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合宿

冬の前に学園では、各学年ごとに大森林で合宿が行われるそうだ。


3年生からで最後が1年生だ、合宿は7日間ある。


大森林には強い魔物もいるが全生徒が戦闘を学んでいるので、実戦と野営を経験しに行く。


この合宿には、いつも食事の用意をしてくれていたメイドさんなど家の者の参加は認められてない。


危険だが学園の生徒には絶対に必要だと毎年行われている。


食料も最初の一日分以外の持ち込みを禁止している。


水は現地調達しないといけないけど川があるので大丈夫だ。


大森林で合宿を終えた2年生が帰って来ので、僕達の合宿は2日後だ。





「父さん、母さん、僕は合宿に行きます」


「はい、いってらっしゃい。お土産忘れないでよ」


なぜお土産。この頃は、母さんが僕の心配をしません。


いい事なのかな?まあいいか。久しぶりの冒険の匂いがする。


どんな匂いか分からないが大森林には強い魔物がいるらしいし、行きなれているのが、実は入口付近しか行った事がない。


昨日の夜も何を持って行けばいいのか悩んだ、合宿だとお菓子だ。


定番の幾らまでかは言われなかったが、最初の日に食べ終われるだけの食料ならいいらしい。


なので、朝からロールケーキを焼いた。


デコレーションもバッチリだ。後は現地まで崩れないように持って行くだけだ。


お昼も簡単なサンドイッチにしたので、時間は余裕だ。


集合場所は南の門を出た寄合馬車の近くだ。


「すいません母さん、お土産は既に厨房に完成してます。合宿でお土産を持ってこれないと思います」


「そうなの、厨房にあるのね」


「遅れるとまずいぞ、早く行け」


「行ってきます」


外に出るとシシルが掃除をしているたのでケーキの事を伝えていく。


「シシル行ってきます。厨房にロールケーキあるからね」


「はい、いってらっしゃい」




寄合所の近くに装備した学生がズラリと並んで、先生が点呼をしていた。


点呼の終わった者から少し離れた場所に移動している様だ。


ここに並べばいいんだな、僕の番は・・・・・・いつもの様に最後だな。しかし、貴族様達はどの位前に来ているんだ。


近くに馬車の大群がいないけど、皆さんは歩いて来たのかな?。


学園では、僕以外の皆は馬車で来ているのだ。ここには、どうやって来たんだろう。


「ユーリは、いないのか?遅刻なのか」


「は~い、います」


やっぱり点呼は、僕で最後だった。皆さんは早く馬車で来たんだなと納得。


大森林までクラスごとに移動だ、僕達の前にクラスが歩き出した。


「ユーリ、荷物が多いな、そんなに持って行く物が多かったのか?」


「そうだね、旅行気分で要らない物も入っているかもしれません」


「なんだよ、それ」


ポール子息が僕の荷物が多いと言っているので、ポール子息の荷物に視線を向ける。うむ、僕よりも少なそうだな。


「ポール子息は荷物が少ないですね」


「そうかな、要る物は全て用意したからこれで大丈夫なはずだ」


僕達のクラスの前の方が歩き出したので、後ろに並んでいる僕達の順番がきそうだ。


「ユーリ、探しましたよ」


エミリー嬢がリュックを僕の方に突き出してきました。おおこれが、あの行事か。


「姫それは、もしや結納とかいうものですか?」


「さあ、何の事でしょう、重たいのでお願いできますか?」


あれ冗談がスルーされたぞ・・・・・・この世界に結納は、無いな。そんなの有ったら迷惑だな、イノシシ5頭とだったりして。重たいのか、重そうに持っていらゃいませんが。


母さんの心得何番だ。女性の荷物は持てあげなさい。


「分かりました。その代わりこちらの手持ちの荷物をお願いしていいですか?」


「そうね、そのぐらいなら持てそうね」


荷物の交換をしたが、エミリー嬢の荷物は軽い。


貴族様め、全員が軽減リュックだな、俺のは普通のリュックだ。


「ポール子息のリュックは軽減付きですか?」


「あたり前だよ、行く前に疲れるだろ」


それも一理あるが、高くて買えないのだよ平民の僕には。


「まあユーリ、私の荷物も持って下さい」


「私もお願いします」


ポール子息を見ると前を見つめてこちらを見ない。


「分かりました、帰りは持てませんので、行きで勘弁して下さい」


「「は~い」」


話が決まるとこちらを見るポール子息、顔がニヤついている。





「ここが大森林の中央になります」


大森林の中央に着いたと先生が皆に知らせている。


僕は持って来た荷物を、令嬢の皆さんにお返しする。


「ユーり、ありがとう」


何故か?荷物を持ってあげてお礼を言われてお辞儀をしてしまう僕。


先生が学生の僕達に大森林の注意事項の説明を始めたようだ。


「明日の朝まで、ここで私と過ごして下さい、食料は朝食までなのでそれまでに食べる様に、危険な魔物がいます、みんなで頑張って討伐して下さい」


先生の説明は簡単に終わった。大好きだ、短い説明。


久しぶりの野営だ~。しかし、こんなに人がいると野営って感じがしない。


森の中にある学園に、妖精とか出ませんか。それで僕に魔法を・・・・まあいいか。


いつか魔法も使える様になる予定、今は剣術を極める予定、言葉にするとかなう気がする。


予定は未定・・・・どこかで聞いたな。


ちょい遊びすぎているな、そろそろ何かしないと、上を目指したいが何をすればいいのか分からない。


まあいいか、僕はまだ10歳だ焦っても仕方ない。


僕のチームの皆がどこに野営をするか話し合っている、僕も聞かないと。


今回の合宿は皆のために頑張るか。


忘れていた、侯爵様のお蔭で文字を覚える事が出来た。お礼はしないといけないこの学園も侯爵様の治める大事な事業だ。


「ユーリ、先ほどから上の空の様に見えますが、野営の場所はあそこに決めました」


エミリー嬢の指差した先は岩場地帯だ。


他にもその場所に、野営の準備をしているチームがある。


「分かりました、では、行きましょう」


皆が自分の荷物を持って移動するので僕も付いて行く。


岩場には僕達を入れて3チームがいた。


昼ぐらいなので、敷物を引いてお昼にする事になった。


サンドイッチを食べながら、この森に生息している魔物の事を考える。


僕達学生でも協力すれば倒せるぐらいの魔物が生息しているのだろう。


しかし、この食事の時間にいい事がない。


皆が僕の食べてるサンドイッチを狙ってる。


ここで気にしないで食べ続けれるほど僕は怖いものしらずではない。はぁ~。


「その宜しければ、みなさん1個づつ食べますか?」


「僕は、その角煮がいいです」


何故か丁寧語のポール子息は角煮が食べたいよね。


「どうぞ、食べて下さい」


角煮の重箱を敷物の上に乗せてふたを開ける。


「みなさんは、このサンドイッチを頂いてみませんか?」


「まあ、変わった形のパンですね。頂きます」


「私も頂きます」


「では、頂きます」


三人はオーク肉のサンドサンドイッチだ、肉は薄くして味は少し濃いめにした。


「「「「美味しいです」」」


この頃思う、このままでは料理人になってしまう。


しかし、僕はおやつにロールケーキ持って来てしまった。


門の所からこの森まで持って来たのはエミリー嬢だった。


配ってしまおう、これ以上の怖い思いはしたくない。


僕は食事の終わった皆に、デザートを食べるか聞いてみる事にした。


「皆さん、食事の後のデザートはいかがですか?」


「まあ、デザートですか?」


「「「それ」」」


持って来たロールケーキを出すと皆がそれと言いだした。


それ?????。


「それです、人気のお菓子です。どうしてユーリが持っているのですか?」


スカーレット嬢がそれの説明をしてくれた。


「え、僕が朝作ってきたロールケーキです」


「まあ、人気のお菓子がここに」


少し反応が遅いです、アンバー嬢。


「ユーリ、なぜ作れるのを隠してたのですか?」


「隠していませんが、このロールケーキが人気のお菓子なんですか?」


「そうです、私達がお父様に頼んでも取り寄せる事が出来なかったお菓子です」


「そうだったんですね、今切ります」


そう言えば、食堂・・・ラウンジ、呼び方は知らないけど、あそこで話していたのは、ロールケーキの事だったんだな。


「僕にもいただけないだろうか?ユーリ」


聞き覚えのある声が後ろから僕に話しかてきた。


先ずは三人に切り分けて渡す。後ろを振り返るとフレディ子息がいた。


「今の声は、フレディ子息でしょうか?」


「そうだ、そのお菓子を僕に譲ってくれ」


お辞儀されたけどそんなに食べたいのかな?


「では、お皿をお持ちなら、持って来て貰えますか?」


「今、持ってくる」


既に食べてる三人は、「まあ美味しいです」「甘くて美味しいです」「幸せの味」など他にも感想を述べている。


僕にもと言い出す前に、ポール子息の皿にも一切れ載せてあげる。


「待たせた、お皿だ」


皿を受け取り一切れ載せると不満顔?


もう一切れ載せると笑顔。


「どうぞ」


「ありがとう」


僕とフレディ子息のやり取りを見て近くのチームが僕の前に来た。


空の皿を手にしてるので、もしかしてと聞いてみる。


「皆さんも食べてみますか?」


「いいのですか、私達まで」


お皿を持った皆さんは五人ですね。


「はい、手に持ってるお皿を出して下さい」


手に持ってる皿を突き出してもらう、それぞれに載せると「ありがとう」と言って自分たちの場所に戻って行った。


僕も食べようと思いお皿を持とうとすると、三人がお皿を見ているので。


「もう一切れづつありますが、お食べになりますか?」


「「「食べます」」」返事が早い三人。


お皿に載せるとお辞儀して、喜びの表情の令嬢達は食べ始めた。


最後の一切れを僕も食べよう。


「甘過ぎたかな」


甘い物をそんなに食べない僕は、自分で作ったロールケーキの感想を呟いた。この世界に僕のお気に入りお菓子が売っていれば、わざわざ甘い物を作らなかっただろうに。300円分にしては作り過ぎたかな。


「丁度いいです」


僕の独り事が聞こえたのか、エミリー嬢がロールケーキの甘さのが丁度いいと言った。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人が良くて、周りにケーキをあげるのも自分が納得して、提供しているようですね。時々、薪を持って行ってあげた家は、様子見に行っていないようですが、大丈夫なのかな?
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