完売しました
ここは何処だろうと言いたくなる、やけに広い場所、沢山の生徒がお昼の為に並んでいる。
広い食堂、長い売店、壁の代わりにガラス張りになっている長い壁、長方形の食堂。
スノーボードしに行った時にのゲレンデの大食堂のようだ、長い売店は50メートル位あった。何人座れるか分からない程のテーブルと椅子、ウェアを着た凄い数のお客さん。
この学園のテーブルは4人掛けだ。それが凄い数あるので何人の学生がいるのか見当もつかない。
ローランドの学園と違うのが、一人がけのテーブルではない事、食事を自分で選んで席に持って行く事、セルフサービスなのでメイドがいない事。自分で買って、空いてるテーブルに持って行く。
友達同士食べているので話し声も聞こえる・・・少しうるさい。
「お兄様は、何をお食べになりますか?」
良い妹だ・・・・今だけ甘えとこう。
「同じ料理でいいです」
支払いは妹持ちだ、ここでギルドカードを出すわけにいかない。
「私も同じ料理でいいです」
「アヤは自分のカードで払ってね」
「分かりました」
奢って貰うので、スキルウエイターを発動する、少し不安定だけど左手に2個のトレイ、右手の1個トレイでサポートもする。
「お兄様、凄い特技ですね」
「はい、日々の努力で身につけました」
「あちらの空いている席に行きましょう」
奢って貰った料理は、シチューと野菜の炒め物少しとサラダ、パンとスープ。デザートらしきクッキー1枚だ。
色々な料理があるな、食べざかりなので品数を多くして、1品の量が少なくなっている。
二人が食べ始めたので、僕も食べ始める。
「普通だ、とても普通」
「お兄様、聞こえますよ」
「ああ、済まない」
貴族様に普通の料理を出せるんだ、人数が多いからなのか。
味覚が発達しすぎるのも問題だな、我がままになる。
貴族の皆は自分で選べるだけ良いのかも知れない。不味いと思うものは頼まなければいい。
「硬い、焼きすぎだ」
「私もそう思いますよ」
後ろの女性かも同じ意見か、そう文句ではなく感想だ・・・・僕のは文句だ。
もっと美味しく作りなさいと言いたい。
「理事長先生」
偉い人が後ろにいるのか、今更ここから帰れない、2人の食事が終わるまでここに居ないといけない。
「ユーデット様、お久しぶりです。甘いのが好きなユーデット様にはいつも硬いと言われ続けました。改善する事が出来なくてすいません」
「理事長先生、お久しぶりです。仕方ありません、沢山の生徒さん達にお出しするのは大変な事です。食事の感想を言い過ぎました」
「理事長先生、お兄様は料理がお出来になるんです。デザートも得意なはずです、それで硬いと言ってしまったんです」
「そです、とても美味しい料理を作ってくれました。何人分でも作れるとも言っていました」
褒められているのか、庇ってくれているのか、よく分からないな。
「そうですか、卒業してから色々と頑張っているのですね、剣の試合の事も聞きました、嬉しく思っています」
しかし、後ろから話されるのはどうなんだ、貴族的に。
酒場の内緒話で後ろの人と話すのはアニメで見た。あれは悪い事を考えている人達だったが、ここでは理事長先生と話していても誰も気にしてない様だ。
ユーデット様としてお礼を言っとこう。
「ありがとうございます、理事長先生」
この大きい食堂には理事長先生も食べに来て、生徒と同じ物を食べるのかと感心した。先生には裏メニューとかありそうなのに同じ物か。
一番受けたくない授業、貴族の心得。
『お兄様、授業に出ましょう』と誘われて、断れない僕は『はい、喜んで』と言った。
カリン嬢の隣に座り、静かに先生に話を聞く。眠くなってくる。
「さあ、学園を卒業したユーデット様にどんな事に気を付けているか話を聞きましょう」
何で一番苦手な貴族の心得なんだ、授業をちゃんと聞いた事が無い。しかし、ユーデット様は答えないといけない。
「どんな時でも自分で考える、人の意見は考えた後に聞く。相手に自分の考えを分かる様に説明する。誤解を与えない。間違えているのかは自分で考える。今話したのは貴族の心得ではありません、自分らしく生きていく為の心得です。貴族の心得は自然と身に付く筈です、両親の行いを見てればいいのです。両親の行いが悪いと思えば自分はどうしたらいいか考えればいいと思います。以上が僕が心掛けている事です」
生徒の皆から拍手が起こった。まあユーデット様ならこの位は言うだろう。
「自分らしく生きる、いい言葉ですね。感動しました」
今のは、異世界に来た僕が生きていく為の考えだ、常識が分からない、分からない事だらけの異世界。
日本人の常識も分からなかった、自分の常識は他の人から見たら非常識なんだ、僕はそれでいいと思う。
常識を連呼している人達は、よく考えているのだろうか、その常識は誰かの受け売りなんじゃないかと僕は言いたい。誰も間違っていないけど誰も合ってもいない。それが世界なんだと思う。
貴族の心得も相手が違えば通用しないかもしれない。色々考える事はあるけれど、今は学園から帰りたい。
夕方には学園からは帰れるが、小麦粉が無くならないと旅に出れない。
学園の裏門から馬車で公爵様の屋敷に行き、ユーデット様の制服を借りた、明日使う予定だ。
「大変な一日だった、街をふらふら出来なかったけど仕方ない、今から武器屋に行くぞ」
宿に戻る道にある武器屋さん、ドアの隙間から中を見て怖そうなおじさんは居ないので中に入る。
「買えませんけど、武器を見ていいですか?」
「いいよ、好きに見てくれ」
「ありがとう」
いい人だ、おじさんと呼ぶには早い様だ。
広い店内に武器と盾が飾られていた。盾を持っている人を見た事が無い。
名刀は無いけど、伝説の弓は売っていた、金貨5枚だ。
自作して良かった、皆どうやって武器を買っているんだ。この大陸に実家が無いと買えないのか。
それともお金を稼ごうという意識が低いのか僕は、まあいいかお金持ちになりたいわけではない、冒険者になりたいのだ。
おお、武器の無い冒険者現れる。現れる・・・武器も現れる。ダジャレになっていない。
伝説のパチンコも売っている、生産者が知りたい、子供かも。
両手剣は金貨10枚からだ、この剣は切るよりもぶっ叩く剣に見える。
「ありがとう」
「おう」
武器屋さんは他にもあるだろうが、他も同じ様な武器しかないかも。ローランドは物を作るのが上手いのかもしれない、日本の職人さんの様な人が居るローランド、同じ様な物があるけどまだ真似でしかないガーベラ。
帰ろう、明日は忙しい。
「どんどんコネコネするぞ」
「はい、コネコネします」
僕が頑張る事を声に出すとミアちゃんの熱意が聞こえてきた。
最強のコネコネのペアは広い厨房の隅で今日の目標、フリーを沢山作るを実行に移す。
僕は学園に冷えるんです改が10台並んでいるのを見て、フリーを美味しく沢山作れると思った。
生地を冷えるんです改で寝かす、冷やす事でアルさん達が作っているフリーより美味しいフリーが出来る。
最高のフリーを作る為にお願いして貰ったのだ。カリン嬢は『そうですか、最高のお菓子を作りたいのですね、分かりました理事長にお願いして来ます』と言ってくれた。この瞬間に決定していた、公爵家の令嬢の頼みは断れない。
まあ自分で頼んでも必ずお願いを聞いて貰えると思っていた。理事長も甘いお菓子が好きだから。
ユーデット様の制服を借りて学園で作る事にした僕は、ロードさんに『馬車1台分の小麦粉を消費してみせます、馬車で出かけていいですか?』と話して許可を貰った。
小麦粉の移動を知ったミアちゃんは御者台で待っていた。プロには隠し事が出来ない様だ。
学園に来るのに制服は要らない様な気がしたが、着ていれば何かと便利かもと着て来た。2人は僕の友達で、フリーを作るのに2人の協力が必要だと立ち入りを許可して貰った。
「コネコネコネコネコネコネコネコネコネコネ」
「コネコネコネコネコネコネコネコネコネコネ」
「猫にならないんですね」
「はい」
コネを10回連続で言えるほど成長したプロは、コネコネのおかわりをした。早いぞ。
「見て、丸いのに穴が開いた物がある」
女子生徒さんが陳列されているフリーを見てくれている。
「お菓子と書いてあるぞ」
説明を読んでくれているな。
「まあ、食べ物なんですね」
「説明が書いてありますね」
「数に限りがあります、街で人気のお菓子か」
数名の生徒がフリーの前に止まって見てくれている。
「すいません、このお菓子は美味しいのですか?」
女子生徒に質問されたアメリアさんは「とても美味しいです、この機会にご購入するといいと思いますよ」と言ってくれた。流石・・・行商人の美人の奥さんだ。
「どうしようかな」
「初めて見たので、買います」
1人の生徒が取ると他の生徒もお皿に取っていく。
どんどん売れるお昼時がきた。準備は出来ていてるが、揚げるのは忙しい。
何人いるのか分からない生徒の数、何個あるか分からないフリーの数。
需要と供給の戦いが始まった。
勿論プロは、お昼なのでハンバーグを食べている、デザートはフリーだ。
「美味しい~」「当たりね」「この味は初めて」「私、もっと買って来る」
次から次と来る生徒さんは途切れない、完売した時に『まだ食べていません』と言われてしまった。
買えない人が何人いたのか分からない、その中に我が姉妹がいたのだ。
「お兄様、取り置きはしてくれてませんの?」
「そうです、お姉様と私は食べてません」
売り子ではなかったので、カリン嬢とアヤ嬢が買えていないとは思っていなかった。大勢の人が買ってくれていたので買えなかった人がいるとは思えなかった。何回も買いに来ている人がいたから尚更だ。我が姉妹は買えなかった人達なのか。
「すいません、食べたい人はお買いになったと思っていました」
「「「「「「まだ、買えていません」」」」」
買えていない人が大勢いる、並んでいる人達は、まだ食べていない人達だった。
「お兄様、明日は食べれますよね」
明日?明日の予定は未定と言える雰囲気ではない、皆の視線は僕に、僕の回答を待っていて『シーン』と静まり返っている。
「勿論です、やはり、食べれなかった人がいる事はいけない。学園内は平等でないといけない。明日も販売します、お持ち帰りが出来るぐらい作ってみせます」
「楽しみですね、明日に期待しています」
声の方を見ると買えなかったのか人がここにも、理事長先生がいた。




