ふうちゃん
レイさんの家から山の麓まで来ると、振動が伝わって来た、ふうちゃんが近くに居ると認識できたが、今はお薬の方が大事なので、急いで1人用の背負子を組み立てる。
「直ぐに出来るからね」
「はい」
リュックから部品を取り出して組み立てる、出来た背負子を地面に置くと直ぐにミアちゃんが乗り、ロープで落ちない様にする。
準備が出来た様なので背負子を背をう。
「西の大森林まで急いで行くよ」
「はい」
先ずは、急いで山を越えよう。
登るのに2時間位掛かったが、降りるのは15分位だった。
山を下りるとそこはもう大森林だ、下りている時に見た景色は草原などない何処までも続く木が見えて森しかないと感じた。
「材料は6種類だ、色々な効果が合った方がいい」
見つけたら引っこ抜いて、その場に置いておく、ミアちゃんが葉っぱだけにする作業をしてくれる。
どんどん抜く、こんなに必要かと思うぐらい抜いて、最後に抜いた場所から僕も葉っぱにしていく。
「ユーリ、こんなに使うの?」
「レイさんは、村の人が多いと言っていたから沢山必要になる。建っていた家も多かったからこれ位ないと足りないと思うんだ」
「頑張らないとね」
「そうだね」
葉っぱにすれば持って行ける量も増える、後の作業も楽になる。
2時間位は薬の材料を取っていた、葉っぱになった材料をリュックに詰めれば村に帰るだけだ。
山を下りて麓を走っているとやっぱり振動が伝わって来る。
見に行きたくなる気持ちを我慢してレイさんの家は・・・・どこよ。
「そよ風のみんな~何処に居るの~急いで返事を~して~『ここよ~、ユーリ』ワンダーさんだ」
僕の迷子の叫びが聞こえた様だ。みんな同じ家に見る、屋根も同じだ。
「ここはワンダーさんの家ですか?」
「そうよ、両親が風邪で寝たいたわ」
「すり鉢と棒を貸して下さい。それと部屋を暖かくして下さい」
「分かった、すり鉢はテーブルの上に出しとくわ」
背負子を下ろしてリュックを持って家の中に入る、僕に続いてミアちゃんも入って来る。
テーブルの上に材料が出す、すり鉢に1種類だけを入れて擦り始めると、ミアちゃんがと視線が合った。
「お願いします」
「はい」
すり鉢をミアちゃんに渡して自分用の小さい方に違う種類の葉っぱを入れて擦り始める。
「グルグル~、グルグル~」「グルグル~、グルグル~」
「グルグル~、グルグル~」「グルグル~、グルグル~」
「ユーリ、部屋を暖かくしたわよ、次は何をすればいいの?」
「村中を回って、部屋を暖かくす事と重症者の確認。他の人に会ったら同じ事を言ってここに薬を取りに来るように行って下さい」
「行って来る、お薬を早く作ってね」
「直ぐに出来ます、急いで」
台所に行って、6個の容器を探す、出来上がった材料を入れるためだ。
「ユーリ、この位でいいの?」
もう出来たのか、すり鉢の中を見るといい状態になっている。
「いい出来だよ、次もお願い」
「はい」
次の材料を入れて渡す。
このペースならすぐに出来る。
「ありがとう、村が救われたよ。もう駄目だと思った、アハハ!」
「そうですね、アハハ!」
出来た薬をワンダーさん達に渡して重傷者の家族から飲んで貰った。薬の量は作り過ぎたけれど、足りないよりはいい。
「この子が薬を作ってくれたのか」「うちのばあさんは腰の痛みも無くなったと言っていたぞ」「ああ、うちのじいさんも火傷の後が無くなったと言っていたな」「そうなのか、風邪以外も治ったのか」「シミが消えたと叔母さんが喜んでいた」「何でも治るのか、あの薬」
色々な効果があった様だ。村の人全員が飲んだ後にワンダーさんの家に集まって来た。
外ではお祭りの様に喜び合っている。
薬に光の雫を混ぜたのが良かったようだ。ユーデット様の本に載っていた、薬の材料に光の雫を混ぜた時の効果が良くなる、早く効果が表れると載っていた。効果が良くなる事はいつ頃、確認されたんだろう。ボーンさんに聞けば、光の雫の使い方がもっと分かりそうだ・・・覚えているかな。
「ありがとう、好きなだけ村に居てくれ」
「ありがとうございます、のんびりしていきます」
凄い数の人にお礼を言われた、ミアちゃんも驚いている。
来た時は誰もいない村、廃村みたいな感じだった。建物は沢山建っていたけど、音が無いと誰もいないと感じる。防音などない世界なので、音がしないのは生活している人がいないと判断できる。
ここに居ないレイさんの家に行く事にした。
「ありがとう。みんな帰って来たんだな」
レイさんのお父さん、お母さんがベットに寝ていた。風邪薬は効いている様だが、他の人達とだいぶ違うのが直ぐに分かる。ワンダーさんの家に集まっていた人達は元気になった人で、レイさんの両親は風邪薬で少し良くなった病人だ。
「ユーリとミアちゃんよ。いい子なのよ、面白い事を一杯知っているのよ」
「レイの喜びそうな事だな。初めまして、おじさんです・・・・・これでいいのかな?」
「はい完璧です、名前を聞くと他の人の名前を忘れる病気なんです、ありがとうございます」
「私がおばさんです、ありがとう」
「ここに新風邪薬があります、飲んで下さい。村の中で病人はおじさん達だけです」
「もうみんな治ったのか、信じられないな」
残った新風邪薬をボールごと渡した。
「どの位飲めばいいのかな?」
「風邪薬と同じ量です、余った分は瓶に入れて保存しとけば大丈夫だと思います」
「直ぐに、飲んでみるよ」
おじさん達が薬を飲めば風邪は直ぐに治るので、家の外に出た。
「凄いぞ~、風邪も治ったが、疲れも無くなった」
レイさんの家の敷地にある木の枝に布を結ぶ。
「ユーリ、何しているの?」
横にいるミアちゃんに説明する。
「レイさんの家だと分かる様にする為の目印だよ」
「分かり易くなったね」
他の建物が同じように見えるし、家の敷地が規則正しく建っていないので分かりづらい、目印になる物が何もないのだ。
村の皆さんは元気になったが、皆さんが同時期に風邪になったので食料が無いらしい。
レイさん達の視線の先には僕がいる。
「では、レイさん達が倒したベアを解体しに行きます、付いて来たい人?」
「誰もいないわよ、ユーリに付いて行ける人がいるはずないでしょう」
レイさんの指摘に確かにあの崖・・・・山を登るのは大変だ、僕以外に行ける人はいないだろう。この村何人いるんだ。
「レイさん、この村には何人の人がお住んで居るの?、ベア肉はどれ位持って来れば足りるのかな?」
「300人位はいるわ」
「そうよね、300人はいるわよ。でも年寄りばかりだからそんなに食べないわよ」
「ワンダーさんは一杯食べるんですよね」
「うん、お腹空いた。もう直ぐお昼ね」
仕方ない、お昼の用意をしてから出かけよう。
「レイさん、大きいリュックを5個貸して下さい」
「持って来る」
急いで、ハンバーグを焼く。スープを作る時間がないので、ハンバーグとパンとお水だ。
「ミアちゃん、行って来るね。おばさんとおじさんの言う事だけ聞くんだよ」
「はい、おばさんとおじさん以外の人の言う事は聞きません」
ミアちゃんの頭を撫でてハンバーグから視線を外せない2人を見る。
「行って来ます、くれぐれもミアちゃんにハンバーグを頂戴と言わないように」
「ユーリ、いくら私達でもそんな事はしないわよ」
急いで行こう、他の人達もお腹を空かしている。
村から麓まで来ると5人用の背負子を組み立てる、リュックにしまう手間が省けるので使える様に組みたてる事にした。
「出来た、後はベアを倒した場所に行くだけだ」
背負子を背負えば後はベアを倒した場所まで行くだけだ。
荷物がなければ登るのも速い。
「ふう、リュック4個位までしか背負うのは無理だな」
持って来たリュックに解体したベアの肉を詰めた、4個目のリュックが一杯にならなかった。
いつもなら追加で倒して、入れられるだけ入れるのだが武器を持って来ていない、忘れて来たのだ。
魔物に遭遇しなくて良かった、それとリュック5個分だとおそらく歩くのがやっと位だったと思う。今の状態で5人乗せていた時よりも重く感じる。
山頂まで後1時間位は掛かりそうだ。
昨日はベアの肉を持って村に戻ったら夕方位だった。風邪から回復した皆にはベアの肉を配って自分達で料理をして貰った。元気になったし、大きい寸胴鍋が無いので一度に作れないからだ。
レイさん達にはハンバーグを作った、ミアちゃんも喜んでコネコネした。
朝の食事が終わったので、ふうちゃんに会いに行く事になった。
レイさんの家を出て村の入口の反対側に歩いて行く。村の建物が無くなると、林の様に少しの木が生えていて、薄らと緑色の生き物が動いているのが見える。
近づいて行くと蛍光の緑色で綺麗なドラゴンが顔を隠すように手を顔に当てていた。
「レイちゃん、久しぶり。皆怒っていなかった?」
「久しぶりね、ふうちゃん。どうかしら、分からないわ」
「私は悪くないのよ、村長が温かくなったなと言ったのよ。だから私はふうふうして涼しくしようとしただけなの、いつもの様に涼しくなれば喜ぶと思ったのよ」
「皆は風邪をひいたわ、でもそれはこの子が何とかしてくれたのよ」
やっと名乗れる、「僕はユーリです、ふうちゃんに会いに来ました」
「私はミアです、ふうちゃんに会いに来ました」
「私に会いに来てくれたの、嬉しい。皆の風邪を治してくれたのね、ありがとう」
「これはお土産のハンバーグです、温かいうちに食べて下さい」
大きい皿にはハンバーグを載せて来た、珍しい食べ物が好きだと聞いたような気がしたので。
「わあ、いいの。見た事のない形をしているのね」
右手の爪で刺して一口でハンバーグを食べた。やはり小さかったか、あの大きさだ一口だと思った。
「美味しい~、幸せよ。もう無いの?」
「ありません、ラム酒は飲みますか?」
「飲む~、いい子ね。レイちゃんと同じね」
「私は何も持って来てないわよ」
「いいのよ、ラム酒は美味しい~」
口を開いたのでラム酒を流し込んだ、持って来たのは3本なので、瓶の中が空になると次の瓶口に持って行く、最後の瓶も飲み終わった。
飲み終われば血液を入れるイベントが発生する。
「ラム酒は無くなりました。今度は血液をこの瓶に入れて下さい」
「え、何に使うつもりなの?」
水で瓶をすすげば、後は入れるだけ。
「薬の材料になるので、お願いします」
ミアちゃんはさっきからふうちゃんの体を撫で撫でしている。
「お薬の材料なんだ、それならいいわよ」
「私は帰るわね、またねふうちゃん」
「また来てね、レイちゃん」
レイさんがいなくなった、レイさんは飽きたので帰って行った。
「ミアちゃんには才能を感じるわね、ウインドカッター」
ふうちゃんがウインドカッターを唱えると空の方に魔法が飛んで行った。
「今のがウインドカッターよ、やってみて」
「ウインドカッター」
ふうちゃんのより小さいが魔法が飛んで行った。魔法は簡単なのかな。
「ミアちゃん、凄いぞ、魔法が使えるんだ」
「今のが魔法なの、ウインドカッター」
ウインドカッターが飛んで行く。
「後は自分で練習してね」
「はい、頑張ります」
「ふうちゃんにお願いがあります、僕とミアちゃんを乗せて飛んで下さい」
「いいわよ、北の方なら怒られないのよ。乗って」
こんなにすんなり事が運んだのは初めてだ。乗りやすい様に伏せてくれたのでミアちゃんと乗る。
「行くわよ~」
「「は~い」」
ふうちゃんが北に飛んだ。北は山ばかりで森に見える所が無い。もし北を旅したら大変だ、魔物もいるだろうし、山を何回登って下りればいいのか分からない位山がある。
「わあ、小鳥さんだ」
「私の友達よ、よく遊びに来てくれるのよ」
凄い数の小鳥が西の方に飛んで行くのが見えた。
「久しぶりに飛んだわ、人に見られちゃいけないのよね」
最近思ったのだが、この異世界の人はドラゴンの事を悪いイメージで捉えていないと思う、見ること下で来たら喜ぶ事はあっても怖がられる事がなさそうだ。
「ふうちゃんは、違う大陸に行った事はあるんですか?」
「そうね、あると思うけど忘れたわね」
山ばかりが終わると海だった。海まで人が住めそうな広い土地はなかった、レイさん達の故郷の様な集落なら別だが。
海にはイルカの群れがいた、少し大きい位なのか、亀亀とクジラみたいな特別に大きくはなかった。
「そろそろ、戻るわよ」
「「は~い」」




