模擬戦
模擬戦の練習中に僕達3人は周りのみんなの動きをそれぞれ確認していた。
アジス嬢はみんなの連携がどの位、良くなってきてるか確認するために。
スコット子息は、みんなが真面目に練習しているか。
僕はあの後、何人もの人に、練習で頑張るので自分が食べた事のない料理を食べたいと申し込まれた。
最初の女子生徒はしゃぶしゃぶが楽しかったと、これからも頑張るからまた食べれる様にしゃぶしゃぶを勧めてねと言っていた。
今日が模擬戦の練習日の最後の日だった。
ラウンジで最後の練習の打ち上げをする事にした。
アジス嬢率いるチームのメンバー全員がテーブルを寄せ合い食事する事にした。
温まるんですを5個追加して作って貰い、13人分を用意した。
流石に13個も持ってこれないので、途中から貸し出すので自分で管理して下さいとお願いした。
自分の温まるんですと食材を持ってくる日々が続いたが今日で終わりだ。
食材は父さんにお願いして、お店の仕入れと一緒にして貰った。
オーク肉を沢山仕入れたので、僕の預金はなくなり出世払いにして貰った。
これからの学園生活・・・お昼の食材を買う為に旅に出てお金を貯めねばと決意した。
出世払いで買ったオーク肉をみんなに配る、野菜もそれぞれ皿に載せていく。
みんなの温まるんですから湯気が出てきたところで、アジス嬢が話し出す。
「みんなお疲れ様、今日までよく頑張りました。色々大変でしたが、練習は終わりました。明日、明後日と模擬戦頑張りましょう。では、それぞれ食事を始めて下さい」
みんなが食べ始めた。自分の好みで、肉から食べる人、野菜から食べる人、タレの味を確認する人。
僕も食べ始める、この約1か月はコックの様に出汁の用意、食材の下準備と忙しかった。
明日模擬戦に勝てるといいな、こんなに頑張ったのだから。
「そっちに行ったぞ」
「魔法お願いします」
連携が出来てきたし声出しもする様になった。
「右側に回り込んで」
本当に声が出ている、前回と比べて動きも良くなっているし、個々の能力も上がっている。
「しまった、挟まれたぞ」
僕は自分の前の敵を倒し救援に向かう。こちらも挟み撃ちにしてやる。
挟まれた仲間も反撃に転じこちらの方が優勢になる。
「やめ~」
先生からの戦闘の終了が告げられる。
みんなは周りを見渡して、残っている敵と味方を確認する。
僕達の方が残っている人が多い。
「8対5で銅Bの勝ちです」
先生のコールにアジス嬢とスコット子息が握手をする。そこにみんなも走って向かっていく。
僕も歩いて向かって行ってると、僕の後から来たメンバーに肩を軽くトンと叩かれた。
「みんな私達勝ったわ、おめでとう。お疲れさまでした」
「「「お疲れさま」」」
「「「かった~」」」
みんな興奮している。5戦目にして初めて勝てたので。あそこは良かった、あの時ああすれば良かった。
色々と自分の感想を話すみんな。
スコット子息が話し出す。
「みんなお疲れさま、よく頑張った。それぞれ強くなっている明日も頑張ろう」
「「「「「は~い」」」」」
「母さん行ってきます」
「休みが終わるまでに帰って来るんだよ」
「わかった」
父さんとシシルには先に行ってくると言った。
お店を出る時に母さんにも挨拶をして西門に向かう。
模擬戦最終日にもチームは勝つ事が出来た。
次の日から休みなので、ポール子息がリュックを貸してくれた。
西門の馬車の乗り合い所で、馬を受け取る。
「よいしょと」
馬の上のに乗り鐙に足をかけて前傾姿勢になりのんびりと歩き出す。
まだ慣れていないので、のんびりより少し速く歩くようにする。
今のところ自分で走った方が速いが乗馬に慣れれば遠くまで少ない日数でいける。
それに出来ない事に挑戦するのは面白い。
今回の度の目的地はアーネストだ。王都ローランドよりも遠くてローランドの真南にアーネストはある。
道順はローランドの南の街道から更に南に向かう街道とカルテドとローランドの南の街道の中間のガーランドから南下して西に向かう街道の2種類の行き方がある。
中間にあるガーランドでどちらの街道から行くか決めよう。
乗馬に慣れてくると、この速さが快適に感じる。今は自分で走るより速いので怖さも感じている。
バイクの免許を持っていたので、速いのには大丈夫だと思っていたが乗馬だともっと速度が出てる感じがする。
上手く乗れるようになってきたので、このままローランドの南の街道に向かう事にする。
ガーランドを南下した方が距離は少ないが、山が有るため峠越えすると時間がかかるので、このまま西を進み街道を目指す。
「ジェシー疲れないか休みたければ休んでいいんだぞ」
自分の馬に名前をつけたジェシー。速そうでいい名前だ。
2時間ぐらいで大洞窟に繋がるわき道を通り過ぎた。
このままの速度で行ければ夕方頃にはガーランドに着く。
ガーランドの手前の村が見えてきた。歩いてくると2日ぐらいかかるのかな、簡単な地図しかないから距離も分からないし、予想もつかないな。
馬車の商人は自分の経験で何日あれば着くと予想がつくだろうけど、僕の様な素人だと次の村とかでも予想がつかない。ましてやすご~く遠いアーネストは予想すらできるはずがない。
この村には寄らない、僕は速く行きたいんだアーネストに。
ジェシーがんばれ僕も頑張る。一日乗っていると疲れる、まだ疲れにくい体勢が身についていない。
お昼をジェシーの上で食べた時は冒険者だ~と叫んだ。ジョギングですれ違うと「どうも」「こんにちは」「がんばりますね」と挨拶したが、一日近く移動しているが、誰にも会わない。
このままだと、誰にも会わずにガーランドに着いてしまう。
「すいません、お金がないので納屋に泊まらしてください。酒場のお手伝いしますので」
「それぐらいならいいけど、手伝いはしてよね、忙しいのよ」
酒場の裏の納屋に馬をつないで、女将さんについて行く。
「何でも言ってください。僕の家、酒場だから慣れてます」
「それは頼もしいね」
酒場の中はうちの酒場と違って広くて大きい、何人いるんだよ。
「お~い、ビール」
これは大変だ。飲み物担当を申し出る。
「僕が、飲み物担当します。手が空いてる時は他の事もしますから」
「それは助かるわ、飲み物よろしくね」
注文を受けてる飲み物からテーブルに持っていく。
「ビールは誰、ラム酒は」
「俺とこいつがビール、奴と隣がラム酒」
教えてもらった人にお礼を言ってそれぞれの前にお酒を置く。
「空いてるお皿さげます」空いてるお皿にグラスを厨房横の返却台に載せる。
ビールを持って先ほどビールと言ってた人に持っていく。
「俺のところビールきてないぞ」
奥の方の席で催促されたので急いでいく。
「すいません、遅くて。皆さんビールでいいんですか?」
「おう、早くしろよ」
「はい、ビール4杯注文いただきました、すぐに持ってきます」
急いでビールを取りにいく。注文が入ってるか確認するよりも先にお客に品物を出す、その後で確認だ。
お酒の注文が落ち着いてきたので、料理もテーブルに運ぶ。
空いてるテーブルはどんどん片す。お会計は女将さんがするので、その時はオーダーも厨房にとおす。
「シチュー4、パン2、スープ2入りました」
「おう、シチュー4、パン2、スープ2だな」
「そうです、おねがいします」
パンとスープを頼まなかった人はビールなので先に出した。
僕は、シチューを食べながら、この広い酒場でなんで3人しか接客担当がいないのかと不思議に思う。
飲み物担当だけでも最低2人はほしい。料理はお皿の数やお皿が大きい事を考えると4人はいないとまわらない。半分以下の人数でやりきった事になる。
女将さんが何とか乗り切れたとシチューとパンを出してくれた。
「助かったよ、今日はいつもより混んでたんだ、君は何しに、この酒場に来たんだ」
ここで働いている男性が、食べてる僕に話しかける。
「酒場の裏にいた女将さんに、お金がないなら納屋に泊まっていいと言われたんですが、忙しそうなんで手伝うと申し出たんです。まさかあんなに忙しいとは思いませんでした」
運が良かった、ダメだったら野宿だったよ。
「お金がなくて馬は自分のておかしくないか?」
「旅に出れるのが嬉しくて、ついそのままで出来ちゃうんですよね」
「変だね君、旅に出るのにお金を持たないて、お金を自分で払った事のないどこぞの貴族の息子かね」
「僕の家は冒険宿で酒場もあるんですよ、冒険クエをすればいいとつい考えちゃうんですよね」
アハハハァと笑う。
「まあ、貴族の子が忙しい酒場の手伝いが出来るはずが無いか」
「それにしても、いつも従業員は貴方だけなんですか?」
「あと4人いるんだが、結婚式に行ってしまったんだ。その4人が同じボーヤン村の出だから4人とも一緒に行ってしまったんだよ」
「そうですよ、あの忙しさで接客担当が3人なんてありえないです」
男性も僕と同じ物を食べながらフ~と息を吐いて「君がいなかったら地獄だった」
「お疲れ様、残り物で悪いけど食べておくれ」
残り物だと言ってるけど焼き鳥を焼いてくれた。
スパイスの効いた少し辛めの味付けの美味しい焼き鳥だ。
女将さんはプハ~とビールを飲んで焼き鳥を食べる。
「うん、美味しい、君は何処から来たんだ」
「カルテドからです」
「あの大きい街から来たのか~」
「来たことあるんですか?」
「そんなに離れてもいないし、見てみたくなるだろ、この国の2番目に大きい街は、1回しか行ったことがないけど」
「一番は王都ローランドですか?」
食べ終わり皿を持って歩きだす男性が「それはそうさ、カルテドの2倍ぐらい大きいかもな」と行って厨房に向かう。
カルテドの2倍か、街の端から端まで2時間ぐらい掛かるって事か、もう想像できない大きさだな。
いつか行くことになるのか、観光とかに興味ないから当分行く事はなさそうだな。
それに、今は冒険の旅で忙しくなるはず。今日も忙しかったぞ、冒険ではなかったが。
僕も食べ終わったので、お皿を片付けて納屋に向かう。
女将さんは、手伝ったお礼に息子の部屋を使いなと言ってくれたが、馬のジェシーと一緒に寝たいからと断った。
「ジェシー疲れただろ、明日も早いのでゆっくりお休み」
僕は体を何度もブラッシングしてジェシーの疲れが取れるようにと願う。




