浜辺の遊び
「さあ、ユーリ。面白い事を見せなさい」
馬車は南の街道を進んで行った、左には海が見えて冬の海は寒そうだ。
そよ風の皆は二日酔いが治って、面白い事が見たいと言うので見せる事にした。
「ミアちゃん、お願いします」
「はい、サラちゃん大きくなって」
ミアちゃんは、瓶から出したサラちゃんにお願いした。
サラちゃんは少しずつ大きくなっていく。
「大きくなっていくぞ」
「凄いわね、レイどうしたの」
ワンダーさんの視線の先のレイさんはとても嫌な笑顔をしていた。
「私が一番よ、乗っていいかしらミアちゃん」
「レイさん、残念ですが乗れません。友達しか乗せれない様なんです」
「試してみたの?」
「試しませんよ」
僕の返答を聞くとレイさんが乗ろうとしたら、サラちゃんは小さくなった。
「嫌みたいですね」
レイさんの足元から移動して、ミアちゃんの横で大きいサラちゃん戻る、それに乗るミアちゃん。
「サラちゃん、ありがとう」
最初の頃と違い、お願いしなくても走り出すサラちゃんは、馬車を追いかける。
「ユーリ、私は赤色が欲しいわね」
「おお、俺は青だな、イケメンらしく」
「私は、薄い緑がいい」
「俺は、白色かな」
「残念ですが、自分で探して下さい。西の方の水の中に居る可能性が少しだけあります」
馬車はアメリアさんの事を考えてのんびりと進んでいる。
「ワン・ツウ・ワン・ツウ・ワン・ツウ」
レイさん達は街の外に出た時は毎朝、走りながら縄跳びをする。僕が教えた時から続けているらしい。
レイさんの掛け声は後ろの馬車の横を走っている、ワンダーさんとじいさんにも聞こえている様だ。
レイさんの声に合わせて、ワン・ツウと言っている。
「みんな元気だな。最初は不安だったよ、二日酔いばかりだから」
御者台のロードさんは笑っている、苦笑いだけど。
アメリアさんはユーリスペシャルベットで横になっている、体調に問題はないけど、寝心地がいいのでよく横になっている。
スペシャルベットは伸縮性の紐を沢山使っているので、揺れを吸収するし、アメリアさんの体重が分散される位に綺麗に紐が張られている。
勿論、ミアちゃんも一緒に寝れる大きさに作った。
寝ない時はベットを倒すと背もたれになる。ベットの下に座れる台、台の下が収納スペースに。
「しかし、ユーリとまた旅が出来るのは嬉しいな、家族も一緒だし申し分なしだな」
「そうですね、ロードさん達と一緒だと飽きませんよね」
「それは私の感想だと思うけどな」
会話をしているけど、僕も馬車の横で縄跳びをしている。レイさん達の朝の縄跳びに僕も参加する事にした。
「見えた来ました、ハーデン村です」
ベルンさんが大声で、ハーデン村が見えたのを告げた。
「一日延びただけか、いいペースで来れたな」
「魔物に1回しか遭遇しませんでいたね」
「年々、この辺の魔物は減っている様だ」
危ない事が起きなくて何よりだ。アメリアさんも寛いでいる様なので、ロードさんは安心している。
「広場に行こう、この時間なら今から販売すれば商品が売れる、ユーリも品出し頑張ってくれ」
「はい、何か出来ればいいですね」
「え、ユーリ、何を言っているんだ」
「あれ、言ってませんでしたか、各馬車はそれぞれの役割に合わせて、直ぐに販売が出来る様に改造・・・新しく作ったと、広場に馬車を追いてホロ取ればいいだけです」
「そんなに便利になったのか、ありがとう、ユーリ」
「仕方なかったのです、朝と夕方しか雑用をしない、それも直ぐに終わる品出し、そんなのは飽きたのです、荷台さえあれば販売出来るので、街に居る間は休みの日になりました」
「そうか便利になって・・・ユーリは何もしなくて良くなったのか?」
「そうです、広場を通って宿に向かえば、荷台を置いて行けるのです、完璧です」
便利になったので、ロードさん達に任せて、浜辺に来た。
「ユーリ、穴を掘ったわよ、後は何をすればいいの?」
「ワンダーさん、お疲れ様です。イケメンのボードンさんと冷えて美味しいビールが飲みたいじいさんは穴の中に立ってみて下さい」
「おお、中に立てばいいのか簡単だな」
「美味しいビールか、早く飲みたいな」
二つの穴の中に2人はそれぞれ入ったので埋める。
「レイさん砂で埋めて下さい。面白い事が出来ます」
「穴掘りはこの為だったのね、いいわ働いてあげる、さあ埋めるわよ」
見事に埋めていくレイさんとワンダーさん。
「おい、この後どうなるんだ。もう出れないぞ」
「レイ、顔に掛かっている。もう少し丁寧に入れてくれ」
頭だけしか出ていないボードンさんとじいさん、そこにミアちゃんが棒を持って登場した。
「ミアちゃん、何で棒を持っているのかな?」
「危険な事が起きる予感がする」
ミアちゃんは予定通りに浜辺に線を書いて行く。
「昨日は、ここまで海の水が来たそうです」
ミアちゃんは予定通り説明をしたので、サラちゃんと遊び始めた。
「ユーリ、面白いのかこれが?」
「分かりません、レイさんに聞いてみて下さい」
「ユーリ、面白いわ、先に負けた方が私とワンダーにビールを奢ってくれる事、勝った人はおつまみね」
「そうねレイ、奢り程美味しいビールはないわよね」
楽しそうだ、レイさんも喜んでいる、約束は守った。訪れた街ごとに面白い事を提供する事。レイさんと僕が交わした約束だ、2人だけの秘密の。
「ユーリ、何とかしてくれ、水が・・ブファ、来たぞ。早く」
「すいません、負けを認めてレイさんにビールを奢りますか?」
「じい、先に負けてくれ、俺は奢りたくない」
「俺も奢って欲しい、負けてくれボードン」
「ユーリ、毎日飲ましてくれる、あの話はどうなったんだ?」
僕はボードンさんの近くで屈んで「すいません、あの約束は旅をしている時の筈なので街では奢れないのです」
ボードンさんは思い出したようだ。
「いいから出してくれ、次の波が危なそうだ」
海の方を見ると大きい波が来た。仕方ないか、楽しんだ様なので直ぐに出す事にした。
「波が来る前に出て来て下さいよ」
砂の中に手を入れて引っ張ると胸の辺りまで出たので、じいさんも同じ様に引っ張る。
「何とかなりましたね・・・・この遊びは僕が考えました。すいません」
取り敢えず謝って逃げる事にした。
「冬の海は寒かった、風を引いたらどうするんだ」
「大丈夫ですよ、イケメンは風邪を引きません」
「おお、そうだな。イケメンで良かったよ」
ロードさん達も販売を夕方までして酒場に戻って来た。
「ユーリ、便利だった、片すのも簡単だったよ」
「そうですね、在庫も分かり易いし、在庫がその場に有るので品出しをしなくて済みました」
全員が酒場で食事をしている、酒場だとロードさんの奢りなので、そよ風の皆はビールを飲んでいる。冷えたビールを。
シーラさんに貰った冷えるんですを持って来ていたので、ビールを冷やしておいた。
「ユーリ、ロードさんが奢ってくれるのを忘れていたのね」
「はい、忘れてました。明日は食べ物でも賭けて遊べばいいと思いますよ」
「そうね、お昼しかチャンスはないのね」
これで明日はお昼を賭けた遊びをしないといけない。
「何が食べれるのかしら」
「何を食べるのかは、ユーリが考えてよ」
ワンダーさんからお題が出た。
明日は何をして何を食べるかな。
「皆引くのよ、美味しいお昼が賭かっているのよ」
「冷たいビールも飲みたいでしょう・・・ボードンとじい、頑張りなさい」
「頑張っている」
「そうだ、2人で引くものなのか、地引網は?」
アメリアさんとミアちゃんは浜辺に持って来た、椅子に座っている。
テーブルには、お皿と飲み物が用意されている、後は食材のお魚が獲れると食べれる。
浜で頑張っているのを横目にお鍋の用意をしている。
漁師さんにお願いして地引網を用意して貰った。『大丈夫なのか、人が少ないと大変だぞ』
更に人は少ないのだ、2人は頑張っているが網が上がる予定はないようだ。
「仕方ありません、レイさんとワンダーさんも手伝っていいですよ」
「それではユーリに負けた事になる、ボードン、じい、頑張りないさい」
「そうよ、毎日負け続けるのはダメよ」
いい話の様だが、毎日負けそうなのは、ボードンさんとじいさんだ。レイさん達は見ているだけだ、今日も。
アメリアさん達を待たせ過ぎてはいけない、仕方ない今日も引くか。
「おりゃ~」
一番後ろから思いっきり引けば網は浜に上がり、ボードンさん達は引きずられて倒れている。
直ぐに魚を探そう、お客様がお待ちだ。迷ったけど小魚にした、色々と楽しめる方がいいの。
網の中にお宝の黄金の蟹を発見、魚介鍋から蟹鍋になった。
塩水で魚を洗い鍋に入れれば、後は待つだけだ。
「とても美味しかったです、浜辺で食事が出来るなんて、面白いですね」
「はい、気分転換にもなります、新鮮な魚を直ぐに食べれるのはいいですよね」
「後でお送りしますね」
「はい、ありがとう」
レイさん達、女性陣は打ち解けて何かとアメリアさんの事を気遣ってくれる。
ミアちゃんは浜辺でサラちゃんに乗って遊んでいる。
「まあミア、海の中に入っては危ないわよ」
アメリアさんの言葉にそこに居た皆は見てしまった、サラちゃんがミアちゃんを乗せて海で泳いでいるのを。
いいな、やっぱり欲しいな。
「ユーリ、私も捕まえに行くわ、海を渡ってみたい」
レイさんの野望はとても無謀だ、見つけるのも、何処かの大陸に行くのも。
「レイが行くなら、私達も行かないとね」
ワンダーさんは行く気だ。
ボードンさん達の視線はミアちゃんだが、ビールと鍋を食べるのに忙しい様だ。
浜辺からの視線を集めていたミアちゃんとサラちゃんが浜辺に上がって来た。
「お母さん、海の上を歩いたよ」
「そうね、危なくなかったの?」
「うん、面白かった」
歩いたと言うけど、泳いでいた。泳ぐと言う言葉が今のところないのだろう、誰も泳げないし、魚が泳いでるとも言わないので。
「あら、服が濡れて無いのね?」
「凄いわ~、ユーリ、探しに行こうよ。きっと見つかるわよ」
「濡れてないよ」
アメリアさん達がほのぼのとした会話をしている横で、レイさんは僕の頭をぐりぐりしている。




