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アーネストでの初クエ

ガーランドを朝早くに出て、今はローランドの南の街道を目指している。


昨日と違い馬車を多く見かけるようになった。


ローランドに行く馬車だろう。ガーランドに向かっている馬車も見かける。


冒険者はお金をかけたくないのか、徒歩で移動している。


今更だが、馬に乗って移動している人を見かけない。


時折、旅の商人の休憩にお邪魔して、この辺の事やアーネストの事を聞いた。


旅の商人は、ローランドの事は詳しいけどアーネストはそれほど行く事がないのかあまり情報がない。


分かった事は、ローランドよりかなり小さな街だが、ガーランドの街より大きい。


ローランドが近いので交易は盛んにされている。


アーネスト近郊は強い魔物が多く冒険者の怪我人がよく出る。


ローランドでは食べ物のロールケーキが人気で、色々な具が入った種類の物が売られてる。


ローランドでは子供を狙った誘拐が多発しているそうだ。


今年は農作物が不作で野菜などが高騰している。


アーネストは近郊の村から農作物が売られてくるので、ローランドより野菜は安い。




アーネストに着いた。


カルテドと比べると小さい街だが比べなければ大きい街だと思う。


街の中を散歩中、ジェシーも横を歩いている。


馬小屋のある宿を探している、もちろん安いところ。


門番さんに教えて貰った、南の門近くの宿屋を探している。


何か臭いな何の匂いだろう、宿屋らしき建物の裏に「ヒヒヒ~ン」と聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。


ここに間違いない。入口の前に馬の手綱を付けて置ける丸太が立っているので、そこに結わいて中に入る。


宿屋の中は臭くないぞ。


受付にいるおじさんに「こんにちは、1泊いくらですか、馬込みで銅貨5枚にしてください」


「おいおい、いきなり値切るなよな。なんで馬込みで銅貨5枚なんだよ」


「そんなの決まってるじゃないですか、お金がないからですよ」


「それでそのお金がない君を俺が泊めてやるとでも思ってるのか?」


「え~、ダメなんですか。門番さんにここの親父は、冒険者には優しいからと勧められたんですが」


僕の事を上から下までよく見るおじさんは言い放つ。


「お前が冒険者のはずがない、どう見ても馬を盗んできた糞坊主だ」


「ええ~、駆け出しの冒険者ぐらいにして下さいよ。それに馬を簡単に盗めるものなのかな」


おじさん考え込む。


僕も考え込む。


「まあ馬は盗めないか、馬番もいるしな。でも冒険者には見えない」


「そこまで言うのなら泊めてよ、冒険者だから」


ギルドカードをおじさんに渡す。


「お前、Cランクの冒険者なのか?」


思い出す。学園の最終日に冒険ギルドに行ってランクを上げてと頼むと。


「今更か、ユーリのカードは学園仕様だから上のランクも受けれるけど、ユーリの冒険者としてのランクになってないんだよ。去年のオーク事件で、ユーリのランクがそのままだと要らぬ勘違いが起きるかもと懸念していたんだが、一向に現れないんだよなユーリは」


「しょうがないでしょ、学生なんだから」


「そうだな、ほら更新したぞ」


「え、Cランクになってるよ」


「気にするな、本当はBでもいいと思ってる」


嬉しい反面、オークしか倒してないのにと思う。


そんな事を思い出して話を続ける。


「僕は、DでもEでもよかったんだけど、ギルマスがアーネストならランクが上の方のクエが多いいからCにしとけと」


「なんだそれ、そんないい加減でいいのかよ」


頭をぽりぽりかきながら、おじさんはまた考え込んだ。


ところで泊めてくれるのかな、ダメなら次を探さないとジェシーがかわいそうだ、疲れてるのに。


「銅貨5枚これ以上出せないけど、どうしますか?」


「まあ仕方ないか、何泊するんだ、食事は付かないぞ」


「1泊です、はい銅貨5枚です」


ポカーンとする宿屋のおじさん。


「おい、1泊なのか?何日も泊まる話だと思ってたぞ」


「だって銅貨5枚しかないから今日だけ泊まれればいいんだ」


「明日はどうするんだ、この街を発ってどこかに向かうのか?」


「この街の冒険ギルドでクエを受けて完了したらお金を払いに来るからジェシーの面倒は見てね」


ジェシーを馬屋に連れていくために出ていこうとすると襟をつかまれた。


どうして僕の襟をつかむ人が多いのかな。


「よし、この街を出るまではここに泊まれ、ジェシーの面倒も見るから後でちゃんと払えよ。わかったな」


「おお凄いぞ。出世払いが出来るなんて。僕は、ユーリ。よろしくお願いします。ギルドにクエの確認してきます」


「俺はレックス、風の宿のレックスだ」


無駄にカッコいい宿の名前・・・・・




冒険ギルドの中を見渡す。テーブルの数は違うけど、受付に掲示板の場所が今まで行ったギルドと同じだ。統一してるのかな。


この時間だとクエを受けに来る冒険者はいない。


ここにいる冒険者がパーティーなら2組いるだけ。


掲示板を見るとクエが沢山貼ってあった。


この時間にこんなにあるのは珍しい。Cランクまでのクエで条件のいいのを探す。


ゴブリン、コボルト、オーク、グール、この辺は何処にでもあるクエだ。


「ワイルドベア、初めて聞く魔物だ」


アーネストの南の農村、ワイルドベアの討伐、報酬は1体大銅貨4枚。


近くで報酬もいいのでこれにするか。


「すいません、お願いします」


僕の声に受付に来て対応してくれる。


「この農村に出没するワイルドベアの討伐クエでいいですか?」


「はい、お願いします」


お姉さんにカードを渡して手続きをしてもらう。


「気をつけてね、農村ではだいぶ被害が出ているので、急ぎのクエなのよ」


「はい、頑張ります」





「この時間に出ると朝まで入れないけどいいのか?」


アーネストの門番のおじさんが心配してくれる。


「大丈夫です、ギルドのクエに行ってくるので朝以降になると思います」


「そうか、頑張って来いよ」


「ありがとう」


お礼を言って走り出す。農村の依頼主に会いに。


農村ならジェシーと来ればよかったのかな、でも危険だからアーネストにいた方がいいだろう。


僕は農村に着き、ギルドで聞いた説明を思い出す。


農村からの依頼で冒険者に依頼主が分かる様に赤い布が何処かにあるらしい。

「ここだ、布がある」


柵から敷地に入り家の前に行く。


「すいません、クエの依頼を受けた者です。いらっしゃいますか?」


ドアを叩いて出てくるのを待つと30代の女性が出てきて「あなた、クエを受けてくれた子が来てるわよ」


「そうか、もう来てくれたのか・・・・・・君がクエを受けてくれたのか、それで他の人はどこに?」


女性の旦那さんが僕以外にいないのかと周りを見る。


「僕1人です、宜しければどういった状況なのか教えて貰えますか?」


「あなた、取り敢えず中で話したら」


「ああそうだな、中で話そう」


入口の横にテーブルが椅子を勧められて座る。簡素な家の中は薪の暖炉に入口の横のテーブルしかない。


ドアが二つあるので、寝室に台所だろう。


「私がギルドに依頼を出したアルトで、私の妻のマイルです。君が依頼を受けてくれた冒険者でいいのかな?」


僕はお辞儀して「依頼を受けたユーリです。依頼内容はワイルドべアの討伐でいいですか?」


「この農村でこのところ畑が荒らされていて、今日の明朝に魔物に襲われた老夫婦が重傷だ、その魔物がワイルドベアだと分かったんだ。農民の私達では太刀打ちできない、ワイルドベアを討伐してほしいのだが、君で大丈夫なのか?」


「はい、頑張ります。それでワイルドベアは何時ごろ現れるんですか?」


アルトさんは少し考えて話す。


「ワイルドベアは夜行性なのか昼間の目撃情報はない。私達が寝ている時間に畑や見つけた人間が襲われているんだと思う」


「分かりました、僕はこの農村に泊まり込んで見張りたいと思います。ワイルドベアの住処に心当たりはありませんか?」


「この辺は魔物が強いと言われているので、出まわっていないんだ」


見張りしかいないのか、夜までだいぶあるな。


「すいません、夜まで仮眠していいですか?この椅子でいいので」


「構わないよ、夜になったら起こそう」


「ありがとうございます」




「うわ~、意外と冷え込むな」


周りを見渡して何か動くものがないか探す。


見張りを初めて3時間位は経ったのだろうか、今のところ何もない。


片手に剣を持って歩いて見て回っているが、小動物の動く音が時折聞こえてくる。


農村の家の灯りは消えていて皆寝ているのだろう。


農村の南西に向かい、よく荒らされている畑がどうなっているか見に行く。


畑の柵が壊されていて修復途中の様だ。芋が植えられていて柵の近くは土がえぐられている。


この付近から現れるだろうか、見える範囲に魔物が生息してそうな所はない。


朝日が少しさしてきた頃にこちらに走って来る魔物を発見した。


「あの魔物がワイルドベアなのかな体が大きいのに速いな、2体いる」


どうするかな、このまま戦うか。初めてのワイルドベアだし何かいい方法はないかな。


横の壊れた柵を見てこれで行こう。


「木材1号飛んでいけ・・続いて二号・・いけ~」


まだ離れているが、一号がぎりぎり当たらないけど邪魔になるように地面を転がっていく。続いて2号が、ワイルドベアの1体に当たりこちらに向かってくる速度が落ちる。


迫りくるワイルドベアの動きをよく見る。


目の前まで来て威嚇のポーズ?遠吠え「ガォー」と鳴く。


最初から全力で行く、威嚇の動作が終わるより早く近づいて首に剣を突き刺す。


渾身の力で刺すとワイルドベアの手の攻撃が僕に向かってくるが飛びのいて、初代名刀を抜く。


首に刺さっているのにまだ突進てくるワイルドベアに横に回り込む時にお腹の部分を切る。


前から剣で切りつけるも手ではじかれ、後ろから突進してくる音が聞こえて戦っていたワイルドベアに隠れる様に回り込む。


負傷しているワイルドベアに突進したワイルドベアがぶつかり態勢が悪くなった。


そのチャンスに負傷してないワイルドベアの足を切りつける。


「ふう~、なんとか動きを鈍くしたぞ、あれ最初の1体が動かない、死んだのか」


足を負傷しているので、僕の動きにはついてこれない。


ミスリルの剣を抜いて持ち替え攻撃をするが、もしかして毛皮高く売れるんじゃないのかと思い首から上に攻撃を集中する。


「ワイルドベアを2体倒したぞ、他にいないか確認しないと」


僕は剣を片手だけにして走って農村を見て回る。


だいぶ日が差してきた朝の農村の家に煙がたちのぼるのを見て農民が起きだす時間だと気がつく。


農村を見て回ったが、畑が荒らされたり民家の周りにワイルドベアの現れた形跡はなかった。


アルトさん家のドアを叩く。


眠そうな顔をしたアルトさんが出てきた。


「おはよう、昨日はワイルドベアは出なかったのかい」


「出ました、畑の柵が壊れたあたりに2体です」


マイルさんも出てきて、今の話が聞こえたのか驚いた顔をして朝の挨拶をした。


「それでどうなった、逃げられたのか?」


「いえ、倒しました。他にも居ないか確認しましたが他の場所に現れた形跡はありません」


「本当か、すぐに見に行こう」


僕とアルトさんがワイルドベアの所に行くと人だかりが出来ていた。


「すいません、通して下さい」


ワイルドベアの死体の前に立ちアルトさんが僕に聞く。


「本当に君だけで倒したのか?ワイルドベアだぞ」


「初めて戦うので苦戦しましたが倒しました」


周りからは驚きの声が聞こえてくる。


「こんな小さな子供が・・・」


「うそだろ・・・」


「ワイルドベアだぞ・・」


僕はこの後の事を確認する。


「倒したのですが、この後どうすればいいのですか?」


アルトさんが考え込む。


マイルさんが着替えてきて「本当に倒されてる」と言った。


「荷車を貸すから街に持っていくかい、買い取ってもらえるぞ」


「ワイルドベアは美味しいですか?」


「癖があるから美味しいとは言えないかな、われわれも食べたことがないしな。毛皮なら高く買ってもらえそうだけどな」


僕は、考える。美味しくないならいらない、毛皮もいらない。クエのお金さえ貰えればそれでいいな。


「あのそれなら農村で貰ってくれませんか?僕はいらないので」


「おい、いいのか俺達は嬉しいが、売ればお金になるんだぞ」


「肉だって食えるぞ」


周りの農民から驚きと歓喜の声が聞こえる。


「しかし、解体となると大変だな・・」


ワイルドベアを見下ろす農村のみなさん。


「解体なら僕がしますよ、今練習中なんです。それに初めてなので上手くいくか分かりませんけれど」


アルトさんがうんと頷いて「君が仕留めたんだ、君に任せるよ」


まず、毛皮が痛まないように慎重に慎重に切っていく。


なんとか2体の毛皮が取れてお肉の解体ができる様になる。


食べる部分だけを考えて解体して肉の塊にしていく。


肉の塊になると順番に農民が自分の分を持っていった。


「終わった、肉が硬かったな。美味しくするのに時間がかかりそうだな」


「ご苦労様です、これ食べて」


マイルさんがお芋のゆでた物を持ってきてくれた。


「労働の後の食事は美味しいな」


「あはははぁ、ユーリ君は年寄りくさい事を言うのね」」


笑われてしまった・・・


「年に関係なく労働の後に食べる物は美味しいのです~」


「あはははぁ、そうね」

 

ここにいないアルトさんの事を聞いてみた。 


「アルトさんはどうしてます?」


「毛皮を荷車に載せてたわよ、売って重傷者の老夫婦に渡すんだって頑張ってるわ」


「良くなるといいですね、お芋美味しかったです、僕行きますね」


僕が行こうとするとマイルさんが慌てて声をかける。


「待って、クエ完了の署名しといたから持っていって」


「あ。忘れてました、ありがとう」


受け取り、走り出す僕に「ありがとう~」マイルさんのお礼の声が聞こえた。

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