魔法
街の裏庭は広いが、ストーンセナの裏庭はもっと広い様だ、井戸がポツンと在るように見える。
僕の実家の様に宿屋が隣接していないので商店か民家の人が使っている、生活用の井戸だ。
井戸の水を簡単に汲む為に滑車式を考えた・・・考えてあった。
僕の実家のエルザの宿の裏庭の井戸に滑車を付けようと考えていたが作るのを忘れていた。
井戸の囲いも作るつもりで考えていたので、何が必要か分かっていたのでロードさんにお願いして、木材を用意して貰った。
お祭りに使うのと聞かれ『秘密です』『秘密か、楽しみだ』と言われたが、お祭りで何をしたらいいか、考え中なのだ。
「井戸でも便利にしていれば何か思い付く筈だ」
簡単には、思い付く筈がない・・・よく考えよう。
カルテアのお祭りは屋台で色々出来たが、今回はお店の中だ。
カードは返さなくいいよと言われた。
『ミアが稼いでくれたから』
確かに稼いでいた、コネコネのプロは肉丸を小肉丸に改良して販売していた。
僕も行商人の真似事で便利丸を販売しようとしてダメだった。1回の失敗で行商人になるのは諦めた。
「無駄に重い木を選んで正解だ。大きい囲いにすれば重いので、井戸からずれない」
井戸は便利になった、最初から頭の中に図面があったので直ぐに出来た。
仕方ない、次を作ろう。
「ユーリ、あの井戸と小屋は何なんだ?」
裏庭で転がっているとロードさんが来た。
「秘密1号・・便利になった井戸。秘密2号・・アメリアさんも安心、女性用水浴び所です、慣れているので半日も掛かりませんでした。ロープはサービスです」
「便利にはなったんだな」
確認するために井戸で水を汲んで試すロードさん。
ゴロゴロして何をすればいいんか、考える。
「凄いな、簡単に上がる、それに安全だ、子供の身長位だから落ちにくいな」
ブツブツ言いながら何処かに行った。
「あなた凄いですね、頼んでくれたの?」
「そうさ、これなら覗き見されない。通りからも見えないだろ」
「ええ、ユーリ、ありがとう」
「ゴロゴロしていると何か作りたくなるので丁度良かったです」
後から来たアメリアさんも一緒に何処かに行った。
「干し肉にするミノス肉を森に置いて来たままだ」
次の日も行くつもりだったので、置いて来た。
市場はまだやっている。買い出しだ。
ロードさん、ありがとう。お金は計画的に。
お祭りそれは心に残るイベント。
この異世界に娯楽が無いのはよく分かった、名刀探しも僕には暇つぶし兼娯楽だった。
自分の街を知る努力をしたのは子供の時だけ、今は物忘れ病に悩んでいる。
妹の名前は会うまでに何とか思い出そう。しかし、今はお祭りだ、考えてもどんな屋台があったのか思い出せない。
「焼けすぎたお好み焼きと手伝ったトウモロコシ焼きしか覚えていない」
大好きなたこ焼きは、この異世界で食べれない。
もしかしたら、フライパンを力任せに叩けば、あの形状になるかと思ったが、タコがいない。
タコの魔物は大きそうだ。
頼まれたその日だが、今までにアイデアが浮かんでこない事がなかったので、どうするか悩んでいる。
明日も何か作ろう、いい案が浮かぶはずだ。
お店の中を改築する事にした。
お店の陳列台の代りになる棚を作る。棚は商品を斜めに飾れるようにして、その後ろが在庫が置けるようにした。最初は在庫を別の所に置く事も考えたが、置けない在庫だけを別の所にした。
元々は在庫が別の場所だったので、棚に少しだけ在庫が置ければいいと考えた。
「あの、この棚は何ですか?」
おばさんに聞かれたので。
「お祭り用にお店を改築するので、先ずは棚を作り場所を開けています」
と言っといた。まあでも、スペースを作るのは大事だ、ここから始めよう。
「お祭り用ですね」
「はい」
出来た棚に商品を並べると、お洒落な棚に見えた。
お洒落に見えるなら同じのを作ろうと思って3個作ってしまった。商品を並べると、お店の商品が全部壁際の棚に陳列する事が出来た。
「お洒落に出来たけど、これでいいのか?」
裏庭で作った棚を並べ終わって、店内でグルリと見渡したら・・・・・・真ん中に何もないお店になってしまった。何か考えないと・・・・・・。
「空いてしまったここで、ゲームが出来ないかな」
やることが決まったので、その製作を木工工房に依頼しに来た。
「怪我しない様に全て面取り加工して下さい。木の板に棒をこんな感じでになる様にして下さい」
図面を書いて説明すると「こんな簡単なのを作るのか?」と言われてしまった。
「はい、50個作って下さい」
「いつまでに作ればいいんだ?」
「いつでもいいです」
「3日後には出来ていると思う、取りに来てくれ」
「はい、お願いします」
準備は、順調に進んでいる。
「近くに森林があって良かった。炭を作らないと白い雲が出来ないよ」
今回も白い雲を販売する予定だ。
ミアちゃんも大きい機械の白い雲を見たいだろうと思い・・・特注している。
お祭り仕様だ。横はガラスにして、前と後ろは人が立つのでガラスは付けない。
障子の様にしてガラスが割れない様にした。
自分で作りたいが、やりたい事が増えて来たので工房にお願いしたら『これは何だ』と言われ秘密と答えた。
久しぶりなので、思い出しながら炭を作っていく。
前回と違うのは、火を起こせる様になった事だ。
「いい感じだ、2種類作ろう」
3日分なので沢山作らないと駄目だな、乾燥した木を沢山探さないと。
森の中で炭を作っていると、味を漬けていた、お肉がもう駄目だと気が付いた。
お祭りまで時間があるけどする事が多いな。
完成したお祭り用の屋台を何台も並べる事が出来たぞ。
「焼きそば、お好み焼き、メンチ丸、白い雲、肉丸。これだけの屋台を作るのは大変だった」
イメージ通りの屋台だ。よく頑張った、裏庭はお祭り会場だ。
材料も揃える事が出来た。カルテアの時のような一遍買いはしなかった。
毎日、ロードさんにお祭りですからを言い続けた。
おじさんは面白そうだ『俺の担当は』とやる気満々だ。おばさんも『料理できますよ』と言ってくれた。
お祭りまで、後5日になった朝には、アメリアさんの両親も遊びに来た。
「何か手伝いますか?」
「お待ちしてました、どうぞ」
同じ街に住んでいるので、お祭りの手伝いを申し出てくれた。
僕は簡単な説明をすると背負子に大樽を載せてミノスを倒しに行く。
「何で付いて来たんですか?」
「「「「「「飽きた」」」」」」
何をしていたのだろう、アルさん達は。
ギルドで依頼を受けていたら『受けるか』『ユーリがいる』『ここに居るのなら街の外だな』『暇』『付いて行きます』『面白い事か』といつもの様に同じ依頼を受けて付いて来た。
僕は走って来た、それを追う様に皆も走って来るので走る速度を遅くして、ランニング位の速さにした。
アルさん達は最後まで走り切る事が出来たので、ミノスを焼いてあげた。
「ミノスがこんな所にいたんだな」
「油が少ないお肉もいいですね」
明日の朝からミノスを沢山倒す予定だ。
「簡単に倒すな、俺達にもまわしていいぞ」
「それならお願いします」
ミノス王国の入口で数体倒したので解体する。
大樽の中には干し肉の肉を漬けるタレが入っている、街で用意して来た。
解体したお肉を干し肉の厚さに切る、そのミノス肉をそのままで干すつもりだ。
自分の倒したミノスを樽に入れていると悲鳴が聞こえてきた。
「きゃ~助けて」
王国で油断すると囲まれると教えていなかった。
「助けますか?」
「助けて下さい」
仕方ないので、マリアさんの前に立つ。
直ぐに攻撃を胸にする。ミノスはその後もこちらに向かってくるので連続して胸を狙う。
「マリアさん、大岩の上なら倒しやすいですよ、マリアさんが登れれば」
「分かっています、でも登れません」
周りを見て、ミノスが登れなくて、マリアさんも登れない大岩を発見。
「背負子に乗って下さい」
「はい」
何が起こるのか分からないのに素直に従うマリアさん。
背負子を背負い大岩を登って行く。
ロッククライマーの様に登っているが、2階建ての屋根より低そうな大岩の上に立った。ここならいいな、背負子を下ろそう。
「ここなら攻撃されないので好きなだけ魔法の練習ができますよ」
「練習?」
「そうで、マリアさんには火の矢を覚えてもらいます。この矢を貸します、頑張って」
「ユーリ、説明して下さい。どんな練習をすればいいのですか?わかりません」
「よく考えて下さい、マリアさんはお利口さんです、考えれば魔法はどんどん進化します。ヒントです、火を矢の形にするのはイメージで出来るはずでやってみて下さい」
マリアさんがイメージで矢を作るために頑張る。
出した火が徐々に形を変えていく。時間が経つよ火は消えて無くなった、でも、少しだけ形を変える事が出来た。
「今少し変わりました。こんな事、考えた事がありません。凄いです」
「僕も考えませんよ」
マリアさんが凄く驚いて顔をしている。
「え」
「今、驚きまましたね」
「驚きまました、ユーリが言った事なのに」
仕方ないので説明をする。
「僕は魔法が使えません、いつか使うつもりですが。マリアさんは使えます。僕がもし魔法を使えたら形を変える事は考えません、火の矢をイメージします。マリアさんは魔法を使えるので使っている状態で矢に変える事が出来るのか、イメージで矢が直ぐに出来るのか僕には分かりません。もし矢の形に変えることが出来れば色々出来ます。直ぐに矢にして撃つ事が出来ればミノスは簡単に倒せます。ここに連れてきたのは討伐しながら練習が出来るからです。僕の胸のこの位置がミノスの弱点です。試して下さい」
僕の長い説明を真剣に聞いてくれたな。
「火の形を変える事と矢を直ぐにイメージする事を練習すればいいのですね」
「そうです、もし形を変える事が自在に出来たら、火のドラゴンを見せて下さい、僕は行きますね」
「ユーリ、・・・ドラゴンの為ですか?」
「自在に出来たら見たいだけです」
マリアさんが楽しそうにしている、色々な形にしているんだろう。
火の矢を飛ばしていたが、動いているミノスには当たらない様だ。
マリアさんの魔法に当たらない様に離れた所に行ってミノスを倒し解体して入口の大樽に入れている。
漬ける時間が短いけど、干す事にした。
「枝から吊るしたロープにお肉が沢山、早く干し肉にならないかな」
何個も吊るしたロープにはお肉が何個もくくり付けてある。
1個のロープに5.6個位だ。大きく切ったのは干す手間を減らす為だ。厚さは5センチ位、縦30センチ横20センチ位のお肉がぶら下がっている。
「少し厚いけど大丈夫かな、馬車があればもっと干せるのにな」
水があればロープが作れるが水がない。
ロープが無くなり、干す事が出来なくなった、大樽にお肉が一杯になったので、アルさん達のいる方に向かう。
「ミノスを沢山倒したんだな、でも皆は何処に?」
ここから見える所には誰もいない。忙しいのだろう。
解体してリュックにミノス肉を詰めていく。
詰め終わるとアルさん達を探そうか、予定通りに街に戻るか考えた。
「予定通り街に戻ろう」
マリアさんの前を通ると「ユーリ、色々出来る様になりましたよ~」と大岩の上で飛び跳ねていた。
「おめでとう、頑張って下さい」
いいな、僕も色々と試したいよ・・・使える様になったらあれをしたいな。




