試作品
薬師ギルドに行って、帰って来るのが遅くなった僕は、酒場で夕食を1人食べいる。
店の奥の方のテーブルから、言い争う声が聞こえてくる。
「よく柔らく煮込んだシチューだな、久しぶりに焼き立てのパンだ。それで皆は何しているの?」
食べているのは僕だけだ、アメリアさんとミアちゃん以外の皆がここに居る。
お酒を飲んでいないのに何しているんだろう。
「俺がいけないんです」
「悪事をしたんですね、反省してロードさんに謝りなさい」
「ユーリ、今は冗談を言っている時ではないんだよ」
「すいません、寝ます」
ロードさんに怒られたので、直ぐに夕食を食べて寝よう。食べ終わった僕は部屋に向かう為に椅子から立ち上がった。
反省会は皆だけでして貰おう。どうも雰囲気が面倒だ。
「ユーリも聞いてくれ、俺は間違えたんだ。仕入れの数を」
「おやすみなさい」
ヒューラさんの反省を聞いたし、僕に出来る事はない。行商人に向いていないのだ。
「何ですか、皆のその視線は」
皆が僕を見ているのだ、僕が何をしたのだろう。あれ・・・何故か手を掴まれているぞ。
「仕入れる数を一桁間違えてしまってのだ」
ヒューラさんは多く商品を頼んでしまってたのか。
「よくある間違いですね、一桁それはとてもとても多くなった事でしょう。次は気を付けて下さいね」
僕の指摘に、ベルンさんが更に説明する。
「あの、ユーリ、一桁だけどそれは馬車1台分が20台分になったんだよ」
「数字も間違えたんですね」
大きく頷くウイントンさん、何であなたが頷く。
「それで、どんな問題が発生したんですか?」
「まだ分からないのか、移動が出来ないんだよ」
何でウイントンさんが、アルさん達はただ聞いているだけなのに。
「ユーリ、私から説明をしよう。馬車20台分をどうにかしないと移動が出来ない。それは仕入れたお店に返せないからだ、それに信用問題になって、次に仕入れる時に断られる事もあるんだ。もし返したいと伝えれば他の商店、もしかしたら他の街の商店にも伝わる可能性があるんだ」
人は噂が好きだから、馬車20台分だと面白可笑しく誰にでも話すだろう。
「どうにかして、在庫を馬車の半分にしたい。それで皆で話し合っていたんだ」
話し合うと減るのかなこの問題は、何を買ったんだ。それに・・・1台分だったのに、何でその半分になったんだ?・・・40倍だよね?・・・・・・やっぱり、半分がいいと後から思ったとかかな。
「それで何を買ったんですか?」
冒険者のアルさん達は何か考えがあるのかな。
「小麦粉を馬車20台分だ」
小麦粉を馬車20台分・・・・売る方は確認しなかったのか、そんなにどうするんだと、僕なら聞くそれが商売だ。相手が間違えた数量を注文してないか、そんなに何に使うのか、聞くねプロなら。
「すいません、俺が間違えたばかりに」
「安く売る事は出来ないんですか?」
「それも、間違えた事を伝える事になる、それに小麦粉を販売している人達がどれだいることか、その全ての人に迷惑を掛ける事になる」
ロードさんは大きいタメ息をついた・・・・いるだけのアルさん達もタメ息をついた。
「そこで調理長に頑張って貰おうと皆で話し合った」
何でウイントンさんが決め台詞の様に言っているだ。
全員が頷いている、仕方ない僕も頷こう。
「そうか、やってくれるか」
ロードさんが僕の方を見て言っている?
「あれ、それは僕がやるんですか?」
「ユーリが料理長だろ」
なるほど、何か恨み言があるんだな、ウイントンさんは。だから一番うるさいんだな。
「馬車20台分も作れるものがあるんですか?」
「ユーリに任せるよ」
投げやりになっているのかなロードさんは。
何作れば大量の小麦粉が使えるんだ。
「それで、いつまでに無くなればいいんですか?」
「無くなるまで、ハイドにいる事にした」
やる気が無くなる事とやる気が無くなる答えだ。
「カードを渡すから頑張ってくれ」
ロードさんがお疲れの様だ。
「ユーリ、ごめん、俺が間違えたばかりに迷惑かけて、頑張ってくれ」
気のせいか、1人でしないといけない事になっているのか、一遍が好きだが、個人レベルで出来ない一遍だな。
食べ物を作るのも大変だけど売るのも大変だな。
皆は朝ご飯を食べ終わると楽しそうに出かけて行った。
「ユーリ、済まない。買い付けはしなくてはいけないんだ。馬車に運ぶ事も出来ないが、ハイドは広いから取り置きしてうつもりなんだ」
ヒューラさんは、誤ってから観光に出かけた。観光だ観光旅行。ダジャレは大事、元気が出る。
まあいい、ロードさんからはカードを借りているので、必要な物を買い揃えていくつもりだ。
北の門から出て森に向かった。
荷車をゴロゴロと引いて森まである街道を走る。
「騎士団の人が馬で移動中か、それに冒険者も討伐に来てくれているらしいので魔物に遭遇する事はないな」
森には薪拾いに来る子供達が大勢いると聞いた。懐かしい事を思い出す。
街の外に出れる様になって頑張ったのは薪拾いだった。体力作りにもなるので喜んで出かけた。
テレビで子供達が学校より、家の手伝いをしないといけないのを何度も見た。水を運んだり、薪を拾ったりだ。
薪拾いに行かなければ、リカちゃんとも会う事はなかった。
ハイドから森は近いんだな。
「借りている荷車だから、ここに置いて行こう」
森の中でも引くて行く事は出来るけど壊れたら困るので置いて行く事にした。
大きい木をさがす、森を進んで行くと、樹齢何年だと聞きたいぐらいの太い木を発見した。
「この木を切り倒してもいいよな、ロードさんは木は自由に切っていいと言っていた。おお~、向こうにも同じ位の太さの木がある」
先ずはこの太い木を切り倒そう。あの道具を1回使ってみたかったな、金曜日の夜に。
「なかなか、いい感じに削れたな」
切り倒した木を丸太にして中をくり抜いた。
「丸太の船みたいになったな、これを何個も作らないと」
今最高に楽しい、木こりスキルでどんどん切り倒したいが、使う分だけにしといた。
「倒れるぞ~」
誰もいないけど倒れるぞは言いたい。
要らない部分は薪として使える様にして森の入口に山積にした。気が付いた人が持って行くだろう。
1日に何個出来るのか心配だったが、鍛えた体は疲れる事なく木を丸太に、丸太をくり抜く作業が終わった。
丸太をくり抜いていると、色々作れて水道があればシャワー室になると思った。大事な水をシャワーに使うことは出来ないが、水が上手く貯まる様に出来れば野外専用のシャワー室にはなると思ったけど、偶然見つけた冒険者しか使えない。
くり抜いた丸太を荷車に載せて運ぶ。
「自作はいいな、意外と簡単だった。説明をしなくてすむ」
今の作業を頼むとお金も掛かるけど、説明が面倒だ。
森も近いから行ったり来たりする時間も掛からないのが助かる。
北門には誰も並んでいないので、すぐに入れる。
宿の裏庭に置かせて貰って森に戻る、それの繰り返しだ。
木工工房で、色々な部品と仕掛けを作らないといけない。
大事な部分なので、1個1個の材料を作ると組んで行き、動く部分は何回も試して僕の考えた通りに動くか確認する。
「その部品は何だ?」
「秘密です、大掛かりな仕掛けなので何回も確認しているんです」
空いている場所をお借りして、作らせてもらっている。
親方には、完成した時に必要な箱を2種類を作って貰った、その箱のサイズを参考にして出来たのが、秘密の仕掛けだった。
いろいろな部品を作らないといけないので、全ての部品が完成するのに時間が掛かる。
大銅貨を利用して丸を書いて、その丸を抜く。
この部分を綺麗に仕上げていく。
細かい作業を頑張っていると夜になったので、続きは明日する事にした。
「また明日来ます、ありがとう」
「そうか、待っているぞ」
優しい親方にお礼を言って宿も戻る。
宿屋の裏庭に置かれた、もと丸太に全ての部品を取り付けていく。
「ユーリ、それは何ですか?」
「秘密です」
アメリアさんに質問されたが秘密なのだ。
「そうですか、丸太が沢山ありますね」
周りを見ると、僕が置かせて貰っている丸太は10本だ。
完成しているのはまだない。
「はい、完成したらお見せします」
「楽しみですね」
木工工房に木箱の注文をした。
小さいサイズの木箱と大きい木箱を合計で800個だ。
「親方、頑張ってね」
「なんで最初に沢山注文すると言わなかったんだ」
「忘れていました、最初に作って貰った時に注文すれば良かったですね」
呆れる親方に急いでねと言って、森に向かった。
忘れていた、いつも忘れるけど。
料理するなら、炭が必要だ。街の中で、調理するので煙が出ない炭にするつまりだ。
炭作りは慣れているので大丈夫だ、直ぐに出来る。
太い木で作った薪はなくなっていた。薪拾いに来た誰かが持っていったんだろう。ちゃんと乾燥させてくれるかな。
今考えると、ロードさん達の行商の旅に付いてきたけど、カルテアに居た時の生活とあまり違いがないように思える。
仕事が雑用と食事の用意だけだけど、休暇に色々しているので行商に付いて来たと言うより、馬車で旅をしているようだ。
その旅の警護のアルさん達は何処で遊んでいるんだ。
いつもならクエを受けて討伐に出かけたりしているけど、討伐クエが無い。
「沢山出来たな、これだけあれば長時間料理ができる」
炭も忘れたいたけど、樹脂を集めるのも忘れていた。
それで全ての準備ができた、後は場所と、木箱が出来れば調理の開始だ。
「ユーリ、色々と作っている様だけど、小麦粉が減ってないよ」
心配なヒューラさんが確認する様に僕に話して掛けてきた。
「まだ、準備段階だったんです。明日からお菓子作りをするので少しづつ減ります、その後はどれだけこの街の人が買ってくれるかで、小麦粉の減る量が変わります」
「頑張ってくれよ、俺達の仕事の方は、取り置きして貰っているからさ」
「お菓子作りですか、私も見ていていいですか?」
お菓子作りをアメリアさんも見たいのか。
「いいですよ、裏庭で作りますから見に来て下さい」
夕食の時間に準備の進み具合をロードさんに報告をした。まだ、元気がない様子だった。
販売する場所は市場と広場には近い空き地を発見したので、持ち主に使う許可を貰う事が出来た。空き地が在るのは珍しいので聞いてみたら、商店の建築予定が合って、材料を揃えているところだそうだ。
ロードさんに大丈夫かと聞かれたが、大丈夫と言えるほど売れるか分かりませんと答えた。
小麦粉以外の材料を入れてかき混ぜる。
スポンジケーキの様に混ぜなくていいので簡単だ、そこに小麦粉を入れて捏ねる。
捏ねれば現れるプロ。
「コネコネ」
コネコネは一生懸命にしなくていいのでいつも使っているボールより大きいのでお願いした。
ミアちゃんは久しぶりのコネコネの量が嬉しいのか、アメリアさんの所にボールを見せに行った。
馬車の方を見ると、受け取った小麦粉が積まれていて、後どん位あるんだと嘆きたくなる。
最初に使っお小麦粉の量の何倍あるんだとは考えない、誰もわからないから。
僕もコネコネをするけど、僕のボールは更に大きい。
捏ねた生地を寝かせて、30分ぐらい置く。
生地を1cmの厚さに伸ばす。丸い型を2個使い形を抜く。
ドーナツの生地が出来た。
この頃にはアメリアさんも見学していた。
「これは何ですか、丸い形に丸い穴が空いてます」
この形が油であげる時に適しているのかもと今更気が付いた。火が通り易くて均等に揚がる形だ。
「お菓子です、名前はまだありません」
ドーナツだけどこの世界の名前がいい。
油で揚げると色が変わり、出来たようなので油を切る箱の上に載せる。
余分な油が切れたら砂糖を掛けて出来上がりだ。
「アメリアさん、ミアちゃん、出来ましたよ」
お皿に載せたドーナツを二人に渡すと、受け取ったドーナツを不思議そうに見た後はミヤちゃんが先に口に運んだ。
「美味しい」
「美味しいです、外はカリカリ、中はふわふわ、甘くて美味しいです」
美味しい、甘いのは苦手なので少なめに砂糖を振り掛けてある。
「ユーリ、このお菓子を販売するんですか?」
「はい、小麦粉を一杯使えて、他の材料が少ないので後から掛かる材料費が少ないのがいいので、このお菓子にしました」
「もう1個食べたいです」
美味しい物を沢山食べるミアちゃんは、お代わりを食べる。
明日から、沢山販売するぞ。
今日作ったドーナツは酒場に裏庭を使わせてくれたお礼にあげる事にした。




