なんだこの丸太
お祭りと違い期限がないので、少しだけ、ほんの少しだけ気分が楽だが、先の見えない戦いほど辛いものはない。
空き地に販売機を10台並べた。
動作は完璧だ。お金の判断の仕組みは前に作った貯金箱、貯金板で経験済みだ。
判別するのにお金が滑り台を転がる様にして何回も大きさで判別していく。その判別出来たお金が下の箱に分かれて入る。アクリの板で作った時は嬉しいし面白かった。
今回は見える様にに作れないので、見て楽しめない。その代わり判別の微調整が木を削るだけで出来たので良かった。
工房に頼んだ沢山の木箱は中央のキッチンの横に置いてある。
販売機の裏から木箱を入れる。裏を閉めれる様にしてあるが、今は全部空いている。閉めるのは販売が終わる夜だけだ。販売機を丸太で作ったのは強度と重さの為だ。倒れたり壊れたりしない様にしたかった。
「販売機を作ってみたかったんだ。お祖父ちゃんに言ったら、捨てるに困るだった」
何かを作る時はおじいちゃんの家か会社だったので捨てる時に僕はいない。
10台作るのも1台もかわらないという現代、ここでは職人さんが1台1台と部品を確認して作る。
そのうち日本人は働く場所がなくなるな。
フリーを作るぞ、名前はフリーにした。フリスビーと砂糖を振りかけるから考えた。
今日は助っ人がいる。プロとその母親だ。
プロは朝から顔付が違っていた。販売機で遊んだので、今度は商品を作るのに頑張るつもりだろう。
プロの母親は、プロに付いて来る。いつもの様に御者台に座る事も出来ないので、お手伝いをしてくれるのだろう。
プロと助手さんの椅子とテーブルは用意してある。最初から手伝ってほしかったのだ。
売れようが、売れまいが、フリーは休まず作るつもりだ。
販売機には説明と絵で分かる様にした。僕が描いた絵は分かりづらいみたいなので、アメリアさんが描いてくれた。1台だけ僕が描いた。
まあ、最初のお客の予想はついていた。
「何だこれは」「もとは、木だよね」「このデカイので、何がしたいんだ」「説明が書いてあるだろ」
「下手な絵だな」「お金を入れるか、募金活動か」
手伝わないけど、面白そうな事があれば呼ばなくても来る。
フリーを助手のアメリアさんが箱に詰めてくれるので販売機に詰めていく。
「お金を入れて、ボタンを押すと『ガタン』・・・何か出てきたぞ」
「ウイントンはその木箱を買う為にお金を入れたのか」
「あら、木箱は横にずらして開けると丸太に書いてありますわよ」
「この絵の物が入っているんだな」
「食べ物なのか、見た事がないな」
「大銅貨1枚か」
「ほら大銅貨2枚の丸太もあるわよ」
ここからでも皆が大銅貨2枚の販売機に移動したのが見える。
「俺が買ったのは2個だな」
「あら、こちらは5個の様ですね、それで大銅貨2枚」
「1個おまけと書いてあるぞ」
楽しそうだな、初めて見るんだから色々したいだろう。
「俺もお金入れてみる」
「私も、してみたいです」
そう、面白さは最初だけだが、見た目が丸太だから皆気になるはずだ。
この販売機ならよく売れる事が分かった。
無駄遣いの好きな冒険者が、面白がって何回も買うのだ。
「美味しいお菓子なのか、お金を入れる事に気を取られて、つい一杯買ってしまった」
その場で食べてくれる人は丸太の横の大樽に空いた木箱を入れてもらう。
大きい木箱は持ち帰れる様に多めに作ったが、無くなるかもしれない。
親方に追加で頼まないといけなくなるな。
「何だこれ」「変なのが置いてある」「銀貨だと戻って来る」「説明に大銅貨しか使えませんと書いてある」
アルさん達が騒いでいるので、自然と注目を集める販売機。
この作戦の失敗が次の朝に分かった。
珍しいので朝からお客が来る。
朝早くから来たつもりが、集まっているお客を見たら、いつ起きればいいんだと思った。
プロはまだ来てないので、一人で頑張るしかない。
「直ぐ出来ますので、少し待って下さい」
取り敢えず、作り始めたと分かる様に声を出す。
「小さい木箱には2個入っていて、大銅貨1枚です。大きい木箱は5個入っています、大銅貨2枚です。大きい方は1個おまけになっています」
お釣りが出る様にするのは難しくないけど、お釣りを入れる時間を省きたいので、大銅貨だけの販売機にした。
「カードは使えないのか」
「使えません、カードの機能は付いていませんので、大銅貨を用意して下さい」
フリーを作りながら答える。
ドーナツがこんなに簡単なら自分で作るだろうが、販売機は離れているので見に来ないと作り方は見えない。
販売を始めてから3日目には調理場の周りに衝立を立てた、外で作っているので小屋を建てるかと考えたけど、今更そんな時間はないので、次の作戦を実行する。
ミアちゃんとアメリアさんの協力で、生産効率が上がったので、在庫が出来るようになってきた。
捏ねるペースの方が早いので、揚げてると焼くを同時にする事にした。
ガーベラ大陸のハイト街でパリパリを販売する事にした。
パリパリの生地は良く捏ねないといけないので、ミアちゃんに頼まないで自分する事にした。
でも、ミアちゃんの悲しそうな顔を見ると任せるしかない。
「大変ですが、コネコネしますか?」
「はい、頑張ります」
ミアちゃんは成長している、頑張ると今までに言った事がない。
僕も成長するか。
「アルさん手伝って下さい、早く暇な時間を無くしましょう」
暇になったアルさん達は、販売機の裏で箱が落ちるのを見ていた。
お金の仕掛けを見たいと言っていたが、見せられないのだ板を外すと正常に動かないのだ。
成長した僕は、アルさん達をこき使うスキル、頼んでいる様だが暇人は使われるを覚えた。
「そうだな、小麦粉が無くならいと旅に出れない、みんな手伝おう」
「仕方ないわね、私は捏ねるわね。やってみたかったのよ」
「私は、あげる作業がしてみたいですわ」
「やはり、箱に詰めて入れる作業が一番面白そうだぞ」
「そうだな、このパリパリを焼いてみたい。どうだバジル一緒にしてみないか?」
「仕方がないな。ルーベル、俺はパリパリの味を付けるよ」
「俺は何をすればいいんだ」
何をしたらいいのか思い付かないアルさんは誰に話し掛けたか分からない位にの小声で呟いた。
「そうね、パリパリの販売よ、暇な時は、リーダーらしく進行具合を見て欲しいわね」
暇が無くなるだろう、皆はやるきになっているので、丁寧に教える。
お昼頃には慣れたきたアルさん達が頑張っているので、お昼を買いに行く事にした。アメリアさん達も一緒だ。
「ユーリ、お昼は何にするつもりですか?」
「サンドイッチにしたいと思っています」
パン屋さんに皆の分のサンドイッチに使うパンを買いに向かう。
アメリアさん達は宿にお昼を食べに行った。
アルさん達のサンドイッチはパン屋さんでパンを買い、露店のお肉料理を挟んだ物だ。
「お待たせしました、お昼です。食べたら今している作業を違う人と交代して下さい。色々した方が面白いですよ」
「そうだな、皆、お昼を食べたら一人づつ交代して行こう」
お昼を届けたので宿にお昼を食べに行く。
お昼を食べ終わった僕は、頑張っている皆に夜をご馳走する為に北にある森を更に北に向かった。
森の先は山脈になっていた。
「久しぶりだな、1人で狩りをするのは、どんな魔物が居るかな」
まだ魔物に遭遇していない、魔物と呼んでいいのかウサギはいた。
逃げ足は速いけど、追いかけて来るのは遅かった。
目が赤色になったので火うさぎだ、フャイヤーラビットと呼ばれている。
友達がウサギを飼っていたので倒しづらい。
大岩の多い地帯でミノスと遭遇した。
「大岩が多いいのにミノスは少ない、ここなら弓使いで命中率が良ければ怪我しないでミノスが討伐できる」
大岩を障害物にすれば、弓を撃つだけ。もしミノスが多くても大岩に乗って戦うことも出来る。
北には山が沢山あるのがここから見える、火山はないのかな、北に火山がある話は聞いた事が無い。
ミノスを4体倒せたので解体して宿に帰る事にした。
「急いで帰ろう、皆は明日も朝早くから働くんだから」
「まだ夕方か、厨房をお借りしてハンバーグを作るぞ」
裏庭から裏口のドアを開けるとミアちゃんがいた。まあ、アメリアさんもいるけど、ここは厨房なので「コネコネしますか?」
「はい、コネコネします」
森に行く前に、ハンバーグを作る事を教えたので、待っていてくれたんだろう。
一応、貸して下さいとお願いして許しを貰った。
みじん切りして、ミアちゃんのボールに入れる。後はプロにお任せだ。
ミスト肉の量が多いので、ビーフシチューも作る。
パンも途中で買って来たので、ハンバーグ、ビーフシチュー、パンにスープが夕食だ。
ハンバーグは沢山作って、明日の昼はハンバーガーにするつもりだ。
「ユーリ、明日はフリーの生産をしなくていい、ベルンとヒューラが手伝う事になった、のんびりと過ごしてくれ」
少し遅い夕ご飯を食べているとロードさんから明日は生産、販売をしなくていいと言われた。
アルさん達が頑張っているので、のんびり出来ているが、お許しを頂いた方が気兼ねなしに街をふらふら出来る。
「ありがとうございます、明日はハイトを少し見て回ります」
ウイントンさんがこちらを見ているので。
「明日のお昼は美味しい物を用意しました、頑張って下さい」
「そうか、楽しみだぞ」
アルさん達は、飽きない様に担当をローテーションしている。
明日も頑張ってくれるだろう。
ミアちゃんとアメリアさんも明日はのんびりと過ごす様なので良かったと思う。




