練習と模擬戦
剣術の授業で魔道具付きの防具の使用を開始した。
試作品なので模擬戦までに性能を確認する。
それと同時に生徒が防具に慣れる様にするためだそうだ。
もし、この防具の有効性が認められると武術大会がやり易くなるし、もしかしたら、魔法での開催もあるかも知れないと先生は言っていた。
着心地は悪くない、重くも無いので誰でも装備出来る。
僕の順番が来たので開始線に立ち開始の合図を待つ。
対戦相手はスコット子息だ。
「開始」
スコット子息が猛然と攻めてくる。
剣をかわしこちらも攻撃するが避けられる。
打ち合いが止まり間をおく、スコット子息の動きに変化がある。
僕の攻撃を避けるのに専念しているようだ。
僕も攻撃を止め間をとる。
「うお~」
一気に攻撃を仕掛けてきたスコット子息、僕はその攻撃を致命傷にならない程度に受けてみる。
防具に何回も攻撃を受けたが痛くもないし衝撃もない。
致命傷の攻撃を受けると光ると聞いていたが、この程度では光らない。
「やめ~」
先生が対戦の停止の合図をする。
光るところまで見たかったが、待ったがかかった。
「次、シャシカ・ファーカソン対ユーリ」
シャシカ嬢とか、初めてだな。
「始め」
シャシカ嬢は連続の突きをしてきた。
一歩下がり避けるとスルスルと間合いを詰めて、更に連続の突きの攻撃をしかけてきた。
僕はそれを上から叩き落す。その動きの連鎖として胸元に突きを入れる。
シャシカ嬢が剣を引き自分も下がる。
いい動きをするな。
僕も相手に合わせた動きをするかな。
シャシカ嬢の速さに合わせ攻撃する。シャシカ嬢は剣で受けたりぎりぎりで避けたりと動きが更に良くなる。
避けた体勢からの反撃もこちらの体勢を考えた攻撃だ。
攻撃を受けたが、そのまま反撃するも避けられて攻撃をくらった。
防具が赤く光りだした。
「やめ~」
僕の防具が赤色に光出したので先生が止める。
「みんな見てるか、ユーリの防具が赤く光ってるのが分かるな、この状態は死んだ事になる覚えておくように。この後は攻撃を当てない様にして下さい。この後どれくらい防具の耐久がもつか分かりません」
試作品だから、この後どうなるか試せないのか。
僕の防具が光ってるのを見て「ああなるのか」とほとんどの者がつぶやいている。
「次、シャシカ対アリシア。開始」
シャシカ嬢とアリシア嬢の戦いの後も次々と戦闘が行われた。
防具は上手く機能している様で、先生は「よし」と言っていた。
僕達皆が、魔道具の実験台として戦闘をさせられてる。
怪我人が出てないからいいのか、それとも実験済みなのかな。
「ユーリ、あの魔道具高価すぎて売れないんじゃないの、それに置いてあるだけだと何に使う物か分らないから、誰にも知られる事がないよね。どうするの」
「僕に考えがあるんだ、少し待ってね」
母さんが、魔道具が買われるきっかけ、知られるきっかけが無いと言っていた。
そうだよね、知りもしない物が売れたり便利だと知られる事は無い。
今、この広いラウンジでお昼の時間に僕だけが1人で食事をする。
ラウンジにいるみんなが食べ始めている。
僕も食べよう、今日はビーフシチューと美味しいパンでお昼だ。
テーブルの上に温まるんですを載せて、火力調整つまみを中にしてスイッチを押す。
のんびりと待つ、温まりだすといい匂いが漂う。
「そろそろいいかな。学園で温かいビーフシチューを食べれる日が来るなんて、もっと早く魔道具の事を知ってれば、1年生の時も食べれたな」
僕は、お皿にビーフシチューをよそいパンもお皿の上に載せる。
パンをビーフシチューに付けて食べる、最高の美味しさだ。
肉も柔らかく煮えていて口の中に入れると崩れて旨味がでる。
魔道具は凄いな、湯気が出ていて食べ頃の温度になってるのが分かる。
「おい、ユーリ。美味しそうな匂いがするが、なんで湯気が出ているんだ」
「この魔道具のお陰でビーフシチューが温かいからですよ」
ポール子息が匂いに釣られて僕のテーブルまで来た。
「ユーリ、肉、肉はあれなのか?」
「そうですよ、それに冷たい料理より湯気が出るくらいのビーフシチューの方が食べたいですよね」
我慢できなくなっているポール子息は、僕にお願いする。
「ユーリ、僕にもここで食べさせてくれるか」
「ダメですよ、ポール子息は自分のクラスのチームのみなさんと食べなければ」
「そんな~」
僕は、少し考え提案する。
「そうだ、もう一つ持って来てたんだ。ポール子息、自分のテーブルに持って行って食べればいいですよ。使い方は教えますので」
「いいのか、ありがとう」
ポール子息に温まるんですを貸し出す、ビーフシチュー付きで。
次の日は自分の分も入れて温まるんですを3個持って来た。
そろそろあの人が来そうな気がしていた。
「そうですか、エミリー嬢も温かいビーフシチューを食べてみますか、学園でも温かい物が食べれるのはいいですよね」
「いいのですか、ユーリ。」
「はい、今日は余分に持って来たので使い方をお教えしますね」
エミリー嬢の後ろにアンバー嬢が立っていたので謝る。
「すいません、アンバー嬢にも食べて頂きたかったのですが、持ち合わせが無いので明日持ってきますので食べて頂けますか?」
「まあユーリ、ありがとう。明日のお昼が楽しみです」
「スカーレット嬢にも持ってきますので、伝えて貰っていいですか?」
嬉しそうに頷き「スカーレット様に伝えますね」と言って自分のテーブルに戻って行った。
僕の作戦はどうなるかな。
模擬戦のチーム分けが発表された。
チームのリーダが二人いて、カタル子息とアジス嬢。
カタル子息のチームのメンバーは12名でアジス嬢のチームのメンバーは13名で、僕はアジス嬢のチームになった。
模擬戦のアジス嬢チームには僕とスコット子息が選ばれた。
他の3人はカタル子息チームに選ばれた。
魔法の授業と剣術の授業が模擬戦の練習にあてられている。
銅Bチームの僕達は銅Aチームにいつも負けている。
僕達のチームが負けているのは、個人の技量が未熟な者が多いのが原因だと思う。
連携だけを上手くいくようにする事は出来るかもしれないが、このチームの戦闘力は上がらない様に思える。
チームのメンバーを鍛えなおさないと銅Aとまともな戦闘も出来ないがメンバーはやる気のない者が多い。
頑張っているのがリーダーのアジス嬢とスコット子息だけで、他のメンバーは戦闘に参加してるだけでやる気がない。
「みんな、連携がとれてないわよ。前衛の2人は敵の前衛と戦てる際に2人で戦ってる事をもっと意識してください。仲間同士が邪魔になってる様に見えます。魔法は狙えたら即座に放ってください。うちのチームの魔法攻撃が少ないです」
スコット子息も何か言いたそうだ。
「アジス様、僕からも意見を言わせてください」
「はい、お願いします」
「連携がとれてなくて動きが悪いので、前衛の者は少し離れてとりあえず戦ってほしい。仲間の邪魔をしないのも連携だから、あと仲間の動きを見よう。仲間の動きが見えてくればどうすれば邪魔にならないで連携できるか分かるようになる。僕からは以上です」
スコット子息は、僕との手合わせでは何も考えてないような攻撃をしてきてるので僕は感心した。
やれば出来る男なのかもしれないなスコット子息は。
「そっち行ったぞ」
「うあ~」
「ちきしょう」
僕達のチームは連携もとれないでバラバラになって相手チームと戦っていた。
相手チームもそんなに連携がとれているようには見えないが、僕達がバラバラなので相手チームは落ち着いてきて、1人また1人と倒されていく。
僕と同じグループのメンバー3人は何処かに行ってしまった。初めは4人で3人相手に戦っていたが僕の隣にいた前衛は逃げていった。
魔法は飛来系しか使えないので戦闘中に飛来して来たら避けないといけない。
対峙して戦っていた所に魔法が飛来してきてメンバーは逃げていった。
銅Bのメンバーは何人残っているんだろう。
僕は2人の前衛の剣士と魔法攻撃してくる1人の3人と戦闘している。
連携がとれたいい動きをしてくるので僕の攻撃は当たらない。
避けられたり、剣で止められたりするともう1人が攻撃してくる。
魔法はいつ来るか分からないがまだ避けていられた。
戦闘中にも周りを見ているが銅Bのメンバーの半分ぐらいは倒されている。
敵も少し減っているようだが、こちらのメンバーがやけに少なく見える。
「それまで~戦闘をやめてください」
模擬戦の1回目が終わった。明日もあるので月末に2回する事になる。
月に1回の予定だったが、時間を短くして2回に変更になった。
僕達の技量だと長時間の戦闘は無理なので、短くする事でより頑張って貰いたいと先生は説明していた。




