ハイト街
ハイバード村の薬師ギルドでマリサさんに鱗と牙、血液を送る手続きをした。
ボーンさんに会うのに疲れるような事はなかったが、宿に泊まった。
「ドラゴンに会えるとは思いませんでしたね、ロードさん」
「そうだな、ベルンは会う前に死にそうだった」
「そうだぞ、それに俺を毒を食べさせた犯人にしていたな」
「仕方ないだろ、自分で間違えたとは思っていなかったんだよ」
しかし、毒を食べさせられたと言うけど、どこからそんな発想が思いつくんだ。
「ロードさん、準備終わりました」
「さあ、ハイトに向かって出発だ」
「は~い」
それぞれの馬車に乗り込む。
遂に会えたドラゴン、まだこの大陸にいると思われる、グリーンにレッド・・・ブルー。何処に居るのかな?
遅い春のお祭りが終わると、少しずつ気温が上がってきた。
ハイトには7日位で着く。光の雫を取りに行く時に街に入らずに畑を通って西に向かった。
街道には魔物が出ないどろうとロードさんが言った。
北にある街のハイトはガーベラの次に広い街らしい。
冒険者によく会う様になった。魔物の討伐に来てくれたらいい。
大きい街ハイトが近いからなのか馬車もよく見かける。立派な馬車が通ると貴族様が乗っているんだと思い自然と道を開ける。
走る速さが違うので早めに避ける。
「ユーリ、飽きないのか?」
「飽きないわよ、ユーリよ」
既に飽きている、毎日走るのはいいのだが、景色が草原。どこまで続くんだと思うぐらい景色が変わらない。
「走るのは、飽きません。景色に飽きました」
「走るのはいいのか、俺も走るかな、前より体力が付いて来た」
ウイントンさんは馬車から飛び降りて走り出した。
「いいですわね、体力のある人達は」
そうだ、僕には本がある、読もう。
「ウイントンさん頑張って、僕は本を読むので馬車に戻ります」
「なんだよ、まあ1人で走るか」
馬車に乗るとアメリアさんとミアちゃんは寝ていた。
「どうした、走るのは止めたのか?」
「お借りしている本を読もうと思って」
「ミアにも字を教えないとな」
「ロードさんはいつ覚えたんですか?」
「そうだな、8歳位だったかな、商店をしているから覚えようと思ったんだ」
「僕は10歳です、頑張りました」
武器の本には伝説の剣の作り方が載っていたが、作れそうもない。材料が全然分からない、それに材料の名前が載っていても、揃う事がなさそうだ。
自分で作ることも出来ない、プロに任せよう。
植物の育て方の本は、微妙だ。街の中に庭を持っている家はほぼ無い、それに育てる習慣がなさよう。街中で花を見た記憶が無い。
借りている本を読んでいて、気が付いてしまった。借りた本は返さないといけない、門番さんにお願いするのは失礼な事なのかな、貴族様の常識だと約束を取り付けるのに30日位前に手紙を出さないといけない筈だ。
おお、平民の僕が守る必要もないな、門番さんにお願いする。決定だ。
もう直ぐ夏、熱くなるな。
ハンモックで寝るのが普通になてきた、皆もハンモックで寝ている。
暑い時に砂漠越えをしなくて良かったと思う。
明日にはハイトに着きそうだとロードさんが言っていた。
ここまで魔物に遭遇していない、初めてかもしれない次の街に着く間に遭遇しないのは。
ドラゴンの情報を聞かないと、忘れがちなのでギルドで必ず聞く。
二度手間はいけないのだ。
門の前で並んで入ったハイトは広い、いつもと同じ感想だ。
門から入った所から見えるお城は遠くに見える、街の真中にお城があるから、反対側の北門までどの位の時間で着けるか分からない。
ロードさん達は商品の買い付けをするのに大変だ。馬車には少しの商品しかないので満載にするのに何日も掛かると言っていた。
滞在予定は10日間だ、アルさん達は宿が決まると商品を探しに広場に行った。
「こんにちは」
「こんにちは」
ギルドの受付のお姉さんは書類仕事をしいた。
「ギルマスに会いたいんですけど、いますか?」
「はい、いますよ。呼んできますね」
「お願いします」
街が広ければ冒険者も多い。テーブルでは、砂漠のワームを春の前に倒した冒険者の話をしている。
ガーベラの温泉の話をしている冒険者もいる。
「君かな、私を呼んだのは?」
「はい、昔にこの近くにドラゴンが生息していた話を知りませんか?」
40代ぐらいのギルマスは考えてくれているようだ。
「そうだな、昔見たと言ってた冒険者がいたな、ただギルドで酔っていたので本当か分からないが、その時は信じた者はいなかったな。悪いね、そのぐらいしか知らないよ」
「いえ、話が聞けて良かったです、ありがとう」
ギルマスと受付の人にお礼を言って、掲示板を見に行く。
騎士団の頑張りなのだろう、近いところの討伐クエがない。
多いいのが薬の素材の納品だクエだ。ガーベラ王国の中で一番納品クエがあるようだ。
西のエナジー村の近くにある材料、北東の山岳地帯にある材料の納品が多い。
薬の材料は自分の分以外は薬師ギルドに持ち込もうと思っている。
薬には色々とお世話になっているので、その支援をしているギルドにお返しをするためだ。
今日出来る事はもうないので宿に戻ろう、明日は薬の材料を取りに行こう。
ハイドとエナジー村の中間位の所で薬師の材料を取っている。
切り立った岩が多くて薬の材料がなさそうだが、普段見かけない火傷の材料が沢山生えている。
朝から来ていたのでリュックには材料が沢山入っている。
切り立った岩に登って仙人の様に下界を見下ろしたいが、登れるように見えない。
「キャ~」
街道の方から悲鳴が聞こえたので急ぐ。
ウサギの前に見た事のある女性が立っていた。
ウサギは女性の周りを跳ねているだけで何もしていない。
「ちょっと待ってよ、助けて」
大丈夫そうなの戻ろうとしたら声を掛けられた。振り返るとウサギは止まって女性を見上げていた。
「動物のウサギですよ、襲いませんから」
「そうなの、ビックリした。ねえ、ユーリよね、覚えてない」
名前を知られているので振り返ると、ああ、光の雫のお姉さんだと思い出す。
「こんにちは、光の雫のお姉さん」
「私の名前はリアよ、覚えやすいでしょう」
2文字なのか、覚えやすい。
「リアさんは何処に向かっているの?」
悲鳴は聞いたけど、どの方向から来たのかは分からない。
「ハイトに光の雫を売りに行くのよ、それで服でも買おうかと思っているのよ」
「ハイトに行くんですか、まだだいぶありますね」
「そうかな、もうすぐ着くわよ」
お姉さんのもう直ぐは何時間かな。
「気を付けてね、僕は素材を取るので、さようなら」
「ユーリ、またね」
さて帰ろう、歩いてギリギリかも知れない。
街道に戻るとリアさんがいた。
「何しているんですか?」
「薬の材料を取っているのを見てたのよ」
後ろから物音がしていたのはリアさんが見る為に移動していたのか。
「急がないと野宿になりますよ」
「ええ、そんな時間なの急がないと」
歩き出したリアさんは遅い、とても遅い。
「あの、急いでいますよね」
「急いでいるわよ」
駄目だ門が閉まってしまう。
「その速さだと入れなくなります、おんぶしますから乗って下さい」
「いいわよ、間に合うから」
駄目だ、分かっていない。
「ここから3時間位は掛かります」
「そんなに遠いかな、久しぶりなのよね」
僕は屈んで「早く乗って、置いていかれて入れないのと、余裕で入れるのと、どちらがいいですか?」
「余裕で入れる方が良いわね」
おんぶすると全力で走る、今日中に薬師ギルドに行きたいのだ。
門番さんは驚くけど声に出したりはしない。
「ご苦労さまです、どうぞ入って下さい」
「ご苦労さまです、ありがとう」
リアさんは僕の背中から降りないでカードを見せた。
「ねえ、何であんなに丁寧なのよ、対応がおかしいわよ」
「教えましょう、礼儀正しいと、相手も礼儀正しくしてくれるのです」
「そんな嘘よ、私の時には入って下さいなんて言わなかったわよ」
鋭いが、どうでもいいのだ。中に入れれば『クソガキ、行け』でもいい。
「急ぎましょ、薬師ギルドに」
もしかしたら冒険ギルドとは違って遅くまでやっていないかも知れない。
「そんなに安いんですか?」
「嫌なら、持って帰ってくれ」
光の雫の買値が銀貨1枚らしい、珍しいのに安すぎる。
お姉さんはガックリしている。
僕が持ち込んだ材料は、他の職員の人が片付けに行っている。
「どうしてなのよ、もっと高いと思っていたのに」
「リアさん、諦めましょう。見る目のない人だと。商人ギルでなら10倍以上で買ってくれるはずです」
「何を言っている、薬の事も知らない子供が」
何でいつも子供が関係あるんだろう、この決めつけが一番嫌いだ。
「どうぞ、資格書です」
偉そうなおじさんに、許可書を見せる。
「こんな子供が、薬師。会長の許可がある」
面倒なので、商人ギルドで交渉した方が良さそうだ。
「リアさん、光の雫の事を知らないみたいなので、商人ギルドで交渉した方がいいかもしれませんね」
「待ってくれ、光の雫とは何だ?」
そこからなのか、自分で調べてほしいな。
「分からないなら仕方ありませんね、ギルマスはいますか?」
「ギルマスは、いますが・・・・」
「どうした、トロン」
誰か来た、受付の人より偉いんだな、呼び捨てだから。
「その、この女性の持ち込んだ材料を最低価格なら買い取ると言ったんですが、ご不満の様なんです」
「どれ、その材料を見せてもらえますか?」
丁寧だな、さすが上司だ。
「これです」
手に取って色々な角度から見る、男性。
「珍しい物ですね、初めて見ました。薬の材料になるんですか?」
「はい、この子が薬師ギルドなら高額で買取ってくれると言うので持って来ました」
上司さんが初めて僕に視線を向けた。
「君はこれが何か知っているのかな?」
「このリアさんの神殿に有った、光の雫です」
「光の雫・・・確かに、エナジー村の光の雫の形に似ている、透明なのも同じです。どうやって取ったんですか?」
凄く驚いているけど、取り方を聞くのか。
「それは『秘密です』・・・秘密です」
リアさんが素直に教える前で良かった。
全部教えるととんでもない事になる、秘密を知る人は少ないほうがいい。
「秘密ですか。私も薬師なので、光の雫の事は知っています。光の雫を1個、金貨1枚で譲っていただけませんか?」
「痛いわよ」
リアさんを僕は叩いた。
「すいません、少し時間を下さい。リアさん、こちに来て下さい」
「何よ、金貨1枚なのに」
他の人に聞こえない様に小声で話す。
「いいですか、リアさんの家には何個あるか分からない位あります」
「うん、沢山あるわね」
「悪い人に狙われない様に少し安く売った方がいいです、それか全部売ってしまった方がいいです。凄い金額になった事を知っている人が少なければ狙われる可能性が減ります。ただ」
「ただ?」
「薬師ギルドに支払い能力が無いかも知れません、今日は何個持って来たんですか?」
リアさんはリュックの口を開いた、上から覗くと30~50個位ありそうだ。
「何でそんなに持って来たんですか?」
「売って服でも買おうかと思って」
既に支払えない金額になっている。
リアさんの為に出来る事が少ない、秘密にするのは簡単だ1個だけ売って後は売らない。
僕のせいだな、取りすぎた。家にまだ沢山有る事を知られると危ない。
そうか、後払いだ、定期的にお金が貰えて、余分に欲しい時は前倒しで貰える。最初に全部買って貰う、売りに来なくていいし、お金持ちにも見えない。
僕の提案にリアさんは納得したので、お願いがあると言って話を上司さんだけに来た貰った。
上司さんは薬師ギルドのギルマスだった。
薬師の資格書を見せると『新薬に協力した、ユーリ君か。私も発表会にいたんだ』『うちの家内が喜んでいたよ』『あの時の骨折は見事だった、わざと骨折するなんて流石会長の認めた子だ』
勘違いがあるようだけど、訂正はしない。
必ず定期的に支払うと約束して貰い、全てを引き取ると言ってくれた。
リアさんは服が買いたいと言うので1個だけギルマスに金貨1枚で買って貰った。貴重な物だからその価格でいいと言ってくれた。
服屋さんが閉まっていたので、明日買うと喜んで両親の家に行った。
マリサさんに光の雫を200個位送ったので、金貨200枚を薬の材料として使う事になる。新薬が出来ないと金貨200枚分が無駄になる事があるのか・・・・・タダだから関係ないか。




