再び大森林
恒例のロードさんの明日の予定を聞いた次の日、ゴールドルルに向けて街道を南に進む。
街道を通っていたら、今年も豊作だという農家の声が聞こえた。僕の事を知っている農家のおじさんかもしれない。
ロードさんも畑の作物が育っているのを見て嬉しそうだ。
「ユーリ、何しているの?」
僕は便利草を取るのを止めて。
「便利な草を集めているんです。この二つの草をコネコネして混ぜると魔物除けになります」
「へ~、そんなのがあるんだ」
「同じに見えるけど、どこか違うんだな」
僕が草を取っていたら、ワンダーさんとボードンさんが馬車から降りて草を取って比べている。
「草の後ろを見ると分かり易いですよ」
「なるほど、一杯取っておけよ」
じいさんはビールの事しか興味が無いのだろう、行動がビール絡みだ。
振り返れば、2人はもういない。
そよ風の皆は毎日二日酔いだ、魔物と遭遇しないので暇なのだ。
しかし、二日酔いでもワン・ツウはしている。変に元気なそよ風の皆。
「ユーリ、俺達も寝心地がいいよ。ありがとう」
「ああ、アメリアさんだけじゃなくて俺達の馬車まで揺れが少ないし、寝心地もいい」
二日酔いの人達が調子が悪くならないのは揺れないからなのか。
「ついでに作っただけなので気にしないで下さい」
夕食は温かい鍋にした。野菜が多いので特に美味しい。
「肉が食いたい、ビールに合う食事が~」
「ユーリ、肉はあるんだから焼いてあげたらどうだろう」
ロードさんは優しいな、しかしゲームに負けたのだ、そよ風の皆は。
「仕方ないのです、縄跳びでしている僕に走って追い付けると言うので、お肉を無くす賭けをしたんです。それでロードさん達の食事にもお肉が入っていないんです」
「そんな恐ろしい賭けをしたのか君達は、ユーリの足の速さを知っているんだろ、何故そんな無謀な事を」
「知っていました、面白そうなのでついユーリの罠にハマってしまったんです」
「そう、レイが言い出さなければ、普通に肉が入っていたのに、グスン」
ワンダーさんの演技は無視。
「気にしたら負けだ、ユーリの罠はこの先も続くはずだ。冷たくないビールで我慢しよう」
「俺は嫌だ、冷たいビールが飲みたい」
僕が悪者扱いされているが、面白いのでこのままでいいや。
「ミアちゃん、お肉のお代わりはいかがですか?」
「はい、食べます」
別にお肉を入れるだけなのに、変なイベントだな。
「俺にも肉」
「自分で入れて下さい」
「嫌だ、ユーリが負けを認めろ」
駄々をこねているボードンさんを相手にしないで他の人達は、出された肉を鍋に入れて食べた。
「食べないと無くなりますよ、ボードンさん」
慌てて食べようと鍋を見るが肉はもう無い、ミアちゃんが肉を1枚ボードンさんのお皿に入れてあげる。
「ありがとう、ミアちゃん」
「もう食べれません」
お腹が一杯の様だ、サラちゃんが。
変な旅はまだ続くようで、海賊の拠点の崖の上に来ている。
「ユーリ、のんびり下ろしてね、レイじゃないんだから落ちたくないわ」
レイさんは僕があの日した事の再現を自分で体験した。海に落ちるのも。
「足を掛けていれば落ちませんよ、どうですか、中が見えますか?」
少しずつ降ろしているけどワンダーさんには怖い様だ。僕なら急落下で下りたいのにな。
「広いのね、船が何隻も入れるわね。海賊か、よく捕まえたわね」
レイさんがロープを木に結んで、中に行こうと言うので従う事にした。
「ユーリ、あそこに馬鹿な娘が悲鳴をあげているわね。助けた方がいいのかしら、それとも・・・」
面倒なので、ワンダーさんを助けて旅に出る事にした。
「あら、ユーリがいないわね、面白い事が出来なくなるわ」
「ユーリなら、旅に出る探さないでと言って走ったいったぞ」
「もう飽きた、お肉を探す旅に出ると言っていた」
気が付いたのだ、2回目のイベントは面白くない。
それなら西の森でオークを倒して、ハンバーグでも作ろう。
ミアちゃんもコネコネがしたいだろう。
アメリアさんにも栄養のあるお肉が必要だ、グルメさんだし。
ゴールドルルの西の大森林、大森林に入らないで北西に進めば山がある。ミアちゃんと飛んだ山だ。
「この頃、全力で走ってないけど感覚が同じだから、遅くなってない様だ」
足が速いと風を切って走っているのが分かる、風が無いとそれがよく分かる。
西の方向に木が見え始めてきた。大森林の入口だ。
踏み込んだ大森林はシート静まりかえっていない。
「うわ~」「私の後ろに」「キャ~」
誰かが戦闘をしている。
走って声の方に向かうと、4人の騎士と2人の女性が見えた。
4人の騎士は2人をかばう様に魔物と戦っている。
この角度だと狙いにくいな、もう少し南の方に回り込もう。この角度なら魔物が狙える、よし、伝説の弓で攻撃だ。
「シューパン、シューパン、シューパン」
「シューパン、シューパン、シューパン」
僕の矢は魔物に命中した、騎士の人達の前の魔物がバタバタと倒れていった。よし、狙った魔物は全て倒したぞ。
「おお、魔物が倒されていくぞ」
「後退だ、急ぐぞ」
声を出した騎士に新たに魔物が襲い掛かる為に向かって来る、僕の矢は6本使ったから、残り14本だ、ここまま魔物が増え続けたら、攻撃できなくなるな。
騎士の人達も戦闘するような体制を取っているけど、そこに走り寄る様に向かって魔物に攻撃をした。
「シューパン、シューパン、シューパン」
「シューパン、シューパン、シューパン」
「さあ、こちらに来て下さい、お嬢様」
6体の魔物を倒して、騎士の横に並ぶと頭を叩く。
「馬鹿者、声を出すな、魔物が来るだろうが」
「あ、すまない。助けて頂きありがとう」
謝罪があったので、もう一度だけ叩く。
「小さい声で、話して下さい。怪我と他の人はいないんですか?」
「はい、怪我をしたのは2人だけです」
「ユーリなの?」
呼ばれて振り返ると二人の女性の1人がニーナさん?シーラさんの友達のニーナさん。
「ニーナさん、大丈夫ですか?はい、傷薬です、怪我人に塗ってあげて下さい」
「ありがとう」
僕はニーナさんに話し掛けながら、取り出した薬を騎士の人に渡した。
「ユーリ、ありがとう。もう駄目かも思ったわ」
「良かったのは・・・・・怪我人の剣を貸して下さい。僕の矢はではあの魔物の集団の数は倒せません」
「ユーリに剣を早く渡して」
「はい」
怪我をしていなかった騎士が、怪我人の剣を渡してくれた。
「すいません、もう1本剣を貸して下さい」
魔物がこちらに来るのが見える、襲ってきた魔物を倒したけど、僕の怒鳴り声で気が付かれてしまった様だ。
傷の手当てをしていない、騎士から剣を渡された。
「ここから動かないで下さい」
「ユーリ、大丈夫なの?」
僕は魔物の集団に向かって走る。ここに居るより僕が前に出た方がニーナさん達は安全になる。
「頑張ります、騎士の人はもし魔物が来たら合図をして下さい。必ず助けますので」
数は100体ぐらいだろうか、ニーナさん達との距離は30m位、魔物と対峙しそうな場所は後10m。集中する為に「両手剣が両手に」、よし調子がいい。
右は上段より低め、左は下段。最初の1体から5体までを仕留める動きがイメージ出来た。
「さあ来い、100体なら立ち止まっても勝てるけど、今は忙しい」
6体目は見えるけどその後が見えない。臨機応変は好きな言葉だ、さあ始めよう。
流れる様に5体を倒す、6体目が見えた時にその後ろには沢山の魔物が見えた。
「作戦変更だ、まだ無茶が出来ない」
倒した魔物を迫りくる魔物に投げつける、ひるむ事はないけれど少しでも魔物同士の間隔が空けばいい。投げる時に地面に刺した剣を抜き6体目を倒すとその魔物に蹴りを入れて後方に飛ばす、後はこちらから倒しに行くだけだ。
「まずい、こんなチャンスに静と動を試さなかった。借りた剣を返さないといけない」
つい本気になってしまった。ニーナさん達が後ろに居なければ、少しずつ後退して静と動の練習が出来たのに、ああ・・・立ち止まっての静と動でもよかったんだ。
「成長の出来ない戦いだった」
「君、大丈夫か?」
「見ての通り、成長できませんでした。ありがとうございます、帰ります」
「ユーリ、ありがとう。私達の馬車が倒れて困っているのよ、ガーベラまで一緒に行かない?」
ニーナさんは外出用の服を着ている様だ。少し疲れていのだろう、息が荒い。
「ニーナさん、大丈夫ですか、馬車は何処にあるんですか?」
「あそこよ」
あそこを見ると立派な馬車が見えた。馬は何処に?。
「ニーナさん、馬がいますね」
馬車が倒れているので、馬はダメかと思ったけど、馬車の近くに向かって歩いて来る。逃げていたんだな、よく帰って来てくれた。
馬車の状態を見る為に軸と車輪を動かす。大丈夫そうだ、後は倒れたのを直すだけだ。
「すいません、僕が持ちあげるので後から押して下さい」
「ユーリ君、それは無理だよ、私達だけでは」
試すだけ試すとかしないのか、車を持ち上げてみようとしてダメだと子供は遊ぶのに、大人は試さないので諦める。
「まあいいです、手伝わせてあげようと思っただけですから」
仕方ない、僕だけでいいか大きい岩より軽いだろう。
「うにょにょ~」
変な掛け声でも力は入るのだ、徐々に上げていくと手をあげて潰されそうな子供になったけど、騎士の4人も手伝ってくれた。一人でも出来たけど、この方がいい。
「ガシャン~」
「倒れていたのが、直った、嘘だろ」
「信じられない」
「シーラが言っていたのは嘘でわないのね、でも凄いわね。魔物を1人で倒しちゃうし、馬車も持ち上げられるし。どうなっているのかしら」
馬がいてくれて良かった、ロードさん達の馬車の方が重いからニーナさんの馬車を引けない事はないけど・・・・どこに行くんだ。
「ニーナさんは、何処に行くんですか?」
「ガーベラの温泉に行くのよ、シーラが今の時期が良いと勧めてくれたのよ」
騎士の人達は後片づけをしている、メイドさんは馬車の中の整頓。
温泉か、とろけに行くんだな、僕はオークを探して帰ろう。
「僕行きます、ゴールドルルに行かないといけないので、さようなら」
「そうなの、残念ね。ユーリ、ありがとう。またね~」




