかと呼ばれたカルラさんが隊長を見る。
隊長は仕方ないと溜息を吐き「ユーリを門まで案内してくれ、カルラ」
「分かりました。ユーリ君こちらだ」
詰め所から門に案内してもらい、跳ね橋の上で振り返ってカルラさんに話しかける。
「隊長さんに謝っといて下さい。先ほどは演技なので」
「いやしかし、本気で怒っていただろう」
「いや~、僕は忙しいので、ああでもしないとすぐに帰らして貰えないじゃないですか、それに皆さんも忙しいでしょ、お礼なら言葉だけでいいんです。助けて頂きありがとうございました」
「私こそありがとう」
僕は走り出して「謝っといてね~」と言って、全速力で工房に向かう。
「おい、どこに行ってたんだ。君が居ないから他の工房も材料屋も困ってたぞ」
「すいません、野暮用で来られなかったんです。それでどこまで終わってるんですか?」
親方は目線を作業している方に向け。
「あらかた終わっている。出来た物は、各地域に置かせてもらってる。君の代わりに話しといた」
「ありがとうございます。僕も農家の皆さんに話す予定ではいたんですが、野暮用ですいません」
「まあいい、自分たちの物になるんだからと言っておいた。その時に他の作業の連中にあったので、まあ一緒に置いてくれと言っといた」
僕は親方の手を取り「やればできる男だったんですね、親方は」
手を離されゲンコツが落ちてきた。
「俺は元々出来る男だぞ」
「ありがとうございまいす、僕行きますね。最後までよろしく」
「ああ、頑張れよ」
僕はギルドの受付で「すいません、全部で何件ですか?」
女性職員さんが出てきた。
「もう~、君が来ないからギルマスが逃げたと怒ってるんだから。私も怒られるし」
頬を膨らまして不満を僕に話す。
「それに私の仕事が遅いとか余計な文句を言われるし、ギルド内が汚いとか」
「それで何件なの?」
「256件よ、大変だったのよ。こちらから依頼を出して欲しいとお願いするのが」
話が長くなりそうだな。
「お姉さんは優秀ですね、依頼書いただけますか。直ぐに設置しないと」
「そうね、はい沢山あるから無くさないでよ」
「ギルマスにすぐに終わらせるからと言っといて下さい」
「皆聞いて下さい、今から設置の仕方を覚えて貰います」
僕の最初の説明に反応するの農民の皆さん。俺達がするのかよ~、ふざけるな~、出来るかな~とだいたいこんな声が聞こえてくる。
「実はそんなに難しくなくて簡単なんです。それにもし壊れてもう一度頼むより、自分でやるよと全員が言い出すほど簡単です。それに今回の依頼の報酬を1匹小銅貨2枚にしたいと思ってます」
ここで農民の皆さんがおお~と少し嬉しそう。
「そうなんです、分からない事は、教えますし分かった人から教えて貰ったり手伝って貰う事も出来るんですよ。だから罠の設置の仕方を覚えてください。自分たちの為に」
僕はここにいる農家の40人を見る。不満に見える人がいなくなった。
「この樽に今から仕掛けをします。代表でそこの人来てください」
「俺、出来るかな」
「簡単ですよ、先ずこの木を固定します。僕が持ちますので釘を打ち付けて固定してください。はい出来ました」
「簡単だ、釘で止めるだけ」
「はいそうです。この木に仕掛けをされてるのは見ればわかると思います。次に同じ物を反対側に付けます。そこの人お願いします」
「俺か、今のでいいのか?」
「はい、そうです。僕が持ちます。僕が持ってるこの木が地面に付いてないとネズミが登って来れません。必ず反対が地面に付くようにここだけです注意するところは、全部釘で固定するだけになってます」
手伝ってくれたおじさんが。
「これなら誰でもできるな」
「最初の人、これを付けて下さい」
僕はロールを渡す。
「グルグル回るな」
「そうです、これを樽に付ければ完成です」
ロールを樽の縁の高さと同じになる様に付けてもらう。
皆が黙り込む。
「それだけ?」
「まだありますが、それは予備なのでこれで完成です」
僕は予備の餌を吊るす材料を取り出す。
「では、完成した罠に予備の餌を吊るす仕掛けを取り付けます。僕が持つので釘で固定してください」
農民のおじさんに予備餌の仕掛けを釘で固定した貰う。
「今付けたのが予備の餌付ける仕掛けです。これで予備も付いた罠が完成しました。どうですか出来そうですか?」
ほとんどの人が、なんだ誰でも出来るなと言っている。
「本当にそだけでいいのか?」
「はい準備は終わりました。中に水が入っているので餌を付ければ後はネズミがかかるのを待つだけです」
僕の説明が終わり、皆に自分でして貰う。分からない人は出来る人に頼むか教えて貰う。
僕はこの後も同じ説明を農民の皆さんにしてまわった。
残りの材料を取りに行き、集まれなかった農家に行って説明しながら覚えて貰い、出来ないと言う人には説明しながら全部を僕が取り付けた。
一日で全ての準備が出来たが、餌は明日市場に取りに行かないといけないので、今日の作業は夕方には終わった。
簡単なんだから覚えてよ作戦は終わった。
「君ね、出かけて帰って来ないってどうなのよ」
僕は宿に帰って来た。何故か怒られている、確かお金が入り浮かれた僕は1か月分を払ったはずだ。
それも朝飯の食事代も払ったのに何故。
「毎朝起こしに行ってもいないしご飯は食べてくれないし、残ったご飯毎日をお昼に食べれば朝とお昼が同じメニューなるし、もう飽きたのよ」
このお姉さんはご飯の事で怒ってるのかな。
「お姉さん、いい事を教えます。毎朝お客と違う物を食べるのです、余った物がある時はそれをお昼に食べる。これは朝食べない人が居た時にラッキーお昼タダだよ、一食ういたお金が貯まるわと喜べるイベントです」
お姉さんは考え込む。
「でも、それだと朝ご飯の手間がかかるわよ」
「手間とただ飯どちらを取るかお姉さんが決めて下さい」
考えてるお姉さんに部屋に行きますと言って自分の部屋に。
ベットに飛び込み「帰って来たぞ」と叫ぶ。
誘拐された時、銅貨3枚を持っていたのが取られてしまったが、ギルドカードと剣を取られなくて良かったと思う。
鞄から銅貨3枚を出してご飯を食べに行くことにした。
今度こそ食堂で食べるぞ。王都の名物料理は何かと考えて食堂に探しに行く。
「おばさん、餌取りに来たよ」
おばさんは笑顔で「待ってたよ、降ろすの面倒だから荷車に載せたままだよ。荷車も使うんだろ」
「助かります、夕方までに返しに来ます」
昨日は美味しいご飯を食べて、ぐっすり眠った。
おばさんにお礼を言って荷車を引く。あれこんなに軽かったかなと後ろを見るとカルラさんが押していた。
「こんにちは、ご苦労様です」
「こんにちは、隊長に謝っておいたよ。それと君が急いでたと付け足しといた」
「ありがとうございます」
「隊長も驚いていたよ、あれが演技だと話したら」
僕は笑って「そうですか」と言った。
「それでこの荷物をどこまで運ぶんだ」
「街の外の農家までです、そうだお願いを隊長に伝えてください。許可を下さいと、事情は紙に書きます」
「それは、隊長に話せば簡単に許可が貰えるものなのか?」
「大丈夫だと思います。東の門番さんに手紙を預けときますのでカルラが取りにきて隊長に渡して下さい」
「いつごろ取りに行けばいいんだ?」
「すぐに書きますのでこの後門番さんに預かって貰います」
僕はある事を思いつき隊長に褒美を貰う事にした。
荷車の餌をみんなに配り、付け方を教えたら。ここまで準備出来たら何をすればいいのか分かると言われた。
余った材料を回収して荷車に載せて手伝いが出来る人を募集したらほぼ全員がこの時間は農家の我々は暇だぞと言われた。
お言葉に甘え僕の考えを伝えるとお礼を言われた。
二人一組になってもらい、大樽をローランドを囲むようにお堀のから離れた場所、あまり近いと外観が悪いので離した。
僕がそれぞれの材料を置いていき、罠を組み立てて貰い餌も付けてもらった。
人数が多いので、終わった人から帰ってもらった。
完了の署名は材料を取りに行った時や手伝って貰った時に書いて貰った。すべての依頼書をギルドに持って行くだけだ。
「みなさんありがとうございます。効果が分かる前に署名していただき提出するだけになりました。畑以外の所に設置した罠の手伝いご苦労様でした。それとたまに今の罠を確認と清掃をお願いします。これで被害が減ると思います。お疲れ様でした」
僕の挨拶が終わり、みんなが家に帰っていった。
僕は荷車を返し、お礼を言ってギルドに向かう。




