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光の雫

神殿だと思う建物は周りの建物と少しだけ違う。


壁のガラスの面積が多い。地震で揺れに弱いと言われそうな建物だ。


ドアが両開きなのが神殿ぽい、後は普通だ。


「トントン・・・すいません」


返事が無い、神殿の横にも建物がある、そっちは民家に見える。


「トントン」


誰も出て来てくれないので民家に行こう。


窓から人が居るのが見える。


「トントン」


「すいません」


「はい、どちら様ですか?」


「ユーリと言います、光の雫が欲しくて来ました」


ドアが開くと20代位の女性が出て来た。


「まあ、光の雫ですか、試してみますか?」


試す、試す。


「お願いします」


試さないと貰えない?


「では、付いて来て下さい」


「はい」


女性は神殿の様な建物のドアをカギで開けた。


建物の中は何もない、天井には壁と同じ様なガラスがある。


女性に付いて行くと奥に光る物が有る。胸の辺り位の空中に光が集まってい、6角形の上と下が尖ったクリスタルの様な物が浮いている。


「これが、光の雫です。この建物を建てた時にこの様に光が集まり雫と呼ばれる物が浮いていたと、伝わっています、一度だけ雫を取る事が出来た者がいるとご先祖様から言い伝えられていて、この大陸の貴族様、冒険者の皆さん誰も取れません」


そこまで説明してくれて女性は雫を取る様に手を動かすが取れない、幽霊を掴めない様な感じだ。


「取れたら貰っていいですか?」


「構いませんよ、誰も取れませんから」


取れないと困るんだよね。


では、頑張って取りましょう。


「あ、取れた。ひんやりする」


「ええ・・・そんなに簡単に取れるんですか?」


手に取った雫を見ていると目の前の空中に雫が形成されていく。


ユーデット様の本に載っているんだから誰かは取れたんだな。僕も取れた。


目の前にあればそれを取る、目の前にあるから。


次も取ってみる、取れた。おお~、また雫が形成されていく。


「すいません、持って貰えますか?」


「はい」


お姉さんは手に取ると不思議そうに、目の高さにして眺めた。


「持てますね、手に取る事が出来ましたよ」


「そですね」


次から次と形成される雫、面白いな。そうだ、薬の材料なんだから沢山持って帰ろう、タダだよね。


「あの~何個まで取っていいですか?」


「え・・・いくつでもいいですけど、何に使うんですか?」


「秘薬の材料なので、沢山持って帰りたいんだす。お姉さんの分も取りますね」


「本当ですか、ありがとう」


「ついでに、干し肉も貰って下さい」


干し肉以外を全部出してリュックを渡す。


「あの、これは?」


「ああ、家の方に置いて来た方がいいですよ、干し肉が沢山入っているので、僕は雫をどんどん取ります」


「分かりました、お願いします」


お姉さんは、干し肉を置きに行った。


お姉さんがいなくなっても、どんどん取って、足元に置く。





「あの、もういいのでは?」


「無くならないのかと頑張りましたが、もう飽きました。今日はここに泊っていいですか、お姉さんも一緒に検証しましょう」


既に壁際に光の雫の山が出来上がっている。


「ええ~、まだ子供なのにませていますね」


何か勘違いをしているようだ、気になる事があるのでお誘いしたのに。


「お姉さんはエロですか、雫の検証ですよ。お姉さんが驚く事を見せます」


「エロではありません、雫の事だと思っていました」


お姉さんは顔が赤いぞ。


どんどん取っていると、僕の周りに沢山の雫が増えていく。


「ところで、ご家族はいないんですか?」


「この村だと不便なのでハイドに住んでいるのよ、ここには私だけよ」


確かに不便だ、今までの村の周りには農家が在ったから食料もそれなりに有っただろうけど、ここはハイドから運んで来るんだ、手伝った馬車も食料を運んでいた。


「お姉さん、報酬は幾らなんでしょうか。払えないと奴隷落ちと聞いた事があります」


「あああ~・・・払えません。どうしたらいいのよ」


「では、依頼を取り下げた方いいですよ、僕の様に取れる人が来たら困るでしょう」


お姉さんは悲劇の少女の様に床に両手をついて嘆いたが、ハッとして僕を見て。


「君はいいの?」


「僕は今までにもこんな事がありましたから慣れています。それに検証してもしもの事があったら許して下さい」


「え、何の事?」


怒られるかもしれないけど、こんなに沢山雫があるんだからいいよな。


「それより、依頼書を取り下げて来ないと大変な事になるかもですよ」


「そうよ、行って来る」


お姉さんは慌ててギルドに向かった。





「ああ、雫が形成されないわ」


「やはり、そうですか」


天井と窓のガラスを見る、光が集まるのは偶然だよな、雫が出来るのは何でだろう。


どうせ分からないだろうけど。


「どうしてくれるのよ」


「いいじゃないですか、こんなに沢山の雫があるんだから」


お姉さんは周りを見て「沢山あるけど、もう出来ないの」


「次に取れる人が来るまでには雫が出来てますよ」


「そうかな、はぁ~。お父さんに言わないと」


お姉さんは嘆きながら家に帰って行った。


お姉さんの所に干し肉を分けて貰いに行くと。


「やっぱり、エロい事を考えているのね」


「お腹が空いてので、干し肉下さい」


「そうだと、思ったのよ」


赤い顔をして干し肉をくれた。





お姉さんが起きて来るのを待っていた。


近頃の娘は起きるのが遅いぞ、目の前に雫が有るのに。


光の雫は光が無いと形成されない。


「予想通りだった、お姉さんも喜ぶだろう」


「ああ、雫が有るどうして」


「光が無いとダメみたいです」


「そうか、それで検証したのね」


急いで来たのか、髪がぼそぼそだ。


行かないと、ドラゴンさんが待っている。


「僕、行きますね、光の雫、ありがとう」


「私こそ、ありがとう。こんなに沢山どうしたらいいのか分からないけど、手に持つ事が出来た」


お姉さんは困っているのか喜んでいるのか分からない程、表情をよく変えるな。


「薬の材料だから高く売れるかも、じゃね」


「ありがとう」


神殿から出ると、ここから見えるあの山は。


「あれ、凄く小さいけどあの山は皆が居る所にある山だよな」


「売れるんだ」


お姉さんの声が聞こえた。





エナジー村から南の崖を下りて行く。


最短ルートだ。途中で湧き水と光の雫で薬を作る。


「恐ろしい、ガラスが薬の様になるのだろうか」


「グ~ル、グ~ル、グ~ル」


ガラスが入った薬みたいになっていてキラキラしている、ユーデット様の本の薬も同じ様になるのか、飲みたいと言う人がいるのかと考えてしまう。


「グ~ル、グ~ル、グ~ル」


よく調合すると少し気にならない位になった。


「お薬の調合を見せなければ気にならないかもしれない、本の薬も作れるかな」


光の雫以外は知っている材料だ、戻ると時に集めて行こう。


出来た薬を瓶に入れて斜面を駆け下りる。





「誰か~、助けて~、蜘蛛が追いかけて来ます」


蜘蛛に追いかけられていると、見た事のない魔物。


ギルドの注意書きの未知の魔物はいた。でも、蝶々の様な感じので、害がなさそうなのにキラキラと金粉らしき降らしてたいた。


大金持ちになれそうだが、罠の様に次々と蜘蛛が現れる。


金粉を手に取る前に逃げだした。蝶々は飛ぶのが遅いのでもう見えない。


「カサカサが少し遠くになったな。未知の魔物がもっと見たいけ危険だ、皆の所に戻ろう」


一直線に走って来たが、ここも木が多く茂っているので、山が見えないのだ。


危ない魔物はいない様で、走っていれば追い付けない。


雫と混ぜる材料は色々と取った。暇な時にでも調合しよう。


話し声が聞こえてきた。





「そうなのだ、俺は色々と人間に教えたのだ。ここに来る奴には優しく薬の作り方を教えた。死んだ人を生き返らせる薬を教えてくれと来た奴もいたが、知らないと言った」


「もしや、本当は死んだ人を生き返らせる薬があるのですか?」


「それは、秘密だ」


何やら怪しい話をしているな。


真面目に聞いているのはウイントンさんか。


「お待たせしました、薬を持って来ました」


「ユーリ君、ありがとう、さあ下さい」


元気そうだ、骨骨の進行は進んでない。


他の皆は、飽きたのか寛いでいる。


リュックから薬を出して渡す。


「これがそうか、前にも見たんだな。思い出せないけど」


恒例の鱗と牙を探す。


広範囲にあるな、皆は拾わないのか。マリサさんに送るのに集めないと。


ああ、鱗と牙を入れ物が無い、ハイバードに戻ろう。


周りを見てロードさんが探す。


「ロードさん」


「ユーリ、戻ったのか、薬は出来たのか?」


「はい、それでリュックが一杯なので村に行って来ます」


「そうか、私達はのんびりとしているよ」


のんびりしすぎな様に見えるけど今はその方がいい。


急いで村に向かう。





薬師ギルドで、雫をマリサさん宛に送った。


用はそれだけなのでドラゴンの所に戻ろうと思ったが、干し肉を補充して戻る事にした。


走っていると、ドラゴンさんが居たので会えたと教えた。


場所は教えなかったし、聞かれなかった。




健康そうになったドラゴンはイエローだった。


カレーと呼んだら、それは嫌だと言われた。


「それなら、ボーンではどうですか?」


「それならいい」


僕が呼ぶときの名前が決まった。ミアちゃんは骨骨と呼んでいる、意味は同じだ。


「さあ、お肉を下さい、最高の味、ドラゴンの肉」


「痛いから嫌だ」


どうせそう言うと思っていた。


「それなら、血液を下さい。お薬の材料に使います」


「それぐらいならいいよ」


皆は僕がお願いを言っているのを聞いている。


エナジー村から見えた山は凄く小さかったので、大丈夫そうだな頼んでみるか。


「僕達を乗せて西の方を飛んで下さい」


「飛べばいいか、人間は変な事を頼むのだな」


「おお~乗れるのか」


「ユーリ、偉いわ」


「落ちないのか」


「大丈夫ですよ、落ちない様に飛べるんですよね」


「ああ、大丈夫だ。落ちる事はない」





ボーンさんに乗るのに順番を決めた。


ロードさん達の行商人の皆と、冒険者のアルさん達、僕はロードさん達と一緒だ。


「さあ、乗るがいい」


シュラさんの時と同じで乗りやすい様に低くなってくれる。


ロードさんが先に乗ってアメリアさんを引き上げる。ミアちゃんを抱き上げてロードさんに渡す。ベルンさん達も乗ったので僕も乗る。


「準備はいいかな?」


「はい、お願いします」


代表してロードさんが返事をした。


変な浮遊感から水平飛行に入ると。


「うわ~、飛んでる」


ヒューラさん直ぐに感想を呟く。


みんな驚いている。人には出来ない飛ぶ事と凄い移動速度。


「あなた、速いですね」


「ああ、こんなに速いのか」


ミアちゃんからは感想が無いが楽しそうだ。


西に行って貰ったが、本当に人が住んでいる様な所がない。


「ユーリ、海が見えて来たぞ」


「海があるのか」


「どうだ、楽しいか?」


「「「「はい」」」」


海は何処までも続いている。海に大きい生物が居る。


「何か大きい生物がいるぞ」


皆も気が付いた様だ。亀亀よりも遥かに大きい。背中から水が吹き出る。


異世界のクジラだ。魔物のクジラなのか分からない、残念だ。


「さあ、戻るぞ」


「はい」


何処までも行ってみたいけど、他の大陸、他の人間にボーンさんを見せる訳にいかない。


友好的な今の場所がドラゴンさん達の居る場所だ。





興奮の終わらない僕達が降りるとアルさん達が飛んで行った。


皆が今の飛行の話をしている所から離れて、いつもの鱗と牙の回収をする。


振り向くと、ミアちゃんは飛んで行ったボーンさんを見ていた。


いい思い出になった筈だ。




アルさん達が戻って来た。


「ラム酒です、飲んで下さい」


「いいのか、久しぶりのお酒だな」


お土産のラム酒を飲んで貰い、瓶を水ですすいで血液を入れて貰う。


「どうだ、入ったか?」


「はい、病気が治って良かったです」


「そうか、心配してくれていたんだな」


「はい、血液が毒まみれだと困るんです、薬に使えませんから」


僕が血液の心配をしていたら、皆の視線が痛かった。死なないドラゴンさんを心配しませんよ。


いつか治りそうだし、それに治ったのが光の雫の薬だから、光に当たっていれば薬と同じ効果がありそう。


「まだ、お願いしてませんでしたよね」


「え、今までのがお願いだろ」


ウイントンさんが驚く。


「何だ、言ってみろ」


「今までのは義務です、ミアちゃんの友達になって下さい。いつか遊びに来る事もあると思います」


「ああ、そうだな。ミアは友達だ」


「私の友達の骨骨」


嬉しそうだ、最高の笑顔だ。


「ああ、骨骨だ。待っているぞ」


「はい」


小さいミアちゃんに大きい友達が出来た。

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