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砂漠のワーム

朝起きると大変な事になっていた。


「出発しますか、ロードさん」


「少し待とう、ユーリが戻るまで」


遺跡の中に入るとロードさんとアルさんが何か話していた。


「見て来ました、風が少し吹いているだけです。ここの凄い風とは違います」


「そうか、それなら街道に戻ればセナに向かえるな。では、出発だ」


セナ・・・・・アイルトン。町の名前はセナ。


馬車1号が北の街道を目指して動きだした。


後ろの遺跡を見ると、ドラゴンさんがこの大陸の何処かにいて、会えると予感がした。今度、目が回るグルグルをするか、どの方向に倒れるのか楽しみだ。





街道に戻れた馬車は西に向かう、南の街道は吹き荒れる風で砂が積もっていく。


あのまま遺跡付近にいたら帰れなかった様だ。


「前から馬車が来ます、2台です」


アルさんから報告が入った。


僕の乗る馬車2号の御者台からは、1号車が前にいるので、近づいて来る馬車が見えない。


「様子が変なので止まって下さい」


アルさんから指示が出された。


馬車2号が止まるとロードさんは前方から来る馬車に向かって行った。


街道の幅は広いが、こちらに向かって来る様子がない。


横から前を見ると、こちらに来た馬車は止まっていた。馬車から急いでこちらに向かって男性が走ってロードさんの前で止まった。


馬車は2台でホロが破けていて骨組みが出ている。全体がホロに覆われているタイプの馬車だ。


ロードさんの馬車の荷台は全体が木材で出来ている小屋のような感じだ、前後がホロで開け閉め出来るタイプの荷台だ。


暇ななのでボロボロの馬車まで行く事にした。


「よくここまで来れたな、車軸が折れている」


馬車を見ていると、後ろの話し声が聞こえてきた。


「どうするんだ、ライナはどうなったんだ?」


「ワームに襲われて、俺達に逃げろと叫んでいた。俺達はその場所から急いでこちらに引き返したんだ」


「どのぐらい先で、ワームに襲われたんだ」


「分からない、だいぶ走ったかも、慌てていたので全然分からない」


「今からでも間に合うか?急がないと怪我をしていたら手遅れだ」


それは急がないと駄目だ。話を聞いてしまったので行こう、その人の安否を確認しに。


「僕が先行して行きます。一番早く着けます」


「悪いな、行ってくれ」


「了解です」


馬車に戻り必要な物を手に持つ。後はその場所まで全速力だ。


「行ってきます~」







急いで来た僕に壊れた馬車が見えた。


「誰か倒れている、ライナさんかな」


ここ場所に来る間にワームには遭遇していない。


周りを見てもワームが見えないし、地面からの振動がない。砂漠だと振動が微妙なので分かりずらいかも。


「ライナさん、大丈夫ですか?」


反応がない、所々に傷がある、酷いところだと少しえぐらている。


死んでいるのか、それとも気絶しているのか分からない。


「脈は・・・・これ苦手なんだよ。死んでるよね、返事は出来ないからどうしたらいいんだろう」


そうだ、脈は分からないけど、薬は塗ろう。この日の為に開発したビリビリ傷薬を使おう。


一番酷い傷はここだな、沢山塗ってみるかな・・・・・・そうか、効果は大丈夫だけど、適量が分からないよ。


「凄い、治っていく」


見る見るうちに傷口が治って行くのを観察しよう。凄いな薬は。


「痛い~」


大きい声に驚くと声の主はライナさん?。


「驚きました、もうビックリです、返事をして下さいよ」


「痛い~、誰か助けてくれ」


「痛いですか、それは良かった」


「・・・良くないぞ、誰だ君は?」


「ワームに襲われた人がいると聞いて、試しに来ました。僕の薬、ビリビリは効きましたか?」


「痛すぎる、何とかしてくれ」


ビリビリはガーベラの冒険者が薬に頼った戦いをしていたら提供予定の傷薬だ。


「では、布で拭き取ります、この薬はビリビリしないので自分で塗っ下さい」


僕が塗ったビリビリをよく拭き取る。


「ありがとう、名前を教えてくれるかな?」


「ライナです、そう聞いてきました」


「君の名前は聞いているんだよ」


「僕はユーリです、ライナさんですか?」


僕は壊れた馬車の車軸を取り外して背負子をライナさんの前に置く。


「乗って下さい、僕達の馬車の所まで戻りましょう」


「いや、無理だよ、私は大人だ。運べるはずがない」


「いいから、試してみましょうよ、それとも置いて行かれる方がいいですか?」


歩けそうもないので、背負子に乗って貰う。


「・・・おい、重くないのか?」


リストバンドよりも人間の方が軽いから、重さが分かり辛いな。


「最近では重い物が、ありません。では、行きますよ」


背負子を背負い走り出す。


「凄いな。向こうにワームが見えたぞ」


全速力で走っているけど、こちらに気が付くのかな。


「こちらに気が付いてなければ、このまま行きます」





折れた馬車の車軸の太さを確認している。持って来たのはいいけれど、太さが違えば交換する事が出来ない。


「同じ太さだ、これなら外せば交換できる」


ロードさん達は馬車に集まって話し合いをしている。


僕は馬車を直せないかと壊れた所を確認した、車軸を交換すれば走れそうだ。


「ユーリ、どんな感じだったんだ?」


「馬車は壊れていて、ライナさんはその横に倒れていました。ワームが近くにいるよ様ですが、僕は確認していません。戻る時にライナさんが見たようです」


アルさんとバジルさんに襲われた馬車の周辺の様子を報告した。


「そうか、この先にはワームがいる可能性が高いな」


「砂の中から出て来るワームは手ごわいぞ」






「皆、聞いてくれ。ここから北にある街道でもワームが出るらしい。私の次の目的地はセナだ。北から向かってもワームに遭遇する可能性が高い、それに北の街道から行くにはライムスーデンに戻り北のトムハン村の西の街道に進んでワームのいる可能性のある所を通る事になる、セナに着くのは戻った場合は50日位掛かると思う。ここから西に進んだら15日から20日位だと思う。このまま進みたい、アルさん達の意見を聞きたい。少し時間をあけてから話そう」


アルさん達6人はどうした方がいいか、ロードさんの提案通りにこのまま進むか話し合う事になった。





「アル、どうすれば安全に進む事が出来る」


「ルーベル、アルに聞いても安全に進む方法はないぞ」


リーダのアルさんは考え込んでいる、しびれを切らしたルーベルさんがアルさんに話し掛けた。


「そうね、バジルの言う通りよ、危険が少ない方法なら考えればいいけど、安全に進む事は何処の街道を通っても無いのよ」


正論過ぎるぞルルさん、いつもの様に冗談を入れないといけない場面なのにな。


「ルーベル、危険を減らす事を考えよう」


ルーベルさんは頷いて「そうだな、この世界に安全は無いよな」と迷い?何かがふっ切れた様だ。


「だが、危険を減らすにはどうするんだ、ユーリの便利丸は、ここでは使えそうにない、むしろ便利丸を使うと油断しそうだ」


会話に加わっていなかったウイントンさんが何か言いたそうにしているな。


「ここは、どちらに賭けるかより簡単だ、どちらも危険なら近い方がいいな。それに疲れる前に戦った方が勝ち目はある」


いつも賭け事の事しか考えてないウイントンさんが、成長している。馬鹿な、馬鹿は馬鹿のままで痛いな。


「ユーリ、独り言で俺の事をバカバカ言うな、俺は賭け事には弱いがそれなりに戦える」


「おかしいぞ、控えめなウイントンさんがいる。さては既にお金を使いきったのか、痛い」


「俺でも、仕事の旅の間は賭け事はしないんだ」


「ユーリの独り言で話が中断したが、このまま進もう。元々答えは決まっていた。ワームが何体いるか分からないなら、何処の街道を通っても変わらない」


「そうね、私は後方で皆を見守ります、頑張って下さい」


話を聞いていただけのマリアさんが、やっぱり何も出来ませんと宣言をした。


話し合ったが、対策の話は出来なかった。誰も対策を思いつかなかったのだ。





対策は無いがセナに向かって進む。


誰もが無言、馬車3号の後ろにはロードさんの知り合いの行商人の馬車が付いて来る。


彼らも無謀だと分かっているが、セナに向かう様だ。


ロードさんの知り合いの馬車には6人の人が居る。戦闘できる人が一人だ。


盗賊も辛い砂漠で待ち伏せしたり出来ない。それにワームがいるので、自分達が危険な目に合う可能性があるので旨みが無いのでここにはいないらしい。


ライナさんが倒れていた場所までワームに遭遇しないで来れた。


壊れた馬車、いなくなった馬。馬刺しは美味しい、つい引いてくれている馬を見てしまった。


この世界の馬を食べる事は考えてはいけない、友達のジェシーの仲間だ。


「ワームがいるぞ」


ロードさんの指摘に僕は周辺を見渡した。


こちらに気が付いていないのか、動きが獲物を狙っているような動きではない。寛いでいる様な感じだ。


「アルさん達はどうするんだろう」


全ての馬車が止まっている。早く走ることも出来ないので、いなくなるのを待つか攻撃して討伐するかのどちらかしかない。


アルさんがワームに視線を向けながら、警戒してこちらに向かって来る。


「ロードさん、攻撃します。この先数が多くなる前に戦闘に慣れる必要があります。宜しいですか?」


「・・・そうしますか、私も何回も遭遇していますが、逃げるのに精一杯でワームと戦闘経験がありません、数の少ないうちに倒して馴れましょう」


戦闘する事に決まった、どんな作戦でワームと戦うのかな。




僕を含めた非戦闘員はワームと戦うアルさん達を見ていた。


僕が最初に経験したワームとの戦い方に少し似ている。


戦い易い街道でワームを待つ、足元から出て来れないワームは街道脇の地面から出てくるか、勢いに任せて街道に乗り上げて来た時に攻撃を仕掛ける。


ここは砂漠、草原より足場が悪い。アルさん達の取っている戦術しか戦い方が無い。


皆は何とか立ち回って、攻撃も当たる様になってきた。


ワームは砂の中に入って何処から来るか分からない、でも街道の上なら潜る事は出来ない。


「ウォ~」


アルさんが街道から吹き飛ばされてどっかに行ってしまった。


「いい作戦でした」


アルさんはいないが後の5人は街道に乗り上げたワームに近づいて、手当たり次第に攻撃を始めた。


あの時は、ボラジュの北の街道では3人で組んで戦った、今は5人で攻撃している。


マリアさんも近づいて魔法を撃っている。何とか倒す事が出来そうだな。


アルさんが戻って来た時にはワームは動かなくなっていた。


「みんなお疲れ様です、アルさんは飛ばされましたが大丈夫ですか?」


ワームを倒して戻って来たアルさん達をロードさんが労った。


「ありがとうございます、吹き飛ばされましたが砂の上なので無傷です」


「良かった、先に進んでも問題ありませんか?」


「はい、あの戦闘で他のワームは現れませんでした。近くには今のところいないと思います」


「皆、周りを警戒して進もう」


戦闘が終わり、周りを警戒しながら、馬車はのんびりと西に進む。


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