何処まで行きますか?
「そっちに行ったぞ~」
「分かってる」
戦いに慣れてきたアルさん達は、2体のワームを相手に戦っている。
「ウイントンさんが吹き飛ばされた」
離れた所で皆の戦いを見ている、戦闘は始まったばかりだが、ウイントンさんを狙ったワームは街道に乗り上げて止まったので近くにいたルーベルさんとルルさんが仕留める為に直ぐに近づいて攻撃を開始した。
そこにマリアさんがワームの後ろから魔法の攻撃だ。
「マリア、避けろ~」
マリアさんの横から出て来たワームは、マリアさんを吹き飛ばした。
「キャ~、痛いですわ」
マリアさんの横から偶然出て来たワームに、吹き飛ばされた様に見えた。
ウイントンさんは街道に戻って来ている。
アルさんとバジルさんは周りを警戒してワームを待っている。
皆には悪いけど、暇なのだ。
戦闘時間はその時によってだいぶ違う。早い時は30分位も掛からない。
ワームの動き次第なので、同じ作戦でも戦闘が終わるのに1体のワームでも掛かる時間はまちまちだ。
今の戦っているワームとの戦闘時間はもう1時間は経っている。まだ1体も倒していない。
「こっちは倒したぞ」
ルーベルさん達の方は倒す事が出来た様だ。
「周りを警戒」
もう1体が砂の中に潜っていて何処に居るのか分からなくなった。
今のところ、無傷の状態で街道から砂漠に吹き飛ばされている。戦闘慣れしているので、最も危険な牙の攻撃を受けていない。
「今日は疲れたな、4回も飛ばされた」
「いいではありませんか、怪我も無く飛ばされただけなので」
「そうよ、私なんて擦り傷だらけよ。ユーリのビリビリ傷薬で綺麗に治ったけど」
皆が「「「ビリビリ」」」と言った。
街道で野営をしている僕達、食事をしながら今日の戦闘の話をしている。
「それは何だ?」
「嫌な響きだな」
「響きも嫌だが、ユーリが提供した薬なのが、もっと嫌だ」
僕の事をウイントンさんは、どんなイメージを抱いているんだ。
「ユーリ、説明をして下さい」
マリアさんもビリビリに興味があるみたいだ。
「回復効果は高いですが、ビリビリしたくなければ怪我をしない様になる、追加効果のある傷薬なんです。ビリビリは痛すぎるので怪我をしない様にして下さい」
「恐ろしい、追加効果だな」
「ユーリ、来てくれ」
傷薬の事を話していると、ロードさんに呼ばれた。
「ユーリ、砂漠はまだまだ続く、どの位進めたか分からないが、そんなに進めていないのは分かる。日に日に戦闘回数が多くなっている、ワームの現れる間隔が短くなってきている」
「そうですね、今はワームが2体までしか同時に現れていません。この後も今のままならいいのですが、増えた場合は厳しい戦いになると思います」
ロードさんが頷いた、顔が厳しい表情になっている。
「私もこの後、西に進むにつれて厳しくなりそうだと思っている。それにワームが3体以上現れる様な気がするんだ。そこでユーリにお願いしたい、自分勝手なのは分かっている、アメリアとミアをセナまで安全に連れて行けるのはユーリだけだと思ったんだ。運んで貰えないだろうか?」
二人を運ぶか・・・ユーリの籠の事だよな。
「僕だけならワームに追い付かれないと言い切れます。しかし、2人を乗せてどこまでの速さが出せて維持できるか分かりませんが、その方がこれからの戦いの為には良いのかもしれませんね」
「それなら行ってくれるか、2人を無事にセナに送ってくれ」
「僕からもお願いがあります。守って下さい、僕の干し肉を、ワームに食べられるのは我慢できません」
「・・・・・・ああ、何とか頑張ってみるよ」
ロードさんが困り顔だが、干し肉が無いと力が出ないので守って欲しい。
ロードさんの申し出を引き受けた僕は、朝食を食べたら出発する事になった。
「アメリア、ミアを頼む」
「はい、貴方」
「ミア、父さんも後から着くからな」
「はい」
背負子に乗っているアメリアさんはロードさんに抱き付く。
嫌な姿勢になっているが仕方ない。ミアちゃんの頭を撫でるロードさん。
「ワームが数体が街道の近くにいます、どうしますか?」
アルさんの報告にロードさんは驚いてしまった、この時が来てしまったのだ。
「ユーリ、どうするの?」
ルルさんが僕に聞きいた。僕はニヤリと笑顔を作った。
「仕方ありません、作戦姫に変えましょう。姫、全力で行きます。僕が合図したらドラを鳴らして下さい」
「はい」
流石、奇跡の少女だ。作戦が分かっている様だ。
「ロードさん、気を付けて下さい」
「アメリアさん背負子の調子が悪くなったら直ぐに行って下さい、僕には分からないので」
「はい」
「あのユーリ、作戦姫とは何だ」
ロードさんの質問に答えている余裕が無い、急がないと皆が危ない。
「では、行きます。姫、よろしくお願いします」
「はい」
「ユーり、気を付けるんだ、前から来るぞ」
全力で走り出す、後ろは気にしない、今は。
いつもより揺れてしまうが、仕方ない。作戦姫を始めよう。
アルさんが発見したワームが見えて来た、数は5体だった。他にも居るかもしれえない。
僕の走る音に気が付いたのかワームが動き出した。
街道の横のワームの前を走る。そろそろかな。
「アメリアさんはご自分の耳を塞いで下さい」
「はい・・・え、何を?」
分かっていないアメリアさんだったけど、耳は塞いでくれた。
「姫、お願いします」
「はい」
「カ~ン~、カ~ン~、カ~ン~、カ~ン~」
僕の走る街道斜め後ろでは音に釣られたワームが追いかけて来る、街道に乗り上げてもそこに僕はいない。少し後ろで何かしてる位の認識しかない。魔物なので先回りをする事は無し、追いつかれない、これから向かうセナの方向からも飛んで来るけど、やっぱり僕はいない。
ミアちゃんはフライパンを叩いてくれている。
「凄い、一杯いる」
姫は感想を言うが、手の動きが止まる事がない。
砂漠を走ってみたいが一人の時に試そう。
追い付いて来れる位の速度で走っていたけど、もうワームは追いかけて来ない。ドラ担当の姫は休息中。
「ユーリ、何でフライパンで音を出したんですか?」
「アルさん達が戦い易い様にです、この後にワームがどう行動するのか分かりませんが、バラけてくれれば戦い易いです。それにロードさん達の危険になる可能性を下げれればと思ってミアちゃんにお願いしたんです」
「そうですか」
前方に見えて来たワームは1体だ。何もしなくていい。
あれ、僕達に気が付いていないぞ、音に反応するけど個体差があるんだな。
静かに走っている。振動も気持いい位にしているつもりだ。
2人は寝ている、安全の為に2人にはバッファの干し肉を提供して、お腹が一杯になったようだ。
静かに過ごせば野営も安全に出来るが、僕が疲れるのは困る。走る、見張る、走るを繰り返すならセナに近付く為に走るだけの方がいい、全力で走っていないので疲れは貯まらないと思っている。
ロードさん達も気が付いている、移動の時の街道を走る時の音か振動をワームが探知している事を。
野営でまだ襲われた事が無いのはそんな事だろうと思う。
ここ何日間は暇だった。移動速度も遅く戦闘が終わるのを待つている間、何もする事が無かった。
この砂漠の移動で一番疲れてないのは僕だろう。
今一番困っているのが、上を目指すのが好きな僕の体力がどの位あるのか、あまりにも疲れない持続力はいつまで持つのか、リストバンドが無くなったしまったので、負荷を掛けてくれているのは、アメリアさんとミアちゃんの体重だけど、リストバンドの重さより軽い、軽すぎる。
セナまでどの位の距離があるんだろう。明日には着けるのかな。
「姫、楽しいですか?」
「はい」
沢山のワームが街道の横から通り過ぎた場所にダイブしている、そんな風に見える。
今はお昼頃だろうか、徹夜で走っているがまだ大丈夫のようだ。歩いてもいいのだが、ロードさん達が心配だ。
眠くはなっているが、疲れはそれほど感じていない。疲れたら、温泉でとろけたいな。
シーラさん達はもう温泉に入った筈だ。
目はいい方なのか分からないが、砂漠が終わりそうなのがここから見える。
「アメリアさん、岩の多い地帯が見えてきました。砂漠が終わります」
「そうですか、直ぐにセナに着きそうですね」
「そんなに近いんですか?」
「いえ、ユーリの足ならです」
街道の横の地面が土にかわった。
「姫、ドラはもう鳴らしてはいけません、ワームが街の方に来ては困るので、お願いします」
「はい」
無事に街に着く事が出来そうだ。
「・・・え」
セナの街の井戸で水を汲んでいるとアメリアさん達がこの街で生まれて、実家もあると話してくれた。
「ミアもこのセナで生まれたんです」
なるほど、だから危険なのも知っていたし、このセナに来なくてはいけなかったんだな。
「では、のんびり休みましょう、ミアちゃんも久しぶりに」
「ユーリ、主人、ロードの所に行って下さい、お願いです」
「姫」
「はい」
姫は分かっている様だ。僕の気持ちを言わなくてもいいな。
「僕も心配です、干し肉が。まだそんなに食べていません」
僕は大樽に水を貯める。
「干し肉ですか?」
「そう、干し肉です。しかし、ロードさん達はもう駄目です、水が無くなります。急がないと飲み水が無くなるんです。この大樽の水は少しでも助けになればと持って行きます、ロードさんのお知り合いが増えたのと、進行が遅いので消費量が増えました。僕は雑用、それに料理長です、飲み水を持って行きます」
「ありがとう」
アメリアさんからお礼を言われた僕は、姫からフライパンとスプーンを受け取る。
「行ってきます」




