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侯爵様に会いに行く

やって来ました、侯爵様の屋敷前に。


目の前の城壁、そして大きくて重そうな門、これが個人の持ち物と呼ぶべき物なのか。


あそこの、門番のおじさんに頼むか。


「すいません。侯爵様に会いたいんですけど、お取次ぎお願いできますか?」


「名前と侯爵様に何用で来たのか教えて貰えるかな」


「ユーリと申しまして。侯爵様にお世話になった事がありました。そのお礼とお礼の品を持ってきました」


「その品を見せてください」


「すいません、お見せ出来ません。侯爵様以外に見せる事も話すことも出来ません」


「それでは取り次ぐ事は出来ません」


「それでは、僕の名前と秘密の品を持った子供が来たがどうするかだけでも聞いて貰えませんか?」


「君の事を侯爵様は知っていて今の条件を伝えてくればいいのだな」


「お願いします」


「わかった。しばらく待ってくれ」


やっぱり貴族に会うのは呼ばれないとダメなのかな、その辺の慣わしがいまいちわからないんだよね。


身分が違うから僕みたいな平民が貴族を訪ねる事はないのだろう。


学園のみんなの家は、よく対応してくれたよな。


身分の違いの対応が面倒だよな。日本は楽だったな、目上の人に敬意を表すだけでいいし同じ年なら気軽に話せたしな。


学園ではみんな貴族様みたいな感じだし疲れるよな。


「ユーリ、慣例を知らんのか?」


侍従長のラキトさんが来てくれた。


門が上がっていく。中で上げてくれてる人がいるんだよね。


「すいません、知りません」


ハ~ァとため息をついて話し出す。


「学園でも貴族間の慣例、自分より上の貴族にどのように礼を尽くすとか1年で教えてるはずだが」


「そう言えばありましたけど、まさか貴族様達と関わりになるとは思わなかったので何も覚えてません」


「まず文を出してお伺いしたい旨を伝える。この時も30日ぐらい前に文を出して許可を貰う。これが最低の礼儀だ」


「はあ、大変ですね」


「大変ですねじゃない、守りなさい」


なんて面倒なんだ。僕みたいな子供が思い付きで生きてるのを分かってないな。


「でも鮮度が大事だから30日も待てないな」


「おい何を持って来たのだ」


「それは今は言えませんよ。侯爵様だけにお教えします」


話しながら歩き、シュラさんが描かれた絵画の前に立つ。


やっぱりシュラさんだったんだ。この人がカールさん。


ラキトさんが階段を上がった所で待っているので急いで追いつく。


大きい扉の前で武器を渡し、入室の許可が出るまで待つ。


部屋の中に入り、ソファの横に立ち挨拶をする。


「本日は、お忙しいなかお時間を頂きありがとうございます。学園の入学のお礼に伺いました。献上したい品も持ってきてます」


「ユーリ、ありがとう。君はなかなか忙しいみたいだね。ラトシス村を助けてくれてありがとう。領主としてあの危機に君や学園の生徒が駆けつけてくれて本当に助かった」


「こちらこそ、学園に入学する事が出来て、言葉の勉強が出来たのは侯爵様のおかげです。例の品も持ってきてます」


「まあ、腰掛けてくれ。例の品とは何かな?」


僕は、シュラさんの血液の入った瓶をテーブルに上に載せる。


侯爵様は手に取り、中に入っているのがドラゴンの血液だと気が付く。


驚いた顔をして「どこまで知っているのだ?」と聞いてきた。


「おそらく、王族の依頼でこの血液が必要になった。それをドラゴンと会ったことがあると言っていた冒険者を知っているギルマスに侯爵様が依頼して、ギルマスが酔った勢いでドラゴンに会った事を言っていた冒険者に依頼して、ドラゴンの血液が用意できた。少し予想が入りますが」


「ふむ、ほぼ合っている。それで、どうしてユーリがドラゴンの血液を持って来たのだ?」


「何かあった時にドラゴンの血液を貰いに行くよりも、薬に出来るなら先に用意出来ている方が、緊急時に役に立ちます。それと、カール・シューゲル様はドラゴンのシュラさんと縁がありますから」


驚いた顔をして、僕に問いかける。


「おお~、ユーリ。あの絵画に描かれている、ドラゴンのシュラさんがいるのか、生きているのだな」


「はい、カール様に会いたいと言ってました」


学園に入れてもらったお礼に持って来た他の物も出す。


「こちらが、学園に入れて頂いたお礼の鱗に牙です。あとオーク肉です」


侯爵様と僕の話を聞いていたラキトさんは小声で「むやみに話せることではないな」


侯爵様は、牙と鱗を手に取って。


「これもシュラさんがくれたのか」


「違います、シュラさんに気付かれない様にこっそりと拾ってきたんです」


「まあいいか、ありがとう、ユーリ。お礼だが何か欲しい物はないか?」


僕はいろいろ考える。欲しいもの?思いつかない。ああ、いい事と思いついた。


「では、フリーパスを欲しいです」


「フリーパス?」


「その、侯爵様に会いに来た時に侯爵様の都合がよければ会える許可書が欲しいです。僕、30日も前に訪問の許可を申請するのが面倒なんです」


「なるほど、面倒か。なら、私の都合に合わせるが、ユーリが何か用事で来て面会を伺える許可書を発行するのはどうかな」


「それでいいです。ありがとうございます」


「私の都合を伺える許可書か面白いな」


「もちろん、信用できなければお断りするだけでいいので、侯爵様のお手間は、その都度判断しなければならない事です」


「よしユーリ、君に伺える許可書を発行する」


「ありがとうございます。家に届けてください」


侯爵様は高笑いした後に。


「発行しても使わないとかは無しだぞユーリ」


「そうですね、なにか大事な事がありましたら使わせていただきます」




学園の休みが終わり入学式の前日の登校日。


校舎に入った左側にある掲示板に3年生のクラス替えの紙が貼られていて、右側に2年生の紙が貼られている。


早く来る事を知らない僕は、皆が自分のクラスがどのクラスになったか見ているのを校舎の入口で見てる。


だんだん人がいなくなり、自分がどのクラスか見る為に歩き出す。


こちら側に張られた紙から見て行こうと思ったがすぐに自分の名前を発見する。


また銅クラス、改めて思う。家紋がない僕の名前は探しやすい、ユーリだけなので短い。


2年生のクラスは2階だ、自分のクラスに向かう。


教室に入ると仲の良い者同士が話しているが、1年の時の同級生はいるが仲が良かった4名が居ないので同じクラスだねと話す相手はいない。


話す相手のいない僕は、空いてる席に座る。


2年生はどんな授業をするのかな、面白い事を教えて欲しいな。


担任の先生が入って来たが、カーク・ロー先生だ。


「君たちの担任のカーク・ローだ、よろしく。今から2年生で使う教材を配ります」


ふむ、去年を思い出す。先生は自ら配りだすはずだ。配りだした。


「2年生では基本の応用を習います。更に危険になりますので魔法の使用には気を付けてください。二年生ではクラス対抗の模擬戦が月末に毎月あります。男女の代表を決めてクラスを勝利に導いてください」


クラス対抗模擬戦か、いよいよ皆に実戦を想定した戦闘を経験させるのかな。


「今からチームの発表をします。黒板に張り出すので確認したら帰っていいです。明日は入学式で休みなので、明後日から授業を始めます以上です」


ロー先生は教室から出て行った。


僕のチームは。


①スコット・ファニング子爵子息


②ジェイク・ローレンス男爵子息


③シャシカ・ファーカソン男爵令嬢


④アリシア・ヴィキャン男爵令嬢


クラスの中に僕だけになり階段を降りて校舎前に来ると馬車の行列が連なっていた。




「この様に範囲魔法は、イメージを広げていく事で少しづつ広がります。自分の範囲が広がらなくなるまで広げるイメージ続けてください」


魔法が使えないがみんなを見て広げていこう、誰か一人を真似るのもいいかも。


チームの中で一番魔法が上手いアリシア嬢をお手本にしよう。


どの位の範囲に火魔法が展開しているか分かりづらいが頑張ろう。


ジェイク子息も魔法の方が得意なのかもしれない。


他の2人は魔法より剣術に長けているのか、魔法の範囲が広がってる様に見えない。


僕よりはいいか?全く使えないのと、使えるけど才能がないのはどちらの方がいいのだろう。


「おい平民邪魔だ」


「そうだ、邪魔だ」


そう、僕の事をスコット子息とジェイク子息は平民と呼ぶ。


令嬢達は僕に話しかけてこない。


チームの魔法の実技練習が終わり、他のチームに場所を開けるのに戻って来た僕のチームのみんなは、1人で離れてイメージ練習をしていた僕に邪魔だどけと言って離れていく。


チームは実技の時に一緒に練習するだけなのでそれ以外は自由なので僕は他のチームが魔法の実技を練習してるのを見る事にする。


この学園に僕以外に魔法が使えない人はいるのかな、いないだろうな。


見ていると魔法の大会がない理由が分かる。


攻撃力がある人の魔法は強すぎる。的が燃え尽きるのを見ると、人もああなるのと聞きたいぐらいだ。


「攻撃力の強い者は的を壊さない様にしてください。範囲を広げるのに強さはいりませんよ」


魔女が的を壊されたくないと言っている。


この先生、見るからに魔女に見えるスタイルをしている。


身長は少し低め、太ってもいないし痩せてもいない体系、服装は魔法使い。


魔女にしか見えない。僕のイメージの魔女だけど。



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